2017-10

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WBC世界ライト級暫定王座決定戦 稲田千賢 VS ホセ・アルマンド・サンタクルス

WOWOW『エキサイトマッチ』(2006年5月21日 放送分)
  WBC世界ライト級暫定王座決定戦
    稲田千賢 VS ホセ・アルマンド・サンタクルス


 WBC世界ライト級の正王者ディエゴ・コラレスが、ランキング1位のホセ・ルイス・カスティージョと6月3日に防衛戦を行なう。にもかかわらず、その2週間前に同級の暫定王座決定戦が行われる。普通に考えたら、おかしなことだ。
 これには一応、コラレスとカスティージョのラバーマッチが、コラレスの負傷によって延期されたという理由が付けられている。しかし本来ならば、指名挑戦者の権利を優先し、コラレスとカスティージョのラバーマッチを後回しにするべきだ。コラレス側がカスティージョとのラバーマッチを優先するというのなら、コラレスから王座を剥奪すればよい。
 暫定王座決定戦の2週間後に正王者が防衛戦を行うという事態を以って、タイトルがまともな管理状態にあるとは到底言えないだろう。秋頃に、この二つの王座の統一戦を行う予定というのだから、まるで王座の「マッチポンプ」である。

 そういう経緯はさておき、稲田千賢がWBC世界ライト級暫定王座決定戦に挑むとなれば、応援しないわけにはいかない。
 その対戦相手が、試合の2週間前になって、シリモンコン・シンワンチャーからホセ・アルマンド・サンタクルスに変更となった。これで稲田は、“敵地”での試合という格好になってしまった。おまけに、サンタクルスは元々5月に別の試合を予定していたため、コンディション調整には全く問題が無いときている。どう考えても、ツイているのはサンタクルス陣営である。

 私が『エキサイトマッチ』見たさにWOWOWに加入して、まだ1年経っていないある日、稲田の試合が放送された。その日本人離れした体格に、私は思わず目を見張った。ボクシングの漫画で、長身でリーチの長い日本人ボクサー(大抵はフリッカージャブの使い手)が登場するのを見るたびに「そんな体形の日本人ボクサー、いないって」と突っ込んでいたのだが、稲田は正しくそのタイプのボクサーだったのだ。
 それ以降、彼の試合を目にすることは無かったが、それでも稲田というボクサーは私の記憶に強く焼きついていた。体格において、日本人ボクサーが外国人ボクサーに対してアドバンテージを持つことが出来るという、稀有な状況。稲田なら、それが可能となるのだ。

 そう、可能となる筈だった。
 対戦相手が、シリモンコンのままだったら。
 いや、サンタクルス以外のボクサーだったら、かなりの確率でそうなる筈だった。
 しかし現実には、ライト級において稲田以上の体格を有する数少ない選手であるサンタクルスが、稲田の対戦相手となってしまったのだ。

 試合前の入場シーンを観たとき、両者の雰囲気が余りにも違っていることが気になった。
 サンタクルスは、とてもリラックスしていて調子が良さそう。
 一方の稲田は、気合が入っていると言うよりも、もう緊張でガチガチに見える。過去、海外で6試合を経験し、その全てに勝っていても、やはり世界戦となると全く勝手が違うのか?

 初回、稲田はどこかギクシャクしたフットワークでサークリングするが、左ジャブが少ない。もともとそれ程スピードのあるタイプではないとは思うのだが、サンタクルスに簡単に距離を詰められてしまう。スピードが遅いと言うより、動きにキレがなく、反応が鈍い。
 後退しているボクサーの手数が少なかったら、前進してより手数の多いボクサーにポイントを持っていかれてしまう。プレッシャーをかけられ、主導権を相手側に支配されているように見られてしまう。
 最初の3分間が終わってコーナーに戻った稲田に、浜田さんが「左、左…出てしまった右に関しては打っていい…左、左、左…」と指示を出す。やはり、左ジャブを突いて自分の距離を保つことを第一に考えている。

 第2ラウンドは、稲田の手数も増え、クリーンヒットの数においても互角のラウンドとなった。
 しかし第3ラウンドに入ると、左ジャブの交換で稲田が被弾するケースが目立ってきた。稲田が左の差し合いで劣勢に立たされている。
 サンタクルスの当て勘が良いのか、稲田の反応が悪いのか? とにかく軽めではあるが、サンタクルスのパンチがポンポンと稲田の顔面に命中する。稲田も連打で打ち返す場面もあったが、サンタクルスはサッと両腕のガードを固めてブロックしてしまう。

 4ラウンドに入るとサンタクルスのプレッシャーは強まり、両者の距離が微妙に縮まっていく。稲田はサンタクルスにつられて、3ラウンド目よりも近い間合いで打ち合ってしまう。
 もっとも、稲田は前のラウンドで、ジャブの打ち合いで優位に立てなかった。自分のパンチを当てよう当てようとする気持ちが、間合いを自然に詰めさせているのかもしれない。

 5ラウンドが始まると、稲田は自分から接近戦を仕掛けた。巻き込まれたのではなく、明らかに自分の意思でショートレンジの打ち合いを始めた。確かに稲田のパンチも当たるが、それ以上にサンタクルスのパンチが当たる。この距離は、やはりサンタクルスの距離である。
 稲田もボディブローを入れたり、右のカウンターを狙うのだが、いかんせん体の反応が僅かに遅れている。
 
 6ラウンドも、開始早々から稲田は自分の額を相手の肩口に押し付けるようなインファイトを仕掛ける。もちろんサンタクルスは望むところと打ち合いに応じるが、稲田のショートパンチのキレも悪くない。そして、この試合で初めて、稲田の身体がサンタクルスの身体を押し込み出した。
 初めて、稲田がサンタクルスにプレッシャーを与えている。稲田が長い腕を折り畳んでサンタクルスのボディへアッパーを打ち込むと、サンタクルスがズルズルとコーナーに詰まった。無謀に見えた接近戦が、試合の流れを変えるのか?

 しかし、稲田の前進が1分間ほど続いたところで、サンタクルスの反撃が始まった。攻勢に転じたサンタクルスは、アッパーで何度も稲田のアゴを跳ね上げる。サンタクルスの連打は、稲田の頭部に集中している。しかし稲田も踏ん張り続け、時折打ち返す。
 サンタクルスも打ち疲れを隠せない。
 この残り1分間が勝負――。
 そう思った瞬間、サンタクルスの放ったショートの4連打が、稲田の頭部に全弾命中した。
 その直後、まるでずっとこのタイミングを待っていたかのように、レフリーが二人のボクサーの間に割って入った。

 6ラウンド2分8秒、TKO。
 暫定王座は、2週間前まではこの決定戦に出る予定の無かったボクサーの手に渡った。

 稲田が、初めての世界挑戦を敵地で迎え、身体がガチガチの状態で試合のゴングを聞いたことは、確かだろう。
 体格・体力において、サンタクルスが稲田を上回っていたことも事実だろう。
 しかし、試合の敗因は、それだけではない。
 この試合の最終ラウンドとなった6ラウンド、稲田よりも体格・体力において優るサンタクルスが、接近戦において稲田より頭半分低く潜り込もうとしていた。結果的にフィニッシュとなったショートの4連打を決める際は、下から相手の胸に自分の頭を押し当てて、相手の体を起こそうと試みていた。単純なことではあるが、明らかに一つの技術である。

 この日、稲田は最高のコンディションを作り上げたにも関わらず、リングでそれを発揮することなく敗れた。
 練習では出来たのに、「あれも出来なかった」「これも出来なかった」と、悔いの残る試合だったのではないだろうか。しばらく休んだ後、身体が壊れておらず、闘志も残っているようだったら、再び世界に挑戦することを目指して再起して欲しい。
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稲田千賢 世界タイトル奪取ならず

  WBCライト級暫定王座決定戦が20日(日本時間21日)米ロサンゼルスで行われ、同級3位の稲田千賢(帝拳)が同級4位のホセ・アルマンド・サンタクルス(メキシコ)と対戦しました。日本人が海外で世界王座を奪取すれば、1992年にメキシコ市で平仲明信

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震電

 写真撮影時40歳。
 いい歳して云々といった決まり文句は私には通用しない。たった一度の人生、他人に迷惑をかけない範囲で楽しみます。

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