2017-10

ミゲール・コット VS デマーカス・コーリー 他1試合

  WOWOW『Excite Mach』 
               2005年4月18日 20:00~ 放送分


     マーティン・カスティーリョ VS エリック・モレル

 試合前、フライ級から上がってきたモレルの方が、チャンピオンのカスティーリョよりも体格的に勝っていることが紹介される。リング上でも、確かにモレルの方が大きく見える。1ラウンドは、そのモレルがリーチ差を確認するかのように左ジャブを当てる。
 しかし、2ラウンドの後半辺りから、カスティーリョの手数が出始める。一発で倒すようなパワーはないが、数と技術がそれを補う。
 4ラウンド、カスティーリョはモレルに右腕をホールド気味に抑えられている状態から、左のみのコンビネーションで突き放してしまうという芸当も見せた。モレルも単発では良いパンチを入れるのだが、いかんせん数が少ない。
 12ラウンドが終わってみれば、ジャッジが3人揃って119-109というフルマーク寸前のスコアを付けてチャンピオンを支持。これぞ正しくユナニマス(全員が同意見、満場一致)・デシジョンといったところ。
 現在、全階級を通して最も層が厚いと言われているのはS・ライト級であるが、S・フライ級も粒が揃っている。前回の放送で登場したフェルナンド・モンティエル、イバン・エルナンデス、そして今回のマーティン・カスティーリョとエリック・モレル。日本の川嶋や徳山が、今彼らと互角のレベルにあるのか、直接対決で観せてもらいたい。


     ミゲール・コット VS デマーカス・コーリー

 2001年の後半から『Excite Mach』を観始めた私にとって、コットは最も感情移入の出来る選手だ。この試合も、どうしてもコットに肩入れして観てしまう。
 試合前の予想は、スピードならコーリー、パワーならコット。コーリーがヒットアンドアウェイで攻勢点を稼ぎ僅差でポイントアウトするか、それをコットが途中で捕まえて倒すかのどちらかではないか? しかし、地元開催、しかも超満員の会場というセッティングを見て、それがコットにどういう影響を与えるのか、一抹の不安が頭をよぎる。
 リングに上がったコットは、普段はポーカーフェースを被せている顔に、強い厳しさを貼り付けていた。それは厳しさを通り越して、むしろ怒りと言った方が良いかもしれない。いつものコットとは、様子が異なる。

 1ラウンドが始まると、スピードでもリーチでも勝るコーリーに対し、コットは自分から積極的に仕掛けていく。結果的に開始早々にフラッシュダウンを奪ったことでラウンドをものにしたが、力んで攻防共に雑になっている感は否めない。ゴング終了後、レフリーの体越しに一発見舞うところなどは、いつものコットではないことを如実に物語っている。

 2ラウンド、コットのパンチがローブローとなって1点減点。試合再開後、両者ともグローブを合わせる挨拶をしようとしない。
 コットが分りやすい前進を続けているため、コーリーは特に自分から足を使わない。相手を呼び込み、ハンドスピード差・リーチ差を生かしたカウンターを常に狙っている。そして実際に、サウスポーから放つ右フックが、1ラウンドから再三コットの顔面を捉えているのだ。ハンドスピードが速くてナックルの返りが間に合わないのか、コーリーのカウンターはオープン気味。コットはそれに助けられているとも言える。
 この回には、コットが不十分なポジションから強引にコンビネーションを繰り出してミスブローした間隙を突いて、コーリーが左フックがカウンターでクリーンヒットさせた。

 3ラウンドもコットは前進を続ける。
 今日のコットはポジショニングが悪いだけではない。いつもはコンパクトなパンチの軌道が、やや大振りになっている。そのため、右フックに右フックを合わせられるというパターンを何度もあった。
 そしてこの回、コットが遂に強烈な一撃を当てられてしまう。コットが、全く有効ではないポジションからワン・ツーを繰り出すという大きなミスを犯したためだ。コーリーが、コットのワン(左ジャブ)を僅かな移動で捌くと同時に右フックを放つと、これがカウンターとなってコットの左テンプルを直撃。コットのツー(右ストレート)は、誰もいない空間へと流れていく。
 コットはこの一撃であわやダウンかと思われたが、何とかコーリーの体にしがみ付く。しかし、ブレイクで仕切りなおしになった時点で、残り時間は2分以上も残っている。コット危うし!
 ここで、コーリーは一気に行かない。コットは、前回の初防衛戦でカウンターを決めてダウンを奪っている。そういったことを警戒しているのか、強引なラッシュを仕掛けない。相手のガードの隙間を狙って1発また1発と丁寧にパンチを打ち込む。慎重になっているとも、余裕を見せているとも取れる攻め方だ。
 何とかダウンを逃れたコットだが、さすがに前進する力はない。ひたすら退がり、コーリーのジワジワした攻めを耐え忍ぶ。3分間ほぼ全般に渡って攻め込まれ続けたものの、コットはこのラウンドを凌ぎ切った。

 4ラウンド、1分間のインターバルでかなりのところまで回復したコットは、再び前進に転じる。ただし、3ラウンドまでのような強引な攻めには出ない。ガードを固め、自分の距離(または自分のポジション)に入るまでは手を出さない。相手の距離にいるときに、ガードの上をうるさく連打されても、その場所からは手を出さないのだ。
 「コットの距離」とは、コーリーにとっては近すぎて右フックを奔らせることの出来ない距離である。逆の見方をすれば、コットはガードを固めたまま「コーリーの距離」を突破してしまうのだ。このため、コーリーの右フックがコットのガードにブロックされたり、コットの肩の後ろに廻り込んでしまうことが目立ってきた。
 コーリーが突然カウンターを取り難い状況になったことと、彼があからさまなローブローを放ったことは、無関係ではないだろう。

 5ラウンドに入ると、コットは完全に本来の自分を取り戻す。
 ガードを固めたコットは、コーリーがリーチとハンドスピードを生かすことが出来なくなる距離まで接近すると、その距離でコンパクトなパンチを上下に打ち分ける。コーリーも反撃するが、ナックルパートを強く命中させることが出来ない。後退しながら放つパンチは、そのほとんどがガードの上を叩くだけで終わる。
 コーリーが嫌がっているのが伝わってくる。メイウェザー戦では、根性を剥き出しにして12ラウンドを戦い抜いたコーリーが、今は5ラウンド目にして嫌々試合を続けているように見える。ロープを背にして上体を起こされてしまったコーリーが、上下のコンビネーションを喰らってしゃがみ込むようにダウンしたとき、事実上この試合は終わっていたのかもしれない。
 このラウンド2度目のダウン直後にTKOを宣告されたコーリーは、リング上で憤懣やるかたないといった表情を見せた。しかし、その眼には、既に闘志は宿っていなかった。コーリーの心にわだかまっていた怒りは、判定を下したレフリーや対戦相手のコットに向けられたものではなく、決定的な一打を受けていないのにロープの上に座り込むところまで戦意を失っていた自分自身に向けられたものだったのではないだろうか。口を真一文字に結び、やり場のない眼差しを彷徨わせているコーリーの様子は、見ているこちら側も切ない気持ちにさせられた。

 結果論ではあるが、3ラウンドに2分以上を残していながら詰めきれなかったコーリーと、5ラウンド残り30秒から詰めきったコットの差が出た形となった。
 また、サウスポーのコーリーが右フックでコットのボディの左側を打つことが多かったことに対し、コットは左フックでコーリーのレバーを叩いてダウンに繋いだ。このボディブローの差も、勝敗を分ける一因だったと思う。
 勝ったコットも、表情は厳しかった。この苦戦を制したことで、プエルトリコの若武者がまた一つ成長したことは間違いない。しかし、減量苦が伝えられるコットは、果たしていつまでこの階級にとどまっていることが出来るのだろうか? 彼は、黄金期を迎えているS・ライト級の真の頂点へと登りつめることが出来るのだろうか?
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震電

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 写真撮影時40歳。
 いい歳して云々といった決まり文句は私には通用しない。たった一度の人生、他人に迷惑をかけない範囲で楽しみます。