2017-10

WBC世界ミニマム級タイトルマッチ イーグル京和 VS ロレンソ・トレホ

第3回ワールド・プレミアム・ボクシング in 日本武道館
  WBC世界ミニマム級タイトルマッチ
         イーグル京和 VS ロレンソ・トレホ

  2006年の会場で観た試合:4回目
  観戦日:2006年11月13日(月)

 精密な機械ほど壊れやすい。
イーグル京和という精密機械は、対マヨール戦の勝利と引き換えに、壊れてしまったのではないか。
 そう思える程、この試合のイーグルは不調だった。

 確かに今回の挑戦者、ロレンソ・トレホは強者だった。42戦28勝14敗という戦績は、数字だけ見ると7位というランキングの割にはむしろ悪い内容に映る。
 しかし、その対戦相手を知れば、その負け数にも納得がいく。97年には1勝の後に3連敗を経験しているが、その相手は何とホルヘ・アルセ、ホセ・アントニオ・アギーレ、フェルナンド・モンティエルである。その次に1勝を挟んで、マシプレレ・マケプラに敗戦。これらの4敗のうち、モンティエル戦以外は全て判定負けである。何とも濃密な敗戦履歴ではないか。

 それでも、本来のイーグルであれば、対マヨール戦のときのイーグルであれば、こんな苦戦はしなかったに違いない。対マヨール戦を後楽園ホールで観戦した私の眼には、この日のイーグル京和はまるで別人に見えた。

 もっとも、私がイーグルが明らかにおかしいことに気付いたのは、2ラウンドが終わろうとしているときである。イーグルが棒立ちになっている場面が目に付きだしたのだ。もともとアップライトに構える選手ではあるが、余りにも「突っ立ている」感が強い。膝のバネが効いていない感じだ。

 3ラウンドに入ると、開始直後からイーグルのフットワークの悪さが気になるようになった。その時私は、トリニダードが復帰第1戦目でマヨルガと対戦した試合の第1ラウンドを思い出していた。あのときのトリニダードほどではないが、今リング上にいるイーグルも膝の動きが硬く、脚の運びがギクシャクしている。まるで、脚関節の潤滑油が切れて、ギシギシと音を立てて動いている感じだ。

 上から打ち下ろす右を当ててダウンを奪った後にラッシュをかけるものの、「一体ダウンしたのはどちらのボクサーだ?」と思えるほど、イーグルの動きが悪い。いつものスピードがないだけではなく、リズムに乗れておらず、パンチにも鋭さがない。

 4ラウンドに入ってもイーグルの動きは相変わらずで、私はもう彼が足首か膝か股関節か腰を痛めていると断定して試合を見ていた。
 私の後の席の客が、解説者気取りで「イーグルはディフェンスが良いから、安心して見ていられるねぇ」などと素人丸出しのことを言っているが、私の方はとてもそんな気分にはなれない。
 すると、リングの上でイーグルが右肩を軽く回すような仕草をした。
 肩か! 右肩を痛めているのか?! 以前痛めた肩は、右か左のどちらだっけ?
 私がそう思った次の瞬間、イーグルが右を強振した。
 右肩ではないのか? 確かに、肩を痛めてフットワークがギクシャクするというのも不自然だ。すると、背中か? 背中を痛めると、ギックリ腰同様の状態になることがあることを、私は自分の経験から知っている。

 イーグルは度々棒立ちの状態になるため、どうしてもボディのガードが空く。そこを狙ってトレホが有効打を何発も入れ、イーグルの意識がボディにいったところで今度は顔面に連打を決める。
 挑戦者が、試合の流れを掴みかけている。

 6ラウンドにイーグルがこの回2度目のダウンを喫したときは、
「イーグルは眼を壊しているのではないか?」
と思った。1度目のフックは打ち合いの中で貰ったパンチだったが、2度目のダウンの際には、見えているはずのパンチを無反応で喰ったように見えたからだ。
 過去、眼を壊していながら防衛戦を行ったチャンピオンが日本にいた。鬼塚や川島がそうだ。イーグルも、前回のマヨール戦で眼を壊し、それを隠してこの試合に臨んでいるのではないか?

 7、8ラウンドは、倒すことを意識し過ぎてボディを打たなくなった挑戦者に、チャンピオンが助けられた形になった。展開は一進一退で、採点は割れると思われた。
 こういうとき、オープン・スコアリング・システムは有効だ。
 中間発表されたスコアは、「75-74でチャンピオンを支持」が二人、「74-75で挑戦者を支持」が一人のスプリット。私は「74-75または73-76で挑戦者を支持」だったので、ちょっと意外だった。しかし、逆に言えば、このスコアならまだイーグルにも望みがある。

 9ラウンド目の展開は、オープン・スコアリング・システムが微妙に影響を与えていたように思う。イーグルが少し落ち着きを取り戻して上体を振るようになり、逆にトレホは少し慌てて攻め急いでいるように感じた。その結果、トレホのパンチに空振りが目立った。
 10ラウンドは、もうドロドロの乱打戦・消耗戦の様相を呈した。11ラウンドもその流れが続いたが、攻め疲れで失速したトレホにイーグルが連打を浴びせ、大きな山場を作った。私も
「詰めろ! ここで倒せ!」
と思わず絶叫。

 最終ラウンドも、オープン・スコアリング・システムの影響を受けていたと思う。
 イーグルが、この試合で初めて脚を使って戦おうとする。ポイントで勝っていると判断して、このラウンドを流そうとしているのだ。トレホは逆に、この回を10対9で取っても勝ちはないと思っているのだろう。守勢など微塵も見せず、前に出て手を出し続ける。
 イーグルが、いつぞやのフェリックス・シュトルムのように、徹底して脚を使って逃げ回らず、終盤は打ち合いに乗じたのは、彼の性格によるものなのか、その方がむしろ安全だと判断したからなのか。

 スコアは「113-112」が二人、「114-113」一人と、3人のジャッジが皆1ポイント差でチャンピオンを支持するという“薄氷のユナニマス・ディシジョン”。
 このスコアは、おそらくイーグル陣営の計算通りだったのではないか。
 ちなみに、私の採点では逆に1ポイント差で挑戦者の勝利(「112-113」)となっていたが、僅差のラウンドを1つ逆につけていたらチャンピオンの勝利(「113-112」)に変わる。ジャッジの下した判断は、適切な範囲内にあると思う。

 イーグルは、試合前に右の拳を痛めていたとのことだが、それだけではあのフットワークの悪さや棒立ちの姿勢だったことに納得することは出来ない。最悪の状態でも勝ったことは評価したいが、今後のイーグル京和に大きな不安を残す試合となったことも確かである。
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震電

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 写真撮影時40歳。
 いい歳して云々といった決まり文句は私には通用しない。たった一度の人生、他人に迷惑をかけない範囲で楽しみます。