2017-08

ホセ・ルイス・カスティージョ VS ディエゴ・コラレス 他1試合

    WOWOW『Excite Mach』 
                    2005年6月6日 20:00~ 放送分


          ホセ・ルイス・カスティージョ VS ディエゴ・コラレス

 前回の試合でディアスに勝利し、事実上のIBF・WBC統一王者であるカスティージョ。この試合でコラレスに勝ったら一つ階級を上げて、現在“格闘技における人類最激戦区”であるSライト級で戦うという言葉にも説得力が感じられる。
 一方のコラレスは、前回の試合ではフレイタスを相手に前半は我慢のボクシング、最後は完膚なきまでに叩きのめして戦意喪失に追い込むという、見事な作戦勝ちを収めている。
 その両者が統一戦を行うのだから、正に好カードである。

 1ラウンドから両者は積極的に打ち合う。接近戦ながら、両者とも上下を打ち分けるというハイレベルな技術戦が展開される。しかも、ロープに詰まることなく、ほぼリング中央での打ち合いが続く。
 2ラウンド、連打を交換する中、カスティージョの右フックがコラレスの左頬を抉る。ワンテンポおいて放たれたカスティージョの左フックが、コラレスの右テンプルにクリーンヒット。やはり接近戦ではカスティージョに分がある。
コラレスも後半は手数を増やし、終盤は回転の速い連打を当ててクリーンヒット数を稼ぐ。このときは、両者の間合いがやや開いていた。
 3ラウンドは、互いの頭部を相手の肩口に押し当てるような状態での打ち合いとなる。これほど密着した状態なのに、なかなかクチンチにならず、有効なパンチの応酬が続く。両者は一歩も引かないどころかクリンチにすら行かないのだ。
 一進一退の攻防が続くが、終了間際に有効打をまとめたのはカスティージョだ。

 4ラウンドに入ると、コラレスが距離を長めに保ってストレート系のパンチを使い始める。カスティージョがくっついてきても、その接近戦に応じるというよりは連打で突き放して距離を開こうという意識が感じられる。しかし、ひたすらしつこく食い下がるカスティージョが、結局は接近戦に巻き込んでしまう。
 5ラウンドも同様の展開。しかし、コラレスがカスティージョをロープに詰めるシーンもあり(一方がロープに詰められるのは試合を通して初めて)、ペースを握られっぱなしというわけではない。

 6ラウンドに入ると、また最初から密着しての打ち合いとなる。クリンチにもいかず、リング中央で押し合いながら、ひたすらパンチを出し続ける。これが人間技ではないことが、素人にもヒシヒシと伝わってくる。押し合いながらパンチを出すだけでも大変な運動量である上、両者とも被弾してダメージが蓄積している筈なのだ。
 単なる意地の張り合いとか、根競べとといったレベルではない。打ち合いを続ける二人のボクサーの躯からは、まるで「今パンチを出すのを止めたら死んでしまう」というくらいのギリギリの緊張感が発散されている。それが見えない壁となって、レフェリーの接近すら阻んでいるかのようだ。

 6ラウンド終盤にアッパーでコラレスを棒立ちにさせたカスティージョだが、決して余裕はない。7ラウンドに入ってコラレスが再びストレート系のパンチを使い始めると、ブレイクの際にマウスピースを口から半分出すという苦しげな様子を見せる。
 このラウンドは、ストレートが当たる距離から、肩口に頭部を付け合う密着した状態まで、あらゆる間合いでの打ち合いが展開された。カスティージョは中間距離からいきなりの右フックを命中させたりして、クリーンヒットの数ではコラレスを上回った。しかし、ゴング間際にカウンターの左フックを打ち抜いて、相手をダウン寸前の状態にしたのはコラレスの方だった。

 8ラウンド、前のラウンドでゴングに救われた観のあるカスティージョを、コラレスが攻め立てる。カスティージョも打ち返すが、明らかにダメージが濃い。効いてしまっているのが隠せない。
 しかし、ここへきてカスティージョが、回転の速いコンビネーションで反撃する。この試合、常に一定のペースで連打してきたカスティージョが、初めて見せる高速コンビネーションである。文字通り面喰らったコラレスは、マウスピースを口から半分出して苦しさを覗かせる。
 一転して劣勢に立たされたコラレスだが、右フック→左フックのコンビネーションの左フックをカウンターで命中させ、カスティージョをフラフラと後退させる。正に一進一退で、採点が割れるラウンドとなった。

 9ラウンドになっても、カスティージョは上下を打ち分ける丁寧な攻めを行う。打ち合いとは言っても、決して乱打戦ではないのだ。ローブローの注意から仕切り直しとなった後は、逆ワンツーを放ってクリーンヒットさせる。
 残り1分を切ったところで、右フックの相打ちの後、カスティージョがジャブを顔面→ボディへとダブルで打ち分けると、これが2発ともクリーンヒット。後退したコラレスを追ってなおも上下の打ち分けを続けると、さすがのコラレスもクリンチで逃れる。
 恐らく意識が朦朧としているであろう状態で繰り出される高等技術に、尊敬の念を禁じえない。

 10ラウンド開始早々、カスティージョは中間距離でジャブの連打した後、不意に左フックを繰り出した。ジャブがくるものと思って右手でショビングを行ったコラレスは、この左フックをまともに喰らって崩れ落ちた。直線と見せかけての曲線、パンチの軌道を唐突に変えて奪ったテクニカルなダウンである。
 カウント8で立ち上がったコラレスだが、ダメージは深い上にラウンドの残り時間は多い。マウスピースの入れ直しで数秒間の猶予を得た後、カスティージョから何発かクリーンヒットを受けると、再びダウン。しかし、このダウンは本当に身体を支えきれなくなって倒れたというよりも、深刻なダメージを被る前に自ら倒れたような印象を受けた。
 このダウンの際、コラレスは意図的にマウスピースを吐き出しているように見える。結果論だが、この行為の結果、20秒近く休むことが出来たのだ。回復の時間稼ぎとしては上出来である。
 これも結果論だが、カスティージョはコラレスから2度目のダウンを奪った攻撃の際、1発もボディを打たなかった。上下の打ち分けに散々苦しめられてきたコラレスは、ダウンしながらもカスティージョのこの変化に気付いていたのではないだろうか。カウントギリギリで立ち上がったコラレスの右目から放たれる視線は、続けて二度ダウンした選手のものとは思えないような落ち着きがあった。その瞳の奥には、一種の勝算のようなものすら感じられた。

 試合再開直後、カスティージョの左フックをコラレスは珍しくダッキングでかわす。カスティージョのパンチが頭部に集中してきていることを、コラレスが読んでいたかのようだ。
 そして、カスティージョの左アッパーに対してコラレスが左フックをカウンターでヒットさせたことで、試合の流れは逆転。カスティージョの左アッパーをミスブローさせた直後に、コラレスが今度は右フックを合わせる。さらに、この試合で何度かカスティージョをグラつかせてきたコラレスの左フックが、この土壇場でもカウンターで命中。そこからコラレスが一気にラッシュすると、ロープを背にしたカスティージョはダウンすることすら出来ずに打たれっぱなしの状態に。レフェリーがすかさず試合を止めた。
 このラウンド2度ダウンしているコラレスが、逆転のTKO勝利をもぎ取ったのだ。

 この試合では、両者の高度な技術と身体能力を十二分に見せもらった。
 マウスピースの入れ直しによる試合の中断によって“画龍点晴を欠く”観はあるものの、現時点での今年のベストマッチと言える素晴らしい試合だった。


          コンスタンチン・チュー VS リッキー・ハットン

 2001年の後半から『Excite Mach』を観始めた私にとって、チューは特別に“強い”という印象のある選手ではない。チューに対する私のイメージは、「身体つきや構え方から、どこかフルコン系の空手家を連想させる、ちょっと変わった雰囲気を持つ選手」といったところだ。
 ハットンの試合は、予告映像を除けば今回が初見。彼のKOパンチであるボディブローがチューに通じるのか、お手並み拝見という感じ。

 試合は、洗練された近代的ボクシングではなく、ボクシングの歴史を遡ったような“組み討ち打撃戦”となった。
ハットンはクリンチの状態からチューの腕や首を抱え込むホールディングを多用し、ボクシングにグレコローマンスタイルのレスリングを組み入れたような戦法をとる。それに加え、自らの頭を下げてチューの肩口ではなく顔面に押し当てるというルールに抵触する行為もしばしば行う。
 チューの方は、前回の試合でミッチェルに決めたようなワンツーが出ない。ハットンの踏み込みが鋭いのか、左のリードを真っ直ぐ合わせることが出来ず、フックを被せる形になる。ハットンが身体を振って突っ込んでくるため、ジャブは当てにくく、当てても止められないという判断なのか。
 ハットンがくっつくと、チューはボディーブローを警戒してか、早めに相手の胴に腕を回してクチンチ。レスリングで言うところの「脇を差された状態」になったハットンからすると、この邪魔な腕を何とかしたい。ハットンがホールディングを多用するのは、チューがクリンチを多用し、密着した状態での打ち合いを避けようとすることの裏返しでもある。

 チューは、まず中間距離で強いパンチを当てることを攻撃の起点とする中間距離型のファイターである。これに対し、ハットンはひたすら突進して、レバーブローを当てることの出来る距離で戦おうとするインファイター。
 くっついて距離を詰めてくる相手を、押し返して突き放そうとするチューに対し、突き放されてなるものかとハットンが押し返す。タイプの違うファイター同士の戦いは、技術戦というよりはむしろ泥臭い消耗戦の様相を呈したものとなった。

 中間距離で打ってはクリンチしようとするチューと、その中間距離のパンチをかわし、クリンチではなくインファイトしようとするハットン。この戦いの構図で、ラウンドが重ねられていく。
 その均衡が、9ラウンドからはハットン有利に傾く。そして最終ラウンドが始まる前、試合は唐突に終わりを告げた。チューの試合放棄により、ハットンのTKO勝ちが確定。消耗戦を制した形で、新チャンピオンが誕生した。

 ハットンは、チューの右ストレートさえ叩き落とすショビングや、密着した状態でのアッパーカットなどの技術に非凡なものを見せたものの、この試合全般を通しては執拗なまでの突進力が目立った。今後、防衛を重ねていくのか、それとも早い段階で王座陥落となるのか? チューとの再戦も含め、注目したい。
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震電

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 写真撮影時40歳。
 いい歳して云々といった決まり文句は私には通用しない。たった一度の人生、他人に迷惑をかけない範囲で楽しみます。