2017-10

『仮面ライダーカブト』考2.1 “色とモチーフ”の失敗

『仮面ライダーカブト』考2.1 “色とモチーフ”の失敗


 TV版『カブト』は“色とモチーフ”に関して成功しているが、劇場版『カブト』は“色とモチーフ”に関して失敗している。
 これは、『響鬼』がTV版では“色とモチーフ”に関して失敗しており、劇場版では“色とモチーフ”に関して成功していることの、ちょうど反対のパターンである。

 劇場版『響鬼』は雑な造りではあったが、“色とモチーフ”に関しては成功していた。
 劇場版の5人の鬼と比べると、TV版の3鬼の地味なこと地味なこと。パッと見では、ヒーロー5人と脇役3人である。ある程度寄った絵になると、光沢のあるTV版3鬼は質感が1ランク高級に見えるが、それはパッと見の地味さを補うほどのものではない。スクリーン上での見栄えの良さ、その基盤となる“色とモチーフ”においては、劇場版の鬼がTV版の鬼を圧倒していた。
 また、鬼が繰り出す必殺技に関しても、劇場版の鬼はTV版の鬼とは異なる独自の技を持っており、完全に差別化されていた。TV版の設定との整合性を欠く雑な音撃ではあったが、派手さと分かり易さはTV版以上であり、「TVでは見たことのない必殺技が炸裂」というお祭り的な面白味は確かにあった。

 これに対して劇場版『カブト』は、ひよりを軸にしたドラマ(主人公の行動原理とそれによる展開)を最後まで押し通し、ストーリーにおいては強引ながらもTV版との整合性を見せるなど、物語の造り自体は劇場版『響鬼』より優れていた。「所詮、新フォームの先行お披露目フィルム」に終わるのではなく、ちゃんと一つの作品として曲がりなりにも自己完結しているという点は評価したい。
 しかし、劇場版の3人のライダーは冴えなかった。色は一応、金・銀・銅と、メダル3色で揃えているが、これが余り見栄えがしない。TV版のライダーと一緒に映ると、むしろ地味ですらあった。そして何よりもパッと見で「これが劇場版ライダーだ!」というインパクトに欠けていた。

 劇場版の3人のライダーがインパクトに欠ける存在であったのは、彼らに個性が乏しく、TV版のライダーに対する充分な対比が成されていなかったからである。(キャストオフしないというのは、差別化ではなく単なる手抜きだ)
 
 私だったら、ライダーフォーム時に、より昆虫のモチーフを強く出すことで個性を出す。端的に言えば、より本物のカブトムシっぽくする。
 例えば、コーカサスはマスクドフォームでは金色ベース。デザインは(右肩も含めて)カブトと全く同じ。マスクドフォームでは、逆にカブトとそっくりであることを強調するのだ。
 ライダーフォームでは、明るい感じから一転して黒光りする漆黒のボディとなる。腕のアーマーも漆黒で同色の小さなトゲトゲが並んでおり、まさに一般的なカブトムシのイメージ(ただし、スーツは金色がベース)。カブトと全く同じデザインの顔に、漆黒の三叉のホーンが被さることにより、カブトとは全く異なる顔が生まれる。そして
「チェンジ、コーカサスビートルゥ」
と、例の電子音声が流れるわけだ。

 ヘラクスも、ヘラクレスオオカブトっぽくする。ボディアーマーはメタリックシルバーがベースで、そこにヘラクレスオオカブトのような斑点模様を入れるのだ。ヘラクレスオオカブトのイメージを付与すると共に、昆虫的な模様が明確に入っているライダーはTV版には登場していないことから、彼らとの差別化が図られる。
 アーマー以外のスーツもシルバーメタリックベースで、手足を含めた全身がほぼ銀色。腕にカブトムシの爪を連想させる小さなスパイクが並んでいるのはコーカサスと同じ。
マスクドフォームは艶消しの濃いグレーがベースで、コーカサスと同様カブトに酷似している。

 ライダーフォームに関しては、
・コーカサスは、スーツ部分は金色、頭部とアーマー部分が漆黒の黒光りするライダー。
・ヘラクスは、ほぼ全身がシルバーメタリックで、銀ピカのライダー。
劇場版のライダーは、この金銀豪華、かつ明暗(暗明)のコントラストが効いた二人で良い。

 二人ともマスクドフォーム時は「色違いのカブト」だが、キャストオフすると「カブトとは全くの別人」に変わる。これはある意味、動的な対比だ。
 そして、その二人が並んで立っていること自体がコントラストとなる。これは静的な対比だ。
 カブトのキャストオフに続いてコーカサスとヘラクスがキャストオフすると、この二重対比の構図が出来上がる。映画の見せ場として、充分に機能すると思う。

 コーカサスとヘラクスは、キャストオフ直後、背中からカブトとは異なる固有の武器を取り出す。この武器を肩または胸あるいは肘または膝にセットすると、それが必殺技を発動させるパーツとなる。もちろん、コーカサスもヘラクスも、TV版のライダーとは全く異なるオリジナルの必殺技を披露するのだ。
 TVでは見たことのないライダーの、オリジナルの必殺技が炸裂する。これもまた、劇場版の見せ場の一つであろう。
 サビーやドレイクがやられるにしても、コーカサスやヘラクスのオリジナル必殺技で派手にやられるという“華”がなければいけないと思う。「劇場版ライダーのオリジナル必殺技」×「TV版ライダーが倒される」という文字通りの相乗効果で、客に強くて説得力のある衝撃を与えるのだ。

 これに加え、実際の劇場版にあった「カブトやガタックが、クロックアップしても圧倒されてしまう」という衝撃の映像が後半早々に公開されれば、「一体この先どうなるんだろうか(カブトやガタックはどうやって勝つんだろうか)」と、子供でも喰らいついてくる展開が作れたのではないだろうか。ちなみに、TV版のカブトは、マスクドフォームのままでクロックアップしたワームを倒したことがあるのだ。
 ひよりをドラマの軸にするのは構わないが、実際の劇場版には、そういったヒーロー中心のバトルで引っ張るという部分が少な過ぎた。おそらく児童誌の前宣伝では3人の劇場版ライダーが大きく取り上げられていただろうから、それを期待して観に来た子供たちにとっては、裏切られた格好になったのではないか。

 劇場版『カブト』が“大人の鑑賞に耐え得る”作品だとは思えない。しかし、そんなことよりも重要なのは、言うまでもないが“子供の鑑賞に耐え得る”作品かどうかということである。
 ストーリーが完全には理解できなくても、人間ドラマが何となくしか理解できなくても、起承転結の大まかな流れが掴めて、ハイレベルなヒーローのバトルが一定間隔で展開される作りになっていれば、子供にも映画を充分に楽しむことが出来るはずだ。劇場版ライダー作品として最も重要であるこの点に関しては、劇場版『カブト』は最低レベルであったと言わざるを得ない。

 「SFっていうのは、“絵”だねぇ」というのは野田大元帥の言葉だが、「ヒーローっていうのは、“絵”だねぇ」と私は思う。ヒーロー番組においてテーマやストーリーはもちろん重要だが、パッと見のカッコ良さや、ポーズやアクションのカッコ良さも同じくらい重要である。
 「パッと見のカッコ良さ」は、デザインとともに色という要素が大きく作用する。劇場版『カブト』の3人の劇場版ライダーに魅力が乏しかったのは、ストーリー上の流れもあるが、“色とモチーフ”に関して失敗していた点も大きいと思う。TV版では成功している要素だけに、そこが残念でならない。
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震電

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 写真撮影時40歳。
 いい歳して云々といった決まり文句は私には通用しない。たった一度の人生、他人に迷惑をかけない範囲で楽しみます。