2017-10

村田諒太VSアッサン・エンダムの感想

村田諒太 VS アッサン・エンダムの感想


 もうすぐ放送されるWOWOWエキサイトマッチを観たら、今の自分の素直な気持ちが失われるかもしれないので、その前に書き留めておく。
 生中継でTV観戦していて、12ラウンドのゴングが鳴った瞬間に思ったことは二つ、

「ここがラスベガスだったら、3-0でエンダムの勝ちになる」
「でもここは日本だから、判定は割れるだろう」

 それでもエンダムが有利だと思った。
 何故なら、村田は余りにも手数が、特にジャブが少なかったからだ。

 「ガードを固めて前に出るスタイル」、「鉄壁のガード」と言えば、一時期までのミゲール・コットを思い出すが、コットは前に出ながらジャブをそれなりに出していた。そして、ボディブローはベルトラインギリギリになることも多かったが、とにかくパンチの角度と言うか軌道が見栄えがして攻勢をアピールするブローだったし、実際にダメージを与えているという事実が印象に変換されて観ている者にも伝わってきたものだ。

 村田には、それがどちらも無かった。
 「ガードを固めて前に出て、プレッシャーを与える」だけでは、当然「手数」には含まれないし、「攻勢」にもならない。ボクシングに於いて「攻勢」とは、パンチを繰り出して初めて成立するものであるからだ。「ガードを固めて前に出て、プレッシャーを与える」ことは、「リング・ジェネラルシップ(主導権支配)」には成るが、「攻勢=攻撃的である」ことには成らないのだ。
 これは、日本でもラスベガスでも同じだ。

 相手から1度ダウンを奪ったラウンドは原則として「10対8」となるが、相手から「10対9」のラウンドを2度奪われたら、それで相殺されてしまう。例えそれが、僅差のラウンドであったとしてもだ。
 だから当然、「豪快なダウンを奪ったラウンド」×1は、「僅差で判定を奪われたラウンド」×3に劣る。これは、日本でもラスベガスでも同じだ。

 おまけに、ラスベガスではジャブを必要以上に高く評価する(所謂ラスベガス採点)。だから、
「ラスベガスだったら、3-0でエンダム」
「日本だから、2-1」
となる。

 更に言えば、村田諒太が勝とうがアッサン・エンダムが勝とうが、どちらも真のチャンピオンでは無いのだ。WBAミドル級王座の上には、WBAミドル級スーパー王座が、そしてそれを含む3団体統一王座が有るからだ。
 現時点で世界最強のミドル級のボクサーは、3団体統一ミドル級王者ゲンナディ・ゴロフキンであることは、ボクシング界の一致した見解である。言い方を変えれば、ミドル級の真のチャンピオンは「ゲンナディ・ゴロフキン」か、「ゴロフキンに勝ったボクサー」なのだ。

 バーナード・ホプキンスがミドル級の主要4団体王座を統一していたとき、同級のWBAのレギュラーチャンピオンなど、誰も注目していなかった。
 前王者ダニエル・ジェイコブスが三団体統一王者ゲンナディ・ゴロフキンに敗れたことで統一、消滅した筈のWBAミドル級王座など、所詮はそれと同じである。

 それなのに、生中継時のTV放送や一般の紙媒体新聞各紙は、ゴロフキンのゴの字も取り上げようとしない。まるで、WBAを含むミドル級三団体統一王者などこの世には存在せず、村田諒太VSアッサン・エンダムの勝者が、ミドル級で唯一最強のボクサーとなるかのような扱いだ。

 現在、ミドル級で世界を制する最強のボクサーは、村田に勝ったエンダムでは無いし、エンダムVS村田の再戦の勝者でも無い。 既に書いた通り、三団体統一ミドル級王者ゲンナディ・ゴロフキンであり、彼に挑戦して勝つ可能性を持つボクサーなのだ。
 ぶっちゃけた話、既に実現が決まっているゴロフキンVSアルバレスと比べたら、エンダムVS村田の再戦など、本当に瑣末なことである。多分、村田(陣営)は相性の悪いエンダムとは再戦せず、WBO王者のサンダースを標的にするだろう。私も、その方が良いと思う、いろんな意味で。

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コメント

初めまして 初コメントさせていただきます
村田のリングジェネラルシップと攻勢点に関しては同意件です
ですが、ヌジカムの攻勢点という点ではどうでしょうか ここら辺がベガスジャッジなのでしょうが、ヌジカムには逆に手数はあっても前進がないように思います 攻勢点を取るためにはブロックされた後に腰砕けさせる連打をまとめて押し返す、等が必要だと思います さもなくば後退しながらでも相手の顔を腫らすクロフォードのような質のパンチがいる
ヌジカムにはそのどれもなくて手数はあっても攻勢点は皆無だったように見えます そっから副次的にリングジェネラルシップも同様に解釈します そうなるとお互い攻勢点では差が付かずリングジェネラルシップにより村田の大差判定と考えます そしていうならガードの上からでまダウンはダウンな点も考えればヒット数では大差なくとも腰砕けを作った数というてんで有向打でもやはり村田とみます ここら辺は価値とまではいかなくともシーサケットがロマゴンに肉薄したという解釈にも通じますね
逆にスタッツ重視という価値観が本当にジァッジングに存在するのならディフェンス以外全ての項目でヌジカムのフルマークですね リングジェネラルシップ含め
メイウェザーやカネロやリゴンドーらの判定と同じ種類かと
村田はヌジカムよりもサンダースを片付けてからレミュー、チャーロで経験を積んでこのスタイルでゴロフキンに当たってほしいです

攻勢点

 あなさん、コメント有り難うございます。

 私の考えを端的に言ってしまえば、今回の村田 VS エンダム が村田が3-0で勝ちとするなら、メイウェザー VS カネロ も、カネロが3-0で勝ちにしないと整合性が取れないということです。
 実際には、メイウェザー VS カネロ におけるメイウェザーの勝利をボクシングファンもボクシングメディアも支持したし、カネロを支持したジャッジは事実上の処分を受けた。だったら、村田 VS エンダムも2-1でエンダムに付けて当然なのに、今度は村田を支持したジャッジが処分を受けた。これは変でしょうと。

>さもなくば後退しながらでも相手の顔を腫らすクロフォードのような質のパンチがいる

 ボディへのジャブだったらクリーンヒットを重ねても腫れないし、後半フットワークが悪くなっても単なるスタミナ切れなのかダメージの蓄積なのかジャッジには分からない。
 ジョーさんの著書にもありましたが、一見フラッシュダウンのようなダウンが実は試合を決めていたという、ダウンしたボクサー自身の告白もあります。

 スリッピング・アウェイというディフェンスを認めるなら、パンチを受けてあえて大きく吹っ飛んでダメージを逃がすというディフェンスも認めるべきであり、ダメージによる腰砕けとは区別するべき。
 私の眼には、エンダムが腰砕けになっているようには見えませんでした。パンチの勢いを受けて後ろに飛んだだけ。

 実は私が一番ショックだったのは、アマチュア時代の村田選手が
「プロには4つも王座が有るが、アマチュアには1つしかない」
といった趣旨の発言をしているのに、プロ転向後「5つ」のベルトのうち、一番価値の無いWBAレギュラー(事実上、スーパー王者に対する1位挑戦者扱い)を取りにいったことです。最初からサンダースを狙って、ゴロフキンとの最終統一戦というシナリオを描いて欲しかったです。
 

 

返信ありがとございます
メイカネロについてですが、この試合に限らずメイがポイントを取れる理由の根本にはパンチのクリーンヒットをとれる、タッチボクシングと揶揄されるがしっかり撃ち抜きカウンターにより相手の攻勢を中断させている、という点があるかと
ヌジカムはほとんどブロックの上でやはり別物だと思います またよく言われた村田の手数ですが、致命的なカウンターを回避する以外にもメイのようにリング中央を出て手数を使うとコンビネーションの技術が高くない分アウトボックスされ触られたパンチに攻勢を止められたと判断される可能性がありその場合ヌジカム戦もメイカネロの二の舞になった可能性もあるかと思います
村田とメイ以降のカネロの戦術が同質なのは同感で言わば実質待ちなため好きではないですが、本人としても限界のところでやってると思うので文句はないですね
ちなみに村田がカネロとやる場合ハンドスピードとパンチの種類の問題でカネロ戦のメイと同じことをカネロにやられそうでゴロフキンよりもさらに勝ちの目がなさそうですね
スリッピングアウェイの件に関してですが、ディフェンスとダメージ軽減は別に考えます どうしようもないタイミングのパンチには飛びのくというのは勿論有向ですが、これをスリッピングアウェイと呼ぶには抵抗があります 二者の区別はやはりパンチを殺したあとバランスを維持できるかどうかかと ダメージの有無は本人にしか分からなくまたボクシングは相手の重心を崩すのが狙いの一つですから攻防がオフビートになる場面はリングジェネラルシップひいては有向打と考えます 逆の例がロマゴンや今回の村田ですね ロマゴンは必ず打ち返せるバランス以上は動かず村田も縦ガードではなくパリやブロックとフットワークを連動して必ず足場を譲りませんでした
ただヌジカムの狙いについては管理任さまと同じ考えですぐダウンするわりにはあっさり回復するのはそれでしょう アンディリーしかりリゴンドーしかり
結局のところ自分がこの試合でヌジカムよりによって考えるとしたら腹パンなど見えづらいパンチがほとんどブロックしてると思ってたらカメラで見たら隙間から当たってた、くらいしか思い付かないです

マヨルガとハメド

 私はやはり単に勢いで重心を崩すのとダメージによるふらつきは全く別物として区別します。
 柔道なら、「相手に押されて重心を崩した」ことがポイントになりますが、それは柔道が「脳や内臓へのダメージがゼロでも、単に物理的にダウンさせれば良い」という投げ技を競う競技だからです。
 
 ボクシングでは、それはスリップダウンとして評価されません。
 ボクシングは相手の重心を崩すこと自体は評価しないという基準は、全ての局面で貫かれるべきだと考えます。
 ただ、どうしてもルール上、重心を崩されたところに軽くパンチをクリーンヒットされて転んでもダウンになりますが、それは飽く迄も「重心を崩された」過程を評価するのではなく、軽くであってもパンチをクリーンヒットされて足の浦以外がリングに触れた結果のみを評価しているということです。

 だから私はマヨルガもハメドも基本的には同じ評価で、
「どんな姿勢になろうが(バランスを崩していようが)、パンチを避ければ(ダメージを回避すれば)評価する」
「どんな姿勢になろうが(バランスを崩していようが)、パンチを当てれば評価する」
となります。
 ダメージを受けていることが明確に分かる場合を除き、バランスが良い悪いは、打撃格闘技として勝敗に関わる評価とは無縁だという考えです。
 そこが、投げ技を競う競技と、打撃を競う競技の根本的な違いであろうと。

>村田とメイ以降のカネロの戦術が同質なのは同感で言わば実質待ちなため好きではないですが、本人としても限界のところでやってると思うので文句はないですね

 でもそれだとバーンズがインドンゴに負けたことを「相性が悪いからしょうがないよね」で済ませるのと同じ感じがして私は嫌です。村田には、初期型でいいのでコットのような、手数を伴った前進をしてポイントもキッチリ拾っていける闘い方をして欲しいと思います。

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 写真撮影時40歳。
 いい歳して云々といった決まり文句は私には通用しない。たった一度の人生、他人に迷惑をかけない範囲で楽しみます。