2017-10

ボクシングの世界タイトル認定に関する憂鬱

ボクシングの世界タイトル認定に関する憂鬱


 先日行なわれたメイウェザーとの一戦で、何故ジュダーがIBFのタイトルを保持していたのかが分からない。
 ジュダーは1月に行なわれた統一タイトルマッチで敗北したのだから、全てのタイトルを失っているはずである。
 IBFがその試合をタイトルマッチと認定していなかったとしても、ウェルター級の公式戦であったという事実は揺るがない。プロボクシングの常識からして、ウェルター級の公式戦で敗北したボクサーが、同級のタイトルを保持できるわけが無い。ジュダーが負けた瞬間、IBFのウェルター級王座は勝者に渡るか、空位になるかのどちらかしかなかったはずだ。それが、何故…?

 タイトルを統一するのが偉業であるならば、それを王者が防衛するのも偉業、挑戦者が奪取するのも偉業であるはずだ。「偉大な力には、重大な責任が伴う」という『スパイダーマン』における名台詞は、全てのジャンルのヒーローに当てはまる。
 メジャー3団体のベルトを所持していたジュダーがタイトルマッチを行ないながら、認定料の不払いで2団体のベルトが移動しない(WBAはスーパー王座なので消滅、IBFは空位となる)というだけでも恥ずべき醜態だ(本来なら、戦う前にWBAとIBFの王座を返上しておくのが筋)。それなのに、空位となるはずの王座に負けたジュダーが居座っているのだから、恥の上塗りである。
 これを好意的に解釈すると、

(1)1月に行なわれたジュダーの統一タイトルマッチには何からの問題があったため、IBFはこの試合をタイトルマッチとしてだけではなく、公式戦としても認定していない。
(2)IBFは1月に行なわれたジュダーの統一タイトルマッチを公式戦としては認めているものの、ジャッジの採点に何らかの問題があったとして、ジュダーの敗北を認めていない(無判定扱い?)

などが考えられる。しかし、それよりも興行的な判断が働いたと考える方が遥かに自然だろう。
 要するに、ジュダーとメイウェザーの試合を組んでいたプロモーターのゴリ押しが通ってしまったのではないかということだ。
 興行に「ジュダーの防衛戦」、いや「メイウェザーの4階級制覇」という謳い文句を付けたいがために、世界タイトル認定ルールを捻じ曲げてしまったのではないか? もしそうだとしたら、一体何のための世界タイトル認定団体なのか、その存在意義が問われることになる。

 もちろん、これは飽くまでも私個人の推察でしかない。
 しかし、実際に3団体統一タイトルマッチが行なわれたのにWBCのタイトルしか移動せず、空位となるはずのIBFタイトルを負けたジュダーが保持し続けたという事実を目の当たりにして、私個人が世界タイトルの価値あるいは権威の失墜を感じたのは事実である。
 今回の3団体統一ウェルター級王座のお粗末な分割(WBAスーパー王座に至っては“消滅”)劇によって、主要4団体の世界タイトルであっても、所詮は興行の都合で寄せ集められたりばら撒かれたりする小道具の一つに過ぎないような印象をファンに与えたのではないだろうか。
 この世界の頂点に存在するはずの統一王座が、カネ次第でどうにでもなる胡散臭いものに成り下がってしまったら、プロボクシングのスポーツとしての崇高さを、一体どこに求めれば良いのだろう?

 かつて、畑山隆則がWBA世界Sフェザー級王座に就いていたとき、畑山が健在であるにもかかわらず、暫定王者が立てられたこともあった。
 WBCが不当に世界タイトルを剥奪したとして裁判に訴えられて敗北、一時は団体消滅の危機に陥ったことは記憶に新しい。その影響で今でも資金難が続いているためか、フライ級の正王者のポンサクレックと暫定王者のアルセの両者が、おのおの並行して防衛戦を行なうという異常な事態をWBCは認可している。
 WBOは設立直後にハーンズの5階級制覇をアシストしたり、その翌年、3団体の統一王者タイソンが絶対的な存在として君臨していたにも関わらず独自路線でヘビー級王座決定戦を行なったりしたそうだが、十数年経った今ではどうなのだろうか。

 そもそも、世界タイトル認定団体が(主要なものだけで)4つも存在しているという現状自体が、理想から外れた状況である。
 プロボクシングは、K1やPRIDEのような一企業の営業方針に基づいて開催される格闘技イベントとは一線を画した、“世界”を冠するに相応しい組織とシステムを持つ国際的格闘競技であって欲しい。
 「面白ければそれで良い」と目先の利益のみを追い求めていると、面白くなくなった途端に人々から見捨てられることになる。スター選手不在の時代を迎えても、消え去ることなく人々に支持され続けるものは、過去のスターが築き上げた歴史を正当に引き継いだものだけなのだから。

 各団体のタイトルはもちろん、統一されたタイトルの運用にも厳密な統一ルールを設け、それを遵守するべきだ。統一タイトル戦が安っぽく見えたら、各団体のタイトル戦も安っぽく見えるというデメリットを、もっと深刻に受け止めるべきなのだ。
 主要4団体が統一されるのは不可能だとしても、それくらいは出来るはずである。
 公正なルールに基づいて厳格に運営され、不正を許さず、単に大金を積めば手に入るという代物ではないからこそ、真の価値そして権威が宿る。
 ビジネスを凌駕する何かがあるから、スポーツには独自の美しさがあるのだ。
 イメージ的にも論理的にも、それは正しい。
スポンサーサイト

コメント

銭儲けのタイトル認定乱発

はじめまして、コメント・TBありがとうございました。そう言えばWBCのプレスにWBCL・フライ級も暫定王座決定戦を行うそうです。理由がビロリアの挑戦者が決まらない!と言う理解不能なものです。1位ファニト・ルビリアルと2位ワンディ・チョー・チャレオンの試合となるようですが、王座挑戦者決定戦でいいと思うのです。

そもそも暫定王座の定義自体がここ最近大きく捻じ曲げられているように感じます。ビロリアはケガなどしていない以上、なぜ暫定王座を設ける必要があるのでしょうか?結局、WBCは暫定王座にして銭儲けを企んでいるとしか思えません。破産のきっかけとなったロッシジャーニの件も、返上したはずのジョーンズにタイトルを返した拝金主義のWBCにすべての原因があるのです。

あと正規王座ではないはずの暫定王座を獲得しても何階級制覇というのにも疑問を呈せざるを得ません。公認料が正規王者より安いためプロモーターなどが好んでいるという事情もあるようですが、ファンは今後離れるように思います。

悪貨が良貨を駆逐する

 けんさん、コメントありがとうございます。
 WBCのL・フライ級暫定王座決定戦の件は、酷過ぎます。挑戦者が決まらないのなら、挑戦者決定戦を行うというのが当然です。こんなことなら、あのときWBCは消滅して、当時のWBCチャンピオンが全員同級WBAの暫定チャンピオンになるとかの力技をかましてもらった方がまだマシだったのではないかと思えます。
 悪貨が良貨を駆逐する――。王者はすべからく王者である筈なのに、「本物の王者」とそうでない王者が混在しているのが、WBCの現状ですね。イーグルvsマヨールのような世界戦名勝負が行われても、一方で暫定とは言え王座を乱立させていては、総体としてのチャンピオンの価値は下がってしまうでしょう。

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://sinden.blog6.fc2.com/tb.php/219-f493e077

ボクシング団体について

ボクシングの団体っていくつあるかご存知でしょうか?日本では世界ボクシング協会(WBA)、世界ボクシング評議会(WBC)の2団体のみしか認めていません。WBA・WBCの他に国際ボクシング連盟(IBF)と世界ボクシング機構(WBO)を加えた4団体がボクシングメジャー4団体と言われ

«  | HOME |  »

MONTHLY

CATEGORIES

RECENT ENTRIES

RECENT COMMENTS

RECENT TRACKBACKS

APPENDIX

震電

震電

 写真撮影時40歳。
 いい歳して云々といった決まり文句は私には通用しない。たった一度の人生、他人に迷惑をかけない範囲で楽しみます。