2017-10

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ホルヘ・リナレス VS サオヒン・シリタイコンドー

ダイナミックグローブ第375回
 ホルヘ・リナレス VS サオヒン・シリタイコンドー

  2006年の会場で観た試合:2回目
  観戦日:2006年4月1日(土)

 3月4日に新井田の防衛戦を観戦してから約1ヶ月、今年2回目となる後楽園ホールでのボクシング観戦。来月6日に開催されるイーグルの防衛戦のチケットは既に入手済みなので、何事もなければ3ヶ月連続でボクシングを生観戦することになる。
 ボクシングのチケット(リングサイド)は比較的高価であるし、私が現在住んでいるところは交通の便の悪いという事情もあって、毎月ボクシングを観に後楽園ホールへ足を運ぶのは経済的に不可能である。しかし、後楽園ホールで世界戦が行なわれる場合や、世界戦レベルのボクサーが出場する場合は、出来るだけ観に行きたいと思っている。

 4月1日は、世界戦レベルのボクサーである、ホルヘ・リナレスの試合を観るために水道橋を渡った。ホルヘ・リナレスは、WBA世界フェザー級3位、WBC同級4位。現時点、日本のジムに所属する世界戦レベルのボクサーという条件の中では、フェザー級は最も重いクラスであり、リナレスはその階級にいる。
 そのフェザー級のリミットよりも850g重い58kg契約の体重でリングに立ったリナレスは、
「その痩身のどこから、あと850g削り落とすと言うのだ?」
と思えるような、研ぎ澄まされた身体をしていた。相当な減量苦が想像されたが、10ラウンドをフルに戦ってもスタミナ切れに陥ることはなかった。それでも、「あと850g」は気になる数字ではある。

 試合は、リナレスがサオヒンをフルラウンドに渡ってアウトボックスし、明確な判定勝を収めた。ジャッジのスコアは98-93が二人、98-96が一人(ちなみに私はあえてサオヒン寄りに採点しての98-95)。素人目には常に前に出ていたサオヒンが有利に試合を進めていたように映ったかも知れないが、ボクシングの採点基準である有効打の質×量(特に質)においては、リナレスが勝っていた。

 後楽園ホールは、「全席がリングサイド」と言っても良いほど、観戦し易い会場である。視力が1.0あれば、おそらくリングから一番遠い席からでも、リング上のボクサーの表情をどうにか読み取ることが出来るだろう。
 新井田の防衛戦のときは、明らかに様子のおかしい(私は事前に予備知識を全く仕入れていなかったので、早いラウンドで拳か肩を痛めたのかと思っていた)新井田をリング上に観ているにもかかわらず、
「前に出ろ!」 「倒しに行け!」
など、一部の“目が節穴の観客”が素人丸出しの野次を飛ばし、非常に不愉快だった。
 しかし、今回のリナレスの試合ではそういったことはなく、試合に没頭することが出来た。

 リナレスは、ハンドスピードやパンチの伸びこそ前評判ほどではなかったものの、全体的な完成度の高いボクサーだった。名実共に“戴冠を期待される、世界のトップクラス”だ。
 リナレスの上体は、いつも自然に細かく動いている。そして、その状態のまま、ジャブが出る。これにより、攻撃面においては自らが放つパンチの初期動作を隠し、防御面においては相手のパンチの的を絞らせないという効果を生む。基本的なことではあるが、この動きを特に意識することなく自然に出来ているボクサーは決して多くない。
 フットワークも速く、接近して打ち合いたいであろう相手を捌き続ける。捌きながら要所でカウンターを的確に当て、ポイントをものにする。
 その結果、ラウンドが進むにつれてサオヒンの顔には打たれた形跡がハッキリと現れていくのだが、リナレスの顔は最後まで綺麗なままだった。まさに、絵に描いたようなアウトボクシングだった。

 試合の展開が、総合格闘技をイメージさせた点も興味深かった。
 まともにボクシングをしたら勝ち目がないと思ったのか、サオヒンは頭から突っ込むようにして主に左のストレートをリナレスのボディへ伸ばす。
 リナレスからすればバレバレの攻めであり、ステップバックやサイドステップで対応できる。
 結果的にサオヒンのストレートは「打ち込む」というよりも、「何とか届かせようとしている」という感じで、とてもじゃないがリナレスのボディに大きなダメージを与えられない。
 その様子はまるで、フットワークを駆使するボクサーを、組み技系の選手がタックルで捕まえようとしているかのようだった。
 ボクシングでは、ベルトライン以下のダッキングがルールで禁止されているため、自分の腰よりも低い姿勢で突っ込んでくる相手を迎撃する技術体系が存在しない(必要がない)。
 サオヒンは、そのルールのギリギリのところを狙うかのように、低い姿勢での突進を繰り返した。リナレスはそれに付き合うことなく、ボクシングの標準的な姿勢のままフットワークで捌き続けた。それはあたかも、ボクシングルール内での異種格闘技戦の様相を呈していた…と言ったら言い過ぎだろうか。

 今回、リナレスを擁する本田会長は「リナレスの最も苦手とするタイプである、タフな相手」として、サオヒンを対戦相手に選択したそうだ。プロボクサーは勝つことが最大の使命である。苦手なタイプの相手と無理に打ち合って危険を冒す必要はない。判定勝ちでもベルトは獲れるし、守ることも出来るのだ。チャンピオンになれば、指名挑戦者でない限り、苦手なタイプの相手を避け続けることが出来るのだから、尚更である。
 リナレスの今回の戦い方は、その意味で充分に評価できる。本人の口から「もっとカウンターを入れたかった」との反省の弁が出ていることも、好感が持てる。

 私が気になったことは、第一に「思っていたよりもパンチに伸びがなかった」こと。バッティングを警戒して踏み込みを浅めにしていたのか?
 第二に、バックステップが多く、サイドへの回り込みが比較的少なかったこと。最初からもっと回り込めていれば、それだけカウンターの機会も増えていただろう。
 第三に、サオヒンのレバーを打てなかったこと。サオヒンが右のガードを固め、べルトライン(ファールカップ)も高くしていたため、レバーを打ちにくかったということは理解できる。そのれでも、チャンスが全くなかったわけではない。タフなマヨルガを打ち倒したトリニダードのように、頭部を打たれ強いボクサーに対してはボディを攻めるというパターンも、今後は披露して欲しい。
 パンチが軽そうに見えるのは、フットワークを駆使するボクサーとしては致し方のないところだろう。また今回は、相手が打たれ強かった。こういう場合は無理に倒しに行くより、上下を打ち分けるなどの工夫を重ね、結果的に相手が倒れればそれで良いと思う。

 最後に、リナレスのスリップダウンについて。
 2ラウンドのスリップダウンは、サオヒンが右足でリナレスの左足に足払を仕掛ける形で転倒させたもの。
 7ラウンドのスリップダウンは、サオヒンが自分の左膝をリナレスの左膝にぶつけることで転倒させたもの。
 両方ともサオヒンがリナレスを転倒させているのだが、リナレスの反応も悪いと思う。つまり、相手の足が来そうな所に、自分の足を残しておくべきではないということだ。
 7ラウンドのスリップダウンは、パンチが当たっていないだから、どう見てもスリップダウンである。一方、2ラウンドのスリップダウンの際は、足払を受けて倒れるリナレスの顔に(クリーンヒットではないとは言え)サオヒンのグローブが当たっている。もし敵地で戦っているときにこういうスリップダウンがあった場合、レフリーがノックダウンと判定することがないとは言い切れないように思う(もちろん、あってはならない誤審だが)。
 もしかしたら、このことが今回の試合で一番気掛かりな点だったかも知れない。
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://sinden.blog6.fc2.com/tb.php/213-97f2ea45

«  | HOME |  »

MONTHLY

CATEGORIES

RECENT ENTRIES

RECENT COMMENTS

RECENT TRACKBACKS

APPENDIX

震電

震電

 写真撮影時40歳。
 いい歳して云々といった決まり文句は私には通用しない。たった一度の人生、他人に迷惑をかけない範囲で楽しみます。

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。