2017-10

私なら、こうしたかったよ『ガメラ3』

私なら、こうしたかったよ『ガメラ3』

※注…この記事は、『ガメラ3』を観た当時に書いたものに、後日文章を書き足したものです。
 新作『ガメラ』がGW(ゴールデンウィーク、そしてガメラウィーク)に公開されるので、ささやかな反響として引っ張り出しました※



 『ガメラ3』は前2作とは異なり、失敗作だと思います。
 もちろん、駄作という意味ではありません。後期平成ゴジラシリーズと比べれば、遙かに高いレベルにあるものの、それでも失敗作だという意味です。
 では、失敗作ではない『ガメラ3』とはどういった作品なのか、自分なりに考えてみました。

 一般的な観客の視点で観れば、山咲さんと手塚さんは、作品の中で浮きまくっていた。しかもこの2人、決してチョイ役ではないのだ。一つ目の失敗である。
 山咲さんに関しては、この作品の中では、TPOを完全に外している。政府の高官が、政府の建物の中に集合しているというのに、バーのママみたいな女性が堂々と現れて、それが「権力の根っこに関わっている」とくるのだ。
 Vシネマだったらあれでも許されるのであろうが、自衛隊の出動にいちいち法的な手続きを踏むような作品の中では、余りにも嘘っぽい。
(断っておくが、金子監督のミニスカート好き自体には、私も大賛成である)
 『ガメラ3』に山咲さんをあのキャラクターで出したいのなら、官僚が接待に使う料亭やクラブの女性という設定が適当だろう。それが表の顔で、実は巫女の一族だというなら、作品の空気にもすんなりと溶け込める。
 巨大生物対策の会議も、兜町界隈の料亭で、非公式に行われている方が、むしろリアリティがある。想像してみて欲しい。会議というより接待のような雰囲気の中、居心地が悪そうな様子の中山さんを、山咲さんが店の外に連れ出すシーンなどが、ごく自然に浮かんでくる。

 手塚さんの演じるキャラクターに関しては、登場しなくても物語が成り立つ。要所で、唐突に説明的な台詞を喋らされており、とても不自然だ。(手塚さんが気の毒でしょうがない)

 「マナ」の設定自体も、失敗としか言いようがない。(二つ目の失敗)
 『2』でのウルティメイト・プラズマの説明など、それこそ狭義の怪獣ファンがネタにすればいいことであって、この作品に引きずるような性質のものではない。ギャオス大量発生の理由は、環境ホルモン、ダイオキシン、平均気温や二酸化炭素濃度の上昇、オゾン層の破壊による紫外線の増加など、何でも良いのだ。
 ギャオスの卵が、これらの環境の悪化を検知して孵化しているとすれば、ギャオスもまた、地球の環境を守るために創られたのかも知れないということになり、テーマの掘り下げにもなる。ギャオスの成体が人間を補食するだけでなく、実は温暖化物質や環境汚染物質を大量に体内に取り込んでいる、という設定も良いだろう。
 もちろん、これは安易に台詞で説明されるのではなく、中山さんが劇中でギャオスを必死に調べ回って辿り着く結論として描くのだ。

 また、大迫というキャラクターも、手塚さんのキャラクター以上に存在意義がなく、物語的にはこの映画に全く必要ない。大迫というキャラクターに時間を割いた結果、本来大いに機能しなければならない少年・龍成がほとんど描き込まれておらず、影が薄いことこの上ない。
 息抜き的に、ワンポイントで良い芝居をするキャラクターは必要であるが、そういったキャラは新たに作ってもいいし、斉藤審議官が影ながらサポートしていたわけだから、彼をそういった役でもっと使ってもよかった。
 長峰が登場したから、関係するキャラクターも…などと芋づる式に1作目のキャラクターを登場させたら、あくまで3作目であるこの映画のキャラクター構成が破綻するのは当然である。

 三つ目の失敗は、3作目にして突然オカルトに走ってしまったこと。
巫女の件はともかく、降って沸いたようなマナの設定と、やはり取って付けたような歴史ミステリーは全くリンクしておらず、ナンセンスであるとしか言いようがない。
 このオカルトもどきが、社会科学を主軸にしたシリーズの理論的一貫性を崩し、世界観そのものをガタガタにしてしまった。
 1作目ではアトランティスとかオリハルコンとかのトンデモ系の小ネタを上手くリアリテイの中に納め込み、2作目ではガメラ復活とウルティメイト・プラズマのシーンをハード色の強い作品の中に強引に押し込めた。
 しかし、3作目では、巫女とマナと歴史ミステリーという3つのオカルトもどきを無理矢理詰め込んだことにより、虚構という構築物が支えることの出来る嘘の重さの限界を超え、作品のリアリティが崩壊してしまったのである。

 四つ目の失敗、それは、ガメラに対する復讐劇を演じるキャラクターの設定ミスである。
 物語の根幹に関わる部分の失敗であり、『ガメラ3』最大の失敗だと思う。
 素直に考えて欲しい。
 ガメラに復讐するのは、山咲さんの方が相応しい。そして、前田愛ちゃんは、感応力を失った文子ちゃんに代わって、ガメラの側に付くのが本来のポジションなのだ。
 この方が、遙かに自然かつ明快で、観客に余計な疑問を抱かせることもない。
 ガメラとギャオスの戦いのとばっちりを受けて家族を失い、ガメラを恨むと言うところまでは、愛ちゃんのキャラクターでも問題はない。しかし、いくら復讐のためとはいえ、怪獣とガメラを戦わせれば、更にそのとばっちりを受けて、また自分のように家族を失うものが出てしまうということぐらい、愛ちゃんの年齢なら、すぐに気づくはずだ。
 そういう点を途中まで誤魔化しておいて、なおかつ土壇場になってから持ち出すものだから、ひどく不自然なのである。
 愛ちゃんが復讐心に燃える余り気が狂ってしまい、最後になって正気に戻った、というわけでもない。
 いずれにせよ、復讐というどす黒い情念を燃やす女性を、まだまだピュアな部分を残した少女に割り振ったこと自体に無理がある。意図的にミスマッチを狙ったのだろうが、何故そんなリスクのあることをやる必要があるのか。

 イリスは、最初から最後まで、山咲さんが関わるべきだったのだ。
 1作目の文子ちゃん(浅黄)のネガ像としては、山咲さん(朝倉)は最高のキャラクターである。
 怨念で怪獣と繋がる女(女になってしまった少女)、純心を全てどす黒い怨念に転化させ、その手を血で汚してしまった巫女。

 ガメラには、最初から最後まで、愛ちゃんが関わるべきだったのだ。
 1作目の文子ちゃん(浅黄)のを引き継ぐポジ像としては、愛ちゃんは最高のキャラクターである。
 純心で怪獣と繋がる、汚れなき乙女のままでいる少女、聖なる巫女。

 イリスVSガメラの戦いは、「怨念VS純心」の戦いであるべきだったのだ。

 山咲さんが「愛する男の仇をとるべくガメラを殺す」そんな情念からくる復讐心を燃やし、何の迷いもなくイリスと同化して戦えば、真新しい勾玉を身に付け、ガメラを信じ、ガメラと感応して戦う愛ちゃんとの対比がハッキリして、物語の求心力となったはず。
 文子ちゃんは、ガメラと感応する力を失っており、もちろんイリスとも感応できない。聖なる力を失ってしまった巫女、翼を無くした天使として、山咲さんと愛ちゃんの間を行ったり来たりする(揺れ動く)。
 この文子ちゃんの地に足をつけた動き(怪獣と感応できない普通の人の立場)で、「怨念VS純心」が現実から浮き上がることを防ぎ、山咲さんと愛ちゃんの戦いのリズムが単調にならないように調整するわけだ。

 実際の『ガメラ3』では、愛ちゃんが情念なのか純心なのかハッキリせず、中途半端だった。
 中途半端は弱い。愛ちゃんが弱いため、対立関係にあるはずの文子ちゃんも弱い。
 そこへ、さらに何がやりたいんだかハッキリしない山咲さんと手塚さんが絡んでくるから、ますます分かりにくくなってしまった。結果、求心力のない、散漫なドラマになってしまったのである。
 ちなみに、ハイレグなシルエットを持ち、触手を武器にするイリスは、その容姿からしても、山咲さんとの相性がよいと思われる(鞭を振るう女王様…)。

 それでは、この辺で具体的にはどんな『ガメラ3』にすれば良かったのか、簡単にストーリーとしてまとめてみましょう。他の方々の意見や、いろいろな作品のネタを取り入れてあります。

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 海外でギャオスの調査をしている中山さん。
 別の場所で、ガメラに関係があると思われる古代遺跡を調査中の研究家、手塚さん(ガメラの墓場はまだ出てこない)。
 中山さんと手さんの2人は、政府が非公式に開いた巨大生物対策会議に呼ばれる。場所は兜町界隈の料亭で、会議と言うより接待のような、政治家独特の雰囲気。学者である中山さんと手塚さんは、自分達にとって場違いな空気に戸惑う。
 接待に現れた女性の一人、山咲さんは、偶然にも手塚さんの知人だった。山咲さんの夫だった男性(故人)は、手塚さんと大学の同期で、親友だったのだ。山咲さんは巫女の家系に生まれた女性で、こんな世俗に汚れた場所にいる女性ではなかったはずなのだが…と、手塚さんは驚く。
 山咲さん、手塚さん、そして中山さんの3人は、料亭の部屋を一時離れて個人的な話を始める。
 山咲さんの夫は、ガメラとギャオスの闘いに巻き込まれて死んでいた。
「彼と、この子はガメラに殺されたのよ」
供養のお守り?を掌で包む山咲さん。夫をガメラに殺されたショックで、彼女は初めての子供を流産していたのだ。
「私の身の上なんかより…さっき話に出ていた卵胎生って、どういうことなのかしら?」
 山咲さんはギャオスに対して関心が強く、会議で中山さんが報告した「ギャオスが卵胎生に変化している可能性」について詳しい説明を聞きたがる。
 何だか良く分からないうちに巨大生物対策会議はひとまずお開きとなり、山咲さんと手塚さんは複雑な心境でその場を離れるのだった。

 数日後、ガメラとギャオスが新宿に飛来。ガメラの攻撃で地上に墜落したギャオスは、瀕死になりながらも下腹部から幼体を次々と産み落とす。中山さんの推察通り、卵胎生能力を有するようになっていたのだ。
ギャオスを追って地上に降りたガメラは、産み落とされた幼体ギャオス達が飛び立つ前に、至近距離からのプラズマ火球で焼き尽くす。しかし、それにより、周囲の避難の済んでいない多くの人々が巻き添えになる。
 避難する大勢の人の流れに逆行して、一人の女性がガメラを目指して走っていた。
 山咲さんである。懐には、供養のお守りと、神剣が。何とかして、ガメラに一矢報いたいという狂気の成せる行動だ。その思いは果たせなかったが、山咲さんは、唯一無傷で残っていたそのギャオスの未成熟卵(ラクビーボール程度の大きさ)を現場から持ち帰ることに成功する。
「彼の敵を討つわ…たとえ日本を火の海にしても」

 一方、文子ちゃんは、ガメラ関係の書籍を探して本屋を散策中、砕け散った勾玉(お守り袋に入れてある)が発熱するのを感じていた。振り返ると、そこにはガメラの形をしたデイバックを背負っている愛ちゃんが。初代と2代目のガメラ感応者の、運命的な出会いである。
 愛ちゃんには、海上保安庁勤務の歳の離れた兄がいたのだが、数年前、ヘリコプターを使った人命救助中に殉職。海と空を活動の場としていた体の大きな兄を、ガメラに重ね合わせて、愛ちゃんはガメラのファン?になっているのだった。ガメラのマスコットを自作して身につけており、背中に背負っているガメラの形をしたデイバックも自作品。
 文子ちゃんが勾玉の復活を感じて周囲を見回すと、愛ちゃんの背負っているガメラ・デイパックが目にとまり、愛ちゃんも何かを感じて振り向いたのだ。
 ガメラの暴走?に心を痛めている文子ちゃんは、愛ちゃんに
「私に代わって、ガメラと心を通じ合わせて欲しい」
と、2代目?となるように頼む。愛ちゃんは、この先どんな苦労があるかも知らず、文子ちゃんがガメラと心を通じ合わせた伝説の少女であることを知って感激し、引き受けてしまう。
 以後2人はケータイ(メール含む)で連絡を取り合い(「あっ、文子先輩からだ!」みたいなリアクション)、どんどん事件の核心に近付いていき、中山さん、手塚さん、山咲さんとも関わっていく。(愛ちゃんは今回、いわゆる、巻き込まれ型ヒロインとなる)

 山咲さんは、巨大生物対策会議のメンバーに近寄ってその力を利用し、自宅(マンションの一室)でギャオスの未成熟卵からギャオスの変異体を孵化させることに成功。イリスと名付ける。成長したイリスは、人を食料として狩り始めるが、山咲さんは動じない。
「私を食べてもいいのよ、ガメラを倒してくれさえすれば」
 そんな山咲さんに、イリスは子供のようになつく?のだった。

 中山さんはギャオスとイリスを追っているうちに、山咲さんと再会する。山咲さんは、イリスに関してシラをきり通すが、実はイリスを“餌場”へ誘導するなど、既に完全に一線を超えた行動に出ていた。

 そして、ガメラとイリスの第一ラウンド。
 まだ成長しきっていないイリスはガメラに対して不利となるが、イリスが複数のギャオスを操って?闘いは痛み分けに終わる。
 ガメラの暴走を抑えるために現場近くにいた文子ちゃんと愛ちゃんは、山咲さんと遭遇。
「邪魔をしていたのは、あなた達ね」
 山咲さんが、文子ちゃんと愛ちゃんに迫る。口論の末、山咲さん、神剣を取り出す。
「私はガメラを許さない」
 そこへ中山さんがやって来る。中山さんは、山咲さんに味方する男性が、巨大生物対策会議のメンバーの一人であることに気付いて愕然とする。

 そして、クライマックスシーン。
 ガメラが、イリスの腹部から山咲さんを救い出す。山咲さんは
「どうして助けるの…殺しなさいよッ、彼を殺したように、アタシも殺しなさいよォーッ」
と絶叫し、ガメラの掌に神器の剣をザクザクと突き刺す。それでもガメラは、山咲さんを優しく地面に降ろすのだった…。
 しかし、ガメラはイリスに手を串刺しにされてピンチ。愛ちゃんが叫ぶ。
「負けないで、ガメラ! そいつをやっつけて!」
 自分の腕をプラズマで焼き斬り、すんでの所でピンチを脱するガメラ。愛ちゃん絶叫、腕からも鮮血が迸る。それでも愛ちゃんは叫ぶ。
「やっつけて、ガメラ、やっつけて~ッ」
 ガメラはバーニング・フィストでイリスを建物の外へ突き出す。
狭い京都駅を抜け出し、闘いは京都の街という広い空間=ファイナル・ステージへ。

 ダメージの大きいイリスは触手の大半を食いちぎられ、空へ逃げる。
追って飛び上がったガメラは、空中でバーニング・フィストを作動。その輝きは全身に広がり、甲羅のスリットからもプラズマが吹き出す。
そのままイリスに急接近、特攻か?と思われたが、ガメラは急旋回、ガメラサイズのプラズマだけがイリスに激突。
 空中でイリスの全身は燃え上がり、まるで伝説の火の鳥のようになる。そして大きく輪を描きながら京都のお寺を目指すように降下していき、五重塔みたいな塔の向こう側に墜落、大きな火柱と美しい炎を巻き上げて、自らの最期を彩る。ガメラの勝利だ。その最期の炎の照り返しを受けて、泣き崩れる山咲さん…。

 しかし、上空には、イリスが呼び寄せたのか、ギャオスの群が接近しつつあった。
 愛ちゃんの持つ勾玉の光が消え、腕の傷が見る見る塞がっていく。
「ガメラ…!」
 その頃、手塚さん率いる遺跡調査グルーブは、海底に“ガメラの墓場”を見つけていた。
 京都の上空に迫り来るギャオスの群。
 ガメラは死んでしまうのか? それとも…?

****************************************

 後出しジャンケンで申し訳ないのですが、基本的には劇場で『ガメラ3』を見終わった直後に思い付いたものです。こんな『ガメラ3』が見たかったのです、私は。
(愛ちゃんを新たな感応者として登場させた理由は、愛ちゃんぐらいピュアな人がガメラと感応していないと、ガメラは平気で山咲さんを殺してしまうのが自然、という感じになってしまうので、そういう殺伐とした展開にならない「触媒」みたいな役目で出てもらっています)
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 写真撮影時40歳。
 いい歳して云々といった決まり文句は私には通用しない。たった一度の人生、他人に迷惑をかけない範囲で楽しみます。