2017-10

K-1 World MAX は、競技(興行)として煮詰まってきたのかな?

K-1 World MAX は、競技(興行)として煮詰まってきたのかな?


 K-1 World MAXが、あんまり面白くなくなってきた。
 トーナメントの勝ちパターン(あるいは負けパターンと言ったほうが適切か)が見えてしまったからだ。

 実力が拮抗した選手同士の勝負の場合、決勝進出時にダメージの蓄積や体力の消耗が少ない方が勝つ可能性が高いというのは昔から分かりきっていたことである。それに加え、今回はそれに“構造的な勝負の矛盾”が加わったことにより、興醒めする部分が増えた。

 K-1 World MAXの歴史は、「いかにムエタイ選手に勝たせないようにするか」である。
 K-1は日本人が作った競技なので、このこと自体は何ら問題ではない。
 「立ち技の打撃系格闘技における何でも有り(ただし頭突きは禁止)」にしたら、それは「ムエタイそのもの」になってしまう。そういう競技なら(例え採点基準を変えたとしても)ムエタイの選手が有利に決まっている。K-1 World MAXという新名称を付けたところで、既成の競技であるキックボクシングの二の舞になることは明らかだ。

 この場合、どうしてもムエタイの選手に勝たせたくなかったら、強いムエタイの選手をエントリーさせないという手段を取らざるを得ない。
 それを良しとしない場合は、今のK-1ルールを導入せざるを得ない。そういう意味では、今のK-1ルールは、ワンマッチを想定した場合には、なかなかバランスの取れたものになっている。

 また、K-1 World MAXの歴史は、「いかに日本人選手を優勝させるか」でもある。
 ミドル級と言いつつも、実際には1階級下のスーパーウェルター級のリミットとほぼ同じ70.0kgを契約体重としているのも、
「ウェルター級以下だと、ムエタイの強い選手が増える」
「ミドル級以上だと、日本人に人材がいない」
という条件の狭間で、どうにか得ることの出来た狭き解だろう。
 つまり、
「今より軽い階級では、日本人はタイ人に技術面で勝てない」
「今より重い階級では、日本人は西洋人に体格・パワーの面で勝てない」
ということだ。

 そんなK-1スタッフの期待を一身に背負った魔裟斗が出した答えは、ボクシング主体のスタイルで戦う、即ちパンチの距離で戦うということだった。
 アッパーからフックというコンビネーションは、ムエタイルールであれば、たった一度失敗するだけでも首相撲に捕えられて、大きなダメージを被る(ポイントを失う)リスクが非常に大きい。しかし、K-1ではそのリスクがないから、成功するまで(あるいは相手に別の方法で合わされるまで)何度でもトライすることが出来る。

 ボクシング主体のスタイルで戦う場合、天敵となるのはローキックと前蹴りだ。しかし、元々キックボクサーである選手を、3ラウンド以内にローキックでKOすることは難しい。
 今回、魔裟斗はパンチでブアカーオをダウンさせ、ローキックで大きなダメージを被りながらもダウンすることなく3ラウンドを戦い抜き、判定での勝利を収めた。K-1ルールで日本人がタイ人と戦う場合に最も勝つ可能性が高い戦法で戦い、実際に勝ったのだ。

 しかし、このトーナメント初戦で脚に大きなダメージを被った魔裟斗に、決勝戦の3ラウンドを戦い抜く力は残されていなかった。ボクシング主体のスタイルで戦う場合、1回戦でムエタイの選手に勝つことは出来ても、決勝戦で勝つことは極めて困難であることが実証された。
 つまり、ワンマッチにおける強さと、トーナメントにおける強さは、運不運の次元ではなく構造的に完全に別物となってしまうのだ。

 パンチ主体の戦法で1、2回戦を勝ち上がった選手が、決勝戦で脚のダメージが限界に達して敗れる。
 初戦で、ムエタイの選手がパンチ主体の選手にローキックを的確に蹴り込みながらも倒しきれず、判定で敗退して早々に姿を消す。
 こういう図式は、あんまり面白くない。

 しかし、だからと言ってラウンド数を3ラウンドを5ラウンドに延ばせば、どうなるか?
 カバーリングアップで上半身をがっちりガードしたまま、ひたすらローキックのみを蹴り続け、最終ラウンドに動きの鈍った相手を一気に攻め落とすという戦法が最も有効になってしまう。

 その戦法を破ることが出来るのは、ガードした状態ごと首相撲に捕らえての攻撃である。
 首相撲からボディに膝蹴りをぶち込めば、どうしても側頭部のガードが空く。そこへ肘打ちを叩き込むというコンビネーションは、ムエタイでは基本である(と言うよりも、この攻撃パターンがあるため、ボディへの膝蹴りを腕でガードすること自体がタブーとなっている)。
 しかしこうなると、K-1はムエタイになってしまう。

 首相撲同様、ローキックをルールで制限するという手もあるかもしれないが、例えば「ローキックは1ラウンドに4発まで」というルールは、どうにも納まりが悪い。
 そうなると残るのは、「トーナメント3試合を1日で終わらせる」という現行の興行スタイルを変えることしかなさそうだ。

(1)3試合とも別の興行にして、トーナメントは全てワンマッチにする。

ことが理想だが、それが無理だとしても

(2)1回戦(準々決勝)、2回戦(準決勝)の2試合を一つの興行で行い、決勝戦は別の興行でワンマッチで行う。
(3)1回戦(準々決勝)を一つの興行でワンマッチとして行い、準決勝、決勝の2試合は別の興行で行う。

にするべきだと思う。
 あるいは、K-1も毎年トーナメントを行うのはやめて、ボクシングのような王座&ランキング制を導入する時期に来ているのかもしれない。タイトルマッチは、年2回(指名試合1回、それ以外1回)行えば良いだろう。

 キックボクシングやムエタイの華であるハイキックが、パンチ&ローキック主体のK-1 World MAXから姿を消しつつあることも気掛かりだ。
 ボクシングとは違って実質2階級しか存在しないK-1は、選手層の薄さという問題を常に抱えていることも分かるのだが、関係者には一層の工夫と努力を期待したい。
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震電

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 写真撮影時40歳。
 いい歳して云々といった決まり文句は私には通用しない。たった一度の人生、他人に迷惑をかけない範囲で楽しみます。