2017-04

原発に関して、意外に知られてない(かも知れない)こと

原発に関して、意外に知られてない(かも知れない)こと

      ピークカットしても原発は減らない
                        東京に原発を造るバカはいない


 原発に反対している人がいる。
 もし原発なしでも何の問題も生じないなら、ない方が良いに決まっている。
 しかし、現実はそうではない。現状のまま原発を全部止めたら、当然ながら電力が不足する。原発を止める・なくすためには、その問題解決策を、セットで考える必要がある。

 一部の人は、ピークカット(電力需要のピークを減らす)をするだけで原発が不要になると考えているようだが、それはとんでもない誤解である。
 ちょっと調べれば分かることなのだが、原発はベース電源として運用されている。ピーク時の電力が減ったからといって、原発を止めるということにはならない。それが、日本の電源運用の基本的な考え方なのだ。これは、図を見れば一目瞭然である。

  【東京電力のホームページの「1日の時間帯別発電の組み合わせ」】

 ピークカットを行っても、不要になるのは石油火力発電であって、原子力発電ではない(揚水式発電所は、夜間の電力を貯蔵する役目があるので、不要となるのは石油火力発電の方だろう)。
 もちろん、停電を予防するためにもピークカットは行った方が良いに決まっているが、それと原発廃止は全く話が別なのである。

 それでは、日本の原発を止める・なくすには、どうしたら良いのか?
 日本政府の「原発をベース電源として運用する」という基本方針を変えさせる、即ち「原発以外の発電方式をベース電源として運用する」という基本方針を採らせれば良いのだ。

 その前に、なぜ現状で日本政府が「原発をベース電源として運用する」ことを基本方針とし、電力会社もそれに従っているのかを確認しておこう。
 想像力の無い人は、すぐに「原発を建てれば建設業者や政治家が潤う」という癒着とか談合の類を言い出すが、そんなことは火力発電所でも出来ることである。原発には、原発特有のメリットがあることを忘れてはならない。

 原発のメリットとは何か?
 それは一言で言えば、「安定性」である。
 原子力発電は、いろんな意味で「安定性」を有しているのだ。

 まず、日本政府から見たメリットとして挙げられるのが、輸入における安定性。

  【資源エネルギー庁のホームページの「日本のウラン調達の現状」】

 これを、

  【資源エネルギー庁ホームページの「エネルギー資源の確認可採埋蔵量」】

と比較するだけでも、とりあえず原発をベース電源にしておきたい気持ちになってくる。石油だけでなく、天然ガスもかなりの割合が中東に握られているのだ。(石炭に関しては後述)
 一般人の感覚からすると、ガソリンスタンドは日本中どこでもあるし、ガソリンはいつでも手に入ると錯覚しがちだ。
 しかし、想像して欲しい。もしも日本国内には、広島にしかガソリンスタンドが存在しなかったとしたら? そしてその広島は治安が悪く、一般市民も平気で巻き込む大規模な暴力団抗争がいつ始まるかも分からないような状態だったとしたら?
 そんなところでしか手に入らないガソリンに対しては、少しでも依存度を減らしていきたいと考えるのが当然だろう。

 また、原発の燃料であるウランは供給元が安定しているだけではなく、容量的にコンパクトであるというメリットがある。

  【資源エネルギー庁ホームページの「100万キロワットの発電所を1年間運転するために必要な燃料」】

 これを見ると、ウランは他の燃料と比較すると、桁違いどころか1万分の1のレベルである。このコンパクトさは、輸送と備蓄の両面で大きく寄与する。

 ウランは危険だというイメージがあるが、貯蔵という観点からすると、石油や天然ガスの方が余程危険だというのが私の持論だ。ウラン貯蔵なら、テロリストが外から対戦車ロケット砲を撃ち込もうが、数発程度だったら安全を確保する構造にすることが経済的に可能だ。実際、原発はそういう構造に(結果的に)なっている。

  【資源エネルギー庁ホームページの「原子力発電所がミサイル攻撃を受けたらどうなりますか。」】

 しかし、石油や天然ガスの貯蔵施設の場合、規模が大きすぎるので、全体を堅牢な構造にすることは事実上不可能である。
 石油や天然ガスの貯蔵施設がテロリストに狙われた場合、例え対戦車ロケット砲を数発撃ち込まれただけでも、凄惨な被害が発生する可能性が高い。
 もし私が「死ね死ね団」のような日本を憎むテロリストだっとしたら、ウラン貯蔵施設ではなく、石油タンクやガスタンクを狙うだろう。
 燃料貯蔵施設の隣に住めるものなのかどうかは知らないが、もし住むのなら石油タンクやガスタンクの隣よりも、ウラン貯蔵施設の隣に住みたいものである。

 電力会社にとっての原子力発電のメリットもまた、安定性である。
 何と言っても、燃料交換しないで約1年間連続運転することが出来るというのは大きな魅力だ。
 これも、想像してみて欲しい。世の中に、暖房設備が石油ストーブと原子力ストーブの2種類しかなかったとする。更に、石油ストーブは毎日毎日燃料を給油する必要があるけれど、原子力ストーブは一度燃料をセットすれば一冬の間もつとしたらどうだろう。おまけに原子力ストーブは酸素を消費しないから、換気の必要もないのだ。
 私だったら、原子力ストーブを選ぶような気がする。

 最後に付け加えておかなければならないのは、「原子力発電は準国産エネルギー」という日本政府の願望だ。「もんじゅ」の事故の後、政府の核燃料サイクル計画がどうなったのかについてはここでは触れないが、資源に乏しい日本が、電力エネルギーに関して高い自給率を持つようになることを望むこと自体は、何も間違っていない。
 私が思うに、原発推進を決めた政府の年寄り連中の中には、戦争中に物資の補給を絶たれて苦労した経験を持つ者がいるのではないか。輸入を絶たれた日本がどんなに脆弱か、補給を絶たれた戦場がどんなに悲惨か。それが身に染みている(トラウマになっている)からこそ、核燃料サイクルによる電気エネルギーの自給率向上を計画したのではないだろうか。

 さて、それでも原発は危険だから、「原発を廃止し、原発以外の発電方式をベース電源として運用する」としよう。
 現在、原発は日本の発電設備容量の約5分の1を占めている(発電電力量としては約4分の1)。

  【資源エネルギー庁ホームページの「二次エネルギーの動向」】

 原発を廃止した場合、それに代わるベース電源は何になるのか。
 水力は、現状でほぼ限界なので発電電力量的に無理。
 風力や太陽光は、現状では発電規模が問題外(風力は、将来的にも問題外)だし、安定供給という観点からもベース電源に向かない。
 石油と天然ガスは、燃料の安定供給に問題がある。
 消去法の結果、残るのは石炭火力となる。
 石炭は、確認可採埋蔵量と可採年数ではダントツでトップだし、供給元もウランと同じように多様で安定している。ただし、前出の「100万キロワットの発電所を1年間運転するために必要な燃料」という点では最も劣っている。
 更に、石炭火力には、CO2排出量が最も多いという欠点もある。

  【原燃のホームページの「原子力発電は環境保全に役立つのですか?」】

 しかし、原発を廃止するとなると、石炭火力しか選択肢がないというのが現状である。
 そういうわけで、このコラムでは、「原発廃止」とは「石炭火力推進」とセットで論じなければならないという結論に達した。

 お腹が減ってきた。夕飯の時間である。原発の安全性や、「東京に原発を造るバカはいない」という話は、また来週にでも…。
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コメント

こんばんは、私は20年前に原発ジプシーを読んだものです
最近すっかり熱く語る気持ちを失ってしまいましたが、興味のあるテーマです。次回の展開期待してます。

コメントありがとうございます

 こんにちは。原発ジプシーという言葉は、約20年前に原子力実験設備でバイトをしているときに聞きました。その辺の詳しい話は次々回になりますが、次回でも少し触れるので、お待ちください。

全くもって同意です。

とりあえず「原子力発電は危険だ。廃止すべきだ。」と言う方がよくおられますが、
現実問題として難しいですよね。(その人が電気を使わないのならともかく。)

だからといって原子力発電が安全と言える訳ではありませんが・・・。

早く核融合発電ができないか、と思うばかりです。無理ですかね?

>早く核融合発電ができないか、と思うばかりです。無理ですかね?

 ITERの建設は別として…。材料を試験するためのIFMIF計画の施設運転開始が2017年ないし2019年の予定となっているようです。材料開発自体はまた別のところでやると思われますが、2030年頃には材料の方だけでも量産化のメドが立っていれば良いのですが。
 頑張れ! 核融合開発に携わる科学者&技術者!

あとは核燃料のゴミをどうするかですよね。
どう処理するか、どう減らしていくか。

震度6強の地震で放射能が漏れる原発の近くには住みたくないですね。
石油は燃えても、たかが知れてるけど、放射能が漏れた方がヤバイと思います。
早く核融合発電が実用化して、原発に頼らなくても済むようにしてほしいです。

一足飛びしすぎです

原発反対派は明日にでも全稼動停止を求めているかのように言及していますが、そんな非現実的な要求を掲げるような人はいませんよ。原発で不足する電力は徐々に安全な発電に切り替えるというのが主張なはずです。原発推進派の人は、この手の反論があまりにも多い気がします。

論理的な原発の話読むと新鮮ですね

うなずきながら読みました。
さる原発立地県在住ですが、「反原発」論の多くが、どこかヒステリックというか扇情的というか、非科学的かつ非論理的であるな、という印象を受けておりました。
(「東京に原発を」など、恐怖を煽る文体が「ノストラダムスの大予言」そっくりでした。)
 このテーマで是非是非続きを読みたいです。

原子力エネルギーと原子爆弾を同じものと思っているからヒステリー起こす。

> 原発の安全性や、東京に原発を造るバカはいない
セットで論じてほしいです。
原発の問題は、
・誰かの生命を犠牲にしないと成り立たないシステム(本でしかしりませんが)
・恩恵を受けている人≠リスクを背負っている人というシステム
ということが問題では?

脱原発より原発を安全に稼動することに力を入れたほうが良いと思います。
建物の耐震設計の技術は日進月歩ですし。

コメントありがとうございます

 コメントをして下さった皆さん、ありがとうございます。
 参考にさせてもらいます。
 
>セットで論じてほしいです。

と書かれた方は、弊ブログ同カテゴリーに【その2】【その3】がありますので、そちらをご一読ください。

 なお、文書の意図を曲解されたり、技術的に明らかに誤っている内容のコメントは削除させてもらいました、あしからずご了承ください。
 それにしても、1年5ヶ月前にUpした記事にコメントを付けてもらうのは、不思議な感じです。

newsingでのpickupを見て拝見しましたが・・・

コメントが伸びているのには気づきませんでした。
素人の稚拙な計算ですが、URIおよびそのコメントにに将来の可能性についての自分なりの考えというか視点を書いてみました。
暇なときにご一読くださると嬉しいです。

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

コメントが増えたのは、某ニュースサイトで紹介されたからではないでしょうか。

コメントで個人的に分からないところがあったのですが、

「原発で不足する電力は徐々に安全な発電に切り替える」
 本文中にあるように、「安全な発電」としては石炭火力発電しか有り得ないのが問題なのではないでしょうか。
 本文には書かれていないものの、他に「安全な発電」があるのでしょうか。

「原発の問題は、
・誰かの生命を犠牲にしないと成り立たないシステム(本でしかしりませんが)」
 原発がどうして誰かの生命を犠牲にしているのでしょうか。
 まったくわかりません。教えて欲しいです。

http://genpatsu_shinsai.at.infoseek.co.jp/hirai/

ゆっくり読んでみてください。
その上で再度記事を書いてみてください。
貴方が原燃の関係者でなければ!

ゲンさんへ

 挙げられた記事は、かなり以前に読んだ記憶があります。
 残念ながら、原発以前の問題として、技術論的にレベルの低い内容であり、「技術者でない人の認識はこの程度」という以上の感想を持ちえません。

 原発のことであっても、アイドルのことであっても、それを語るには、ある程度の経験とそれに基づく知識や理論を持っていなければなりません。

 ゲンさんのコメントを読んで、
「中途半端な人が書いた記事を素人が読み、誤った認識を持ってしまうことが、原発よりもはるかに恐ろしい」
と思いました。
 こういう被害は、どうやって防げばいいんでしょうか? ホント、放射線よりはるかに恐ろしいです。

管理人の方は、
電力会社で働いていらっしゃるのですか?
もしくは、原燃の関係者の方ですか?

 いいえ、違います。元、一般的な工場のエンジニア(8年半ほど電気保全工として勤務)です。
 20年以上前に原子力研究設備でバイトした経験はあります。

http://sinden.blog6.fc2.com/blog-category-15.html

コメントされる方へ

 弊ブログ同カテゴリーにある【その2】【その3】

http://sinden.blog6.fc2.com/blog-category-15.html

を読まずに書かれたと思われるコメントは承認せずに削除しますので、悪しからずご了承下さい。

失礼しました

記事ネタに引用させて頂きました。
よかったら見て下さい。

 記事を拝読致しました。
 チェレンコフ光を見たなんて、とてもうらやましいです。

 ただ、読んでいない本を批判するのは良くないと思いました。
 どんな本でも、記事でも、最低限自分で読んでから、意見を書いた方がいいと思います。
 生意気なことを言ってしまってすみません・・。

 引用部を読んだだけでそのレベルの低さが十分に伝わり、全体を読むに値しないと判断した場合は、その限りではないと思います。

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