2017-10

「映画鑑賞」って、「映画館で観る」ってことだよね?

「映画鑑賞」って、「映画館で観る」ってことだよね?

 日本の文化をハイカルチャーとか大衆文化なんて区分をしている人は、脳ミソに士農工商の時代の味噌でも詰まっているんじゃないかと思う。日本が再び士農工商の時代に逆戻りでもしない限り、日本の文化は「古い文化」と「新しい文化」そして「その中間」の3つにでも区分けすれば充分である。

 ただし、
「趣味は映画鑑賞です」
と聞けば、「それって映画館で観るってことだよね」と思うし
「趣味は読書です」
と聞けば、「それって漫画は含まれないよね」と思う。
 これは別に、お茶の間で映画を観る行為や、漫画というジャンルを1段低く見ているわけではない。

 映画を映画館で観ることが少ない映画ファンは、
「趣味は、DVDで映画を観ることです」と言うべきだと思うし、
 漫画以外の本を読むことが少ない漫画ファンは、
「趣味は漫画を読むことです」と言うべきだと思う。
 貴賎の問題ではなく、純粋に区分するする必要があると思うのだ。限定表現できる部分は、出来るだけそうしていかないと、一つ一つの言葉の意味が薄くなる。言葉は浸透させても良いが、拡散させるべきではない。

 区別するということは、両者に違いがあるということだ。
 「読書」に関しては、実際に「漫画を読む」作業と「小説を読む」作業とでは、やっていることが違うのだから一緒くたにすることには無理がある。「漫画を読む」という作業は、読書よりもむしろ映画を観る作業に近い。通常の洋画でも、吹き替えでない場合は常に
「映像を見ながら字幕を読んでいる」のだ。漫画も
「絵を見ながらフキダシを読む」のである。
 漫画の本(書籍)という物理的な体裁と、それに収められている情報を人間が認識処理する際のスタイルの不一致を上手く補完する言葉は、今のところ存在しないようだ。「読」の代わりに、「言見(言偏に見)」という文字を用いる等すれば良いと思うのだが。「言見」+「む」で“よむ”と発音し、「言見」+「画」で“けんが”(「読」+「書」の代わり)と発音するという具合である。

 次に、「映画鑑賞」について。
 映画は、劇場のスクリーンで観ることを絶対条件として作られている部分があり、お茶の間のTVではその部分を観ることが出来ない。私がそのことを最初に知ったのは、劇場版『宇宙戦艦ヤマト』のプロデューサーのインタビュー記事を読んだときである。
「スクリーンで見ると、遠くの戦艦も砲塔や艦橋まで細かく描き込んであるのが分かるでしょう。これをTVで見たって、(映像が潰れてしまって)ただの豆粒にしか見えませんよ」
 当時中学生だった私はこれを読んで「ああ、映画は劇場で観なければ、本当に観たことにはならない」と思い知らされた。「映画鑑賞」という従来は劇場限定であった行為と、TVで映画を観る行為とは分ける必要があるという考えは、こうした物理的な現象(事実)に基づいている。

 ただし、
「それなら“音楽鑑賞”は? 家でCDを聴くことを“音楽鑑賞”と称すことの是非は?」
と聞かれると、返答に窮する。自宅の安物のCDラジカセによるものであっても、ちゃんと椅子に座り、落ち着いてじっくりと音楽に耳を傾けていれば、音楽鑑賞と呼んでも良いように思える。しかし、これは映画鑑賞の定義と矛盾する。困ったものだ。
 少なくとも自分の行為に関しては、家でCDを聴くことを「音楽鑑賞」と言わないようにしよう。

 終わりに、人類の文化全体について。
 中学生の頃、私は既に人類の文化が本質的に2種類に分かれていることを知っていた。そして、その「分かれかた」(あえて分類方法とは言わない。何故なら、分類しなくても、本質的に分かれているからだ)を理解できない人が多数いるであろうことも認識できた。その「分かれかた」とは
「SF以外とSF」
である。もう少し噛み砕いて言えば
「人間性に帰結する感動であるか、必ずしもそれを必要としない感動であるか」
となる。
 SFファン以外には理解不能だとは思うが、私の文化に対する認識の根幹・大前提である。
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コメント

 映画は映画館で上映することが前提でDVDはいわば余禄ですが、音楽はライブが前提で……と言えるかどうかは微妙ですから、CDで聞くこと自体は別に「音楽鑑賞」で構わないのではないでしょうか。
 クラシックヲタから言わせてもらえば、クラシックは「見せる」のが基本ですから、CDで聞くことをクラシック鑑賞というのはちょっと問題あり、という気はしています(笑)。

 なのこえさん、鋭い!

>音楽はライブが前提で……と言えるかどうかは微妙ですから、
 
 確かに、「CDでなければ造り込んだ音を聴けない」という場合もある…んでしょうか。いや、「ライブでも口パク有りだから」とかいう話ではなくて。

 それにしても、クラシックヲタですか…なのこえさん恐るべし。

いい問題提起だ

たしかに映画鑑賞は映画館だ。
ヤマトを例にしての説明は実に説得力があった。
たんに制作者サイドの映画館に来てとは、違った意味である。
たぶん自分では自宅でDVDを見ても「映画鑑賞」と言っていたと思う。
そして、音楽鑑賞。
コンサートホールで聴くクラッシックとラジカセで聴くアニソン・特撮。
これは難問だと感じる。
答えを出すのは、ずっと先になるだろう。

Re:いい問題提起だ

 なのこえさんの指摘された通り、クラシックの「見せる」要素は外すことが出来ないと思います。
 一番分かりやすいのは、指揮者。指揮者カラヤンの熱いパフォーマンスを見ずして、カラヤンの音楽を鑑賞したと言えるのでしょうか?
 ん? それなら、クラシックコンサートのDVDを、5.1チャンネルのAV環境で視聴したら「鑑賞」になるのか?
 謎は深まるばかりです。

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 写真撮影時40歳。
 いい歳して云々といった決まり文句は私には通用しない。たった一度の人生、他人に迷惑をかけない範囲で楽しみます。