2017-10

K-1 WORLD MAXが面白くなくなってしまった(UFCは相変わらず面白いのに)

K-1 WORLD MAXが面白くなくなってしまった(UFCは相変わらず面白いのに)


 昨日、K-1 WORLD MAX 2008を途中から(魔裟斗VS佐藤の2ラウンド開始から決勝戦終了まで)TV観戦したが、パンチ主体の試合ばかりで面白くなかった。
 以前、ブアカーオが決勝戦で魔裟斗を延長戦の末破った試合は面白かったのに…。

 魔裟斗が勝ったから面白くないなどと言うつもりは毛頭ない。
 K-1 WORLD MAXがパンチ偏重になってしまったから面白くないのだ。一時期と比べると、新興打撃格闘競技として悪い方向へ変わってしまったと思う。

 WOWOWで『エキサイトマッチ』を毎週観ている私の目には、K-1 WORLD MAXでのパンチの攻防は雑に見える。基本が3回戦という縛りの為だと思うが、真正面から正直に打ち合っての「当たったモン勝ち」という印象だ。世界戦レベルのボクシングにおける距離や角度(ポジショニング)の奪い合い、タイミングの取り合い外し合い、ブロックのみならずボディワークを使ったパンチの効果の殺し合いといった緻密な技術的攻防を見慣れた者には、いささか物足りない。

 『エキサイトマッチ』で浜田氏が、サミュエル・ピーターのボクシングを、むしろ良い意味で「30年前のヘビー級ボクシング」と言っていたのだが、昨日観たK-1 WORLD MAXは、悪い意味で「30年前のジュニアミドル級ボクシング」なのではないかと思ってしまった。
(私は30年前のジュニアミドル級の試合を観たことはない。飽く迄も浜田氏の発言を受けての“言葉の連想”である。実際には30年前であっても、ジュニアミドル級のボクシングにはヘビー級にはない技術戦の要素があったと思う)

 いつだったか、ブアカーオが決勝戦で魔裟斗を破った試合。
 あれは、キッカーがパンチャーを破った試合だった。
 キックとパンチの技術的・戦術的な攻防が見られた好試合であった。

 パンチ主体の魔裟斗は、(ファイタータイプのボクサーほどではないものの)前脚に重心を置いたクラウチングスタイル。当然ながら強いパンチを打ち易いが、ローキックのカットはやり難い。

 対するブアカーオの戦術(攻防の選択肢)は、こうだった。
 ・魔裟斗がパンチを打とうと前脚に重心をかけたとき、その前脚にカウンター気味のローキックを当てる。
 ・そのローキックを警戒して魔裟斗が一旦間合いを取った場合、その間合いから前蹴りをボディと顔面に蹴り分けてヒットさせ、体勢を立て直す余裕を与えない。
 ・魔裟斗が強引に距離を詰めて来たら、首相撲からの膝蹴りで対抗する。

 確か、このときは両腕を使った首相撲からの膝蹴りが、1発のみ許されていたように思う。
 例え単発でも、両腕で首相撲を仕掛けることが出来れば、アッパーやボディブローの初動体勢を崩してその攻撃を無効化することが出来る。つまり、両腕を使った首相撲からの膝蹴りは、アッパーやボディブローといったショートレンジのパンチに対して攻防一体の効果を発揮するのだ。

 これがあると、パンチャーは接近してアッパーやボディブローを打つことのリスクが高まり、なかなかそれを仕掛けることが出来なくなる。
 そうなれば、キッカーは中間距離でロー、ミドル、ハイキックを狙う機会が増えるので、攻撃のバリエーションが広がる。

 これは、裏を返せば、

 両腕を使った首相撲からの膝蹴りが禁止されている場合、パンチャーは接近してアッパーやボディブローを打つ際でも、基本的には相手のパンチを警戒するだけで良い。(首相撲に先導されない膝蹴りは、格段に脅威が小さくなる)
 そうなれば、キッカーはショートレンジでのパンチの打ち合いに持ち込まれる時間が増えるので、中間距離でロー、ミドル、ハイキックを狙う機会が減る。攻撃のバリエーションが狭まる。

と言うことだ。
 つまり、K-1で両腕を使った首相撲からの膝蹴りが禁止されると(肘打ちは最初から禁止)、接近戦ではほとんどボクシングになってしまう。ボクシングを観るなら、生粋のボクシングの方が遥かに面白いのは当然である。

 1試合目の場合、3回戦ではローキックの効果が出にくいという要素も大きい。この点に関しては、むしろトーナメント方式による弊害と言うべきか。

 採点基準も「ダメージ重視」というものの、「顔面へのパンチ重視」となっているように思う。
 これはボクシングでも言えることだが、パンチが頭部にクリーンヒットしようが、ボディにクリーンヒットしようが、それによるダメージが直ちに表われなかった場合、それは同じ価値を持つ有効打として平等に「1打」とカウントされるべきだ。2つのパンチによるダメージに優劣を付けられない以上、その評価は同等とするしかあるまい。

 K-1にありがちな例を挙げよう。

 ・ローキックが太腿にクリーンヒットしたが、それで直ちにグラつくということはなかった。
 ・アッパーが顎にクリーンヒットして顔が上を向いたが、それで直ちにグラつくということはなかった。

 K-1の採点基準が「第一にダメージの大きさ」ならば、上記の二つは等価に採点されなければならない。
 何故なら、ダメージとは「1回のダウン=減点2」を基準にしているからだ。顎へのアッパーでダウンしても「減点2」であるし、太腿へのローキックでダウンしても同じく「減点2」であることを忘れてはならない。

 要するに「ダメージの大きさ」とは、「ダウンの有無」または「ダウンしそうな状態の有無」で判断される。
 「アッパーが顎に命中して顔が上を向いたが、グラつくことなく普通に立っていた」という状態と、「ローキックが太腿に命中したが、グラつくことなく普通に立っていた」という状態は、その意味において差がないのだから、等価に評価すべきなのだ。
 重心の乗った脚にローキックが命中しても、「脚が跳ね上げられる」ことなどまず有り得ないのだから、単純に「アッパーで顎が上がった」というだけで「ダメージが大きい」と判定するのは根本的に間違っている。それは、表面的な「見栄え」を評価しているに過ぎない。
 「クリーンヒットであったか」、「ダウンの有無」または「ダウンしそうな状態の有無」に関して差がなければ、見栄えのするアッパーだろうが地味なローキックだろうが、評価は同じでなければおかしい。

 ムエタイ選手にとって不利になるようにルールや採点基準を設定した結果、K-1対策を積んでいない典型的なムエタイ選手がアッサリ優勝してしまうという心配は、ほとんど無くなったと言って良いだろう。しかしその反面、競技の多様性や技術的な部分を大きく削ぎ落としてしまったこともまた事実である。
 多様性を保ったまま競技としての整備が進んだUFCと比較すると、実に対照的ではないか。
 ちょっと残念な気がする。
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震電

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 写真撮影時40歳。
 いい歳して云々といった決まり文句は私には通用しない。たった一度の人生、他人に迷惑をかけない範囲で楽しみます。