2017-10

『響鬼』の商業的失敗の原因を解明する!

『響鬼』の商業的失敗の原因を解明する!

 バンダイの調査で「好きなキャラクター」のランキングベスト10から脱落(平成ライダーシリーズ初めての事態)。玩具(DAを除く)も売れない。
 なぜ『響鬼』は、ここまで深刻な商業的失敗に至ってしまったのだろう?
 背景にある構造的な問題に関しては、『響鬼』の人気低迷を考察する に書いた。ここでは、『響鬼』という作品自体に焦点を当て、商業的失敗の原因を探ってみる。

1.ライダーの必殺技がカッコ良くない
 私はイケメン目当てでヒーロー番組を観ているのでもなければ、ドラマ目当てで観ているのでもない(そういう視聴者が悪いと言っているわけではありません、念の為)。飽くまでも「ヒーロー(組織を含む)のカッコ良さ」を求めてヒーロー番組を観ている。
 その観点において、『響鬼』は平成ライダーの中では最低レベルである。特に、商品の初動を大きく左右する放映初期の回で、それが顕著だった。響鬼が「跨ってドンドコ」している様は、どうにも絵になっていなかったのだ。最近は「仁王立ちでドンドコ(立ち姿勢でドンドコ)」に加え、エフェクトも派手になったので見栄えもするようになった。これを放映開始当初からやっていれば、メインの商品「DX音撃棒セット」の売り上げも少しは良くなっていたと思う。

2.従来の変身ベルトに相当する玩具が、定価5040円だった
 『響鬼』において、ベルトは変身アイテムではないが、そんな言い訳はお母さんには通じない。
「今度の変身ベルト(「DX音撃棒セット」のこと)、5000円もするの? 高いわ!」
で、終わりである。
 4725円と5040円の間には、購買心理における一種の壁が存在する(庶民にとっては)。ライダーのベルトが5040円でバカ売れする方が、むしろ不思議である。

3.ライダーの必殺技を、玩具で再現することが出来ない
 音撃鼓は、劇中では敵に貼り付けると巨大化する。「巨大化」は、当然ながら玩具では再現できない。音撃鼓を任意の場所に「貼り付けて叩く」ということも玩具では出来ない。更に、玩具の音撃鼓は、子供から見ても決して大きくない。以上の点から、「DX音撃棒セット」は「なりきりグッズ」としては完成度が低く、商品としての魅力が小さい。(劇中とは無関係のギミックが満載の「なりきりグッズ」とは、いかがなものか)
 もちろんこの問題の根本は、響鬼の必殺技を、このように玩具で再現不可能なものに設定してしまったことである。

4.ベルトの露出が少ない、ベルトにギミックが無い
 『響鬼』は、劇中におけるベルトの描写がシリーズの中でも最も少ない。
 『響鬼』と同じくベルトが変身アイテムではなかった『アマゾン』が、逆にベルトの露出がシリーズ最大(常に露出している)だったことを比較すると、見せる工夫が足りなかった。
 また、ベルトから音撃鼓を取り外す際、『龍騎』のカードデッキからカードを抜いたときのような効果音が発生しない。取り付ける際も、『555』のようなイベントは発生しない。
 このように鬼のベルトは何のギミックもない単なるホルダーであり、単体アイテムとしての魅力がほとんど無い。魅力の無いアイテムを、子供は欲しがらない。
 現代のヒーローの魅力は、ヒーローが扱うアイテムの魅力の累積であるとも言える。ベルトにギミックが無いライダーは、その分の魅力が差し引かれていたと考えられる。

5.鬼の全体色が似通っている
 3人の鬼の体の色(全体色)は、どれも黒っぽく、パッと見て大差ない。響鬼はもっと鮮やかな紫にして、後から登場した威吹鬼と轟鬼も明るい色にするべきだった。子供の好む色というのは限定されているので、そのことをもっと考慮するべきだった。(初期1号→V3の法則)

 ★★★ 玩具に関するまとめ ★★★
 ここまで書いて気付いたが、『響鬼』関連で唯一玩具がヒットしているDAは、1~5の問題を全てクリアしている。すなわち、
  1.劇中での動きがカッコ良かったり可愛かったりして魅力的
  2.玩具の価格が1680円と手頃
  3.玩具は、劇中と大きさが同じで、変形も完全再現
  4.劇中での露出が大きい。ギミック(変形機構)あり
  5.種類によって色の違いがハッキリしている
である。
 裏を返せば、大手玩具メーカーであるバンダイが『響鬼』の主力商品である「DX音撃棒セット」に関して、このうち4項目を外している。バンダイは平成ライダーの人気が年々低下していることに気付いていたにもかかわらず、何故こんなことになったのか? 素人ながら、叱責せざるを得ない。

6.ライダーの必殺技の数が少ない
 響鬼の音撃打には、「○○の型」という名称の付いたバリエーションが多数存在するが、映像的には結局どれもバチで叩いているだけである。威吹鬼と轟鬼も、魔化魍を倒す決め技は一種類しか持っていない。
 『剣』のライダーが4人とも2種類以上の決め技(アンデッドを封印可能状態にする技)を持っていたことと比較すると、ライダーの必殺技の数が少なく、フィニッシュシーンがワンパターンになっていた。
 「魔化魍は音撃でなければ倒せない」という設定があるにしろ、拳脚に音撃を宿らせる(鬼爪に清めの音を共振させるとか)ことなどで、音撃のバリエーションを増やすことは可能である。こういった創意工夫が一切行なわれなかった。

7.ライダーの変身ポーズが地味
 平成シリーズ中、唯一変身する際に「変身」という発声が行なわれない。全くの無言で変身するのは、TVシリーズに限定すると昭和も含めて『響鬼』だけではないか? イブキを除くと、ポーズもメリハリが無くて見栄えがしない。
 原点回帰という意味では正解(1号ライダーは当初変身ポーズすらなかった)であり、大人の眼には渋く映ったが、子供が真似をして遊ぶには地味過ぎた。子供に対する、変身ヒーローとしてのアピールが足りなかった。

8.明日夢がカッコ良くない(子供に人気がない?)
 明日夢とヒビキの関係は、実写版の「のび太とドラえもん」のようなもの(“進歩の遅いヘタレ少年”と“完成された頼れる存在”)で、結構子供にウケるのではないかと思っていたが、そうではなかった。
 明日夢の進歩が見ていてじれったくなるほどゆっくりである件には、リアリティの側面と、進歩が速いと「少年が成長する物語」が最終話を待たずに終了してしまう(のび太が大きく進歩・成長するとドラえもんを必要としなくなってしまうのと同じ)ことから構造的な制限項目になっているという二つの側面がある。
 そういった事情を考慮しても、主人公の明日夢は視聴者の子供から嫌われない程度にはカッコ良く(あるいはカッコ悪く)なければならない。「スーパーヒーロータイム」の対象である3~8才の子供にとっては、明日夢よりもトドロキのようなキャラ(普段は子供にバカにされるほどドジだが、決めるところではキッチリ決める)の方が分り易くて親しみが持てるのではないか。
 子供番組の主人公としては、明日夢はナチュラル過ぎて相応しくないと思える。『響鬼』の人気の低さは、「実写版のび太」はトドロキのようなキャラでなければ子供の支持が得られないということを物語っているのではないだろうか。

9.「音ゲー」を商品に組み込むという大胆な試みを行なった割には、物語にそれが充分に反映されていない
 主力商品のコンセプトに「光る、回る」を2年続けた後に持ってきたのが、ライダー初となる「カードゲーム」。携帯電話などの身近なアイテムの玩具化を挟んで、もう一度「カードゲーム」。次に持ってきたのが、これまたライダー初となる「音ゲー」。これはカードよりも遥かに大胆な試みである。
 「カードで戦う」番組はアニメ等で既に製作されて一定の人気を博した実績があるが、「音楽そのもので戦う」番組というのは実績がない。もしこれが戦隊における試みだったら、『音楽戦隊ギグレンジャー』というタイトルにするくらい、音楽を前面に出した筈である。
 しかし『響鬼』におけるライダー達は、普段は音楽とは縁の薄い生活をしている。イブキはその最たる例で、戦闘以外でラッパを吹いたシーンが一度もない。第1話のようなミュージカル仕立てにすることは却って逆効果だと思うが、ライダー達が普段から音楽(楽器)に親しんでいる描写は、あった方が絶対に良い。
 ヒビキ、イブキ、トドロキは普段はプロのミュージシャンで、それぞれの音撃武器も普段は楽器としてそのまま使用しているといった描写をすれば、商品の露出も大きくなって一石二鳥である。女性キャラも何か演奏するなり歌うなりすれば、同じ画面に収まる。
 「原点回帰」を謳いつつ「音ゲー」を導入するのなら、本編にもこれくらいの大胆さが必要だったのではないか(初代の「アミーゴ」を、もっと賑やかにしたようなイメージ)

10.バンダイが、大人向けの『響鬼』グッズを提供(宣伝販促)しなかった
 換言すれば、「東映がバンダイの従来通りの商品戦略を認めた」ということ。
 これも一種の構造的問題であるが、ヒーロー番組という商品からの収入(製作費の回収プラス利益の確保)を、3~8才児向けの玩具に集中的に依存する方式から、そろそろ脱却するべきなのではないのか。
 少子化が進み、子供向け商品の市場は縮小する方向にある。また、子供の娯楽が多様化していることで市場も分割され、ヒーロー番組玩具のシェアもおのずと限定されてくる。一方で、番組製作にかかるコストは、今のところ大きく下げることが難しい。
 となれば、3~8才児向けの玩具以外に、柱となる収入源を確保する必要がある筈だ。平成ライダーのように大人の鑑賞に堪える作風になっている場合、「視聴率は高いが、玩具は売れない」という「ねじれ現象」が発生する可能性すらある。
 例えば私は、『響鬼』という番組のために、大して欲しくもない「DX音撃棒セット」を購入した。そしてやっぱり失望した(ベルトの長さが足りなかったわけではない。私は痩せているので何とか巻けます)。私としても、出来ることなら大人向けの商品を買いたかった。しかし、通販でヒビキのコートを買ったとしても、それが「DX音撃棒セット」を幾つも買ったのと同じ効果が本当にあるのかどうかが分らない。また、1日10本オロナミンCを飲んだところで、東映の収入増加にはならないことは明らかだ。
 ハッキリ言って、儲かって欲しいのはスポンサーのバンダイではなく、実際に作品を造っている東映である。もっと端的に言えば、私が商品購入に使った金が、ほぼダイレクトに『響鬼』の製作費に還元されて欲しいのである。
 そういったシステムに則った大人向けの商品を、東映またはバンダイは提供する時期にきていると思う。あるいは、PPVによる放映によって「収入を関連商品に依存しないヒーロー番組」を提供するという方式でも良い。(もっとも、「収入を関連商品に依存しない番組」は、子供向け以外の一般の番組では、地上波でも普通に成立しているのだが…)
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コメント

こちらも面白かったです

震電さん、こちらもとても面白く読ませて頂きました。私はバンダイさんにとってはありがたくない客で、おもちゃ・フィギュア類を一切買わない(乱暴な猫と暮らしているので瞬時に破壊される)のですが、DAと音叉はちょっとだけ心がぐらいつきました(笑)音叉を超合金でなくいい素材(銅とか錫とか)で作ってくれたら買っていましたね。あと、キッチンタイマーを兼ねるDAとか(笑)新たなスポンサーとしてはデジタル家電か(資金潤沢な)消費者金融関係でしょうか・・・

コメントありがとうございます

 鬼笛と音錠は買ったのですが、音叉はデカイので買っていません。実は、音錠もデカイんでけど…。アクセサリーとして普段も身に付けられるような完成度で出して欲しいところです。

>キッチンタイマーを兼ねるDA

 これはイイですね。「猛士エプロン」とセットで欲しいです。

 はじめまして震電さん。きんと申します。感慨深く読ませていただきました。
自分は響鬼は番組のつくり自体は必殺シリーズに似てるかと思ってます。
(タイトルが最後にでるのも(笑))。玩具の件に関しては、私らが中高生の時でも、必殺シリーズは見ていた友人が多かったけど、三味線のバチやカンザシを買うやつ
がいないことに通ずるかと思います。スポンサーが玩具会社である以上、マーチャン
ダイジングも止むを得ないと思いますが、これによって、日本のTVのSF・特撮は
子供向けにならざるをならざるを得ない側面があるわけで、そういう意味では、
今回の響鬼の件はやはり残念です。太鼓を中心に魔化魍のCGを浮かび上がらせて、粉砕のイベントも再現すれば、少しは違ったのですかね。ああ、600万ドルの男
や、UFO、コルチャックみたいな番組は日本ではやはり無理なのか。特撮よりアニメ
の方が対象年齢が高いというこの国は少しおかしいです。乱筆失礼いたしました。
それでは。

コミック、TV、映画

 きんさん、はじめまして。コメントありがとうございます。

>ああ、600万ドルの男や、UFO、コルチャックみたいな番組は日本ではやはり無理なのか。

 アンダーソン作品でもマーチャンダイジングはあったと思いますし、『600万ドルの男』でもフィギュア程度は発売されたのではないでしょうか。ただ、『響鬼』みたいに特定のスポンサーに対する依存度が大きくなかったから、極端なテコ入れみたいなことが起こらずに済んだのではないか…と想像します。
 ちなみに『UFO』は、タバコ会社がスポンサーかと思えるほど、喫煙シーンが多かった印象があります。

 『スパイダーマン』や『バットマン』、もうすぐ公開される『ファンタスティック4』などの映画のことを考えると、ヒーロー作品に関する日米のシステムの違いを痛感します。映画産業そのもののシステムの違いでもあるのですが。

 また、ヒーローのホームメディアがコミックであれば、作品のクオリティに製作予算とかは余り関係なく、またコミック自体が売れればマーチャンダイジングの必要がありません。アメリカはこれですね。いわゆるアメコミ・ヒーローは、そもそも「お金を払って見る(読む)」存在なわけです。
 日本のヒーローのように、毎週地上波TVで放映する場合は、予算がかかるにもかかわらず、視聴そのものは無料という形で流されています。大人の鑑賞に堪える映像を造ろうとすると更に予算がかさみますから、子供相手の作品にせざるを得ない…。

 まぁ、『ガイファード』のような例もありますので、気長に見守っていきたいと思っています。

震電さん、御返事ありがとうございます。

>『スパイダーマン』や『バットマン』、もうすぐ公開される『ファンタスティック4』などの
映画のことを考えると、ヒーロー作品に関する日米のシステムの違いを痛感します。

まあ、アメコミの場合はキャラの寿命が長く、同じ意匠のまま何十年も続けることで、
ファン層が広がっていることも、「まともな」映画が作りやすい理由かなと思います。

テコ入れに関しては視聴率が下がっていった「ナイトライダー」でKITTが「なんだか
わからない、かっこ悪いクルマ」になってしまったりしてましたし、その辺は日米
一緒だったりするのかも知れませんね。

デビッド・ハッセルホフつながりで「ベイウォッチ」なんかは、最後は海の妖怪退治
ものになったとか聞きましたが、ホントかなあ。

響鬼は最終回だけでも、キッチリまとめてほしいと思います。
それでは失礼します。

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 いい歳して云々といった決まり文句は私には通用しない。たった一度の人生、他人に迷惑をかけない範囲で楽しみます。