2017-03

『響鬼』は何故“マッタリした『牙狼』”になれなかったのか?

書く気のあるうちに『響鬼』を総括する 【その2】

『響鬼』は何故“マッタリした『牙狼』”になれなかったのか?

 商業的に失敗作であったならば、『響鬼』は2クールで番組打ち切りにするべきだった。TV番組も商品である以上、市場から評価されないのなら、途中退場もやむを得ない。
 実際には、『響鬼』は全50話程度が予定通り放映されるようだ。
 30話以降の『響鬼』が大方の視聴者に受け入れられたかどうかは、視聴率の推移を見れば分かる。30話以降、『響鬼』の視聴率はむしろ上がっているようだ。私も、29話までも30話以降も、総合的には同じくらい楽しんでいるクチだ。番組側は、賭けに勝ったのである。しかしその賭けは、負ける危険性も大いに孕んでいた。
 30話以降の『響鬼』が迷走し、視聴率がガタ落ちとなる危険性もあったのだ。『ネクサス』のように番組を打ち切り、次回作にバトンタッチすることが、リスクを最小限に抑えるベストな選択であったと今でも思う。

 30~38話(特に30~35話)までの『響鬼』のスタッフは、それこそ鬼のように頑張ったのではないかと思う。撮影期間を圧縮し、予算を切り詰め、何とか放映スケジュールに間に合わせているような印象が、画面の端々から感じられた。
 でももし、取替えのきかないスタッフが、過労で倒れていたら?
 もし、スケジュールの圧迫によって撮影の安全チェックに抜けが出て、大きな事故が起きていたら?
 スタッフも、『響鬼』という番組も、視聴者も、皆悲しみに包まれていたことだろう。
 ヒーロー番組は、視聴者に夢を提供するものである。突貫工事でトンネルを掘るような危険を冒してまで作って欲しくはない。もちろん、アクションあり、火薬ありのヒーロー番組製作には危険は付き物だ。しかし、どこかで一線を引かなければならない。
 30話以降の『響鬼』がその一線を越えていたのかどうかは分からない。今後、『響鬼』が悪しき前例とならないことを祈るばかりだ。

 さて、『響鬼』は子供向け番組であったが、大人の視点で見ても楽しめた。私にとっては、鬼と敵の戦いが、「狩り」または「漁」のフォーマットを持っていた点が面白かった。DAは猟犬で、鬼はハンター。「たちばな」の面々は、ハンターと猟犬の世話をする家族のようなものだ。魔化魍という獲物を狩ることで繋がりあっている彼らには、古き良き「村社会」の感覚も存在した。
 「魔化魍を退治する際のシーケンス」は、原則として

 童子達による人的被害発生。
 猛士の情報網がそのことを捉え、分析担当が魔化魍の種類を推定。
 魔化魍の種類、現場位置、鬼の勤務シフトを照らし合わせ、担当する鬼をおやっさんが決定。
 鬼特有の決め仕草を決めて鬼出動。切火で送り出される。
 鬼が現場に到着、DAを放って魔化魍を捜索。その間はベースキャンプで待機。
 DAが魔化魍を発見、帰還。
 鬼がその情報を取り出し、魔化魍のいる現場へ向かう。
 (これらの間、鬼と本部は要所で連絡を取り合う)

という一連の手順を踏んで描かれていた。一部が省略されることも多かったが、「行間を読む」といった感じで補完できる雰囲気は有していた。

 『響鬼』の面白さは、魔化魍との戦いという「結果」よりも、魔化魍を発見するまでの「過程」にあったと思っている。ヒーロードラマとしての『響鬼』の魅力は、この「魔化魍発見までの過程」の描写に拠るところが大きい。
 『謎の円盤UFO』というイギリスのSFドラマもそうだった。シャドーの警戒網がUFOをキャッチし、インターセプターやスカイ1が発進して、UFOと遭敵するまでの「過程」が見せ場だった。そこには、組織と個人が一体となって流れるように動くシーケンスの美学があった。UFOと戦闘機の戦闘シーンは、過程の最後を締めくくる打ち上げ花火のようなものだ。

 ヒビキと明日夢の師弟関係その他の人間ドラマに、注目すべき点は確かにあった。しかし、明日夢の日常を中心としたマッタリした展開は退屈で、ヒーロードラマとしては面白くなかった。「高校生日記」なら、他所でやってくれよという感じである。
 「魔化魍を退治する際のシーケンス」自体は、それなりにテンポが良く、この部分がマッタリしていたとは思わない。あれが2回に1回は「収穫なし」で終わっていたなら、マッタリした展開といわれても仕方がないが、実際にはそんなことはなかった。

 私は総体としての『響鬼』に関しては、 『響鬼』は失敗作である(駄作ではない) に書いた通り、失敗作だと断定している。
 『仮面ライダー響鬼』は「完全新生」という謳い文句とセットで語られることも多いが、言葉通りに受け止めるのなら、それは矛盾したコンセプトである。シリーズものを「完全新生」するということは、別の作品にするということであり、全く別物となった作品に、シリーズの最新作を名乗る資格などない。『響鬼』が本当に「完全新生」を目指したものであるならば、「仮面ライダー」シリーズではない、全く別の新作品として世に問うべきであった。
 また、作品が「完全新生」を謳っていながら、作品を商業的に支えるバックボーンであるメインスポンサーや主力商品の展開、および番組の放送時間枠は、従来と何ら変わらない旧態依然としたものであった。これも、大いに矛盾していた。
 大人をコアターゲットにしたドラマを作るのなら、子供向け玩具を主力商品にするなど、愚の骨頂である。
 大人をコアターゲットにした番組を、戦隊ものとセットにして『スーパーヒーロータイム』と称される枠で流すなど、場違いも甚だしい。

 TVの仮面ライダーは、子供のものである。私は子供の頃、TVで仮面ライダーを観て楽しんだ。今の子供にも、TVで仮面ライダーを観て楽しんで欲しい。身近で毎週観ることの出来る、TVの仮面ライダーは、子供のことを最優先して作られるべきだと思う。
 毎年、大勢の3~4歳児が特撮ファンになる一方で、それと同じくらいの数の6~8歳の児童が特撮を卒業していく。しかし、彼らのうちほんのごく一部が、大人になったある日、再び特撮に戻ってくる。また、そうでない大人も、自分の子供が特撮番組を観るようになると、一緒に観るようになるし、玩具も買い与えるようになる。
 このサイクルで、特撮ファンは今まで世代を繋いできたのだ。

 私も昭和ライダーシリーズと昭和ゴジラシリーズの終焉によって自然に特撮を卒業し、一生懸命集めたカードの類もどこかへ消えてしまった。その後、偶然『ギャバン』と遭遇してから再び特撮番組をチラチラ観るようになったが、これは子供の頃に特撮を観ていたからこそである。現在の子供向け番組としての『仮面ライダー』を否定することは、過去の自分を否定することであり、結局は現在の自分を否定することである。そんなことは出来ないし、やりたいとも思わない。

 もちろん、大人をコアターゲットにした仮面ライダー作品があっても良いと思う。
 それこそ、月9でも火9でも水9でも良いから、やって欲しい。スカパーやWOWOWなどの有料放送でも良い。Vシネマでも映画でも良い。もちろん、『牙狼』のような深夜番組枠でも良い。
 『響鬼』は、何故『牙狼』のような番組スタイルを選ばなかったのか?
 確かに予算的には規模が小さくなるかも知れない。それでも、「ヒビキと明日夢の物語」は貫けるだろう。
 本当にやりたいことがあるならば、それに相応しい場所でやるべきだ。
 そういう意味でも、『響鬼』は失敗作だった。
 二度と、こんな失敗が繰り返されませんように…
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コメント

同感です

私は「響鬼」がとても好きで、好きという大前提にたって感想などを書くわけですが、
響鬼が上手くいっていないことに対して、どう気持ちを整理していいのかアレコレ思いが飛んでしまいます。
が、この分析を拝見して、ああ、冷静に書けばこういうことになるのだと(笑)。

「響鬼」は仮面ライダーでなくてもよかったと思うし、あの時間帯に流すならもっとこどもウケする内容にするべきだったろうし、この「響鬼」なら金10あたりか深夜がよかったんじゃないかと思うし、できることならVシネマで仕切りなおしてほしいと思っているし、全く同感です。

ちなみに、私の記憶にあるはじめての憧れはモモレンジャー(多分再放送)で、本気でサイドカーに乗ってみたいと思ってました。…今でもちょっと思ってます^^

フムフム「金10」ですか…

 コメントありがとうございます。
 私個人の気持ちとして、一番引っかかった…というか、嫌だったのは、
「子供向けと偽って、大人向きの番組を作ろうとしているのではないか」
という疑念が沸いてしまったことです。
 もしそういう部分があるとしたら、それは子供を裏切るということであり、『スーパーヒーロータイム』では一番やってはいけないことだと思うのです。
 大人「も」楽しむことが出来るということは、嬉しいし、良いことだとは思うのですが。

 「Vシネマで『響鬼』をやったら、採算が取れない」と製作側が考えている可能性もありますが、一度くらい試して欲しいところです。

初めまして。

響鬼、思い出しました。
響鬼と、弟子の、ダブル主人公で、
途中までは、仮面ライダーと言うより、仮面ドライバーでしたが、仮面ライダーと意識しなければ、楽しめました。

ただ、転校生が、弟子にやたらと絡んでた頃から、重苦しい感じ(シリアスとは違う)になったと思ったら、商業的理由だったんですね?

Re:初めまして。

 『仮面ライダー響鬼』は駄作ではなかったけれども、失敗作であったと私は結論付けています。作品的にも、商業的にも。
  ↓
http://sinden.blog6.fc2.com/blog-entry-156.html

初めまして!

いきなりなんですが、僕にとっての平成ライダー失敗作はキバとかディケイドだと思っています。商業的には良かったのだと思いますが、子供向けというより完全にオタク向けになってしまっていたと思います。キバはまったく話がおもしろくなく、ディケイド以降に関してはもう番組を見る気にもなりませんでした。もう一回平成ライダーは休憩して、そのあいだにクウガのような作品をつくることを考えたほうがいいと思います。

Re:初めまして!

 『電王』の劣化コピーのような出来になった『キバ』はともかく、『ディケイド』は視聴率も回復しており、子供向けとして成功したと考えるのが妥当です。
 今の子供は、レンタルDVDで昔のライダーも知っていると思います。
 過去に戦隊のブラックを演じた役者が、絶対にリアルタイムでは観ていない(生まれていない)年齢の子供から声を掛けられる時代ですから。

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響鬼とレイズナー

「私の名はアンナ・ステファニー、14歳。」(←ちょっと違うかも)少女アンナの独白ではじまるアニメがあった。「蒼き流星SPTレイズナー」(1985年放映)である。当時、このアニメが好きで、家にはビデオもない頃だったが、1話ものがさず見ていた。詳細は省くが、

仮面ライダーヒビキのこと

いや、見てるんですよ。相変わらず。どんなに遅く寝たって、日曜8時にはしっかり覚醒してテレビの前に座ってるんですよ。まぁそれなりに楽しんではいるんですよ。でも最近の話は心にも残らないや。前々回何が起こったかもろくすっぽ言えないと思います。今なら。.

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震電

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 写真撮影時40歳。
 いい歳して云々といった決まり文句は私には通用しない。たった一度の人生、他人に迷惑をかけない範囲で楽しみます。