2017-10

『サウンド・オブ・サンダー』

『サウンド・オブ・サンダー』
  2006年の映画館で観た映画:8本目
  映画を観た日:2006年4月1日(土)


 ブラッドベリの小説が原作とあらば、SFファンとして、劇場に足を運ばないわけにはいくまいて。そういった義理人情あるいはノルマ感覚で観た「外せない」映画だったのだが、作品の出来自体は「外れ」だった。
 とりあえず、現時点でのワースト1に挙げておこう。

 とにかく、映像のクオリティが低い。映画が始まって間もなく登場した恐竜のCGを観て、早々にガッカリさせられた。今どきの映画で、あんなゴムみたいな質感の恐竜はダメだろう(もっとも、あれと同じ映像が邦画に出てきたら「けっこう頑張っているな」という評価に変わってしまうのだが)。
 街の道路を走る車両のCGもクオリティが低く、一昔前のレベルだ。実写の人物のすぐ横を走っているシーンでは、もう合成丸出し。パッと見で「不自然」どころか「見苦しい」。
 何らかの演出意図があってCGのクオリティを低く押さえていたとは思えなかった。百歩譲って何らかの演出意図があったとしても、それは明らかに失敗している。

 原作になっているブラッドベリの短編は、いわゆるオチの付いたアイディアストーリーである。こういう短編小説を長編映画化する場合は、当然ながら原作に存在する部分を膨らませたり、原作には存在しないものを新たに付け足したりするわけだが、重要なのはそれをどういったコンセプトの元で行うかということだ。
 この映画の場合は、モンスター映画の部分を膨らませ、パニック映画の部分を追加しているのだが、どちらも「絵」を中心とした、いわゆる視覚効果映画としての作りになっている。一応、「歴史の変化は段階的に発生する」という映画オリジナルのイベントも展開されるのだが、内容は大雑把でありがちなものなのだ。それならば、「絵」の部分を強いインパクトと高いクオリティで描かなければならないのだが、それが出来ていない。
 恐竜や車のCGの出来が悪いことは既に述べた。それ以外の部分も、派手さがなく、インパクトに欠ける物のオンパレードである。都市部で樹木が異常に成長するというイベントがあるが、絵的に何の個性もない。40年前の日本の特撮TV『ウルトラQ』の「マンモスフラワー」の回を見習えと言いたい。
 ちなみに、この映画で唯一良く出来ていると思える部分は、「未来に変化を与えないように恐竜狩りのやり方を工夫している」点であるが、それは原作のアイディアをほぼ踏襲したものに過ぎない。

 ディックの短編小説を原作にした映画『トータル・リコール』(1990年製作)は、“超B級映画”路線で作られていた。“ウルトラチープ”と評された、ケレン味たっぷり(予算もたっぷり)に造り込まれた作品からは、個性的かつ独特の空気を感じることが出来た。「ありがちなようで、実は映画では観たことがない」映像が炸裂していたのだ。それも、ハッキリ言ってどうでもいいようなシチュエーションで。この映画は、良い意味でのバカ映画である。これより8年前に製作されたディック原作の映画『ブレードランナー』(1982年製作)の真逆を行くような出来栄えは、むしろ清々しいほどであった。
 これに対し、『サウンド・オブ・サンダー』では、どこかで見たことのある映像がどこかで見たことのあるタイミングで流れるだけ。そこには、驚きがない。全てが想定内なのだ。この手の映画をそれなりに観ている者としては、「せめて、もう一捻りしてくれよ」とぼやくことしきりである。

 例え同程度に陳腐であっても、 『イーオン・フラックス』 のように、古典的SF映画といった希少な趣向の作品なら、それなりに満足度も高くなる。
 この『サウンド・オブ・サンダー』も、今日ありふれた「モンスターを中心とした視覚効果」を売りにするのではなくて、歴史が変化してしまうことを緻密に描いたり、その原因を突き止める謎解きを中心にした論理展開を売りにするSF映画にするべきだったと思う。
 極端な話、「北京で蝶が羽ばたいたら、何故ニューヨークで嵐が起こったのか」を具体的に描くような展開だったら、どうだろう。容易には先を読めず、それなりに楽しめたのではないか。
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「サウンド・オブ・サンダー」

「サウンド・オブ・サンダー」を観て来ました。 SF小説の巨匠レイ・ブラッドベリの「いかずちの音」を ピーター・ハイアムズが映画化。 タイムトラベルがもたらした 人類滅亡を描いたパニックアクション映画作。 出演陣には、エドワード・バーンズ、 キャサリン・マコーマ

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震電

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 写真撮影時40歳。
 いい歳して云々といった決まり文句は私には通用しない。たった一度の人生、他人に迷惑をかけない範囲で楽しみます。