2016-01

宇宙鼠はニュータイプの夢を見るか?

宇宙鼠はニュータイプの夢を見るか?


 最初は前記事のサブタイトルを「宇宙鼠はニュータイプの夢を見るか?」にしようと思っていた。
 単なるパロディや言葉遊びではなく、私にとってはSF文庫本の表紙画のようなイメージが浮かぶ一文だったからだ。SF作品としての『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』のイメージを強調したかったのかも知れない。
 でも、amazonやDMMのレビューとして投稿した際、ふざけているとか、気取っているとか勘違いされたら不本意なので、「ヒューマンデブリが、もしもニュータイプであったなら…」というサブタイトルに変更した。
 ま、そういうこと。

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『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』第11話から第13話までの感想  ~ ヒューマンデブリが、もしもニュータイプであったなら… ~

『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』第11話から第13話までの感想
  ~ ヒューマンデブリが、もしもニュータイプであったなら… ~

 長い間生き別れになっていた兄弟が、その絆を取り戻すには、余りにも条件が悪すぎた。
 敵味方に分かれた兄弟が、互いにモビルスーツに乗り込んで戦場に出て、その冷たい装甲に覆われたコクピット越しに会話を交わすだけでは、引き裂かれた絆を元に戻すことは出来なかった。

 兄である昭弘・アルトランドも、弟である昌弘・アルトランドも、アラヤシキ・システムをその肉体に宿した、一種の“強化人間”である。
 アラヤシキ・システムとは、「ナノマシンによって脳に空間認識を司る器官を擬似的に形成し、それを通じて操縦対象(モビルスーツ等)の情報を直接脳で処理できるようにするシステム」である。高性能の強化現実インターフェースを生身自体に実装しているわけだが、脳に空間認識を司る器官が擬似的に形成されるため、その人間の空間認識能力や処理能力も向上する。モビルスーツの操縦の場合、瞬間的に最適の空間機動を行えることになるわけだ。

 「神業的な空間機動と高い反応速度」といえば、“ニュータイプ”やそれを人工的に生み出そうとした擬似ニュータイプとも言える“強化人間”を思い出す。しかし、モビルスーツ・パイロットとしての能力は、本来ニュータイプの一面にしか過ぎない。
 むしろニュータイプとは「そもそも、戦争などしなくても済む人間」のことなのだ。「宇宙空間に適応したことにより認識能力が拡大され、他者との誤解無き意思疎通が可能となった人間」をニュータイプと呼ぶのなら、確かに戦争などしなくても済みそうである。

 だが、アルトランド兄弟がアラヤシキによって得た能力は、悲しいかな「拡張された空間認識能力」だけであった。アラヤシキは、心までは拡張してくれないのだ。二人の兄弟はニュータイプではなく、単なるアラヤシキ使いであり、そしてヒューマンデブリだった。

 兄である昭弘が未来への希望として語った「家族」という言葉は、弟である昌弘にとっては過去の絶望の記憶としてしか響かなかった。いや、ほんの少し前までは昭弘もまた、「家族」という言葉に対し、昌弘と同じように絶望を抱いていたのだ。もしも昭弘が家族という概念に絶望したまま昌弘と再会していたら、お互いにもっと良く理解しあえたのではないかと思うと、何ともやりきれない。

 更に皮肉なことは、全くの赤の他人同士である、ガンダムバルバトスのパイロットとガンダムグシオンのパイロットの方が、むしろ戦いの中でお互いのコアの部分を理解しつつあったということだ。互いに純然たる敵として命を奪い合っているにも関わらず、である。
 一方が「お前は人殺しを楽しんでいる」と見抜けば、
 もう一方が「お前は死んでも構わないやつだ」と見抜く。
 互いに互いの本質的な部分を理解しつつも、何の共感も分かち合うことなく、一方の死を以って意思の疎通が終わる。互いの機体は同じガンダムフレームの“兄弟機”。「殺し合う機械の兄弟」という図式も含め、どこまでも冷え切った相互理解の形であった。

 それでも鉄華団とダービンズは、死んでいった仲間を弔い、祈りを捧げる。
 今はその小さな世界の中だけでも、心が通じ合うことを良しとしなければならない。
 その理解の輪が少しずつ大きくなって、少しでも多くの人間が理解し合える世界が広がっていくことになるのだろうか? それとも…
 鉄華団の旅がこの先どうなっていくか、観続けないわけにはいかないだろう。

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震電

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 写真撮影時40歳。
 いい歳して云々といった決まり文句は私には通用しない。たった一度の人生、他人に迷惑をかけない範囲で楽しみます。