2017-10

『轟轟戦隊ボウケンジャー』の感想

『轟轟戦隊ボウケンジャー』の感想


 戦隊シリーズと仮面ライダーシリーズは、子供向けヒーロー番組である。
 対象年齢は、およそ3歳から8歳。
 子供であっても、9歳からは戦隊も仮面ライダーも見なくなる。このことは、メインスポンサーであるバンダイが公表しているアンケート集計結果からハッキリと分かる。
 私が子供の頃も、学校で仮面ライダーが話題になっていたのはV3の頃までである。一部の例外(大人になっても特撮を観続ける趣向を持ち得る者)を除き、遅くとも小学3年生で仮面ライダーを“卒業”するというのは、今も昔も変わらないようだ。

 おそらく、戦隊シリーズや仮面ライダーシリーズを一番熱心に観ているのは、小学生に上がる1年手前の4~5歳児だろう。つまり、幼稚園の年長組だ。その次が小学1年生である5~6歳児、つまり小学生の最年少組である。
 これは飽くまでも、全体的な傾向の話だ。小学校に入学すると早々に(あるいは入学を待たずして)子供向けヒーロー番組(実写)を“卒業”し、ポケモンなどのゲーム&アニメの分野へ移行していく子供もいるだろう。

 さて、私はそういった現代の子供向けヒーロー番組の主人公の一つの理想形として、以前から次のような条件を示してきた。

(1)普段から、子供が共感できるような考え方や行動をする
(2)「近寄り難い雰囲気」を有してはおらず、子供からも「それじゃダメだよ」と言える位の隙がある
(3)決めるときはカッコ良く決める

 つまり、「親近感と憧れの両方を抱ける存在」としての主人公である。
 ただし、本郷猛に代表される、私が子供の頃の子供向けヒーロー番組の主人公がそうであったかと言えば、答えは否だ。ではどうだったかと言えば、以下のようになる。

(1)普段から大人の雰囲気全開で、一見すると子供っぽい要素は無い。ただし、その実際の行動は子供が共感できるものであることが多い。即ち、子供が期待している行動を、飽くまでも大人っぽく行なう。
(2)「大人の世界の住人」ではあるが、子供を所謂子供扱いはせず、子供の話を真剣に聞いてくれる。子供と接するときはしゃがんで目線の高さを合わせるなど、自分と子供が対等な立場であることを態度でも示す。
(3)普段からカッコ良く、決めるときは更にカッコ良い。

 この【本郷猛タイプの主人公】は、作品が一定のフォーマットを備えているとき、その魅力が最大限に発揮される。即ち、

(1)「悪者が、一般市民の家の中までやって来る」という、視聴者の身に迫った恐怖感を与える。
(2)ヒーローは、その悪者から一般市民を救い出す。
(3)ヒーローは、「一般市民に被害を及ぼさないようにして、その悪者を退治する」ことで、視聴者に与えられていた恐怖感を消し去ってあげる。

 これを【昭和ライダーフォーマット】と呼ぼう。
 「怪人が、自分の家の中に入って来てしまう」という、子供にとっては最も恐れる事態が発生する日常下にあっては、普段子供から「それじゃダメだよ」と言えるような隙がある主人公では、ちょっと心もとない。子供が絶対的な信頼を寄せることの出来る、完璧に限りなく近いヒーロー、それが【本郷猛タイプの主人公】なのだ。

 子供にとって、「いざというとき自分を守ってくれる者=頼れる大人」とは、自分の親である。しかし、もしも怪人が自分の家の中に進入してきたら、親が怪人に勝てるとは思えない。その場合、自分達を救ってくれるのは、「親を超えた親=スーパー保護者」であるヒーローしかいない。
 子供は日常的(特に休日)に、自分の親の“隙”、即ちだらしないところやカッコ悪いところを目にしている。だから、ヒーローが「親を超えた親=スーパー保護者」であるためには、日常的にもこうした隙は出来るだけ見せない方が良いのである(例外として、稀に隠し味的に見せると効果的)。

 前置きが長くなったが、『ボウケンジャー』の主人公である明石は、最近の戦隊主人公(レッド)としては珍しく、【本郷猛タイプ】に分類できるキャラクターだ。即ち、
「親近感と憧れの両方を抱ける存在」としての主人公ではなく、
「信頼感(大人であること)と憧れの両方を抱ける存在」としての主人公である。

 戦隊メンバーの構成は、実は前作の『マジレンジャー』同様、兄弟である。実際には兄弟ではないので、「兄弟をモチーフにしている」あるいは「メタファーとしての兄弟」と言うべきか。
 明石は既に大人になっている長男であり、大人であることの特権(リーダーの諸権利)を堂々と行使する。
 さくらも大人(長女)であり、大人としての自覚を表に出すことで、自分が大人であることをアピールしている。
 蒼太も明石同様「既に大人になっている」のだが、そのことを明石やさくらのように表には出さない。さり気なく大人な次男である。
 真墨は三男坊、菜月が次女で一番年下。この2人はまだ子供。子供のように考え振舞う、子供キャラである。

 『ボウケンジャー』では【昭和ライダーフォーマット】が用いられておらず、少年ライダー隊に相当する子供(リアル子供)キャラクターも存在しない。このため、真墨と菜月が子供キャラクターとして機能している。
 真墨の「明石を越えてやる」という行動原理は、子供の「早く大人になりたい」という本能的欲求と重なる。つまり、「常に他人から命令されている立場」である子供から、命令されなくても済む立場へ、さらには「自分が命令を下すことができる立場」である大人へと変わりたいと思う、子供の自然な心理を投射したものなのだ。

 私が『ボウケンジャー』を視聴し始めた理由は、ゴーゴーダンプに代表されるメカや、巨大ロボへの合体シーケンスが自分の好みに合っていたからだ。『ゴーゴーファイブ』の放映以来、久し振りの重機系のメカの登場に、心が躍った。
 『ゴーゴーファイブ』のとき、欲しかったのに結局買わず終いだった合体玩具に関しても、今回は購入を果たすことが出来た。玩具の出来も良く、大満足である。劇中で、もう少しゴーゴーダンプ単体での活躍が観たかったところだが、まぁそれは自分の空想で補完しておこう。

 主人公である明石の「大人キャラ」が、今の子供に受け入れられるかと心配しながら観ていたが、果たしてどうだったのだろうか。
 最終話で、明石とさくらが新婚旅行みたく宇宙へ旅立って行くのを見て、
「ああ、明石とさくらは長男長女であると同時に、父親母親でもあったんだな」と思った。
 子供だった真墨が大人になることで、長男長女であった明石とさくらが、父親母親へと格上げされたとも言える。その意味で、明石とさくらを宇宙へと押し上げたのは、実は真墨(の成長)なのである。

 自分に4~5歳の子供がいたら、一緒に観たい番組だった。『ボウケンジャー』を観終わって、今そう感じている。
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震電

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 写真撮影時40歳。
 いい歳して云々といった決まり文句は私には通用しない。たった一度の人生、他人に迷惑をかけない範囲で楽しみます。