2017-08

『劇場版 機動戦士ガンダム00 - Awakening of the Trailblazer - 』

『劇場版 機動戦士ガンダム00
         - Awakening of the Trailblazer - 』
    2010年の映画館で観た映画:8本目
    映画を観た日:2010年9月18日(土)

 全くと言って良いほどネタばれしないで観る事が出来た、この映画。
 その内容は、予想通りというわけではなかったが、予想の範囲内ではあった。
 何故なら、私はガンダムファンである前にSFファンであるからだ。
 SFファンであるならば、TV版『ガンダム00』の最後のカットを見てピンと来ない筈がない。って言うか、ピンと来なければモグリである。

 木星の絵をドーンと見せられたら『2001年宇宙の旅』を連想するだろうし…
 “Childhood’s End”という文字列を見せられたら、『幼年期の終わり』を連想しない筈がない。
 どちらもアーサー・C・クラークの作品であり、SFの古典的名作である。

 だから、あのカットを見て「ガンダム00の劇場版は古典SF的な作品にするというメッセージなのかな?」と思うのは、SFファンにとってはごく自然なことである。
 現在、ガンダム00の視聴者にSFファンがどの程度の割合で存在するのかは分からないが、ファーストガンダムが放送されていた当時のSFファンは、ガンダムを「SFアニメ」として一定の評価を与えていたのだ。ファーストガンダムは、SFファンが観るに値するアニメだったのだ。

 そう、忘れてはならない。ガンダムはSFアニメとしてスタートしたことを。

 私は、TVシリーズの『ガンダム00』には、“機動戦士”を冠するガンダム作品としては最低の評価を下している(その記事は → こちら )。しかし、この劇場版に関しては、“SFアニメ”としてのガンダム作品として、一定の評価を与えたい。


                【 これ以降、ネタばれ有り 】




 先ず、映画が初代トレミーのコンテナを流用した輸送船と、ヴァスティ夫婦の登場で幕を開けたことに、イアンのコスプレイヤーである私は心の中でガッツポーズをしてしまった。「新ガンダムだけ登場してイアンが登場しなかったら嫌だな」と思っていたので、一安心。ちゃんと台詞もあって良かった良かった。
 ちなみに、最近1期をコスしたラッセも、意外に台詞が多かった。台詞だけならアレルヤと同じくらいあったような気がする。

 次に、劇中劇(映画中映画と言うべきか)であるが、これは最初の方のカットでアクシズのような絵が出た時点で「ん?」となり、すぐに気が付いた。それからが結構長かったので、「いつまで引っ張るんだろう?」と思ったが、映画が進むにつれて、あの劇中劇の長さの意味が分かった。

 私がTV版『ガンダム00』に最低の烙印を押す理由は、タイトルに“機動戦士”を冠しながら、作品を単なる勧善懲悪に堕としたからである。
 劇中劇はデフォルメされていたものの、勧善懲悪のエンターテインメントの「所詮商業アニメ」でしかなかった実際のTV版『ガンダム00』と、基本的には同じである。
 かつて冨野監督は、そういう類のモノを「パターン」と呼び、自らの作品の中で卑下し、自虐していた。この映画の劇中劇からも、同様の演出意図を感じた。あれは、
「TV版は、所詮パターンの勧善懲悪でした」
という自虐、あるいは
「この映画では、TV版のようなパターンの勧善懲悪はやりませんから」
という前置きだったように思う。

 それ以降、作品は古典的な「破滅もの(破滅SF)」のパターンで展開する。
 SFファンとしては、J・G・バラードの『結晶世界』(恥ずかしながら未読)を連想する。
 そこに、これまた古典的な「ファーストコンタクトもの(ファーストコンタクトSF)」の要素が入ってくる。
 SFファンとしては、スタニスワフ・レムの『ソラリスの陽のもとに』(もちろん既読、映画も観た)を連想する。
 そして、コンタクトに失敗すると、これも古典的な「侵略もの(侵略SF)」に突入する。
 こりゃあ、普通に“異星知的体と人類の宇宙戦争”ですよ。
 別に“ガンダム”である必要が殆どない。普通のSF映画ではないか…

 ここで、ハッと気が付いた。
 SFという要素もまた、ガンダムの本質の一つであると。
 「戦争という環境下における少年の成長を描く」ことだけが“ガンダム”ではない。
 「宇宙という新しい環境に進出した人類が、知的生命体として次の段階に進化する可能性を描く」こともまた、“ガンダム”なのだ。

 「相互理解は絶対に理解不能」であり、「相手を滅ぼすか、こちらが滅ぼされるか」の二択しかないと思える状況にあって、刹那は“人類同士の戦争を止める”ためのガンダムを駆って、“宇宙に存在する異なる種族同士の戦争”を止める。
 ファーストガンダム世代の私は、ファーストガンダムにおけるレビル将軍の台詞が脳裏に蘇った。
「ニュータイプというものは、戦争などしないで済む人間のことだ…」

 戦争の中で人類がニュータイプとして覚醒する“ガンダム”は、既に描かれている。
 戦争に勝つためにニュータイプが利用される“ガンダム”も、既に描かれている。
 ニュータイプと普通の人間が戦争する“ガンダム”も、既に描かれている。
 ニュータイプが“奇跡”を起こして一時的に戦争を止める“ガンダム”も、既に描かれている。
 しかし、ニュータイプが恒常的な平和へと向かうベクトルとなったことが描かれた“ガンダム”は、無かったように思う。
 何故なら、それは理想の実現であるからだ。
 理想が実現したら、物語は終わってしまう。
 ガンダムを続けるためには、ニュータイプの理想は実現してはならないのだ。

 しかし、劇場版ガンダム00は、人類と新人類が共存する世界のハッピーエンドで幕を閉じた。
 この映画は、“ガンダム”の一つの終局点を描き切ったのだ。

 人間ドラマを削ぎ落としたSFアニメが、最後に人間ドラマを持ってきたところも良かった。
 しかも、物語は決してその人間ドラマに帰結していないのだ。
 普通の人間同士であったときから、生き方として別々の存在であった、刹那とマリナ。その二人が、存在そのものとして別々になってしまったにも関わらず、精神そのものでお互いを理解し合う。人として愛し合うことは出来ないが、意識を有するもの同士として、愛情を共感する。それはSF未満の人間ドラマではなく、SFとしての意識のドラマなのだ。

 SFという原点に返ったガンダム作品。その意味で、この作品はタイトルに“機動戦士”を冠するに相応しい。SFアニメとしての“機動戦士ガンダム”なのだ。
 劇場で、あと1回は観なければなるまい。
 当然、DVDとブルーレイも買うぞ。
スポンサーサイト

コメント

数年もたってからのコメント申し訳ありません。

TV版の感想も読ませていただきましたが、素晴らしい記事です!
これほどじっくりと作品を分析した記事を初めて読みました。

多くの人が、キャラクターや画など、アニメならではの点で『00』を評価しています。実際、キャラデザインや起用した声優、手抜きの無い画など、アニメとしては非常に高い評価のできる作品だと自分は思います
しかし、その音や映像を取り去ってしまえば「戦争を描き切れておらず、結果、勧善懲悪にすることで丸く収めた」という何ともご都合主義な駄作となってしまっていると思います。

ですが、この『劇場版』を出したことで、「ニュータイプでは描かれなかったハッピーエンドのガンダム」という確かな価値を持つ作品に仕上がったと断言できます。
リアリティを求めるが故か、当初から「ニュータイプは相互理解ができる存在」としながらも、戦争(=戦い)の勝利のみでラストを飾っていた『ガンダムシリーズ』の中で、「宇宙世紀で描かなかったもう一つのラスト」を描き切った『劇場版00』は今後も確かな存在感を持ち続けるでしょう。

当然作画も完璧なため、アニメとしても申し分なかったです。
ちなみに自分は劇場に3回観に行き、特装版ブルーレイも購入しました!

 コメントありがとうございます。
 私もブルーレイは特装版を購入しました。
 TV版の2期が、ほぼ“ガンダムが出てくる『ゴッドマーズ』”だっただけに、あそこまでSFアニメに徹してくれたのは嬉しい誤算でした。
 劇場版ガンダム00は、私にとって特別なガンダム作品です。

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

http://sinden.blog6.fc2.com/tb.php/1194-89d35c64

【エルス】劇場版 機動戦士ガンダム00(ダブルオー) A wakening of the Trailblazer(感想)

「機動戦士ガンダム00の劇場版本日公開!!」 という事でさっそく見に行ってきました!! 新作内容が上映されるガンダムは「ガンダムF91」以...

劇場版 機動戦士ガンダム00―AwakeningoftheTrailb...

劇場版 機動戦士ガンダム00―AwakeningoftheTrailblazer―のMOVIX京都での舞台挨拶の回を見てきました。公開初日に売り切れかなと思っていた限定版パンフレットですが、全種類売っていたので...

(映画) 劇場版 機動戦士ガンダム00  -A wakening of the Trailblazer-

◆機動戦士ガンダムシリーズ朝から老若男女が、「劇場版 機動戦士ガンダム00」を観るために長蛇の列。ファン層がこんなに幅広かったなんて、驚きです。

劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-

地球圏に到達した破棄された木星探査船エウロパ。 それが人類存亡を賭けた…刹那たちソレスタルビーイングの最後の戦いの始まりへ。 ようや...

『劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-』

3連休最終日、柏の葉ららぽーとにて、愛息はる吉くんと2人で 『劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-』を鑑賞しました 何やら今日はサービスデーとの事で、1人1千円で映画を見ることが出来ました 何気にツイている私(笑)! 最近、日常生活

劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-

狙い撃ちの精度がややずれている。 でも,好きは好き。  

「劇場版機動戦士ガンダムOO -AwakeningoftheTrail...

 「F91」以来、実に19年ぶりとなるガンダム新作劇場版。西暦2314年、突如木星から飛来した謎の異星体「エルス」に、刹那・F・セイエイ達ガンダム・マイスターとソレスタル...

劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-

映画感想4弾 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer- ガンダム00の続編 約2時間のガンダムの映画・・・映画でガンダムを見たの...

【映画】劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-…観るよ、ガンダムなんだから。

本日2011年11月3日(文化の日・木曜日)は世間の多くの方々と同じくお休みだったピロEKです。 で、本日の行動…食料品の買い出しと、書店、家電量販店、昼寝…そんな無計画な日でした…久しぶりにモスバーガーとかも食べたなぁ。 折角の休みですが勿体無い感じに過ぎ今?...

«  | HOME |  »

MONTHLY

CATEGORIES

RECENT ENTRIES

RECENT COMMENTS

RECENT TRACKBACKS

APPENDIX

震電

震電

 写真撮影時40歳。
 いい歳して云々といった決まり文句は私には通用しない。たった一度の人生、他人に迷惑をかけない範囲で楽しみます。