2017-10

エリック・モラレス VS マニー・パッキャオ

WOWOW エキサイトマッチ 
               2005年3月20日深夜0:00~ 放送分


 エリック・モラレス VS マニー・パッキャオ

 試合前の私の予想は、 マルケス兄 VS パッキャオ と同様の展開で、モラレスの判定勝ち。前半はパッキャオ、後半はモラレスが支配するが、マルケス兄の試合をよく分析してから試合に臨むモラレスは、ダウンすることなく前半を凌いでポイントアウトするだろうという予想である。
 私はパッキャオに対して、メキシカン・キラーというよりも単に初顔合わせに強い選手なのだと思っている。サウスポーの強打者で、対戦者のイメージ以上に伸びて来る左ストレートでダウンを奪える。その距離とタイミングを読まれない間に倒してしまえば、相手はメキシカンだろうが誰だろうが関係ない。逆に言えば、その左ストレートのイメージを把握されてしまったら、苦しくなる。
 モラレスに対しては、強打者というイメージを持っていない。右アッパーのタイミングが絶妙な、タイミングの選手という印象だ。メキシカンの割にはフック系のレバーブローを打たない、どちらかと言えばヘッドハンター。
 前回のバレラ戦で防御が雑になっていたのを、どこまで戻してこられるかが気になる。初回にパッキャオの左ストレート貰ってしまった場合、マルケス兄のような回復力とイメージ修正能力があるのかどうかといったところにも不安が残る。攻撃面では、ピンポイントで命中させる伝家の宝刀・右アッパーが決まれば、決して打たれ強くないパッキャオをリングに這わせることも十分に可能だろう。

 試合が始まると、パッキャオはいつものように思い切り良く前に出る。
 ステップインの速さなのか、パンチの出所が見え難いのか、モラレスは十分警戒していたはずのパッキャオのワンツーを割とあっさり貰ってしまう。やはりパッキャオの初回のワンツーは警戒されていても当たる。
 そして、1ラウンド残り20秒になろうとした時、パッキャオの右ロングフック→左ボディアッパーのコンビネーションがカウンターでヒット。ワンでテンプルを狙った右ロングフックを当てて間合いを詰め、ツーで自分の太腿の横を通過させる低空軌道のボディアッパーを突き上げたのだ。
 当然ながら、モラレスには2発目の低空ボディアッパーは全く見えていない。死角からカウンターで肝臓を直撃されたモラレスは、上半身を深く折り曲げるほどのダメージを被った。
 このラウンドを凌いでコーナーに戻るや否や、ファールカップのベルトを自分の手で押し下げたことからも、相当に効いていたことが窺い知れる。
 この1ラウンドのパッキャオのレバーブローが、試合全体を通してのベストショットだったと思う。しかし、皮肉なことにこのベストショットが、5ラウンドのパッキャオの右眉上のカットの伏線になった。

 2ラウンド以降、パッキャオは左ボディブローを多用する。しかしモラレスの右ガードは堅い。モラレスの右肘は、まるで打ち込まれた杭のごとくパッキャオの左拳を止め続ける。パッキャオの左ボディブローはその後、たまにベルトラインの上を叩く程度にしか当たらなくなった。
 モラレスも「腹には腹を」とばかりにワンツーのツーで右ボディへストレートを伸ばすが、サウスポーであるパッキャオのボディはモラレスの右からは遠く、届いても当りは浅い。

 3ラウンド、モラレスは極端にクラウチングして相手からボディを遠ざけ、その低い体勢からスマッシュ気味の右アッパーを放ってパッキャオを後退させる。パッキャオが再アタックをかけると、今度は珍しくボディワークだけで躱し切るという芸当も見せた。

 一進一退の攻防が続き、第5ラウンドへ。
 リング中央の打ち合いの中、モラレスが右→左という逆ワンツーから更に右の打ち降ろしを続けたとき、パッキャオはそのモラレスの右とほぼ同じタイミングで左ボディアッパーを低空軌道で突き上げた。1ラウンドのベストショットと似た状況だったが、今度はパッキャオの方が一瞬遅れた。
 モラレスの打ち降ろしの右は、左ボディアッパーを突き上げる途中のパッキャオの顔面に、芯を外しながらもカウンターで命中。これで何割か勢いを殺がれたパッキャオの左アッパーがモラレスのボディに届いたときには、モラレスの則頭部とパッキャオの右眼周辺が激しくぶつかっていた。
 これでパッキャオは、右眉の上を縦にカットして流血。この流血が、最後までパッキャオを苦しめることになった。

 パッキャオの流血もあって、ラウンド後半はモラレスがポイントを稼ぐ展開。
 しかし10ラウンドでは、パッキャオがマウスピースを入れ直している間、コーナーで待機しているモラレスが何としゃがみ込んで休むという光景が見られた。本来のSフェザーよりも半ポンド軽く仕上げなければならなかった影響なのか、モラレスに余裕がないことが見て取れた。
 最終ラウンドでは、モラレスが1分過ぎた辺りでサウスポーにスイッチし、結果的に試合全体を通して最大のピンチを迎えてしまう。スイッチしてからパンチは喰うわ、空振りしてバランスを崩すわ、遂には右構えか左構えか迷って両足を揃えて正面を向く始末で、もう見ていて危なっかしいたりゃありゃしない。10ラウンドでは残り10秒程度になって突如スイッチして意表を突いたモラレスだったが、最終ラウンドは明らかにやり過ぎ。左拳を痛めたわけでもなさそうで、作戦というよりも奇行としか映らなかった。

 終わってみれば、判定は115対113のユナニマス・デシジョンでモラレスの勝ち。
 3-0とはいえ僅かに2ポイント差、取ったラウンドが1つ多かったに過ぎない薄氷の勝利と言える。私の採点では

モラレス  9 10 9 9 10 10 10 10 9 10 10 9 : 115
パッキャオ 10 9 10 10 9 9 9 9 10 10 9 10 : 114

と、1ポイント差でモラレスであった。

 今回の試合を見て、両選手に対する印象が少し変わった。
 パッキャオに対しては、何となく変則的なファイターというイメージを抱いていたが、単なる錯覚だった。サウスポーではあるものの、上体を自然に左右に振りつつワンツーを主武器にして戦う標準的なボクサーファイターである。
 中間距離から一気に踏み込んでコンビネーションを放ち、すぐに離れて中間距離に戻すというヒット&アウェイタイプ。いきなり左の大砲を打ったり逆ワンツーを放つことはほとんどなく、右のリードで距離を測ってから左に繋ぐ。
 また、接近戦ではパンチが手打ち気味になり、強打を決めることが出来ない。ファイターではあるが、足を止めて打ち合うことをむしろ苦手としている。この辺が、同じアジアのファイターでも池仁珍とは違う(池は互いに頭を付けた間合いからダブルやトリプル、時にはダブルのダブルで4連打を放つこともある)。
 モラレス選手に対しては、前回のバレラ戦で防御が雑な印象を受けていた。しかし今回のパッキャオ戦では、右肘をレバーの前方にピタリと固定させておく丁寧なアームブロックを見せてもらった。ボディから顔面のフェイントにも1回ぐらいしか引っかからず、受けに回ったときの守りは堅かった。
 また、常に腕を折り畳んで角度のあるパンチを打っている選手だというイメージがあったが、今回はジャブをピンポイント(パッキャオがカットした右眉上)でヒットさせるなど、腕を真っ直ぐに伸ばしきって打つ姿も印象に残った。ただ、ワンツーのツーは余り伸びず、あくまでもリードブローだけが長いという印象だ。

 今回、計量時60kgにも満たない、スポーツ選手としては小柄な二人が、一人あたり1試合で2億円以上の報酬を受け取ることが出来た。こんな格闘技は、ボクシングの他には存在しない。
 今後予定されている、パッキャオ VS バレラ の再戦も、盛り上がることだろう。現在最も層が厚いとされているのは二つ上の階級であるSライト級であるが、このSフェザー級も3人のスター選手が揃っている。ハメドがここに加わればより一層盛り上がること請け合いだが、さて、どうなることやら。
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震電

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 写真撮影時40歳。
 いい歳して云々といった決まり文句は私には通用しない。たった一度の人生、他人に迷惑をかけない範囲で楽しみます。