2017-08

『仮面ライダーカブト』考2 “色とモチーフ”の成功

『仮面ライダーカブト』考2 “色とモチーフ”の成功


             『響鬼』の失敗と、私の誤り(勘違い)

 『響鬼』が最終回を迎えた数日後、私は 『剣』のDVDの最終巻をBGMならぬBGVにして、“平成ライダーシリーズ考 ~『クウガ』から『響鬼』まで~” という記事を書いていた。
 そして私はハッと気付いた。『響鬼』のオロチの件で、「関東11鬼を一人でも多く(同一現場に)登場させて欲しい」と書いたのは誤りだった、と。
 実は、全く逆なのだ。「関東11鬼を、同一現場に5人以上同時に登場させてはいけない」だったのだ。

 このことは、『響鬼』新オープニング映像を見て直感的には気付いていたのだが、それが具体的な思考にまで反映されていなかった。どこかで、「劇場版の8鬼」のイメージを誤って「TV版の関東11鬼」にダブらせていたのだろう。
 そう、新オープニング映像を見たのなら、分かっていたはずだ。
 関東11鬼を全員集合させたところで、『剣』における“ダークローチの群”と視覚的に大差ないということを。あんな黒っぽいキャラクターを11人も集めたところで、見栄えなどするわけがない。それどころか「みんな黒っぽくて、テカっている」ことから、ダークローチよりも更にゴキブリの群れっぽく見えてしまうだろう。

 失敗作となった『響鬼』の次に作られた『カブト』が成功作になれたとしたら、その違いの一つに、ライダーの“色とモチーフ”において失敗しているか成功しているかということが挙げられると思う。
 そしてそれは、『ガンダム』(1作目)の成功の基本的な部分とも共通する。

             『ガンダム』1作目は色彩でも成功していた

 『ガンダム』の1作目は、いわゆるリアル路線ロボットアニメの第1号であり、アニメ界全体を見渡してもエポックメイキングな作品である。シリーズとしての歴史も長く、全体の人気としては『仮面ライダー』シリーズをも凌駕しているだろう。
 その『ガンダム』1作目における「色の法則」は、こうだ。

・主役キャラクターは、派手な色で差別化する。
・脇役キャラクターは、地味目な同系色でまとめる。

 ガンダムは「白を基調とし、赤・青・黄(色の3原色)を配色」という派手なカラーリンがなされている。これを劇中で「テスト用の機体なので敢えて目立つ配色にしてあった」と説明したとしても、すぐに実戦に即した地味な色に再塗装されなければおかしい。しかし、実際にはそういう説明もなければ、ガンダムが地味な色に再塗装されるということもなかった。1作目はリアル路線であったにも関わらず、そういった「リアルな考証」よりも「絵的な見栄え」を優先した色彩設定を採用したのである。

 もしもガンダムが、通常タイプのザクのように、地味目な同系色でまとめられていたら、どうなっていただろうか? 『ガンダム』1作目や以降のシリーズが、今のような人気を得ることが出来ただろうか? ここで、
「通常タイプのザクが人気キャラクターになったのだから、ガンダムが通常タイプのザク同様のカラーリングであっても、今と同じ人気が出ていたはずだ」
と考えるのは大間違いである。
 通常タイプのザクは、量産兵器であるから、あのカラーリングで良いのだ。「量産タイプの名脇役」として相応しいあのカラーリングが、ザク人気の理由の一つとも言える。
 しかし、ガンダムは量産タイプではないし、脇役でもない。番組のタイトルにもなっている主役キャラクターなのだ。

 当時、『マジンガーZ』に始まるスーパーロボットアニメを見て育った世代が「従来の勧善懲悪のロボットアニメには飽き足らなくなった層」として潜在的に存在していたことは事実だ。しかし、彼らは決してミリタリーマニアではなかった。飽くまでも、「アニメを含めた良質の娯楽を求める一般層」のうちの最若年層であったのだ。
 『ガンダム』1作目は(紆余曲折はあったが)、その一般層を掘り当てた。そのためには、ミリタリーマニアではなく、一般層にアピールする「色」が、主役キャラクターにも必要だったということだ。

 もしもガンダムが、通常タイプのザクのように地味目な同系色でまとめられていたら、後に起こる“ガンプラ・ブーム”も含め、今のようなガンダム人気は存在していなかったに違いない。
(『ガンダム』の後に作られた、よりリアルなロボットアニメである『ボトムズ』のような人気は得られていたかも知れないという考えも、そもそも『ボトムズ』も『ガンダム』の成功があってこそ生まれたわけであるから、一種のパラドックスである)
 いわゆるリアル路線であっても、「主役キャラクターを派手な色で差別化する」ことは重要なのだ。

               『カブト』における“色とモチーフ”

 『カブト』では、ライダーを色で明確に差別化している。
 そして、各ライダーのモチーフに関しても明確化し、デザインにもそれを大きく反映させている。
 仮面ライダーシリーズは、原則として劇中ではライダーのモチーフを明示していない。例外は『龍騎』、『剣』、そして『カブト』である。
 ただし、『剣』は「虫(節足動物)」と「トランプのスート」の両方をモチーフにした二重モチーフ制を採用しているため、その分「虫(節足動物)」というモチーフはデザイン的に弱くなっている。『龍騎』では、ライダーはブランク体の状態から契約したモンスターの意匠を受けた姿にマイナーチェンジするという設定があることから、そのデザインにはモチーフとなっている動物のイメージがそれほど強く反映されていない。
 『カブト』は、仮面ライダーシリーズ中でモチーフのキャラクターが最も色濃くデザインに反映されている作品と言えるだろう。これは『カブト』の大きな特徴となっている。また、色とモチーフは変身前後のキャラクターとも連動している部分があるのも面白い。

カブト…
・赤色のライダー。
・モチーフはカブトムシ。
・マスクドフォームのイメージは「装甲化した幼虫(突起が無くて丸っこい)」あるいは「防御重視タイプ」。
・ライダーフォーム時、頭部はカブトムシの頭部、胸部はカブトムシの背面(上から見た姿)の意匠を強く反映している。
・格闘タイプが万能武器を所有するという意味で、バランス型。
・決め技がキックということから、正統派のイメージがある。
・変身する人間は俺様キャラではあるが、「正義のライダー」であることは外していない。

ザビー…
・黄色のライダー(と言うよりは“蜂と同じ配色”のライダー)。
・モチーフは蜂。
・マスクドフォームのイメージは「蜂の巣」あるいは「ハニカム構造」あるいは「防御重視タイプ」。
・ライダーフォーム時、頭部は蜂の顔、胸部は蜂の腹部の意匠を強く反映している。
・飛び道具や剣を使わない、純粋な格闘タイプ。
・決め技はキックでもパンチでもなく「針で刺す」といった蜂独特のもの。
・4人の人物が変身しているが、常に組織側の人間である。これは蜂(の一部)もまた社会性昆虫であり、巨大組織に属して生きていることを連想させる。悪役としての性格が強い、「悪のライダー」。

ドレイク…
・空色(水色)のライダー。
・モチーフはトンボ。
・マスクドフォームのイメージは「ヤゴ」あるいは「パイプ」あるいは「防御重視タイプ」。
・ライダーフォーム時、頭部は翼(あるいは羽根を広げたトンボの姿)、胸部はトンボの羽根の意匠を強く反映している。よく見ると右腕はトンボの胴体、左肩はトンボの頭部の意匠を強く反映しており、右腕を伸ばすと「左肩-胸-右腕」でトンボの全身の姿を表していることに気付く。
・銃による攻撃を中心にした、射撃タイプ。
・決め技も射撃。
・常に銃を手放さない“ガンマン・ライダー”。それ故、単に相手を両拳で連打するという攻撃でも“普段とは違う、特別な行為”と映る。
・戦いを好まぬ風来坊が変身する、「正義でも悪でもない気ままなライダー」。“風車のベルト”こそ無いが、「風のライダー」とも言える。性格がクールで、見た目にも涼しげなライダー。

サソード…
・紫色のライダー。
・モチーフはサソリ。
・マスクドフォームのイメージは「細いチューブの束」あるいは「触手」あるいは「特殊攻撃タイプ」。
・ライダーフォーム時、頭部はサソリの姿、胸部はサソリの背面(上から見た姿)の意匠を強く反映している。よく見ると両肩がサソリのハサミ、腹部から左大腿部にかけてサソリの尾の意匠を強く反映しており、「両肩-胸から左大腿部」でサソリの全身の姿を表していることに気付く。
・剣による攻撃を中心にした、斬撃タイプ。
・決め技も斬撃。
・お坊ちゃま=高貴=紫、お坊ちゃま=西洋の騎士=剣、お坊ちゃま=ヒラヒラの服=細いチューブの束、サソリ=毒液=血液=細いチューブの束、といった連想も出来る。
・他のライダーとは異なりゼクターが空を飛ばない、モチーフが昆虫ではない、マスクドフォームが他のライダーと比べて特異であることから、当初から“例外”・“特殊系”というイメージがあった。
・“例外”、“特殊系”であり、正義をイメージしにくいサソリをモチーフにしているだけあって、ワーム(本人はその自覚なし)が変身している。

ガタック…
・青色のライダー。
・モチーフはクワガタ。
・マスクドフォームのイメージは「両肩の射撃ウェポン」あるいは「突起」あるいは「攻撃重視タイプ」。これは、突起がほとんど無く「防御重視タイプ」に見えるカブトのマスクドフォームとは正反対(対比キャラ)である。
・ライダーフォーム時、頭部はクワガタのアゴ、胸部はクワガタの背面(上から見た姿)の意匠を強く反映している。
・マスクドフォーム時は射撃タイプ、ライダーフォーム時は格闘タイプという意味で、バランス型。
・キックを決め技に持つことから、正統派のイメージがある。
・カブトと共通点が多い(変身アイテムがベルトである、カブトとデザインが似ている部分が他のライダーよりも多い、キャストオフ時に自動変形ギミックが作動する、キックを決め技に持つ)ことから「カブトが1号ライダーなら、2号ライダーはガタック」というイメージがある。
・カブトムシとクワガタが昆虫の人気コンビであるように、カブトとガタックも「正義のライダー」としてコンビを組む。

                      整合性と多様性

 今までTV版の『カブト』に登場したライダーは全員、虫(節足動物)をモチーフにしており、マスクドフォーム→キャストオフ→ライダーフォームというフォームチェンジを行なうという点で共通している。それと同時に、前述のようなキャラクターの多様性も実現しているということに関しては、評価して良いと思う。
 特に、カブトとガタックが対を成すデザインになっており、キャストオフ時に自動変形ギミックが作動するという共通項において他のライダーとは差別化されていることは秀逸である。
 また、ドレイクのデザインは石ノ森氏本人によるものであるかのような印象を与えるという意味で特筆すべきだろう。この意味において、ドレイクは平成ライダーの中では最も石ノ森ライダーのテイストが感じられるライダーなのだ。昭和ライダーシリーズ世代に限定した感覚かも知れないが、嬉しいことである。

 サソードについても触れておこう。
 格闘ゲームには、「パワー型」・「スピード型」・「中間型」といったキャラの他に、「特殊型」のキャラが存在することが多い。『カブト』におけるサソードは、この「特殊型」のキャラに相当するように思える。
 登場するキャラクター全員が、基本となる設定やコンセプトといった「規格」にキチンと収まっているよりも、そこからはみ出したキャラが一人いた方が、作品全体を面白くする。「何事にも例外がある」のではなく、むしろ「何事にも例外が必要」なのではないか、ということだ。もちろん、そのキャラが他から余りにも浮き過ぎていたら逆効果であるし、その存在が作品自体の論理的閉鎖性(整合性)を壊していては、作品における「例外」ではなく「間違い」になってしまう。この辺のサジ加減が難しく、また面白いところでもある。
 シリーズものや、同一の番組内に複数のヒーローが同時に登場する場合は、全体を通しての統一性とそれぞれの個性のバランス、整合性と多様性のバランスが常に課題となるのだ。

 TV版『カブト』では2クール終了時点で5人のライダー(変身前後セット)が登場している。この数は、平成ライダーシリーズの中でも『龍騎』並みに多い。しかも、早い段階で総勢13人であることが明らかにされていた『龍騎』とは違い、『カブト』ではライダーが最終的に何人登場するか現時点では分かっていない。私はこの点で、『カブト』に惹き付けられている部分もある。
 『カブト』が、平成の『アマゾン』とも思わせた『響鬼』の後番組であることと、カブトのデザインがストロンガーを思わせることから、『カブト』にテントウムシをモチーフにした女ライダーが登場するのではないかという期待感も持っている。

 『響鬼』での私のお気に入りキャラであり、同作品の玩具としては例外的に売れ行きが好調だったディスクアニマルは、“色とモチーフ”において成功していた。しかし、同作品のライダーに関しては、そうではなかった。
 『カブト』に関しては、ライダー自身が“色とモチーフ”において成功していると思う。これが、玩具の売れ行きを含めた作品自体の成功に結びついてくれることを願う。私も、ささやかながら応援している。
スポンサーサイト

コメント

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://sinden.blog6.fc2.com/tb.php/289-b4fac5b0

«  | HOME |  »

MONTHLY

CATEGORIES

RECENT ENTRIES

RECENT COMMENTS

RECENT TRACKBACKS

APPENDIX

震電

震電

 写真撮影時40歳。
 いい歳して云々といった決まり文句は私には通用しない。たった一度の人生、他人に迷惑をかけない範囲で楽しみます。