2017-04

原発に関して、意外に知られていない(かも知れない)こと 【その2】

原発に関して、意外に知られていない(かも知れない)こと 【その2】

      東京に原発を造るバカはいない
                    それでも気になる原発の安全性の実情

 この記事は、原発に関して、意外に知られてない(かも知れない)こと の続きである。

 一昔以上前、広瀬隆という人が『東京に原発を!』という本を書いている。私は読んだことはないのだが、「アホかいな!」というツッコミを前提にした「お笑い系」の本ではなく、いわゆるトンデモ本のようだ。
 こういう本を書く人は、きっと人前で「原子炉圧力容器内の水は100度で沸騰している」と平気で言ってしまうような無知な人なのだろう。それでも、この手の本を読んで冗談抜きで感心している人もいるようなので、世の中は恐ろしい。
 映画『東京原発』も、内容的にはツッコミ所満載の「お笑い映画」なのだが、やはりそう思わない人もいるようなので、世の中は本当に恐ろしいものだとシミジミ感じる。

 さて、確かに東京には原発がない。
 しかし、東京にないのは、何も原発だけではない。東京には、黒部川第四発電所クラスの水力発電所もないのだ。(ついでに言えば、東京にはディズニーランドもディズニーシーもない)

 何故、東京には原発も、黒部川第四発電所クラスの水力発電所もないのだろうか?
 それは、両方とも現状の技術では、東京(都市部)に造るには効率が悪い発電所だからだ。
 原発は、土地効率(立地条件)の観点から、地価の高い都市部には不向き。あえて極端な例を出したが、東京に原発がない理由は、東京に黒部川第四発電所クラスの水力発電所がない理由と基本的には同じである。
 東京湾に面する広大な用地を確保し、その地盤を徹底的に改良すれば、東京に原発を造ることも不可能ではないだろう(原子炉等規制法にある「十分に公衆から離れている等の適切な立地条件を有していること」という項目に関しては、ここでは触れない)。
 しかし、そこまでして原発にこだわる理由などない。言ってみれば「東京に黒部川第四発電所クラスの水力発電所を造ろう!」という思想に正当な根拠がないのと同じである。

 何事も、適材適所だ。
 実際に、東京には原発はないが、火力発電所がある。
 中でも品川火力発電所は、都市ガスを燃やして発電するという、まさに都市型の発電所。敷地面積約10万m2で、114万kWを生み出す。敷地1万m2辺り、約11万kWであり、単位面積当りの発電出力が高い。

 これを原発と比較すると、品川火力同様に東京電力の発電所である福島第二原発は、150万m2で440万kWで、1万m2辺り、約2.9万kW。同じく柏崎刈羽原発は、420万m2で1290万kWで、1万m2辺り、約3.1万kW。
 ちなみに関西電力の美浜原発は、52万m2で166万kWと、1万m2辺り、約3.2万kW。四国電力の伊方原発は、86万m2で202万kWと、1万m2辺り、約2.3万kW。

 品川火力発電所は、原発の3~4倍も土地効率が高いのだ。
 しかも、ガス火力であるため、改良型コンバインドサイクル発電(ACC発電)という発電方式の実現が可能となっている。熱効率は発電所としては世界最高水準の50%で、これは原発の熱効率の30数%を大きく上回る。熱効率の面から見ても、品川火力発電所は既存の原発よりも優れているのだ。

 電力を大量に消費する東京などの都市部に発電所を建設することは、送電設備の建設を減らし、送電ロスを防ぐ意味で有意義である。同時に、そういった発電所は1万kWでも出力が大きく、1%でも熱効率が高いものにするべきである。
 ゆえに、東京に造る発電所は、原発ではなくACC発電、またはそれを更に改良したMACC発電方式を採用すべきなのだ。
 そういった観点からすると、東京に原発を造るなど、愚か者の発想でしかない。

 なお、既存の原発の土地効率や熱効率が火力発電所に劣っているのは、必ずしも原発という発電方式そのものが劣っていることを意味しない。
 原発は、あらゆる面で安全基準が火力発電所よりも厳しいため、熱効率を上げられないのだ。一番足を引っ張られているのは、蒸気条件(温度、圧力)の上限設定だろう。

  【 原子力情報なび「原子力発電の熱効率を知りたい」 】
  【 資源エネルギー庁ホームページ「南アフリカが開発を進める高温ガス炉とはどのようなものですか。」 】

 火力発電なら、熱交換系の配管の太さ一つとっても、肉厚をギリギリまで薄くして熱効率を高めることが出来る。極端な話、もし薄くし過ぎて蒸気漏れが発生した場合でも「じゃあ、もうちょっと厚めの配管にしよう」で済む。こうした事故が発生したとしても、死傷者が出ない限り、マスコミで大きく扱われることもないだろう。
 原発だと、そうはいかない。「漏れた」となれば、例え一次系でなくても大問題になる。当然マスコミも世間も大騒ぎだ。
 ちなみに、品川火力同様、ACC発電を採用している川越火力(中部電力)では、タービン付近で火災を起こしたりタービンの翼が折損したりと事故を起こしている。事故当時、マスコミや世間は、どの程度騒いだのだろうか。

  【 中部電力 川越火力発電所4号系列における火災について 】
  【 中部電力 川越火力発電所4-2号機の運転再開について 】


 それでは、日本各地の比較的僻地に造られている原発の安全性に、問題はないのだろうか。
 原発が火力発電よりも厳しい(つまり、余裕をより大きく取った)基準で造られている以上、原子力発電所は火力発電所よりもむしろ安全と言える。もちろん、放射線による構造物の劣化という火力にはないマイナス要素もあるが、当然ながらその分も見込んだ上での基準になっている筈だ。
 そういった基準を守った上で、設計・施工・運転・保守が行われていれば、原発の安全性に問題はない。

 事故想定を含む基準の話は次回に行うとして、ここでは私の経験上、少し気になっていることを述べておきたい。
 私は5年ほど前まで、電気系の保全技師として工場で働いていた。その時期に、職長研修として、社外で安全教育を受けたことがある。私自身、職場で最高レベルの安全教育を受けていたという自負があったので、社外の安全教育など不要だと思ったが、決まりごとだったのでしぶしぶ受けに行った。実際、所詮現場のプロではない講師の話など既にどこかで聞いたようなものばかりだったのだが、それ以外の意外なところで得るものがあった。
 研修は、社外の安全ナントカ協会が主催するものであるから、当然ながら全く別々の会社の人間が集まってくる。集まった人数が多いので、幾つかのグループに分けられての研修となった。別の会社とは言え、大半が同じ職種(主にエンジニア)・職階(主に職長)である。雰囲気は、ざっくばらんとしており、少なくとも私がいたグループは休憩時間に普通に雑談をしていた。
 そして、私のグループには、原発の建設を担当したエンジニアがいたのである。末端のメーカーではなく、中学生でも知っているような有名メーカーのエンジニアだった。その彼が苦笑いしながら話していた内容が印象的だった。
「原発建設の下請け・孫受け業者が連れて来る作業者の中には、派手に紋々(刺青)を入れた人がけっこういるんですよ。そんな人に、ちゃんとヘルメット被って作業しろとか、とても言えないですよ」
 私は「それを言うのがアンタの仕事でしょ」と心の中で突っ込んでいたが、研修所で他所の会社の人を説教しても仕方ないので適当に相槌を打っていた。しかし、こんな現場感覚の乏しい人が現場監督をやっていたのでは、原発の施工精度は高くないだろうなぁと、少々不安になってしまった。
 ちなみに、紋々(刺青)を入れた人が現場作業員として扱いにくいかというと、私は必ずしもそうではないと思う。私だったら普通に接するし、普通に注意する。別に頭ごなしに怒鳴る必要などない。自分も相手も仕事で現場に来ているのだから、普通に接すればいいのだ。
 これは単に、コワモテのオッサンに慣れているか否かというだけのことだと思う。私は工場の製品搬出設備を担当していたので、社外の物流の人やトラックの運ちゃんと接する機会もそれなりにあった。税関で絶対にチェックされるだろうなと思える風体の人もいたが、現場で仕事をしている分には、何の問題もなかった。たまに、トラックの運ちゃんがドアを開けたままトロトロ走っていて設備にぶつけちゃったとかのトラブルはあったけど。

 原発の建設現場の監督状況以外にも、気になることがある。それは、原発の電気設備の保全性だ。
 私の勤務していた工場の場合、設備の設計施工および試運転と、試運転が終了して稼動に入った後の修理・保守は、原則として「同じ社内の別々の部署」が担当していた。つまり、社内に設計担当の部署と保全担当の部署が、別々に存在していたのだ。私はずっと保守担当の部署にいたが、保守にいた人間が設計の部署に異動になったり、その逆の異動もあった。
 えてして、設計担当の人間は設計・施工がラクな設備を造りたがるが、そういう設備は十中八九、保守がやりづらい。保守担当の人間は、当然ながら保守するのがラクな設備を求めるが、そういう設備を設計するのはラクではない。よって、設計担当と保守担当の間では、限られた空間と予算と時間内に設備を造るにあたって、時には対立するのだ。
「こんなところにモーターを据え付けられたら、交換するのが大変だからダメ」
「いや、ここにしか据え付けスペースがないから、どうしようもない」
「軸を延長してコッチ側に出せばいいだろ」

 こういうところをキッチリ議論しておかないと、とんでもない設備が出来上がってしまうことになる。
 私が見て酷かったものに、グリースニップル(潤滑油給油口)がズラッと並んでいるのに、周囲に隙間がないので全くグリースアップ(圧力を用いた給油)できないという設備があった。グリースニップルにはグリースガンという専用具を用いないと給油できないのだが、それにはある程度の空間(距離)が不可欠なのだ。銃身がフレキジブルなタイプのグリースガンを持ってきても、銃身の曲率半径による限界があるので、一定の距離がないと注せない。
 保全担当としては、グリースアップのために設備をいちいち分解するような暇はないので、そういう設備はグリース切れして故障するまで放置されることになる。それが許されない場合は、保守担当が独自に予算を取って、その設備を改造してしまう。

 例外はあるが、一般的には保守業務を経験したことのない(または保守業務経験の浅い)人間が設計すると、保全性の悪い設備が出来上がる傾向が強い。
 原発を設計施工している人間が、原発の保守業務を担当することがあるのだろうか? おそらくないだろう。
 それどころか、設計施工を担当する会社と、保守を行う会社自体が異なる会社なのではないだろうか。(シュラウドの交換のような大規模な保守ではなく、工場でいう月例点検的な保守)
 ポンプがあればモーターもある筈だ。こういった機器は、定格運転させた状態での点検を行わないと、異常を見落としやすい(ベアリング部に温度シールを貼っておくなどの点検手段もあるが、やはり触診・聴診よりは不確実だろう)。モーターの場合、電流や絶縁の値が正常であっても、ベアリングに異常(劣化)が生じている場合が往々にしてある。最悪の場合、ある日突然ステーターとローターが接触してモーターとしては致命的な故障に至ることもあるのだ。
 点検・保守がしづらい設備の場合、そういった故障が生じやすくなる。

 モーターが動かなければ、ポンプは動かない。
 ポンプが一台止まったぐらいでは重大な事故には発展しないとは思うが、かつて工場の現場で電気設備の保守業務を行っていた者としては、原発の設備の保全性がどの程度の状態にあるか、やはり気になる。

 さて次回は、私が学生時代に原子力実験設備でアルバイトしたときの経験談を中心に書こうと思っている。
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 いい歳して云々といった決まり文句は私には通用しない。たった一度の人生、他人に迷惑をかけない範囲で楽しみます。