2017-08

『東京原発』

『東京原発』
  2005年(4月17日~)のWOWOWで観た映画:1本目
  映画を観た日:2005年4月17日(日)

 ちょっとだけ期待して観たのだが、ハズレだった。
 まず、映画として失敗している。
 「東京に原発を誘致する真の目的は、実はそれによって日本全体に脱原発の世論を起こすため」という“オチ”に相当する部分が、映画の途中で明かされてしまう。推理小説において真犯人が明かされたのも同然で、ここで、この映画は事実上終わっている。
 そこへ「東京に原発を誘致する」というテーマとは全く関連のない「核ジャック」の話が付け足される。この核ジャックの件は作りが余りにも稚拙で、リアリティの欠片も無い。子供番組でも、もう少しマシなパターンが出てくるのではないかと思えるほどの酷さだ。
 この繋ぎの失敗は致命的で、多少見応えのあった前半部分での貯金が、これで根こそぎ持っていかれてしまった感じである。

 そして、前半の「原発に関する議論」の部分でも失敗している。多少見応えがあったのは、飽くまでも役者の芝居やその演出であって、議論の内容自体が充実していたわけではないのだ。
 とにかく、肝心の原発プランに説得力が乏しい。原発誘致で電気料金を安くするとか言っている割には、原発の発電出力を明らかにしない。こういう話は「どれだけの発電出力があれば、どれだけ電気料金が下げられるのか」という試算が明示されなければ納得できない。しかし、知事の説明にはそういった具体性が全くないのだ。第一、既に日本各地に原発は実在するのだから、その所在県の電気料金が格安になっているという話が出てこなければ不自然ではないか。
 また、東京都民でなくても、東京湾に面した火力発電所が実在することを知っている人は多いだろう。新宿中央公園に原発を一基造っただけで莫大な経済効果があるのなら、この既設の火力発電所にも同等(冷却水を東京湾から得ているので、新宿中央公園の原発よりも遥かに低コストで運転できている)の経済効果がなければいけない。さあ、実際はどうなのか?
 廃熱を利用するという話が出ていたが、温排水を(温度を保ったまま)遠距離まで引き回せないことなどは素人でも気が付くだろう。「熱エネルギーは、そのままでは遠距離へ伝送し難いから、電気エネルギーに転換している」ということは、常識だと思うが。

 この映画が、ツッコミ前提のお笑い映画ならこれでも良いかも知れないが、そういう作風にはなっていない。「東京に原発を誘致したら、本当に大きな経済効果があるのか」という根本的な疑問を残して、物語は一般的な「反原発」論へと向かっていくのだが、この部分も普通に見れば真面目にやっているとしか見えない。内容的にはボケをかましていると受け取れる部分が多々あるのだが、雰囲気的にはそう捉えにくい。

 わざわざレンタル屋で借りなくて良かったなと思ってしまう、そんな失敗作であった。
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震電

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 写真撮影時40歳。
 いい歳して云々といった決まり文句は私には通用しない。たった一度の人生、他人に迷惑をかけない範囲で楽しみます。