2017-08

「アイドルの損益分岐点」とか、ちょっと気にしてみる

「アイドルの損益分岐点」とか、ちょっと気にしてみる


 モー娘。のCD売り上げは、ドン底だ。
 ベリ工(Berryz工房)は、そのドン底のモー娘。にさえ及ばない。
 ベリ工は勿論、モー娘。も(知名度を別にして)、現時点での「人気アイドル」とは呼べないのではないか。

 そういう見方がある一方で、
「モー娘。もベリ工も、最初からこの程度の売り上げを目標にしているのではないか。だとすれば、現在はその目標値をクリアしており、順調な状態にある」
という見方も出来る。
 モー娘。が一時期ミリオンを叩き出していたのは全くの想定外であり、何かの間違い。今のモー娘。こそが、「当初計画していた、本来あるべき姿」なのかも知れない。

 商売なのだから、黒字になれば良い。大きく儲けようとすれば赤字のリスクも大きくなるが、小さく儲けようとすればリスクも小さくて済む。会社を大きく成長させることを目標とせず、10年後も20年後も現状を維持できるよう、手堅い商売を継続するというのも経営方針としては当然有りである。
 ここで断っておくが、私はエンジニアであり、いわゆる事務系の仕事は苦手だ。そんな私が「アイドルの損益分岐点」という響きの良さにまかせて、数字をひねくりまわすのは僭越である。とんちんかんなことも確信犯的にやってしまうだろう。この記事は、飽くまでも「ど素人が電卓を叩いてみました」程度のものである。

 では早速、数値が比較的安定しているベリ工を例にとってみよう。ベリ工の場合、次のような売り上げ目標値が設定されているとしたら、「現状で、ほぼ目標を達成しており、順調」ということになるのではないか。
(1)シングルCD … 2万枚(単価1000円)を年4回
(2)シングルV … 1万枚(単価1000円)を年4回
(3)アルバム … 1万枚(単価3000円)を年1回
(4)シングルV以外のDVD … 1万枚(単価3000円)を年2回

 売上額は、次のようになる。
(1)シングルCD … 8000万円/年
(2)シングルV … 4000万円/年
(3)アルバム … 3000万円/年
(4)シングルV以外のDVD … 6000万円/年
※合計 2億1000万円/年 (15万枚/年)

 売り上げ枚数が1万枚から2万枚で安定していると、「こんなものか」と思える数字になる。一人当たりにすると3000万円/年。自動車のセールスマンの売り上げと比較すると、どうなんだろう? もちろん、ベリ工はレコード(ディスク媒体の意。以下省略)以外でも売り上げがあるのだが。

 ダウンタウンの松ちゃんが、ナッチが盗作問題で謹慎していることに関して「歩合制ではなく月給制だろうから、経済的には全然困らないのではないか」と雑誌に書いていたことから、ベリ工も月給制であると仮定する。月給100万円で賞与はないとすると(アイドルがサラリーマンみたく夏冬にボーナスを貰うのって想像できない)、1200万円×7人=8400万円。
 ベリ工の給料を出しているのはアップフロントエージェンシーなのだろうが、「ベリ工という“商品”の損益分岐点」を論じようとすると、アップフロントグループが統括しているグループ会社全体で考えなければならない。
 レコードの売上高から差し引かれるものとしては、以下のものが挙げられる。

・販売店関連費(流通・保管コスト含む)…30%
・レコードプレス他(ケース、ジャケット含む)製造費…10%
・宣伝費…10%
・著作権印税(作詞)…2%
・著作権印税(作曲)…2%
・著作権印税(音楽出版社)…2% →ただし、これはグループ内の収益となる
・原盤印税…10% →ただし、これはグループ内の収益となる
・歌唱印税…2% →これも多分グループ内の収益となる

 ベリ工のレコードは、原盤権をグループ会社が所有しているので、原盤印税等はそこに入ってくる。グループ会社全体で考えた場合、ベリ工のレコード年間売上額2億1000万円のうち、約半分は「利益」として入ってくると考えて良いのではないか。
 レコード売上高の数字からして、有効桁数などあってないようなものだが、一応ここに出した数字をそのまま代入して計算すると、
              2億1000万円×0.46=9660万円
がグループ会社全体の手元に入ることになる。(ちなみに、作詞作曲を担当しているつんく♂は、2億1000万円×0.04=840万円 を得ることになるのか?)

 ただし、ここではベリ工が月給制であると仮定しているので、レコードの製造費には、ベリ工のギャラは含まれていない(衣装等の製造費は含まれている)ものとする。つまり、9660万円から「純然たるベリ工の経費」を差し引いた金額が、会社の利益となる。
 ベリ工の経費としては、ベリ工のみの人件費が8400万円。ベリ工が抱えているマネージャー1名が年収1200万円として、これを加えると9600万円。
 レコードという「科目」だけを考えると、ベリ工という「商品品目」の利益額と経費は
              利益額:9660万円、経費:9600万円
と、ほぼ同額となる。
 ベリ工とは、CDやDVDをリリースするたびに1万枚~2万枚コンスタントに売れていれば、それだけでほぼ採算が取れる「品目」なのである。

 これを、「レコードという科目における損益分岐点」という形で表現しようとすると、「レコードという科目における変動費」を出しておく必要がある。ここでは便宜的に固定費をゼロと見なす。
       利益=売上高-変動費-固定費
     ∴ 変動費=売上高-利益-固定費
          =2億1000万円-9660万円-0万円
          =1億1340万円

 これで数字が揃ったので、改めてベリ工の「レコードという科目における損益分岐点」を計算してみよう。
・ベリ工の固定費…9600万円
・ベリ工の変動費…1億1340万円
・ベリ工の売上高…2億1000万円

       損益分岐点=固定費/限界利益率
            =固定費/(1-変動費率)
            =固定費/(1-(変動費/売上高))
            =9600/(1-(11340/21000))
            =9600/(1-0.54)
            =9600/0.46
            =20870
 有効桁数を2桁とすると、
 ・ベリ工の「レコードという科目における損益分岐点」…2億1000万円
となる。
 仮定の段階で変動費率を0.54としているので、これは表現を文章から数式に変えたようなものである。ただ、現時点のベリ工のレコード売上がちょうど損益分岐点上にあり、これから売り上げが上乗せされれば、その分が丸々利益となっていくという実感は掴めると思う。

 前述したように、ベリ工の売上はレコード以外にも存在する。言うまでもないが、チケット売上とグッズ売上がそれだ。
 中野サンプラザで5000円のチケットが完売(2222枚)すると、1111万円のチケット収入が得られる。施設の使用料は意外に安くて、付帯設備をあわせても150万円程度程度である。他の経費を合わせても、1000万円以上になるとは考えにくい。1回のコンサートで、チケットだけでも数百万円の利益を上げていると考えるのが自然だ。
 また、コンサートではグッズの販売も行なわれている。2000人が、一人平均2000円のグッズを購入して、その80%が純利益となるのなら、その金額は320万円となる。

 1回のコンサートでチケットから得られる利益が500万円、グッズで320万円、計820万円だと仮定しよう。それが年8回行われると、6560万円/年の利益が出ることになる。これは、レコード売上から得られる利益額の約70%に相当する。二つを合計すると、
      利益額:1億6220万円、経費:9600万円、差額:6620万円の黒字
ということになる。
 ここでも先程と同じやり方で、ベリ工の「コンサート&グッズにおける損益分岐点」を計算しておこう。なお、通販でのグッズ売上高はエイヤでも決められない(想像がつかない)ので、除外した。

・ベリ工の利益…6560万円
・ベリ工の売上高…8000万円+3200万円=1億1200万円
 (チケット=5000円×2000枚×8回、コンサート会場グッズ=2000円×2000人×8回)

       変動費=売上高-利益-固定費
          =1億1200万円-6560万円-0万円
          =4640万円

       損益分岐点=固定費/(1-(変動費/売上高))
            =9600/(1-(4640/11200))
            =9600/(1-0.41)
            =16271

 有効桁数を2桁とすると、
 ・ベリ工の「コンサート&グッズにおける損益分岐点」…1億6000万円
となる。
 ベリ工の固定費を全額配賦して計算しているため、現在は損益分岐点以下、即ち「コンサート&グッズの売り上げだけでは、ベリ工は赤字」という結果になった。しかし、損益分岐点が手を伸ばせば届くところにあるのは、ちょっと驚きである。
 数値は、一定の範囲では開催回数に比例するだろう。8回/年を12回/年にすれば、1.5倍。売上高は、1億1200万円×1.5=1億6800万円 となり、ほぼ損益分岐点に乗る。
 2倍の16回/年にすれば、2億2400万円-1億6000万円=6400万円 の黒字になるのだ。

 レコードから得られる利益と、コンサート&グッズから得られる利益を合わせると、
      利益額:1億6220万円、経費:9600万円、差額:6620万円の黒字
となる書いたが、この「6620万円の黒字」で、ベリ工やベリ工のマネージャーを除くアップフロントの社員の人件費を払ったり、会社に借金があるのならその利子を払っていくことになるわけだ。年収500万円の社員の人件費は1500万円であるとも聞く。だとすると、現在のベリ工が4人程度のスタッフ(営業とか経理とかも含む)で支えられているならば、会社にとって採算が取れているということになる。
 ベリ工という「商品品目」の固定費には、こうしたスタッフの人件費を配賦するべきなのだろう。

 相当大雑把ではあるが、この記事では、一応こう結論しておく。
(1)ベリ工は現状でもギリギリではあるが採算が取れている。(ちょうど損益分岐点上にある)
(2)よって、現状から売上が伸びれば、それがそのまま黒字となる。



 ℃-uteはメンバーが1人多いので、その分ベリ工よりも固定費が多く、損益分岐点が高くなっている可能性がある。
 モー娘。も現状で1人多く、更に増やそうとしている。しかし、これは裏を返せば、モー娘。の現状の売上が、1人や2人の固定費増には耐えられるレベルにあるということなのではないだろうか。今回のベリ工に関する私の計算は、一応そのことを裏付けていると思う。8人が10人になっても、マネージャーが1人増えるわけではないし。

 モー娘。が10人から8人になったことで固定費は減るが、グッズの売上もほぼ確実に減るだろう。こんこんのグッズを買っていたファンが、その予算をそのまま残存メンバーのグッズ購入に振り向ける可能性は決して高くないからだ。
 もちろん新メンバーを加入させても基本的には同様のことが言えるのだが、「減ったメンバー分の売上を取り戻す」可能性としては、残存メンバーよりも新メンバーの方が高いだろう。私の場合、大きなタイムラグがある特殊な例と言えると思うが、「こんこんの卒業が決まってから、小春の商品を買うようになった」のだ。もし小春が加入していなかったら、私の「こんこんの分の予算」は、完全に宙に浮いていた筈だ。

 最後に、アイドルが月給制であることについて。
 アイドルが月給制だと、ファンの側にもメリットがあると思う。歩合制だったら、中野サンプラザで行なわれる『エルダー』とか『ワンハー』は、ギャラが嵩んで会社側の利益が小さくなってしまう。そういうイベントを、会社はやろうとしないだろう。
 あるいは、チケット代が人数に比例して高くなり(現状でもその傾向がない訳ではないが)、ファンは購入に二の足を踏むだろう。例えば、『ワンハー』のチケット代が15000円だったら、私は買わない。
 意外なところで、ファンと経営者の利害が一致しているようで、ちょっと面白い。
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コメント

ペイしているというのは意外でした

 初めまして、ひかりと申します。GoogleでCDの売り上げがどのくらいでペイするものなのか彷徨っていたらこちらに辿り着いた次第です。しかもハロプロ関係の試算という事で興味深く拝見させて頂きました。管理人さんの試算で娘。が現状の売り上げでペイしているというのは意外でした。ちなみに彼女達の報酬の支払われ方は月給制だと思います。何年か前に娘。たち本人がテレビでそう発言していたのを見ました。(事務所で言わされているとすれば話は別ですが(汗))長々と書き込みましてすみませんでした。

素人試算ですが…

 ひかりさん、コメントありがとうございます。
 ちなみに、(推定を重ねた上での素人考えですが)ほぼ採算が取れているとソロバンを弾いたのはベリ工に関してであって、娘。ではありません。
 ハロプロメンバーのギャラが月給制か歩合制かに関しては、わりと最近の『うたばん』で、℃-uteの萩原舞さんが歩合制という言葉をしらなかったことからも、少なくともメジャーな活動をしていメンバーは月給制であると私も思っています。

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 いい歳して云々といった決まり文句は私には通用しない。たった一度の人生、他人に迷惑をかけない範囲で楽しみます。