2017-10

『仮面ライダーカブト』考 完結編の補足

『仮面ライダーカブト』考 完結編の補足

               『カブト』2つの失敗

 『仮面ライダー電王』の第1話を見て「お、さすがに今度は改善されたな」と思った。『響鬼』・『カブト』と2年連続で犯していた「第1話の失敗」が、『電王』には見られなかったからだ。
 私は 『仮面ライダーカブト』考 完結編 で、TV版の『カブト』に関して「色とモチーフに関しては成功し、クロックアップに関しては失敗した」と書いた。実は、『カブト』はクロックアップ以外にも痛恨の失敗を犯している。それが「第1話の失敗」だ。

 「第1話の失敗」とは、「第1話で必殺技(またはそれに相当する見せ場)を披露していない」ということだ。『カブト』の第1話における痛恨の失敗は、ズバリ「キャストオフを披露しなかったこと」である。

                第1話に成すべきこと

 平成ライダーの第1話の視聴率は、前作のライダーの最終話の視聴率をほぼ受け継ぐ形になっており、全話を通した中でも高い数字が出ている。この高い視聴率が期待できる第1話では、決して「出し惜しみ」をするべきではない。基本的には、「第1話で全部出す」ぐらいの勢いで、作品の“売り”の部分を明確にアピールするべきなのだ。
 もちろん詰め込みすぎては却って全体の印象が散漫になってしまう。しかし、スーパーヒーロータイムの仮面ライダーが子供向けのヒーロー番組である以上、第1話に盛り込まなければならない要素というものは歴然と存在する。一般的には、以下に挙げる項目のうち、

怪人側
(1)出現
(2)襲撃(人を襲う)
(3)ライダーの必殺技に相当する特殊能力
(4)怪人側の組織

ライダー側
(1)登場
(2)変身
(3)活躍(悪者と戦って人々を救う)
(4)必殺技
(5)ライダー側の組織
(6)オートバイに代表される、ライダーのサポートメカ

怪人側の4項目のうち3つ以上、ライダー側の6項目のうち4つ以上は第1話で見せなければ、子供から高い支持を得ることは出来ないと思う。(当然ながら「登場」しなければ「活躍」できないわけであり、「(3)から(6)の4つ」というケースは有り得ない。しかし、「変身」しないで「必殺技」を決めるとかは、工夫次第で出来ないことはないかも知れない)
 これを『カブト』の場合に当てはめると、

ワーム側
(1)出現
(2)襲撃(人を襲う)
(3)脱皮
(4)クロックアップ
(5)ライダーの必殺技に相当する特殊能力
(6)ワーム側の組織

ライダー側
(1)登場
(2)変身
(3)活躍(悪者と戦って人々を救う)
(4)キャストオフ
(5)クロックアップ
(6)ライダーキックに相当する必殺技
(7)ライダー側の組織(ZECT)
(8)オートバイに代表される、ライダーのサポートメカ

となる。

          第1話よりも第2話の視聴率が低くなるワケ

 ワーム側は、第1話で出現からクロックアップまで見せており、合格である。
 問題はライダー側だ。
 キャストオフもクロックアップもせず、マスクドフォームのままクロックアップしたワームを地味な技で倒すという展開は、第1話には相応しくなかった。この展開は、物語中盤以降で「カブトが何らかの理由でクロックアップできない状況に追い込まれた」という設定下で描かれるべきものである。

 第1話では少なくとも、キャストオフまでは見せる必要があった。
 第2話で見せたカブトのキャストオフは、相当カッコ良かったからだ。
 製作側は、第1話で期待を持たせ、第2話へと視聴者を引っ張るつもりだったのかも知れない。
 しかし、現実には、第2話の視聴率は第1話よりも下がっていた。
 現代の子供には、「第1話で出し惜しみをして次回へ引っ張る」という手法は通用しないのだ。娯楽が多様化した現代、TVのライダーの第1話を見て「カッコイイ!」と興奮できなかったら、その子供は翌週からその時間帯を、別の遊びの時間に振り替えてしまうのだ。

             惜しまれる「成功作における失敗」

 基本的(構造的)に失敗作だった『響鬼』とは異なり、『カブト』は基本的(構造的)には成功作であった。
 クロックアップが子供の遊びに取り入れにくい描写であるという失敗点や、ワームがライダーの必殺技に相当する特殊能力を持っているケースが少なかったりという欠点はあったものの、それ以外の点、特に主なライダーが全員キャストオフするという設定とその描写は素晴らしく、色とモチーフを含めた各ライダーの描き分けも十分になされていた。
 このように基本的(構造的)には成功作である『カブト』が、視聴率におけるスタートダッシュに失敗したのは、第1話で「キャストオフを披露しなかった」という痛恨の失敗が最大の原因であると私には思えてならない。

 マスクドフォームのカブトが、サナギワームの群れを全滅させるも、隠れていた一体が脱皮し、クロックアップして襲いかかる。マスクドフォームのカブトは、クロックアップしたワームに翻弄される。
「ライダーは、クロックアップしたワームには勝てないのか?」
と思わせる展開、あるいは既に設定を知っている者にとっては、
「早くキャストオフした方がいい!」
と思わせる状況。ここで、“第二の変身”と言うべき「キャストオフ」を行ない、ライダーフォームの登場となる。
 少なくとも、ここまでを第1話でやっておくべきだったのだ。

                「攻防の描写」の不足

 「主なライダーが全員キャストオフするという設定とその描写は素晴らしい」と書いたが、「キャストオフ」は活かされていたが、「マスクドフォーム」そのものは活かされることが少なかったと思う。これは、『カブト』が前作の『響鬼』同様、「攻防」というものを十分に描けていなかったという側面と重なり合う。
 『カブト』のバトルシーンで、印象に残っているものは少ない。その数少ない印象的なバトルシーンの中では、マスクドフォームを活かしたものが多い。裏を返すと「マスクドフォームを活かせば、印象的なバトルシーンが生み出せる」ということだ。

【1】カブトvsサソードで、カブトが腕だけプットオンしてサソードの剣撃を受け止め、カウンターを成功(ただし寸止め)させた場面。

【2】サナギワームの群れを一掃するため、ライダーフォームのガタックがプットオンしてマスクドフォームになり、双肩のガタックバルカンを連射した場面。

【3】敵に勝つことが出来ないと悟った神代が、岬を守るため、マスクドフォームのまま自らを盾とし、ひたすら敵の攻撃を受け続けた(耐え続けた)場面。

【4】カブトvsダークカブトで、ダークカブトが
「ライダーキックと見せかけてプットオンし、ライダーフォームの相手に組み付いて自由を奪い、そのまま一緒に落下して地面に激突する。一緒に地面に激突しても、マスクドフォームになっている自分の方がダメージが小さくて済む」
という作戦を実行しようとした場面(ただし、カブトがハイパークロックアップしたため、この作戦は失敗に終わる)。

 どの展開も、理に叶っている。【3】は文字通りの捨て身であり、合理的な戦法とは言えないかも知れないが、あの状況下でマスクドフォームを選んだことには納得がいく。
 ザビーとドレイクが成り行きで共闘している場面で、
「マスクドフォームに戻るぞ!」「俺に命令するな!」
といったやり取りの後、両者がプットオンするという流れがあったが、あの状況下で何故マスクドフォームに戻る必要が合ったのか、納得のいく描写はなかった。
 戦いには、説得力が必要である。様式美や迫力で押し切れるシーケンスもあるが、そうでないところもあるのだ。あのプットオンのシーンが、マスクドフォームの“弱点”を端的に顕していたと思う。

 攻防を描くという要素の中で、相手の出方に応じて自分の戦い方を変えるということは重要である。相手や状況によって武器や変身フォームを選択するということは、その土台となる。
 マスクドフォームがライダーフォームへの一過程ではなく、マスクドフォームならではの戦い方がもっと描かれていれば、『カブト』のバトルシーンはもっと充実したものになっていただろう。

マスクドフォームにも独自の必殺技(必勝パターン)が欲しかった

 マスクドフォームでなければ使えない技を披露したのは、サソードとガタックだけである。その使用頻度からすると、ほとんどガタックだけと言っても過言ではない。
 キャストオフする全てのライダーに、マスクドフォーム独自の必殺技(必勝パターン)が欲しかったと思っているのは、私だけではあるまい。
 例えば、カブトだったら、マスクドフォームの状態でベルトのスイッチを「ワン・ツー・スリー」と操作すると、ライダーキック以上の威力を持つ「ライダーパンチ」を放てる、という具合だ。
 ザビーなら、肩のアーマーを使った体当たりである「ライダータックル」。
 ドレイクなら、胸部のアーマーから風を巻き起こす「ライダーストーム」。

 ライダーフォームで何発殴っても壊すことが出来なかった強固な扉を、マスクドフォームにプットオンしてパンチを叩き込んだらボコボコと凹みが出来て、アッサリ破ることが出来たという描写でも良い。
 トラックや鉄球などに押し潰されそうになったとき、咄嗟にプットオンしてパワーと防御力を発揮し、ピンチを切り抜けるという描写でも良いだろう。
 カブトのマスクドフォームは、特定の防御姿勢を取ると、どんな攻撃にも耐えられる「無敵ガード」状態になるという設定も、子供の遊びや格闘ゲームに取り入れ易いだろう。
 レーダーのような索敵能力や、ZECTのバックアップクルーと連携可能な情報分析能力を持っているという描写も面白いかも知れない。

 「こういう場面では、こうする」、「もっと、こうした方が良い」、「こうすれば相手に勝てるのに」ということは、子供でも考えることであり、ヒーロー番組の楽しみ方の醍醐味である(大人がスポーツを観戦しているときの心理と通ずるものがある)。そういう自分の考えと、実際のヒーローの行動が一致したとき、作品を見る楽しさは倍増する。

 実際、「必殺技を吸収する」という特殊能力を持ったワームが登場した話の際は、TVを見ているチビッコ達も「ダブルライダーキック(完全同時攻撃)」という「答え」を予想し、それが実現することを期待してワクワクしたことだろう。しかもご丁寧なことに、「完全同時攻撃としてのダブルライダーキック」というメインイベントの前に、ザビーとガタックの必殺技が「完全同時攻撃」ではなく「僅かに時間差のある連続攻撃」になってしまって失敗するという前フリまで描かれていた。
 「時間差攻撃」ではダメなんだ! 2人が息を合わせて、同時に必殺技を決めなければダメなんだ! 
 この「時間差攻撃ではダメ」という描写が、「同時攻撃」に付加価値を与え、ダブルライダーキックという技のステイタスを高めていた。つまり、ダブルライダーキックが成功したときのカタルシスを増幅させていたのだ。

 マスクドフォームに独自の“強さ”がなく、“見せ場”もなければ、見ている方も「さっさとキャストオフしてライダーフォームになれば?」という気分になってしまう。実際、物語後半のマスクドフォームはそういう扱いだった。
 あるいは、マスクドフォームがサナギマンのように「明らかに弱い」キャラクターだったら、そのやられっぷりが「今日はどこまでこっぴどくやられちゃうんだ?」という一種の見せ場になり、敵の強さ・凶悪さを盛り上げたり、ライダーフォームになったときの反撃時のカタルシスを高めるという効果を生んだだろう。

 端的に言って、マスクドフォームは存在価値が発揮されず、感情移入しにくいキャラクターになっていた。その意味で、物語後半に登場したホッパーズがマスクドモードを持たないことは正解だったが、本当の正解はホッパー以外のライダーのマスクドフォームの存在意義を描き出し、その特長的な能力をバトルシーンで活用することであった。(そうすれば、マスクドフォームのないホッパーズの不利な部分を描くという広がりを持たせることも出来た筈だ)

 『カブト』は、番組存続の生命線であるライダー商品の人気を回復させた成功作である。
 ただし、『カブト』はもっと大きな成功を成し遂げられる可能性を秘めていた。
 その可能性が秘められたまま終わってしまったことは、本当に惜しい。
 キャストオフという要素自体は本当に素晴らしく、「キャストオフのコンボ(複数の種類にプットオン可能、あるいは複数段階にキャストオフ可能)」という発展パターンも考えられる。
 『カブト』反省を活かし、その流れを汲む仮面ライダーが創られることを願いつつ、この記事を終えることにしよう。
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コメント

バッタは脱皮をしない

キックホッパーとパンチホッパーについては企画当初からキャストオフはしない事が決まっていたそうです(脱皮しない為)その代わり、コンビでありリバーシブル変身という特性を与えられた訳です。

バッタは脱皮しますよ

 バッタは羽化はしませんが、脱皮はします。
 ちなみに、サソリも同様です。

 企画当初はキックホッパーとパンチホッパーは別人ではなく、1人のライダーがそれぞれを使い分けるという設定だったとムックか何かに書いてありました。
「仮面ライダーホッパーには、キックフォームとパンチフォームがある」
というわけです。
 変身解除なしで、キックフォームからパンチフォームにフォームチェンジするところとか、観たかったです。

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 写真撮影時40歳。
 いい歳して云々といった決まり文句は私には通用しない。たった一度の人生、他人に迷惑をかけない範囲で楽しみます。