2005-05

『仮面ライダー響鬼』 十八之巻

『仮面ライダー響鬼』 十八之巻

【 観る前に思ったこと 】

 『響鬼』は平成ライダーシリーズの中では、未就学児にとって最も分かり易い作品なのではないだろうか?
 モッチーが明日夢を好いていることは、5歳児でも分かるだろう。トドロキが、ザンキを自分の先生だと思っていることに関しても同様である。幼稚園に通い始める頃には、園児なりに異性を好きになったり、人間に上下関係があることを認識したりするものだ。
 それでも「ほのかな恋愛感情」や「阿吽の師弟関係」だと、5歳児にはまだ難しい。だが、モッチーやトドロキの感情表現や行動は、5歳児にも理解できるレベルになっている。それが不自然にデフォルメされた演技や描写ではなく、大人が見ても「分かり易いやつだな~」で済む芝居に収まっているところが、『響鬼』の面白いところだ。
 また、未就学児からも笑いの取れるキャラがいる点も珍しい。トドロキと明日夢は、割と情けなかったりドジだったりして、5歳児から見ても笑いの対象となっている。悪く言えば、子供にバカにされる側面を持っており、良く言えば、それだけ身近に感じられるということ。これも、過去の平成ライダーシリーズには、あまりなかったように思う。

 平成ライダーシリーズも、コアターゲットが未就学児から小学生低学年であることは昭和ライダーシリーズと変わらない。小学生になったら「DX変身セット」はそろそろ卒業だろうし、4年生になれば変身ヒーロー自体からほぼ完全に卒業するだろう。子供がヒーロー番組を卒業すれば、親も一緒に卒業する。子供すなわち未就学児あっての「ヒーロータイム」、そういう意味において『響鬼』が原点回帰しているとしたら正解である。
 余談だが、ヒビキたちが変身する際に「変身」という言葉を発しないのも、別の意味で原点回帰である(最初の仮面ライダーは、「変身」と言わないどころか変身ポーズすらなかった)。

 ヒビキに火炎鼓を届けに行くときは「タイコ届けに行くんだけど」とか言ってたにも関わらず、自分の烈風を届けてもらうときは「ラッパ持って来て」とは言わないイブキ。今度ヒビキに火炎鼓を届けるときは、ちゃんと「(爆裂)火炎鼓届けに行くんだけど」とか言うように。
 そのラッパを威吹鬼に届けに行く途中?のあきらが、黒装束の人と遭遇してダウーン! 「DAを出したが、逆に相手にDAをコントロールされてしまう」という事態が発生したのか?
 ラッパを持って水中戦を行う威吹鬼。水中で音撃出来るなら、何故イッタンモメンのときにそれをやらなかったのか?
 水中では、音の伝達速度は空気中の4倍以上になるし、伝わる距離も伸びる。音撃射のみに限定すれば、水中の方がむしろ空気中よりも効果が大きいかも。ちなみにイルカは頭部に音波を収束させる器官を持っており、これで餌になる魚を“音撃”している(反響定位を行うと同時に獲物にダメージを与える)という説もある。

 “成長途中で等身大の魔化魍”だと思っていたヤツは、チョウチンアンコウみたいな魔化魍の体の一部のようだ。カメレオンの伸ばした舌先みたいなものか?
 イブキは、あきらに「着替えも持って来て」と頼むのを忘れている。変身解除後、ぼやきながら買ったばかりの服を着るという描写もあるかもしれない。
「ちょっとイブキくん、タグ付けたままじゃないの!」
なんて香須実に呆れられるところを、あきらに見られちゃったりして。
 そんなところも含めて頑張れ、威吹鬼。何だかんだ言っても、渋江さんの演じるキャラは応援します。

【十八之巻の感想 】

 “成長途中で等身大の魔化魍”だと思っていたヤツは、オオナマズという魔化魍の“胃袋”だった。威吹鬼はその“胃袋”を鬼爪で退散させるものの、強酸性の血液ならぬ胃液を浴びて負傷する。
 成長したオオナマズは水棲の魔化魍。本来は管の使い手が担当する魔化魍ではない。水中での音撃自体は可能であるが、水中で鬼石を撃ち込むことが困難なのだろう。烈風の水中射撃が不可能なのか、あるいは射撃可能でもヌメッとしたオオナマズの体表が鬼石を弾いてしまうのか。

「香須実とイブキ…案外いいコンビかもな」
偶然結成された香須実とイブキのコンビを、ヒビキがそうコメントする。
 香須実は、イブキを「優柔不断で世話が焼けるけど、かわいい弟」のように思っているようだ。しかし、年齢差は僅か。二人がちゃんとした恋人関係になる可能性は高い。少なくとも、ヒビキと香須実が恋人になる可能性よりは遥かに高い。
 何しろ、ヒビキが18歳で“鬼のホープ”として活躍していたとすると、そのとき香須実はまだ9歳、小学4年生である。この差は数字以上に大きい。大人の女になった香須実が、仮にヒビキに恋心を抱くことがあったとしても、ヒビキの側からそういった感情が芽生える可能性は極めて低い。
 実際のところ、香須実の方も、ヒビキを「機械オンチで世話が焼けるけど、大好きな兄」のように思っているようだ。みどりに対する香須実の感情には微妙なものがあるかもしれないが、それは「大好きな兄に他の女性が近寄るのが、何だか無性に面白くない」という妹の気持ちに近いものだろう。

 もう一方の偶然結成コンビ(飛車角としての)である、ヒビキとみどり。ヒビキのモーション?のかけ方からすると、どうやらみどりは現在独り身のようだが、こちらはみどりの方が乗り気薄め。現場のヒビキを見ても「きゃー、ヒビキさん素敵」とまでは、思っていない感じ。みどりさんは、ちょっと普通の女性とは価値観が違っていそうだから…。マニアックなメカとか科学技術情報を見せたら、目の色変えて喜びそうです。

 私が今後中心的に描いて欲しい男女関係は、「香須実:イブキ:あきら」の三角関係と、「モッチー:明日夢:ヒビキ(猛士メンバー一同)」のダブルトライアングル(二重三角関係)だ。そして、そこから生まれる

・師匠のイブキに恋心を抱いて悩むあきら(香須実に嫉妬してしまう)を、モッチーと明日夢が支えたり励ましたりする。
・ヒビキ(猛士メンバー一同)と秘密を共有する明日夢と、それを教えてもらえないモッチーの間に起こる誤解や問題を、あきらが解きほぐす。

といったドラマである。これに「モッチー:明日夢:あきら」という、瞬間的に発生しては消える“幻の三角関係”をスパイス的に加えつつ、
 ・モッチーと明日夢の恋  ・モッチーとあきらの友情  ・明日夢とあきらの友情
が最終的に上手くいけば、私としてはハッピーエンドである。
 モッチーが猛士グループの蚊帳の外に置かれている状況は、モッチーファンの一個人としては憤懣やるかたないのだが、ドラマとしてはその方が面白くなる(バランスが良くなる)と思う。だから、モッチーは猛士のことは知らないままでいて欲しい。明日夢が鬼になる(あるいは鬼になることを決意する)その日までは。

 そのモッチー、あきらが恋のライバルではないことを知って余裕シャックシャク。そんな状態でも明日夢に直接想いを伝えられない乙女心がラブリーである。
 その頃、あきらは走ったり気絶したりで大変。近寄っただけであきらを気絶させた黒装束指令は、ヒビキたちに対しても同じようなダメージを与えることが出来るのだろうか?

 今回のも最大の見所は、イブキが烈風の到着を待たずにオオナマズとの2戦目に向かう場面。素手の自分では勝てない相手であることを承知の上で、オオナマズに立ち向かう。勝てるときにしか戦わないのはヒーローではない。このときのイブキは真にヒーローである。
 オオナマズの胃袋との2戦目、離れたら胃液が飛んでくることが分かっているので、出来るだけくっついて戦う威吹鬼。しかし、真空波攻撃でも胃袋に止めを刺せずに反撃を喰らう。絶対絶命の威吹鬼を、響鬼の火の玉攻撃が救う。
 ツッコミどころはいろいろあるけれど、今回のバトルシーンは流れとバランスの良さで上手くまとまっていたと思う。

【小学一年生の心で学び直したこと】

 「自分が行ったとしても問題を100%解決することは出来ない」と分かっている場合でも、自分自身が行ける状態であれば行くこと。50%であろうが、10%であろうが、少しでも自分が役に立つのであれば、自分を差し出す気持ちを持とう。ただし、単なる足手まといにならないのかどうかの判断は必要。

【 次回予告を観て思ったこと 】

 ザンキが「たちばな」を訪れる。トドロキの従姉妹であるモッチーとは過去に面識があったのか?
 「たちばな」でのバイトが本決まりっぽい明日夢。ブラバンの方はどうする? モッチーが、ちょっとご機嫌斜めっぽいのはその辺りのことが原因か?
 モトクロスバイクが登場。鬼が乗っていなくても、バイクアクションがあると嬉しい。
 ヒビキは、今回も変身シーン無し・ドンドコ無し?
 トドロキは、頭部のみの変身解除に成功するのか?

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 『響鬼』に関して以下の記事を書きましたので、こちらも読んでいただけたら幸いです。

New ! 5/23 up 我が家のルリオオカミ
New ! 5/22 up 『響鬼』パロディ企画 筒の使い手“仮面ライダー奏鬼”を独占スクープ!
5/15 up 『仮面ライダー響鬼』その他ライダーの変身ポーズを裸で比較検証する
5/2 up 安達明日夢(ア・ア)は鬼になる!
4/18 up 『仮面ライダー響鬼』3人目の鬼を、ネタばれ無しで考える その2
4/13 up 新しいディスクアニマルを、ネタばれ無しで考える
4/10 up 『仮面ライダー響鬼』3人目の鬼を、ネタばれ無しで考える
4/3 up 『仮面ライダー響鬼』ハリウッド映画化計画! を考える
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我が家のニビイロヘビたち

我が家のニビイロヘビたち

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 センタースピーカの上が、彼らの定位置です。
 いつもこんな感じで鎮座しています。
 ルリオオカミみたいな遊び代はないのですが、とても気に入っています。
 小さい2匹は、食玩です。シールを貼るのにチョット苦労しました。
 食玩といえば、入っているお菓子は乾燥剤と見間違うようなものばかりかと思っていたのですが、大きい方の食玩(写真中央)に入っていたお菓子は、ちゃんとしたチョコスナックだったのでビックリ。もちろんキッチリ食べました。
 バンダイのニビイロヘビは、2匹目(実家用)を購入したいのですが、まだ入手できていません。有楽町で映画を観た帰りにでも、探してみようと思っています。

我が家のルリオオカミ

我が家のルリオオカミ

私 「ルリオオカミよ、芸の練習を始めよう」
狼 「うん、いいよ」
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私 「まずは、“お座り”だ」
狼 「おすわり~」
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私 「よし、今度は、“お手”だ」
狼 「おて~」
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私 「よし、次はお前の得意な、“伏せ”だ」
狼 「ふせ~」
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私 「“伏せ”と言うより“狼の開き”みたいだなぁ…
   よし、今度は “チンチン”だ」
狼 「ちんちん~」
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私 「うーん、今ひとつアピールが足りないぞ…
   そうだ、こうしたら本当に “チンチン”だ、とかやっちゃったりして」
狼 「!!!!!!」
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狼 「いくら飼い主でも、やっていいことと悪いことがあるのだ~! がぶり!」
私 「アイタタタタタタッ」
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私 「すまん、ルリオオカミ。お前の好きな綿棒あげるから許して」
狼 「ん~~」
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狼 「ちゃんと反省したのなら、許してあげるのだ~」
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オマケその1 ルリオオカミ@飛行中
「きゅいぃぃぃーん」
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オマケその2 ルリオオカミ@水中行動中
「ぷくぷくぷく…」
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『響鬼』パロディ企画 筒の使い手“仮面ライダー奏鬼”を独占スクープ!

『響鬼』パロディ企画

    4人目の鬼は筒の使い手!
        “仮面ライダー奏鬼”を独占スクープ!

 突然だが、我々『テレビ真画陣』取材スタッフは、一人の“鬼”に対し、極秘裏に独占取材を行うことに成功した。その全容を『テレ真画』読者だけに公開しよう!

『テレビ真画陣』スタッフ(以下『テ』と略):「まず、鬼名を教えてください」
ソウキ:「奏鬼です。奏でる鬼と書きます」
『テ』:「ソウキさん、ですか。という事は、本当のお名前も『ソ』で始まる?」
ソウキ:「エッ、何でその法則を知ってるんですか?!」
『テ』:「『テレ真画』読者なら、それ位みんな気付いていますよ。それで、どうやって鬼に変身するんですか?」
ソウキ:「これを使います。変身鬼鈴(へんしんおにすず)、音鈴(おんりん)です。軽く振ると、風鈴にも似た涼し気な音がします」

 初公開! これが変身鬼鈴 音鈴だ!!
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 何となく、ただの小さな目覚し時○に見えるぞ! しかし我々取材スタッフは、あえてその点には触れないことにした!

『テ』:「鬼に変身するときは、炎や風に包まれて、いわゆる“無敵状態”になって変身していますが、ソウキさんの場合はどうなんでしょうか?」
ソウキ:「何でそういうこと知ってるのかなぁ…まぁ、私の場合は氷に包まれて変身します。その際、服は氷結して粉々になります」
『テ』:「あの~、今ここで、ちょっと変身してみてもらえないでしょうか?」
ソウキ:「駄目駄目! 身体を包んだ氷を粉砕して変身完了になるんだから、この部屋が氷まみれになっちゃう」

 そんなわけで、残念ながら実際の変身シーンは撮影できなかったため、ここでは我々がイメージする変身シーンをお見せしよう。
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 注※ 画像はイメージであり、実際の変身シーンとは異なっている場合があります。

 ソウキさんは、変身に関するこんなエピソードを紹介してくれた。
ソウキ:「うちの支部で新年会をやったとき、私と同期の震鬼(シンキ)っていう弦の使い手が、酔っ払った勢いで店内で変身しちゃって。あいつ属性が雷だから、店の電灯は破裂するわ、コンセントは火を噴くわ、衝撃波で窓ガラスは割れるわで大変だった」

『テ』:「ソウキさんは、太鼓、管、弦のどれを使うのですか?」
ソウキ:「あ、私は“筒(つつ)の使い手”なんですよ」
『テ』:「筒ですか?! それは初めて聞きました。筒とは、一体どういうモノなんでしょうか?」
ソウキ:「これです。これが、音撃筒(おんげきづつ)・烈波(れっぱ)です」

 初公開! これが音撃筒 烈波だ!!
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 何だか、最近の掃○機にそっくりだ! しかし我々取材スタッフは、あえてその点には触れないことにした!

『テ』:「今まで見てきた音撃武器と比べると、ずいぶんイメージが違いますねぇ…」
ソウキ:「でしょ? 外国製ですから、発想からして違ってます」
『テ』:「外国製なんですか?!」
ソウキ:「音撃するために、何も楽器をモチーフにする必要はないだろうというコロンブスの卵的な発想で設計されています。合理的でしょ?」

 だからと言って掃○機をモチーフにする必要もないんじゃないかと思ったが、我々取材スタッフは、あえてその点には触れなかった!

『テ』:「音撃筒は、他の音撃武器と比較して、どんな特徴があるのでしょうか?」
ソウキ:「音撃管と音撃弦の中間という感じですね。管のように離れて音撃するんですけど、鬼石は弦のように本体に取り付けてあります。有効射程は、音撃管・烈風に比べるとかなり短く、中距離から音撃します。まぁ、イメージとしては“音撃する火炎放射器”ってところかなぁ」
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 橙色の部分が鬼石である。鬼石を包んでいる透明な部分は、一見プラスチックのように見えるが、これも鬼石の一種。「ヤマビコやヤマアラシが踏んでも壊れない(ソウキ談)」という凄い強度を有しているらしいぞ!

ソウキ:「音撃弦・烈雷は、地面が軟弱だと刺して立たせようとしてもすぐ倒れてしまいますよね。この音撃筒・烈波は、自立するように工夫されているから大丈夫なんです」
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 刺さずに立たせることが可能な烈波。なるほど、これは便利ですよ奥さん!

ソウキ:「また、補助的な武器として、鞭を内蔵しています」
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注※『テレビ真画陣』編集部からのお願い…あぶないから、よいこのみんなは、まねをしないでね!

ソウキ:「今は童子たちと戦うときだけこれを使っていますが、将来的にはこの鞭でも音撃することが可能になる予定です」
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 魔化魍を鞭で音撃する様子(想像図)

 これじゃあ筒ではなく弦の使い手ではないかぁ~♪ベンベン♪ と思ったが、我々取材スタッフは、あえてその点には触れなかった!

『テ』:「ズバリ、とどめの音撃の技名は?」
ソウキ:「音撃流・波動爆砕です」
『テ』:「意外と普通ですね…(小さな声で)“四角い部屋を丸く掃く・四隅は年末の大掃除で”とかだと思った…」
ソウキ:「は? 今なんか小声で言いましたか?」
『テ』:「いえいえ、何でもありません。それより、今ここで、ちょっと音撃してみてもらえないでしょうか?」
ソウキ:「駄目駄目! 両隣の部屋も下の部屋も人が住んでいるんだから。近所迷惑でしょ!」

 そんなわけで、残念ながら実際の音撃シーンは撮影できず、構えただけの状態を撮影した。
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 サイクロン・チャンバー内で振動する鬼石の表面を、圧縮空気流が激しく渦巻き続けることにより、空気の流れ自体に“清めの音”が宿る。これを発射口から放ち、魔化魍を撃破するのだ!
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『テ』:「ところで、バックルに取り付けてあるモノは…?」
ソウキ:「音撃端(おんげきたん)・流束(ながれたばね)です」
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 何だか、掃○機のノズルにそっくりだ! しかし我々取材スタッフは、あえてその点には触れずに別の観点からツッコミを入れた!

『テ』:「バックルにキチンと収まっていませんよね?」
ソウキ:「いえいえ、仮面ライダーアマゾンのコンドラーだって、こんな感じだったじゃないですか。Xライダーのライドル収納部だって左右対称じゃないし。全然問題ありませんよ」
『テ』:「はあ、そんなモンなんですか」
ソウキ:「ちなみに、この音撃端・流束をどうやって使うかというとですね…」
『テ』:「あ、それはもう分かってますから、説明してもらわなくても結構です」
ソウキ:「エッ、何で? 何で分かるんですか?!」

 ソウキさんが「どうしても実演したい」と言われるので、蛇足ながら紹介しよう。
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 中距離からの音撃で魔化魍にとどめを刺せなかった場合は、音撃端・流束を取り付けての接近戦を敢行する。
“清めの音”が宿った気流を一点に収束することで音撃はより強力になるが、その焦点距離は極めて短く、事実上「ゼロ距離音撃」となる。筒の使い手は一般にパワーに劣る者が多く、魔化魍に組討格闘を挑む際のリスクは非常に大きい。部屋の隅々まで掃○をするより遥かに大変そうだ!

『テ』:「最後に、オフレコにしますから、ソウキさんの本名を教えてもらえないでしょうか?」
ソウキ:「卒鳴 総司(そつなく そうじ)です」
『テ』:「あ、やっぱり」

『仮面ライダー響鬼』 十七之巻

『仮面ライダー響鬼』 十七之巻

【 観る前に思ったこと 】

 ザンキは鬼を引退しても本名に戻らずザンキを名乗り続けるようだ。このままザンキの本名は分からず終いになりそうな予感。とりあえず、個人的には「財前 座太郎(ざいぜん ざたろう)」だと思っておこう。

 戸田山はトドロキを名乗ることになった。日菜佳は「戸田山くん」から「トドロキくん」に改めるとして(プライベートは「戸田山くん」のままだろうけど)、問題はモッチーである。例えば「たちばな」でトドロキとモッチーが遭遇し、「トミゾウ兄ちゃん」が「トドロキ」と呼ばれているのをモッチーが目撃してしまった場合。これは当然「何でトドロキなの? 何で“たちばな”関係者と親しいの?」という流れになるだろう。
「あ、あだ名だよ、あだ名。ほら、トダヤマだから、トドロキ」
などと言って誤魔化そうとしても、追及モードに入ったモッチーは止まらない。もしその場にヒビキが居合わせようものならば
「トドロキ…が、あだ名ってことは、ヒビキ…さんも…あだ名なんですか?」
と女の勘を働かせてしまい、周囲を慌てさせる可能性大。
 彼氏の従妹であるモッチーを味方に付けておきたい日菜佳は「この話は他言無用で…」と事情を話してしまうだろう。みどりはみどりで「トドロキくんの従妹で、明日夢くんの彼女なら」と、例の軽いノリで鬼ファイルを持ち出し、明日夢ですら見たことのない斬鬼や轟鬼のページを見せてしまうに違いない。更に、トドロキ繋がりで出会ったザンキとモッチーは妙にウマが合い、ヒビキと明日夢のような“歳の離れた不思議な友達関係”になっていく…。
 そんな感じで、モッチーをプッシュしたい私です。トドロキが登場した分、モッチーの出番が減るなんて納得いきませんわ。あ、今、10万人ぐらい頷いた気がする。

 街に出現し、未確認生命体っぽくなってきた童子と姫。今度の童子と姫は、あんまり賢そうじゃないけど…。
 黒マント上司は、ソロバンのグロンギっぽくなるのか。ヤマアラシが裁鬼を殺さず生け捕りにした理由を明らかにして欲しい。魔化魍の“魍”という文字には、“鬼”の文字が入っている。裁鬼の肉体に怪しげな注射をして、“魔化鬼”を造るつもりだったとか。
 魔化魍が、従来の映像クオリティのままで街に出現したら、ちょっと見るに耐えない。話の上でも、もし市街地に白昼堂々と登場したら、マスコミや警察どころか政府が自衛隊の出動を検討といった騒ぎにならなければ嘘だということになるだろう。それを回避する方法としては、下水道を活動の舞台にするとか、魔化魍を夜行性にするとか、高度な擬態(または可視光に対するステルス)能力を持たせるとか、あるにはある。
 しかし私の希望は、以前「2クール目は原則として魔化魍ナシの展開でやって欲しい」と書いた通り。魔化魍に投じている予算とスケジュールを童子たちに投入して、映像のクオリティと話のリアリティを向上させる方針を期待する。

 さすがに3週連続で変身ナシというわけにはいかないヒビキ。響鬼に変身して、みどりと一緒に新型のバチをテスト?
 あきらの制服姿と、姫のフトモモに期待大。ここは香須実も対抗してミニスカートを履かねば!

【十七之巻の感想 】

 あきらの制服姿も、姫のフトモモも、香須実のミニスカート姿も見られて、オジサンとしてはウハウハでした。姫が篠原涼子に見えてしまったのには少し戸惑いましたが。
 モッチーとあきらは仲良しでいて欲しいので、明日夢との三角関係?が当面は問題にならずに一安心。ただし、明日夢がモッチーに対して行った、あきらに関する嘘の説明は、今後どういう問題をもたらすのか? まぁ、ドラマだから波乱がないと面白くないし、モッチーの笑顔以外の色々な表情を見るためには、コトがすんなり運ばない方が良いのだけれど。

 響鬼のバチの新バージョンは、ライトセーバーならぬファイアーセイバー。このVFXはとても良い。BoAの『VALENTI』のPVでこの種のVFXを見たときから、ヒーロー番組でも取り入れて欲しいと思っていたのが実現した。
 オシロやスペアナを操作する美人・みどりさんも素敵。技術系の私は大満足。『響鬼』に登場する女性キャラは、高校生二人はポッチャリ型でお姉さん系二人はスレンダー型、中間の日菜佳は体型も中間っぽい。いろんなタイプの綺麗どころが揃っていて嬉しい。あ、鬼石は精錬の仕方で色が変わるようですな。

 イブキは、香須実と二人きりでいるときは、優柔不断なキモイ系の美青年。モッチーと二人きりのときの明日夢の方が、よっぽど男らしい。
 そんな軟弱イブキが、童子たちを見つけた途端、突然人が変わって凛々しい美青年に変身。今回のイブキは、だめんず系美青年→カッコイイ系美青年→威吹鬼 という2段変身だった。
 ちなみに、イブキ役の渋江さんは陳列マニアだそうなので、今回の撮影はルンルン気分だったことでしょう。

 DAのステルス化とか、地下活動型の魔化魍とか、 新しいディスクアニマルを、ネタばれ無しで考える で書いたことが実現したので思わずニッコリ。でも、既存のDAに可視光線ステルス機能があるとは思わなかったなぁ。
 威吹鬼のアクションは素晴らしかったし、“成長途中で等身大の魔化魍”が出現という展開も良い。しかしながら、その等身大の魔化魍のクオリティが酷い。着ぐるみの出来不出来以前の問題として、人が入るのなら基本的には人型にしないと無理である。触手の間から脚が中途半端に見えているのが非常に見苦しい。

【小学一年生の心で学び直したこと】

 一つ嘘をつくと、その嘘がばれないようにまた嘘をつくことになる。嘘をつくときは、その覚悟をしておくこと。

【 次回予告を観て思ったこと 】

 ラッパを威吹鬼に届けに行く途中?のあきらが、黒衣装の人と遭遇してダウーン! “DAを出したが、逆に相手にコントロールされてしまう”という事態が発生したのか?
 ラッパを持って水中戦を行う威吹鬼。水中で音撃出来るなら、何でイッタンモメンのときにそれをやらなかったのか(寒くて水が冷たかったから)?
 それはともかく、頑張れ威吹鬼! な回になるようだ。変身解除後、ぼやきながら買ったばかりの服を着るという描写もあるかもしれないぞ。

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 『響鬼』に関して以下のコラムを書きましたので、こちらも読んでいただけたら幸いです。

5/15 up 『仮面ライダー響鬼』その他ライダーの変身ポーズを裸で比較検証する
5/2 up 安達明日夢(ア・ア)は鬼になる!
4/18 up 『仮面ライダー響鬼』3人目の鬼を、ネタばれ無しで考える その2
4/13 up 新しいディスクアニマルを、ネタばれ無しで考える
4/10 up 『仮面ライダー響鬼』3人目の鬼を、ネタばれ無しで考える
4/3 up 『仮面ライダー響鬼』ハリウッド映画化計画! を考える

神にのる獣

神にのる獣


ムカシムカシ  
《ケモノ》タチハ、(フネ)ニ ノッテ
ナガイアイダ、サマヨッテイタ。

アルトキ、《ケモノ》タチハ
グウゼン
〔カミ〕ノ スム セカイニ タドリツイタ。

「オマエタチハ、ナニモノダ」
〔カミ〕ハ、《ケモノ》タチニ タズネタ。
「ワタシタチハ、《ケモノ》デス」
《ケモノ》タチハ、ヨロコビノ アマリ ブルブルト フルエタ。

「《ケモノ》タチヨ、ノゾミハ ナニカ」
〔カミ〕ノ トイカケニ、《ケモノ》タチハ コウ コタエタ。
「ドウカ、ワタシタチノ セカイノ〔カミ〕ニ ナッテクダサイ。
 ソシテ、ワタシタチノ ナカヨリ エラバレタ モノガ
 アナタノ セナカニ ノルコトヲ ユルシタマエ」

ジヒブカイ〔カミ〕ハ、
《ケモノ》ノ  ノゾミヲ、キキイレタ──。

        §   §   §   §   §   §   §   §   §   §

 俺達は神だ。
 少なくとも、獣たちからはそう呼ばれている。
 獣たちが神と呼ぶのだから、きっとそうなんだろう。
 少なくとも、俺は神ノ国で生まれ、ものごころついたときから神と呼ばれてきた。そして俺の仲間達も。

 この世界には、神ノ国と獣ノ国しかない。
 そして、言葉を操り、道具を造り、畑を耕したりする生き物は、神と獣しかいない。
 ただの生き物なら、他にもいろいろいる。
 でも、明日のことを気にしたり、昨日のことを思い出したり、なぜ自分は生きているのかなんて考えながら生きているのは、神と獣だけだ。少なくとも、俺の知っている限りでは。

 俺は、紫色の空を見上げている。
 この空の彼 ──上の方──遙か遠く離れた世界から、最初の神の一族、つまり俺たちの先祖が来たと、獣たちは言う。
 鮮やかな紫色の空には、二つの太陽が輝いている。
 二つの太陽のうち、どちらか一つは、神が空の彼方から運んできて、獣に分け与えたものだという。
 どっちの太陽がそうなのかは、俺には分からない。美しい色をしている方がそれだと獣は言うが、俺にはどちらもただ眩しいだけだ。俺だけじゃない。神の眼には、どちらの太陽も同じに見える。獣たちの眼には、二つの太陽は全く別の色に輝いて見えるらしい。不思議だ。
 俺は、雲の下に広がっている獣ノ国を見下ろす。
獣ノ国には神はいない。
 神は、神ノ国の中だけで暮らしているからだ。
 神ノ国は、全部で八つ。獣ノ国を、ぐるりと囲んでいる八つの山々の一つ一つが、それぞれ別々の神ノ国だ。
 俺達の国は、北西ノ国。
 俺が今向いている方角には、南ノ国があるはずだ。もちろん、南ノ国は遠すぎて見えない。俺の眼下には、ただ獣ノ国が広がっている。
 しかし、南ノ国は確かにある。獣ノ国を横切った果てに、確かにある。そして、東ノ国や、そのほかの神ノ国も。
 ここは北西の神ノ国。 
 俺は、北西の神だ。
 
 風が吹いている。心地よい風だ。
 祭りの季節に吹く風だ。
 一年に一度の祭り。
 そして、祭りの中の祭り、競勝。
その競勝に、俺は出る。
 北西の神として、競勝に出る。
 北西の神として、他の国の神々と競う。
 もちろん、俺の獣と一緒に。

 神は死なない。躯を抜け出し、見えない姿に戻って、ただ空へと還って行くだけだ。それが神。
 獣は死ぬ。死んで、ただ土に還る。それが獣。
 この世界の神の姿は、仮の姿。獣の世界に降りてくるため、獣の姿に似せて造った、仮の姿。
 そう獣は言う。
 そうだとしたら、この俺の躯も、仮の姿ということになる。食べ物を食い、飲み物を飲み、走り、跳び、よじ登り、叫び、喘ぎ、疲れ、そして眠るこの躯が、仮の姿ということになる。
 俺には分からない。
 見えない姿。不可能のない存在。それが本当の神。
 俺には信じられない。
 神の本当の姿は、獣にも見えないという。見えないものが存在しているなんて、どうして分かるんだ。
(カゼヲ ミルコトハ デキナクテモ
 ソノ ソンザイヲ カンジル コトハ デキル デショウ)
 俺は、俺の獣がそう言ったことを思い出して、首筋をさすった。 
もうすぐ、俺の獣が来る頃だ。俺は、獣の門へ向かって歩き始めた。
 風が肌に心地よい。
 祭りの日も、こんな風が吹けばいい。

        §   §   §   §   §   §   §   §   §   §

 俺の獣は、もう来ていた。
 獣の門の出口で、俺を待っていた。
 金属の籠で出来た通路の出口で、俺を待っていた。
 俺は屈み込み、小さな扉の閂を抜き取り、出口を開けてやった。
五つの小さな眼が、俺を見上げている。
 いつものように俺は軽く頷くと、地面に腰を下ろし、腕を伸ばし、獣の前に手のひらをついた。獣も、いつものように四、五秒じっと待ってから、ゆっくりと俺の腕を登り始めた。
 こうして見ると、獣の体は、長さも太さもちょうど俺の腕と同じくらいだ。
 この世界での神の姿は、獣の姿に似せて造られたものだと言われている。しかし俺には、とてもそうだとは思えない。
 獣の体は、表面に毛が生えているものの、俺達のような柔らかい皮膚を持っていない。
 獣の体は、硬い殻に包まれている。殻が集まって体を造っている、と言ってもいい。手のひらほどの大きさの頭殻、それより少し大きい胸殻、そして腹殻が、節々によって繋がれている。腹殻は、より小さな殻の集まりで、九つか十の節から出来ている。だから、箱のような頭殻や胸殻と違い、腹殻はそれ自体が滑らかに曲がる。
 指は、頭殻から左右に五対、胸殻からも五対、生えている。胸殻から生えている指は大きくて頑丈で、俺の指と同じくらいの太さがある。頭殻から生えている指は、それよりずっと小さくて繊細だ。腹殻の各節からも指のようなものが左右一対生えているが、獣たちはこれを指ではなく、足と呼んでいる。
 頭殻には、二対の眼が二列、その後ろに一回り大きな眼が一つ、並んでいる。この眼も、俺達の眼とは全く違う。硬く、乾いた眼だ。
獣は、俺の肩から首筋へと登っていく。そして、大きな指を使って、自分の体を俺の背骨の真上に固定する。胸殻から生えている指のうち一対は肩越しに俺の鎖骨を掴み、残りの四対は、脇の下から肋骨を包むように掴んでいる。
 獣の体は重くない。
 獣が、しがみついているという感じも全然しない。
 獣は俺の背中に乗っている。
── 乗っている。
── そういう感じだ。
(獣よ、俺の血を少し吸え)
 俺は、心の中で獣にそう言った。
獣は、俺の背中で、ぶるぶると震えた。
 痛みとは呼べない程度の痛みが、首筋に一瞬だけ生じる。
 獣の口は、細い針のようなものだ。それを使って、植物の汁や、他の動物の体液を吸って命の糧にしている。ただし、獣が神の血を吸うには、特別の理由がある。
(カミヨ、スコヤカナ ワガ カミヨ)
 吸った血液から、獣は神の躰の状態を診断できるのだ。
(ワガカミニ エイコウ アレ──)
 獣は、神の躰に異常があるときは、決して稽古をしようとしない。例え神が自分の怪我を隠そうとしていても、獣は少し血を吸うだけで、必ずそれに気付いてしまう。怪我だけではない。疲労の程度や、昨日の夜どんなものを食べたということまで、獣には解ってしまう。
(獣よ、見えるか?)
 俺は、百歩ほど離れたところで稽古している他の神達を指さした。
(ワガカミノ ウデト ソノサキニ カミガミノ スガタ
 ソシテ マワリノ スベテノモノガ ミエマス)
 獣は、神の背中に乗っているときは、神と心で会話することができる。そして、神の感覚を共有することも。
(獣よ、何の稽古をしようか?)
(カミノ ショウリノタメニ、マズ ユックリトハシリ、
ツギニ、ハシリハバトビノ ケイコヲ スルノガ ヨイ デショウ)
 獣の答えに、俺は心の中で頷く。
 俺の首筋に、獣の小さな十本の指が触れる。
獣の指先が俺の首筋を刺激し、俺が向かうべき方向と、速度を示す。
稽古や、実際の競いごとが始まると、俺と獣はほとんど喋らない。心の会話をするには、意識を会話に集中しなければならないし、心の言葉は伝わるのに時間がかかる。とてもじゃないが、競いごとの最中にそんな余裕はない。
 俺はゆっくりと走り始めた。
 最終調整なのだから、焦ることはない。
 実際、自分でも意外なほど、俺は落ち着いている。
 獣からの合図に、変化はない。
 風を感じながら、そのまま走る。
 俺は、風を躯に馴染ませるように、ゆるやかに走り続けた。

        §   §   §   §   §   §   §   §   §   §

 落ち着いているのに眠れないというのは、どうにも都合が悪い。稽古を終え、獣と別れ、食事その他を済ませて後は眠るだけだというのに、なぜか眠れない。
 明日から始まる祭りや、明後日の競勝のことで、心が高ぶっているわけでもない。ただ、とりとめのない想いが浮かんでは消えていく。俺は木の幹にもたれかかりながら、一面に広がる星空を、見るともなく見つづけていた。
「眠れないのか、北西の神」
 その声が、競い神の宿の二階の窓から発せられたものであることは、すぐに気付いた。俺は、あえて返事はしないで、声の主の姿を見上げた。
「待っていてくれ、今そこへ行く」
 声の主は、元神。元、北西の神。
 去年まで、十一年間連続で北西の神だった男だ。
 七年前、北西の神としては十年ぶりに競勝で二位に入った、伝説の競い神。生きながらにして伝説になっている神だ。
 俺は、後ろに元神の近づいてくる気配を感じながらも、星空を見上げ続けた。
「調子はどうだ、北西の神」
「まあまあだ、元神」
 元神は、俺と同じように木の幹にもたれ、俺と同じように星空を見上げた。
「ずっと星を見ていたのか」
「考えごとだよ」
「どんな?」
 俺は、少し間をおいてから答えた。
「なぜ、祭りがあるのか。なぜ、競勝があるのか。なぜ、神も獣も、競勝に勝つことが最も尊いことだと考えるのか
──そんなことさ」
 溜息にも似た呼吸が、元神の胸から漏れた。
「答えは見つかったのか?」
 俺は首を横に振った。
「考えれば考えるほど、解らなくなる」
「闘う前の神に言うべきではないのかもしれないが、こう考えたことはないか…
 神はなぜ競勝するか、ではなく、競勝のために神が存在するのだ、と」
 俺は思わず、元神の顔を見た。
 元神は、穏やかに微笑んでいた。
「元神がそんなことを言うなんて、意外だ」
 顔を星空に戻して、俺は呟いた。
「神なら誰しも、獣との関わりも含めて、一度くらいは自分の存在意義を考えるだろう。私だってそうさ」
競勝のために生まれた神──元神自身が、そんな呼ばれかたをされていたことを、俺は思いだした。
「お前さんは、変わった。競い神として私を上回っていながら、気紛れな競い方で、北西の神の称号を取り逃がしてきたお前さんとは、まるで別人のようだ」
 不意に、元神の強い視線を、こめかみの辺りに感じた。
「何があった? 何がお前を変えた?」
 俺は躯ごと元神の方へ向き直り、視線を真正面から合わせた。
「元神は、自分の獣を踏みつぶそうとしたこと、あるか?
 俺は去年の予選競勝であなたに負けた後、本気で自分の獣を踏みつぶそうとしたんだ」
 元神は、俺の眼をじっと見据えた。まるで、俺の眼の奥に浮かぶその時の光景を、なんとか見透かそうとするかのように。
「…その時、お前の獣はどうした?」
「逃げなかった。全然逃げようとしなかった…。それからしばらく稽古場にも行かなかったんだけど、久しぶりにふらっと入ってみたら、俺の獣が、門のところでちゃんと待っていたんだ」
 元神は微かに頷き、眼で俺に先を促した。
「それで俺は、聞いてみたんだ。なぜあのとき、逃げなかったのかを」

(カミガ ソウ シタイノナラ、
 ワタシヲ フミツブシテ クダサイ)
(殻がバギバキに割れて血が飛び散り、内蔵がグシャグシャに溢れ出して悶え苦しむんだぞ)
 俺は、かつて見た、獣がつぶれ死んだ事故の有様を生々しく思い出して、背中の獣に伝えた。
(ワタシノ イノチヤ カラダハ、
 カミノ タメニ アリマス
 カミノ ショウリノ タメニ アリマス
 ワタシノ セイデ カミガ ショウリ デキナイナラ、 ワタシハ コロサレテ トウゼン デス)
(獣…)
(ワタシハ、アナタノ ケモノ デス
 ダカラ、フミツブサレテモ ニゲマセン)

「…そうか、そんなことが、あったのか」
 納得した様子で、元神は俺の眼から視線を外した。
「確かに、衝撃的な出来事だったろうな」
 元神の心が、ふと闇にこぼれるような気配がした。
「だがな、北西の神よ…私は七年前、もっと壮絶なものを獣ノ国で見た」
「七年前、競勝で二位になったとき?」
「翌日の、神輿行列のときだ…神輿の上から、私は壮絶な光景を目の当たりにした」
 俺を一瞥する元神の瞳。
 その瞳が、潤んでいるように見えた。
「私を乗せた神輿は、獣ノ国を浅く横切っただけで神ノ国へ戻った。だが、優勝した南の神を乗せた神輿は、獣ノ国の中心へと向かって行った…」
 元神は、何かを吐き出すように、大きく息をついた。
「南の神は、あるいはそこで、もっと壮絶なものを見たのかもしれん」
 俺は何も訊かなかった。元神が獣ノ国で何を見たのかは、もちろん気になる。しかし自分でも不思議なことに、今知りたいという欲求が沸いてこないのだ。
「北西の神よ…」
 闇に滲み出ていく声。元神の声。
「七年前、二位になったときの私よりも、今のお前は速い。真に、北西ノ国が生んだ最高の競い神だ… 今夜は、眠れなくても気にするな。神隠しの後、充分に眠れるのだから」
 元神は、もたれていた木の幹から、背中を浮かせた。
「健闘を祈る」
「ありがとう、元神」
 ゆらりと身を翻した元神の背中が、やけに小さく見えた。
 俺は木の幹にもたれたまま、元神の背中を見送った。
 星空を見上げる。
 明日の神隠しで、俺は生まれて初めて国外へ出る。
 明日の夜は、獣ノ国で迎えることになる。
 獣ノ国の星空も、神ノ国の星空と同じなのだろうか  

        §   §   §   §   §   §   §   §   §   §

 競い場に至る通路の途中で、俺はいつものやり方で獣を背中に乗せた。
 他の国の神々は、通路を出て競い場に入り、足元に敷かれた絨毯の端のところまで行って、獣を乗せることだろう。それも、少々芝居がかった乗せ方で。しかし、そうしなければならない規則などないし、実際、去年まで十一年間連続して競勝に出場した元神も、それをやったことはなかった。
 北西の神として元神のやり方を踏襲するという意味もあったが、俺自身、余計なことに気を使いたくなかった。いつも通り獣を乗せ、いつも通り血を吸わせ、いつも通りの会話をする。そうしたかったから、そうしたまでだ。
 通路出口の扉を開けて、競い場に入る。
 最初に目に飛び込んできたのは、紫色の空。
 俺の国、北西ノ国と同じ紫色の空。
 次に目を奪われたのは、驚くほど大きな観衆席。
 これは、北西ノ国とは比較にならないほど大きい。そのせいか、競い場がとても小さく見える。
 競い場だけを見ると、北西ノ国と同じなのは確かだ。
 それにしても巨大な観衆席だ。しかも、そこが神ではなく、獣だけで埋まっているというのもすごい。
 見渡す限り、獣、獣、獣だ。何万、いや何十万という数の獣が、ひしめきあっている感じだ。競勝は祭りのトリを飾る最大の祭り事だし、ここは獣ノ国なのだから、当然と言えば当然なのだが。
(ワガカミヨ、カミノ カラダガ、コワバッテ イマス)
(獣よ、さすがの俺も、少し緊張しているらしいな)
俺は思わず苦笑いを浮かべた。
(ワガカミニ マサル カミナシ)
 獣が俺の首を刺激して、左右を向かせた。左五十歩ほど離れたところに西の神が、右五十歩ほど離れたところに北の神が立っている。
 見覚えのある神だ。この二人の神とは、この間の隣国交流競勝で闘っている。もちろん俺が勝った。
 そうだ、硬くなることなどない。俺は、あの元神に完勝して、ここへ来たのだから。
 改めて競い場を見渡す。
競い場の外周を、俺を含め八人の神々が、等間隔でぐるりと囲む形になっている。
 不意に、音楽が流れ始めた。
聞き慣れた音楽。競勝の舞の音楽だ。
(ワガカミヨ、ショウリノタメニ オドリ タマエ)
(よし、獣よ、いつも通りに舞踊ろう)
 俺は、獣の刺激に応えて、普段と同じように踊り始めた。
 他の七人の神々も、音楽に合わせて、その国独特の競勝の舞を踊り始める。
 舞い踊る神々の輪。
 舞踊りながら、競い場をゆっくりと一周するのだ。
この舞は、競勝を始める儀式であると同時に、競い神にとっては最後の準備運動である。
 俺は、舞い踊りながら、他の神々を観察する。
 東ノ国、南ノ国、南西ノ国からは、去年とは違う神が出場している。三人とも、俺同様若く、躯の切れがいい。特に、南の神は、跳躍力が優れている。要注意だ。
 俺も注目されていることだろう。
 警告の意味を込めて、突き蹴りの舞を要所に織り込む。
 反則を仕掛けてくる神には、容赦はしないぞという意志表示だ。実際、俺は速いだけの神ではない。潰しに来る相手は、逆に潰し返してやる──
 踊りの輪が競い場を一周すると、音楽が止んだ。
 俺は舞を止め、競い場の中央へ向かって歩き出した。
 他の国の神々も、中央へ集まってくる。
 いよいよだ。
 いよいよ始まる。
(獣よ、俺が狙うのは優勝だけだ。二位など、他の神にくれてやる)
(ワガカミヨ、オチツイテ
      カゼヲ カンジテ クダサイ)
獣に言われて気がついた。確かに風が吹いている。
 肌に心地よい風が吹いている。
 俺の国に吹いていた風と、同じ風だ。
(獣よ、大丈夫だ。ちゃんと風を感じられる──)
 俺が獣と話している間にも、神々が形造る輪は、どんどん小さくなっていく。
 その輪の中心、競い場の中央に、透明な丸い台。
 その台には、八つの標識球が載っている。
 八つの神ノ国、八人の競い神を示す標識球だ。
 競い神の輪が小さくなり、隣合う神々の手と手が触れそうになったとき、八つの標識球は、空へ向かって垂直に飛び立った。
 この瞬間、競勝が始まった。

        §   §   §   §   §   §   §   §   §   §

 競い場の最外周を三周すると、標識球の群は橋の上を飛んで、競い場の外へ出た。神々の群の先頭を走る俺も、橋を渡って競い場の外へ出る。
競い場の外に出た俺達を待ち受けていたのは、大地の裂け目だった。
長く長くどこまでも、地の果てまで続いているかのような大地の裂け目。
 俺達は、その裂け目に沿って走る。
 裂け目と言っても、その幅は、ゆうに十歩以上ある。細い谷と言った方がいいかも知れない。
神々の群は、互いに牽制しつつも、縦一列に落ち着く。
俺は先頭を南の神に譲り、二番手につける。
 この南の神は、おそらく俺より長く跳ぶ。
 どこで跳ぶのか、見ておく必要がある。
 標識球の群が、大地の裂け目のはるか上を、滑るように横切っていく。そしてその先、なだらかに続く丘へと飛んでいき、見る見るうちに丘を越え、その姿が見えなくなった。
 標識球の航跡は、競勝の最短軌道を示している。
 しかし、いくら俺達が各国最高の神々でも、十歩近い幅の裂け目を飛び越えることは出来ない。飛び越せる幅になるまで、裂け目に沿って走り続けるしかない。

 先頭を走る南の神は、しばらく前からかなりとばしている。この俺でさえ、ついていくのがきつい。
 後ろを振り返ると、俺達についてきている神はいない。他の神は、はるか後ろだ。列も、すでに点々と、縦に長くばらけてしまっている。
 たぶん、これが南の神の最も得意な速さなのだろう。
 それにしたって、こんな速さで、ずっと走り続けることなど出来るはずがない。要するに、これは最初の仕掛けなのだ。
 俺の獣が、速度を下げるようにと、首筋に刺激を送ってきた。俺も、そういつまでも南の神の仕掛けに付き合うつもりはない。競勝は、まだ始まったばかりなのだ。
 俺は速度を下げた。
 前を行く南の神との距離が、すーっと開いていく。
 南の神が後ろを振り向き、俺の顔を見てニヤリと笑った。 そして、俺に合わせて速度を下げ、俺の横に並んだ。
 俺は更に速度を下げた。今は、この神を俺の前で走らせるべきだ。
 それでも南の神は、前に行かない。
 俺は思い切って、極端に速度を落とした。
 南の神は、ニヤニヤ笑いながら、俺に合わせて速度を落とす。
 挑発しているのか?
 そう思ったとき、南の神は、更に速度を落として裂け目の縁へと近寄っていった。
 まさか?!
 俺は躯を捻り、南の神の姿を眼で追った。
 南の神は、緩やかに、そして注意深く、裂け目の縁に沿って進んでいる。間違いなく、踏切地点を探っている。
 本当に、ここで跳ぶ気か?! 
 確かにこの区間は、裂け目が少しくびれて狭くなっている。部分的には、九歩を少し切るところもあるだろう。
 しかし、それでも跳ぶのは危険すぎる。
 俺は風を確かめる。
 確かに、追い風だ。絶好の追い風と言ってもいい。
 しかし、それでも九歩は危ない。
 競い場で跳ぶのとは、わけが違う。しくじったら、もう後はないのだ。
 南の神は、すでに助走の軌道取りに入っている。
 やはり、最も狭い部分を狙っているようだ。
 本当に、本当に跳ぶつもりなのか?
 南の神が、助走を始めた。
 徐々に加速する。
 更に加速する。
 本気だ。
 この速さは、もう──
 南の神が、跳んだ

 呆然と立ちつくす俺の脇を、二人の神が追い抜いていく。
 俺は慌てて、後を追った。
 前を走る神を確認しつつも、俺の目には、ついさっき跳んだ南の神の姿が焼き付いて離れない。
 最高の軌道だった。
跳びの姿勢も最高だった。
 宙を駆けるように、長い脚がくるくると回った。
 しかし、着地は危なかった。
 一瞬、俺は落ちたかと思った。いや、普通だったら、落ちていた。
 落ちかけた足元に、岩が突き出てていた。それを足がかりにして、一気によじ登ったから助かったのだ。
 南の神は、そこまで考えて跳んだのか。
 それとも、獣がそうさせたのか。
 いずれにしろ、奴は跳んだ。跳びきった。
 裂け目の向こうで、南の神は勝ち誇って両手を突き挙げ、何度も飛び跳ねた。もう、自分の勝利を確信したような顔つきだった。
 そして、裂け目の反対側に取り残された格好になった俺を見て、南の神は、あからさまな挑発を二度、三度と繰り返した。
あの時、俺は一体どんな顔をしていたのだろう。
 挑発されるがままになっていた自分が情けない。
 あそこで、奴を追いかけて跳べなかった自分が、たまらなく悔しい。
 しかし、俺には九歩は無理だ。今は少しでも速く先に進み、俺の跳べる幅になるところを見つけるしかない  
 前を走る二人の神の速度が、急に上がった。
 獣から、急加速の刺激が来る。
 しまった。つい、気を抜いていた。
 これは仕掛けじゃない。踏切地点を見つけたんだ。
 俺は加速する。ぐんぐん加速して、前を行く二人の神を一気に抜き去る。
 視界が開ける。
 あった。二百歩ほど先に、裂け目がくびれている部分がある。あれなら、跳べるかも知れない。
 その部分に近づくにつれ、予想は確信へと変わっていく。
 獣も、俺を走らせ続ける。
 疲労は、気にしなくてもいい。今は、他の神より先に、踏切地点や助走軌道を確保することが重要だ。
 俺は、ちらりと後ろを振り返る。二人の神は、全く俺についてこれない。やはり、ここ一番の加速に関しては、俺にかなう神はいない。
 裂け目の狭くなっている部分に到着した俺は、喘ぎながらも慎重に、縁まで歩み寄った。裂け目の幅は、八歩半といったところだ。ただし、裂け目の反対側には、こちらに向かって少し出っ張っている部分がある。そこだけなら、八歩だ。
 跳べる。ここなら確実に、跳べる。
 俺は、踏切地点を確保するため、右手を挙げる。
 挙がりかけた右手がビクンと痙攣し、俺の意志に逆らって途中で止まった。
 獣だ。獣が止めている。
(なぜ止める、獣! 見えるだろう、ここなら、跳べる)
 俺は、今立っている地点と、裂け目の対岸の地点に視線を往復させた。獣の返事を待たずに、俺は右手を無理矢理挙げてようとする。
(ワガカミ──)
 腕が挙がらない。筋肉が硬直して、自分の意志で動かせない。
(獣ッ、邪魔するなッ)
 早くしないと、他の神が先に手を挙げてしまう。獣の奴、一体何を考えているんだ?! 
(ワガカミ ワガ カミ カミ─ )
 俺は必死で手を挙げようとするが、獣も激しく抵抗する。肘から先は動かせるが、肘から肩までの部分が、脇にぴたりと吸い付いて離れない。
 背後に、神が近寄ってくる気配を感じた。嫌な予感が胸をよぎる。振り返ると、嫌な予感が当たっていた。東の神が、肩で大きく息をしながら、右腕を真っ直ぐに挙げている。俺と視線が合ったことを確認すると、東の神は右手を挙げたまま、後ろに下がり始めた。追いつかれた上に、これで助走軌道の確保も先を越されてしまった。
 先に確保の宣誓をされてしまった以上、場所を明け渡すしかない。俺はあきらめて、東の神の後ろへと回った。
 右腕は、まだ脇に張り付いたまま動かせない。
(獣よ、もういいから右腕を解放しろ)
(ワガカミヨ、ソレハ デキマセン)
 獣の考えが分からない。東の神を警戒しているのか? 助走中、潰しにくることを警戒したのか?
 俺は、東の神から数歩離れる。
 助走の体勢に入る東の神を、観察する。
 潰しをやる神は、逆に自分が潰されるないように、常に警戒するものだ。この神からは、それが感じられない。ただ、しきりに風を気にしている。
 風は先程から、追い風だ。変わる様子はない。
 東の神が、助走を始めた。
 加速していく。
 いい加速だ。たぶん、跳べるだろう。
 八歩を跳ぶ神は、俺の国でも何人かいる。東の神が跳べたとしても、不思議ではない。
東の神が、思い切りよく踏み切った。
 それを見た瞬間、俺は成功を確信した。この神も、決して侮れない。要注意だ  
 叫び声が聞こえたのは、次の瞬間だった。
 喜びの叫びではない。恐怖の叫びだ。
 東の神は、裂け目を跳びきった。着地も決まった。
 しかし、着地した地面が、崩れた。
 着地した瞬間、もろくも崩れ落ちた。
 そして、東の神も、落ちていった。
 俺は思わず、裂け目の縁まで駆け寄った。
 恐る恐る、覗き込む。
 何も見えない。太陽の光も、裂け目の途中までしか照らしていない。そこから下は、闇だ。
 何も聞こえない。叫び声も、この裂け目に飲み込まれてしまった。
 東の神は死んだ。
 少なくとも、俺の感覚では。
 もし──もし俺が先に跳んでいたら
(ワガカミヨ、ココハ イケマセン
      ドウカ サキニ ススミタマエ)
 獣が、俺の顔を前に向けさせる。
 いつの間にか、百歩ほど先を、一人の神が走っている。俺は走り始める。
 右腕は、自然に振れた。

        §   §   §   §   §   §   §   §   §   §

 東の神が落ちた地点から、かなり走ったところで、俺は裂け目を跳び越えた。八歩と少しあった。踏切が少し甘く、結構ぎりぎりだったが、何とか跳びきった。
 前を行く神は、南西の神だった。
 南西の神には丘の途中で追いつき、河を二本渡ったところで完全に振り切った。
 他の神のことは、分からない。丘の中腹から周囲を見下ろしたのを最後に、他の神は見ていない。ちょうど、俺や南西の神が裂け目を跳んだ辺りを通り過ぎようとしていたところだった。
 いずれにしろ、西の神や北の神と一緒になって走っているようでは、しょせん俺の敵ではない。守りの競いに徹し、先行者の脱落を期待する作戦なのだろう。そんな神など、気にしなくてもいい。
 俺は、三本目の河に足を踏み入れた。流れは決して緩くない。こまめに岩を伝って泳がないと、かなりの距離、下流へと流されてしまうだろう。
(獣よ、溺れるなよ)
(ワガカミノ ショウリノタメニ──)
 
        §   §   §   §   §   §   §   §   §   §
 
 もうだいぶ、陽が傾いてきた。
 終着の場は、そう遠くないはずだ。
 案内役の標識球が飛ぶ高さも、かなり低くなってきている。
 俺はここまで、自分でも良い競いをしてきたつもりだ。
 しかし、南の神の姿は、まだ一度も視界に捉えていない。
 南の神が、全てにおいて俺に勝っているとは思えない。
 気付かないうちに抜き去ってしまえるほど、劣った面があるとも思えない。
 南の神は、必ず俺の前にいる。
 いったい今、どれくらい離されているのか──
 曲がりくねったこの山道では、それが分からない。
 差は、確実に詰まっているはずだ。
 あの裂け目のところでつけられた差は、この長い山道で確実に詰めているはずだ。南の神の長くてしなやかな脚は、こういう上り下りの激しい道を走るのは不得意だろう。
 俺は、自分自身をそう励ます。
 獣も、あるときは規則正しく、ある時は緩急をつけ、俺に刺激を与え続ける。この獣の刺激によって、俺の躯が山道から受ける負荷は、最低限に押さえ込まれている。
 獣は、俺の視覚から得られた情報を元にして、この変化の激しい山道の最適な走りかたを先読みし、俺に伝えてきてくれる。
 道に逆らわず、むしろ道を利用して、無駄な力は一切使わない。
 俺と獣は、上下に波打ち左右に曲がりくねる山道を、ひたすら走り続けた。
 
 左右を、空を、景色の大半を覆っていた樹木が、急にまばらになり始めた。
 ありがたい。どんどん視界が開けていく。
 右手方向に、樹木の隙間から、ちらちらと隣の山が見える。どこか、不自然な感じがする。
 理由はすぐに分かった。
 その山の頂上には、競い場と、それを取り囲む巨大な観衆席が建てられている。
終着の競い場だ。
 驚くほど近い。直線距離にすれば、本当にひとっ走りという感じだ。もちろん山と山は、深く険しい渓谷によって隔てられている。もしできるなら、標識球のように、空を飛んでいきたいところだ。
 俺は走るのを止め、山道の端へと寄っていく。飛んで行くのは無理としても、最短軌道を見つけておく必要がある。
 その時だ。
 急斜面の下に見える一本道に、走る神の後ろ姿を見つけた。
 南の神だ。間違いない。
 近い。こちらを振り向けば、表情まではっきりと分かるだろう。
 俺は、とっさに傍らの木に身を隠した。
 南の神が、こちらを見上げたからだ。
 気付かれたか?
 いや、気付いた様子はない。
 南の神は、かなりゆっくりした調子で、一本道を登っていく。
 それでも、坂の頂点まであと少し。見る間に登りつめ、下りに入る。
 南の神の後ろ姿は、坂の反対側へと消えていく。
(獣よ、この斜面を下りるぞ)
 南の神が下って行った坂の先には、もう一つ、かなり大きな上り坂がある。そこを越えてしまえば、あとは平坦な道が競い場に架かる橋へと続いている。
 もう、距離がなさ過ぎる。今のまま山道を下っていては、南の神に勝てない。
(ワガカミノ ショウリノタメニ──)
 行くしかない。この斜面は、角度こそ急だが、高さはそれほどでもない。岩肌がむき出しになった急斜面を見下ろし、少しでも安全と思われる軌道を探す。
 背中には獣が乗っているから、腹這いで下りるしかない。
 始めの一歩目の足がかりを決め、後ろ向きに一歩、踏み下ろす。
 その途端、俺の躯は滑り落ちた。
 考える余裕などない。
俺は硬い岩肌に顎をぶつけながらも、両手両足に力を込め、斜面から躯がはがれ落ちないように保持し続けた。
 ほんの数秒後にきた着地の衝撃は、全く予想できなかった。躯を捻って、真後ろに倒れるのを防ぐだけで精一杯だった。
 右肩を強く打った。その勢いのまま、躯が一回転するのが分かった。
 空と地面が激しく揺れながら入れ替わる。
 止めた。俺は両手両足を踏ん張って、躯の回転を一回転で無理矢理止めた。
 意識はハッキリしている。むしろ、この危機回避に運動神経が総動員されたためか、冴え渡っている気がする。
 右肩は? 多少痛むが、普通に動く。出血もあるが、この程度なら問題ない。
 他は? 左腕、左脚、右脚、腰、首。
 顎から少し出血している以外は、かすり傷程度だ。
 よし、行けるぞ。
 俺は走り始めた。
 南の神の姿は、こちらからは完全に死角になっていて見えない。つまり、向こうからもこちらが見えないわけだ。
 この短い坂を上りきれば、南の神の姿を捉えることが出来る。
 もうすぐ、もうすぐだ。
 俺の心臓が高鳴る。
 見えた。ついに捉えたぞ。
 南の神の後ろ姿だ。
 坂を下り始めると、さすがに躯のあちこちが痛みだしたが、走りに支障が出るほどのものではない。南の神を捉えた代償だと思えば、どうってことない。
 南の神が不意に、ちらっとこちらを振り向いた。
 すぐに、もう一度振り向いた。今度は少し長く。
 まだ距離が離れているから、その表情までは分からない。
 俺は、歯を剥き出しにして笑ってやった。南の神に、それが分かればいいんだけどな。
 南の神は、速度を少し上げたようだ。やはり、まだ余力を残している。しかし、本気で逃げに入ったという感じではない。
 俺も、かなり疲れてきてはいるものの、今の速さなら維持できる。そして今、南の神の後ろ姿は、少しづつ大きくなってきている。
 この緩やかな坂を下った先に待ち構えている、長く、急な上り坂が勝負だ。
 あの上り坂で、南の神を追い抜く。
 完全に追い抜かなければ駄目だ。
 あの坂の頂上から先は、終着まで平坦な道が続いている。しかも距離的に、俺にとっては苦手な距離だ。
 あそこで競り合いになったら、たぶん俺は負ける。
 南の神は、それを狙っているに違いない。
 この下りで体力を温存し、上り坂で俺に追いつかれても何とか抑え込む。俺を抑え込んだまま坂を上りきれば、競い場に入るまでに振り切ってしまえると考えているのだろう。
 前を走る南の神との差が、どんどん縮まる。
 もう、十歩程度しか離れていない。
 もう、手を伸ばせば届きそうな感じだ。
 このまま追いついてしまおうか?
 それとも、こちらも少し体力を温存して、南の神を先に上らせた方がいいのか?
 獣からは、まだ何も指示がない。
 不意に、右膝の裏側が気になった。
 嫌な感じがする。
 俺は、走りながら首を捻り、右肩越しに膝裏を見た。
 血!
 右脚の裏側が、血で真っ赤に染まっている。
 どこから出血しているんだ? 
 痛みはほとんどないのに?!
 まさか──俺は自分の背中に右手をまわし、獣の腹殻を
一撫でしてみた。
 手のひらを見る。血がべったり──
(獣よ、獣よ、返事をしろ!)
 首筋に、弱い刺激が返ってきた。生きている。まだ、生きている。しかし、この出血、かなり危険な状態に違いない。くそッ、どうして今まで気付かなかったんだ?!
(獣よ、しっかりしろ!)
 俺は、獣に負担を与えないように、慎重に速度を落とす。 手を伸ばせば届きそうだった南の神の後ろ姿が、だんだん遠くなっていく。
 俺は、前方を飛ぶ標識球を確認する。
 ここまできて──残念だ。
 けれども、獣を死なせるわけにはいかない。
 俺は立ち止まった。
 立ち止まって、標識球に躯の正面を向け、顔の前で両腕
を交差させ──
 左手が挙がってこない。肘から肩の部分が、脇腹にくっついたまま、離れない。
(獣!)
 意地を張っている場合か?! 俺は左腕に全神経を集中させる。
(モウ テオクレ デス──)
 嘘だろ?! そんな、嘘だろ?!
(ワガカミヨ── )
 あきらめるな獣! あきらめちゃ駄目だ!
(ドウカ ワタシノ カラダヲ 
      シュウチャク マデ ハコビタマエ── )
 そんな、そんなこと言ったって、終着はまだ先だぞ!
 お前を死なせるわけにはいかない!  
 ここでお前を死なせるわけには──
 俺は立ちつくす。
ただ立ちつくす。
 ただ立ちつくすだけの俺の首筋に、弱い刺激
  (マエヘ── )
 俺の首筋に、か弱い刺激
   (マエヘ── )
 か弱くて、でも力強い刺激
    (マエヘ── )
 俺は歯を食いしばる。
 大地を蹴って走り出す。
 前を見る。
 前には、南の神の後ろ姿と、その先にそびえ立つ上り坂。
 距離を測る。
 南の神までの距離、坂までの距離、坂の上りの距離。
 南の神は、あと少しで上り坂にさしかかる。
 こちらを振り向いた。
 目が合った。
 それも一瞬。
 南の神は、坂を駆け登り始めた。
 その後ろ姿を、その速度を、その躯の切れを見て、俺は心を決める。
 勝負所は一つ。
 一つしかない。
 俺は、はやる気持ちを抑えて、上り坂に向かう。
 立ちふさがるようにそびえる、上り坂に向かう。
 まだだ─  もう少し─  よしッ
 加速をかける。
 勢いよく、上り坂に駆け込む。
 ほんの二、三歩で、躯にかかる負荷が急増する。
 予想していた通りの急勾配。
 予想していた通りの負荷。
 上は見ない。すぐ前だけを見る。
 南の神の位置は、見なくても分かる。
 あいつは見ている。必ず見ている。
 必ず、俺の上に来る。上から俺を抑えに来る。
 重心を出来るだけ前にかけて、ひたすら登る。
 つま先が痺れ、足首が疼き、膝が軋み、太ももが震える。
 舌が乾き、喉が焼け、肺が燃え、心臓が暴れる。
 まだか?
 まだ追いつかないのか?
 あと──あとどれくらいだ?
 あとどれくらい、俺の体は保つ?
 くそッ、何を弱気になっている?! 
 心で負けては駄目だ。
 獣の血を思い出せ。
 獣が流した血を思い出せ。
 獣が黙って流した血を思い出せ。
 俺の体は軽いんだ。
 獣が流した血の分だけ、俺の体は軽いんだッ
 見えた、何かが─ 
 視線を上げる。
 いたッ 追いついたッ 
 南の神の後ろ姿─ 
 俺は、前傾した躯を更に前に倒すようにして加速した。 南の神の足裏が、鼻先をかすめる。
 目の前で、南の神の長い脚が折り曲げられて、胴体の方へ引き込まれていく。
 俺の目の前に、脚一本分の空間が  
        躯縦半分の空間が  
 左肩を下げ、半身になり、躯を捻ってその空間に突っ込む。
 左頬が、南の神の腰をこすっていく。
 抜けた。
 並んだ。
 俺の肩と、南の神の肩が並ぶ。
 並んだまま、急勾配の坂を駆け登る。
 俺の喘ぎ声と、南の神の喘ぎ声が混じり合う。
 前方の空気を奪い合うようにして、むさぼり吸う。
 こいつに勝つには、ただ追い抜くだけでは駄目だ。
 躯を追い抜くだけでは駄目だ。
 心を追い抜かなければ駄目だ。
 南の神を視界の端で捉えたまま、上を見る。
 上りの残りの距離を測る。
 ここだ。
 ここが勝負だ。
 俺は、力を振り絞って加速する。
 坂を登りきった後のことは考えない。
 全力を尽くして坂を駆け登る。
もう、前しか見ない。
 前へ──
 前へと躯を押し出す。
 脚が重い。止まりそうだ。
 胸が苦しい。張り裂けそうだ。
 止まるな、止まるな  
 前へ─  前へ─ 
 突然、ふわッと体が軽くなった。
 一瞬、躯が浮き上がったような感覚──
 頂上だ。
 登りきった。
俺は崩れ落ちそうになる躯を、心で支えた。
 広く平坦な道を、膝をガクガクさせながら前へと進む。
 道は、大きく左へ曲がりながら延びている。
 その先には、競い場。
 あそこが、この競勝の終着場だ。
 
 競い場に入る橋の所まで来たとき、俺は後ろを振り返った。平坦な道にも、その先にも、動くものは何もない。
 向き直って、前を見て走る。
 膝の震えも、太ももの痙攣も、何とか治まってきた。
 心拍も、かなり落ち着いてきた。
 俺は橋を渡って競い場に入る。
 巨大な観客席を埋め尽くす、獣の群。
 獣、獣、獣──
 観客席は獣で一杯だ。
 競い場の中は、俺しかいない。
 この広い競い場の中を走っているのは、俺だけだ。
 そして、数歩先の空中に、俺の標識球。
 その標識球が、輝きだした。いよいよ終着が近づいてきた。俺は、標識球に導かれるまま、競い場の外周部分に沿って走る。
 埋め尽くされた観客席が、沸騰した液面のようにざわめいている。興奮のあまり獣たちが、ぶるぶると震えているからだ。
(獣よ、見えるか、この大観衆が──)
観客席からは、地響きのような大音響が聞こえてくる。何十万もの震える獣たちの躯が発する、獣鳴りだ。
(獣よ、聞こえるか、この獣鳴りが──)
見えているのか?!
 聞こえているのか?!
 俺の感覚を通して──
 伝わっているのか、背中に乗っているお前に!
 標識球が輝きを増し、競い場の中央へ向かって飛んでいく。
 俺は走った。
 走りながら、思い出していた。
 俺の獣と、初めて会ったときのこと。
 俺の獣を、初めて背中に乗せたときのこと。
 獣の刺激で、初めて躯が自然に動いたときのこと。
(獣よ、終着点だ──)
 涙で視界を歪ませたくなかった。
 でも、こみ上げてくるものは、どうしても抑えきれなかった。
(お前の望み通り、終着点まで運んでやったぞ)
 終着点に到着する一瞬前──
 俺は、首筋に微かな刺激を感じた。
 錯覚じゃない。
 確かに感じたんだ──

── アナタ コソ カミニ フサワシイ ──


     §  了 §


(1998年7月15日頃 執筆 by震電)

赤おにと青おにの山

赤おに青おにの山

 ある日のことでした。
「こどもが、ほしいね」
「こどもが、ほしいね」
 おかあさんと おとうさんは、じぶんたちの こどもがほしくなりました。

 おかあさんが、いいました。
「でも、どうしたら こどもを さずけてもらえるのかしら」
 おとうさんが、こたえました。
「こどもはみんな、かみさまからの さずかりものだと きいたことがあるよ」
「それなら、かみさまに おねがいしてみましょう」
 おかあさんは そういいって、おとうさんのてを にぎりました。おとうさんも、おかあさんのてを ぎゅっと にぎりかえしました。
 そのよるは、よぞらに まんげつがでていました。
おかあさんと おとうさんは、まんげつをみながら かみさまに おねがいしました。
「どうか、わたしたちに こどもを さずけてください」
 おいのりしながら、ふたりは ねむってしまいました。

 すると ふたりのゆめのなかに、かみさまが いらっしゃったのです。かみさまは ふたりに いいました。
「ある森の おくふかくにある木のてっぺんで、こどもがひとりぼっちで ないています。このこどもを たすけだすことができたなら、あなたたちに さずけてあげます」
 あさになって、おかあさんと おとうさんは めをさましました。
「きのうのよる、わたしのゆめのなかに かみさまが きてくださったわ」
「ぼくのゆめのなかにも、かみさまが きてくださったよ」
おかあさんと おとうさんは、きのうのよる みたゆめのことを はなしあいました。
「でも、こどものいる森は どこにあるんだろう」
「しっ。しずかにして」
 おかあさんが、くちびるにゆびをあてて みみをすませました。
「こどもの なきごえが きこえるわ」
 おとうさんも、いきをひそめて みみをすませました。
 すると おとうさんにも、かすかに こどものなきごえが きこえてきたではありませんか。
 ふたりのみみには、ずっとずっと とおいところでないている こどものこえが、たしかにきこえるのです。
「こどもを さずかりにいこう」
 おとうさんが そういうと、おかあさんは にっこりとわらって うなづきました。

 おかあさんと おとうさんは、いえをでると こどものなきごえが きこえてくるほうへと、むかいました。
 はしをいくつも わたり、まちをいくつも とおりぬけ、いつしか 大きな大きな森の ちかくまで やってきました。
「この森のおくから、こどものなきごえがきこえるわ」
 おかあさんが、森をみつめて そういいました。
「よし、いこう」
 おとうさんが、おかあさんの てをにぎり、ふたりは いっしょに 森のなかへと はいっていきました。
 しばらくすると、門が みえてきました。
 ちかくまでいくと、その門は おとうさんの せたけよりも もっともっとたかく、それが みぎにも ひだりにも、みわたすかぎり ずーっと つづいているのです。
 おとうさんは、門をみあげて いいました。
「こまったな、これでは むこうへ いけないよ」
 おかあさんは、もういちど まわりをみまわしました。すると すこしはなれたところに、おばあさんが ひとり ぽつんと たっていました。
 おかあさんと おとうさんは、おばあさんに はなしかけてみました。
「おばあさん、おばあさん。わたしたちは、この門を とおって むこうへ いきたいのですが」
 おばあさんは、いいました。
「門をあけてあげてもいいけどね、森のおくには 赤おにと 青おにがいて、にんげんのこどもを さがしまわっておるのだよ」
 おかあさんは、びっくりして いいました。
「そのこどもは、わたしたちが かみさまから さずけてもらった こどもです」
 おかあさんは、じぶんたちが この森にやってきたわけを、おばあさんに はなしました。
「おやおや、それでは おまえさんたちは 赤おにと 青おによりも さきに、こどもをみつけて たすけださないといけないね。さもないと、おにたちが こどもを たべてしまうよ」
「えっ、それはほんとうですか」
 おとうさんは、びっくりして ききかえしました。
「ほんとうだとも。赤おにも 青おにも にんげんをみつけたら、おとなであろうと こどもであろうと おそってたべてしまうのじゃ。あたまから ばりばりと たべてしまうのじゃ」
 おかあさんと おとうさんは、おばあさんから おにのはなしをきいて こわくなりました。おとなでも、みつかったら たべられてしまうからです。
 それでも ふたりのみみには、こどものなきごえが きこえています。そのこえをきいているうちに、こわいとおもうこころより、こどもをたすけだしたいとおもうこころのほうが、つよくなりました。
 おかあさんと おとうさんは、おばあさんに いいました。
「こどもを たすけだしにいきます。門をあけてください」
おばあさんは、うなづきました。
「そうかい、そうかい。でも、そのままだったら すぐおにたちに みつかってしまうよ。
 ふくも くつも、町のにおいが たっぷりしみこんでいるから、おにたちに みつかってしまうよ。ぜんぶ ここで ぬいでいきなさい」
 おかあさんと おとうさんは、そういわれて とまどいました。でも、おにたちに みつかってしまっては たいへんです。ふたりとも、ふくも くつも ぜんぶぬいで、はだかになりました。
 おばあさんは、ふところから かぎをだして、門をあけてくれました。
「ありがとう、おばあさん。それでは いってきます」
おかあさんと おとうさんは、門のむこうへと あるいていきました。

 しばらくすすむと、大きな大きな川が みえてきました。川のはばが とてもひろくて むこうぎしが みえないくらい、大きな川です。
 川のそばには、おじいさんがひとり、ぽつんと たっていました。おかあさんと おとうさんは、おじいさんに はなしかけてみました。
「おじいさん、おじいさん。木のてっぺんでないている こどもを しりませんか。そのこどもは、わたしたちが かみさまから さずけてもらったこどもなのです」
 おじいさんは、こたえました。
「そのこどもなら、この川をわたった むこうにいるよ」
 おとうさんは、みみをすませました。たしかに、むこうぎしのほうから、こどものなきごえが きこえてきます。
「ふねは ありませんか」
おかあさんが たずねると、おじいさんは くびをよこにふって こたえました。
「赤おにや 青おにが わたってくるといけないから、ふねは おいてないのじゃ。こどもをたすけだしたかったら、およいで川をわたりなされ。はやくしないと、こどもが おにたちに たべられてしまうよ」
「わかりました、おじいさん。それでは いってきます」
 おかあさんと おとうさんは、ざばざばと 川にはいっていきました。
 おかあさんと おとうさんは、川のながれに まけないように、いっしょうけんめい およぎつづけました。
 でも、およいでも およいでも、なかなか むこうぎしにつきません。
「こどものなきごえが、きこえなくなったわ。もう、赤おにに たべられてしまったのかしら」
 おかあさんが、いいました。
「ちがうちがう、みずのおとで きこえにくいだけさ。じっと みみをすませてごらん、こどものなきごえが むこうぎしのほうから きこえてくるよ」
 おとうさんが、こたえました。じっと みみをすませてみると、みずのおとにまじって、かすかに こどものなきごえが きこえてきます。
「もうすこしだ、がんばろう」
 おとうさんに はげまされ、おかあさんは およぎつづけました。そして、とうとう ふたりは むこうぎしまでたどりつきました。

 川からでて、あたりをみまわしても こどものいる木はありません。
 しばらくすすむと、山のふもとに つきました。
 山のふもとには、どうくつの いりぐちが ありました。おとなが たってあるけるほどの大きさで、でぐちがみえないくらい、ながいどうくつです。
 どうくつの いりぐちのそばには、おばあさんがひとり、ぽつんと たっています。門のところにいた おばさんより、もっとしわしわのかおをした おばあさんです。
 おかあさんと おとうさんは、おばあさんに はなしかけてみました。
「おばあさん、おばあさん。木のてっぺんでないている こどもを しりませんか。そのこどもは、わたしたちが かみさまから さずけてもらったこどもなのです」
 おばあさんは、こたえました。
「そのこどもなら、このどうくつを とおりぬけた むこうにいるよ」
 おかあさんは、みみをすませました。たしかに、どうくつの でぐちのほうから、こどものなきごえが きこえてきます。
 でも どうくつのなかからは、つよいかぜが、びゅうびゅうと ふきだしています。なかにはいったら、かぜにふきとばされてしまいそうです。
「ほかの みちはありませんか」
 おとうさんが たずねると、おばあさんは くびをよこにふって こたえました。
「赤おにや 青おにが やってくるといけないから、ほかのみちは ないのじゃ。こどもをたすけだしたかったら、このどうくつを とおりなされ。はやくしないと、こどもが おにたちに たべられてしまうよ」
「わかりました、おばあさん。それでは いってきます」
 おかあさんと おとうさんは、びゅうびゅうと ふきだすかぜに さからって、どうくつのなかへ はいっていきました。
 おかあさんと おとうさんは、かぜに とばされないように、いっしょうけんめい あるきつづけました。
 でも、あるいても あるいても、なかなか でぐちに つきません。
「こどものなきごえが、きこえなくなった。もう、青おにに たべられてしまったのかな」
 おとうさんが、いいました。
「いいえ、かぜのおとで きこえにくいだけ。じっと みみをすませてごらんなさい、こどものなきごえが でぐちのほうから きこえてくるわ」
 おかあさんが、こたえました。じっと みみをすませてみると、かぜのおとにまじって、かすかに こどものなきごえが きこえてきます。
「もうすこしよ、がんばって」
 おかあさんに はげまされ、おとうさんは あるきつづけました。そして、とうとう ふたりは どうくつのでぐちまで たどりつきました。

 どうくつからでると、そこは山の まんなかあたりでした。
 したをみおろすと 山が大きく ひろがっています。
 うえをみあげると 山が小さく とがっています。 
 でも、あたりをみまわしても こどものいる木はありません。
 おかあさんと おとうさんは、じっとみみをすませました。すると、山のちょうじょうのほうから、こどものなきごえが きこえてくるではありませんか。
「山のちょうじょうへ いこう」
「いきましょう」
 おかあさんと おとうさんは、山のちょうじょうをめざして さかみちを あるきはじめました。
 でも、さかみちを あるいても あるいても、なかなかちょうじょうには つきません。
「山の ちょうじょうは まだかなあ。もう おなかが ぺこぺこだよ」
 おとうさんが いいました。そういえば、あさ いえをでてから なにもたべていないのです。
「山の ちょうじょうは まだかしら。もう のどが からからだわ」
 おかあさんが いいました。そういえば、あさ いえをでてから なにものんでいないのです。
 でも、ふたりは たべものも のみものも、もっていません。あたりをみまわしても、たべものも のみものも、みつかりません。
「きっと もうあとすこしだ、がまんしよう」
「そうね もうすぐだわ、がまんしましょう」
 おかあさんと おとうさんは、おなかがすいたのを がまんして、のどが かわいたのを がまんして、さかみちを あるきつづけました。
 でも、さかみちを あるきつづけても あるきつづけても、まだまだ さかみちは つづくのです。
「こどものなきごえが きこえなくなった。もう、青おにに たべられてしまったのかな」
 おとうさんは、そういって たちどまってしまいました。
「こどものなきごえが きこえなくなったわ。もう、赤おにに たべられてしまったのかしら」
 おかあさんも、そういって たちどまってしまいました。 おかあさんも おとうさんみも、もう へとへとに つかれてしまったのです。みみをすましても もう かぜのおとしか きこえません。
 こどもをさずけてもらうために ここまで いっしょうけんめい がんばってきたのに、どうしたことでしょう。ふたりとも しゃがみこんで、なきだしたくなってしまいました。
 そのときです。こどものなきごえが、とつぜん はっきりときこえてきました。おかあさんと おとうさんは、びっくりして かおをみあわせました。
「きこえるかい」
「きこえるわ」
 こどものなきごえは、ほんとうに そうとおくないところから きこえてくるようです。
「もうすこしよ、がんばって」
「ああ もうすこしだ、がんばろう」
 おかあさんと おとうさんは、おたがいにはげましあって あるきつづけました。そして、とうとう ふたりは 山のちょうじょうに たどりつきました。

 山のちょうじょうには、いっぽんの ほそくて せのたかい木が はえていました。その木のてっぺんで、小さな小さなこどもが ひとりぼっちでないています。
「あそこだ、あそこだ」
「はやく木から おろしてあげましょう」
 おかあさんと おとうさんは、いそいで木のところまでやってきました。
 近くまでよってみてみると、こまったことに 木のみきにも えだにも するどいとげが、たくさんはえているではありませんか。
「ぼくが のぼろう」
 おとうさんは、そういって えだをつかみました。えだにはえているとげが てのひらにささって ずきずきと いたみましたが、おとうさんは がまんして そのまま木にのぼろうとしました。
 すると、木のえだは ぽきんと おとをたてて おれてしまいました。
 おとうさんは、べつのえだをつかんで もういちど のぼろうとしました。すると、さっきとおなじように 木のえだは ぽきんと おれてしまいました。
 てのとどくところに はえているえだは、もうあと いっぽんしかありません。
「わたしが のぼるわ」
 おかあさんは そういうと、おとうさんが なにかこたえようとするまえに、木のえだをつかみました。えだに はえているとげが てのひらにささって ずきずきと いたみましたが、おかあさんは がまんして そのまま木にのぼろうとしました。
 木のえだは すこしまがっただけで、おれません。
 でも、そのかわりに木ぜんたいが ぐらぐらゆれて、かたむきそうになりました。
「おとうさん、みきを ささえて」
 おとうさんは、あわてて木のみきを りょうてでささえました。すると、木のゆれは ぴたりととまって まっすぐに もどりました。
 おかあさんは、木のみきに あしをかけて、木をのぼりはじめました。
 木をのぼる おかあさんの てのひらや あしのうらには とげがささり、ちが ながれだしました。それでも おかあさんは ひっしに いたみをがまんして、のぼりつつげました。木のてっぺんにいる 小さなこどもを たすけるために、いたみをがまんして のぼりつづけました。
「おかあさん、がんばれ」
 おとうさんは、したで木のみきをささえながら、おかあさんを はげましつづけました。
 そして、とうとう おかあさんは、木のてっぺんに たどりつきました。
 木のてっぺんで ないているこどもは、ほんとうに小さな小さなこどもでした。はだかんぼうで、はだのいろは まるで つちのいろのようでした。
 おかあさんは てをのばして、そうっと こどもを木のてっぺんから すくいとりました。
 おかあさんの てのひらは、ちで まっかにぬれていたので、こどもの はだは みるみる まっかに そまっていきました。
「ああ、あなたは わたしの こどもなのね」
おかあさんは、うれしくて なみだがでそうになりました。
「おとうさんにも、はやくみせてあげたいわ」
 おかあさんは、こどもをかたうでで むねにだきかかえると、木をおりはじめました。
 ぶじに じめんまでおりた おかあさんは、むねにだいた こどもを、おとうさんにみせました。
「ああ、ぼくたちのこどもだね。おかあさん、いたいのをずっとがまんして ほんとうに ごくろうさま」
 おとうさんは、おかあさんから そっと こどもをうけとって むねにだきかかえました。こどもが あまりにも 小さくて よわよわしいので、おとうさんは こわれてしまわないかと どきどきしました。でも、まっかなはだをした小さなこどもは、おとうさんのむねで げんきに ないています。おとうさんは、このこが じぶんのこどもなんだとおもうと うれしくて なみだがでそうになりました。
 そのときです。
「こどもは どこだぁ~」
「こどもは どこだぁ~」
 おそろしげな こえが とおくのほうから きこえてきました。おとうさんと おかあさんは、びっくりして かおをみあわせました。
「赤おにと 青おにの こえだ」
「このこを みつけて たべてしまうつもりだわ。はやく山からおりましょう」
 おかあさんと おとうさんは、こどもをだいて いそいで山をおりはじめました。
「にんげんが いたぞぉ~」
「こどもを だいているぞぉ~」
 さかみちを くだっていた おかあさんと おとうさんは、はっとして うしろを ふりかえりました。すると、山のちょうじょうに 赤おにと 青おにが ならんでこちらをみおろしているではありませんか。 
「まてぇ~」
「こどもを わたせぇ~」
 赤おにと 青おには、おそろしげなこえで さけびながらおかあさんたちを おいかけてきました。
 おにたちに つかまっては たいへんです。おかあさんと おとうさんは、こどもをだいて おおいそぎで さかみちをかけおりていきます。
 でも、赤おにと 青おには、さかみちをころがるようないきおいで、おいかけてきます。おかあさんと おとうさんも、こどもをだいたまま いっしょうけんめいに はしっているのですが、赤おにと 青おには、どんどん おいついてきます。
「こどもをわたせぇ~」
「こどもをわたせば、おまえたちは たべないで にがしてやるぞぉ~」
 赤おにと 青おにの、大きなこえが うしろからきこえてきました。おかあさんは、こわくて からだが いしのように かたまってしまいそうになりました。でも、きもちをふるいたたせて 大きなこえで いいかえしました。
「こどもは わたさないわ。赤おに、青おに、山へかえれ」
 おかあさんと おとうさんが、こどもをだいていっしょうけんめいに はしりつづけますと、くるときに とおったどうくつが みえてきました。しわくちゃのかおをした おばあさんが、そのすぐわきに たっています。
「おばあさん、赤おにと 青おにが きた」
 おとうさんは、はしりながら 大ごえでさけびました。
 でも おばあさんは にげようともしないで、おとうさんたちに どうくつをとおりなさいと みぶりで しめすだけなのです。  
 こどもをだいた おとうさんと おかあさんは、はしるいきおいもそのままに どうくつのなかへ はいっていきました。おばあさんも そのあとすぐに どうくつのなかへ はいっていきました。そして、赤おにと 青おにも、すぐにあとをおって どうくつへ はいっていきました。
 どうくつにはいった 赤おにと 青おには、あっというまに おばあさんに おいつきそうになりました。けれども、もうあといっぽというところまでくると、かぜが びゅうびゅうと ものすごいいきおいで ふいてきて、どうしても おばあさんにおいつけません。
 ですから 赤おにと 青おには、ゆっくりとあるく おばあさんの すぐうしろを、びゅうびゅうふきつける かぜにさからいながら、やっぱり ゆっくりとあるいていくしかありません。
 おばあさんの まえをはしる おかあさんたちには、ぜんぜん かぜはふいてきません。こどもをだいた おかあさんと おとうさんは、どうくつのなかを ばたばた はしりぬけていきました。
赤おにと 青おにが、かぜにさからいながら なんとかどうくつからでてきたときには、おかあさんたちは、もうずいぶんとさきのみちを はしっていました。
「まてぇ~」
「こどもを わたせぇ~」
 赤おにと 青おには おそろしげなこえで さけびながらすごいいきおいで はしりだしました。
 ふしぎなことに、おばあさんのすがたは どこにもみえません。ただ どうくつのすぐよこに、ちいさなおじぞうさまが ぽつんとたっているのでした。

 おとうさんと おかあさんは、こどもをだいて おおいそぎで みちをはしっていきます。
 でも、赤おにと 青おには、つちけむりをあげながら、すごいはやさで おいかけてきます。おかあさんと おとうさんも、こどもをだいたまま いっしょうけんめいに はしっているのですが、赤おにと 青おには、どんどん おいついてきます。
「こどもをわたせぇ~」
「こどもをわたせば、おまえたちは たべないで にがしてやるぞぉ~」
 赤おにと 青おにの、大きなこえが うしろからきこえてきました。おとうさんは、こわくて しんぞうが ばくんばくんして むねがくるしくなってきました。でも、きもちをふるいたたせて 大きなこえで いいかえしました。
「こどもは わたさないぞ。赤おに、青おに、山へかえれ」
 おとうさんと おかあさんが、こどもをだいて いっしょうけんめいに はしりつづけますと、くるときに わたった大きな川が みえてきました。川のそばには、おじいさんがひとり、ぽつんと たっています。
「おじいさん、赤おにと 青おにが きたわ」
 おかあさんは、はしりながら 大ごえでさけびました。
 でも おじいさんは にげようともしないで、おかあさんたちに こちらへきなさいと みぶりで しめすだけなのです。
 こどもをだいた おとうさんと おかあさんは、おじいさんのほうへ はしっていきます。おじいさんは、ふところから おまもりをとりだして 川のみずぎわに ひょいと なげました。すると おまもりは みるみる大きくなって、まるでゴムボートのようになりました。
「さあ、はよう のりなされ」  
 おじいさんと おとうさんたちは、ゴムボートのような おまもりのうえに のりました。すると みんなをのせた大きなおまもりは、かぜもないのに するすると 川のうえを すすんでいくのです。そして、まるで むこうぎしからひっぱられているかのように すいすい 川をわたりはじめました。
 赤おにと 青おにも、川までやってきました。みんなをのせた大きなおまもりをおって、ばしゃばしゃと川へ はいっていきます。赤おにと 青おには、ものすごい水しぶきをあげて およぐのですが、川のながれがつよいので なかなかまえへ すすみません。
 ゴムボートのような大きなおまもりは、みんなをのせたまま すいすい 川をよこぎって、むこうぎしへと つきました。
 おとうさんと おかあさんは、こどもをだいて おまもりのうえから おりました。
「さあ、はよう もんのところまで いきなされ」
 おじいさんのこえがして うしろをふりかえってみると そこには だれもいません。ついさっきまで のっていたはずの ゴムボートのようなおまもりも ありません。
 でも、赤おにと 青おにが、水しぶきをあげながら こちらへやってくるのは はっきりとみえます。
「まてぇ~」
「こどもをわたせぇ~」
 おにたちに つかまっては たいへんです。おかあさんとおとうさんは、こどもをだいて おおあわてで かけだしました。川のそばに ちいさなおじぞうさまが たっていて、そのくびにかけてある おまもりが、みずでびっしょり ぬれていたことには だれもきがつきませんでした。

 おかあさんと おとうさんが、こどもをだいて いっしょうけんめいに はしりつづけますと、くるときに とおった大きな門が みえてきました。おかあさんと おとうさんは、ほっとして えがおになりました。
 そのときです。
「こどもをわたせぇ~」
「わたさないと、おまえたちも いっしょに たべてしまうぞぉ~」
 赤おにと 青おにの、おそろしげなこえが とおくからきこえてきました。はっとして うしろをふりかえると、赤おにと青おにが、すごいいきおいで こっちへ はしってくるではありませんか。
 こどもをだいた おかあさんと おとうさんは、おおいそぎて 門のところへ かけよりました。門は ぴたりととざされています。そのむこうに、おばあさんがひとり たっています。
「おばあさん、こどもを たすけだしてきました。門をあけてください」
 おとうさんと おかあさんは、おばあさんにいいました。おばあさんは、ふところから かぎをとりだして 門をあけてくれました。こどもをだいた おかあさんと おとうさんが門をとおりぬけると、おばあさんは すぐに門をとじて かぎをかけました。
 そのすぐあと、赤おにと 青おにが、門のところへやってきました。
「門をあけろぉ~」
「こどもをわたせぇ~」
 おにたちは そうさけびにがら、門をこじあけようとしますが、かぎが しっかりかかっているので ひらきません。 おばあさんは、おかあさんと おとうさんにいいました。
「このかぎは、そのこどもが よいこに そだてば、いつまでもこわれずに この門をとざしつづけるだろうよ。  でも、もし そのこどもが わるいこに そだてば、かぎはこわれて この門は ひらいてしまうのじゃ」
 おかあさんと おとうさんは、こたえました。
「かならず このこを よいこに そだてます」
それをきいて、おばあさんは うれしそうに うなづきました。
「それでは、ふくをきて いえに かえりなされ」
 おかあさんと おとうさんは、くるときに 門のところでぬいでいった ふくをきて、くつをはきました。おばあさんは、おかあさんと おとうさんが ふくをきているあいだに、こどもに かわいいふくを きせてくれました。
「おばあさん、どうもありがとう」
 おかあさんと おとうさんが、ぺこりと おじぎをして かおをあげたとき、おばあさんのすがたは きえていました。門のむこうにいた赤おにと 青おにも、いつのまにかいなくなっていました。
 こどもは おかあさんにだかれて、きもちよさそうに ねむっています。おかあさんと おとうさんは、しばらくこどものねがおを みつめていました。
「いえに かえろうか」
「いえに かえりましょう」
 おとうさんと おかあさんは、こどもをだいて いえに かえっていきました。

 こうして おかあさんと おとうさんは、こどもをさずかったのです。
 おかあさんと おとうさんは、ときどき 赤おにと 青おにのことを おもいだします。あのおそろしい おにたちは きっといまでも こどもを ねらっているに ちがいありません。
 もし、こどもが わるいこに そだてば、あの山から 赤おにと 青おにがやってきて こどもを さらっていってしまうでしょう。
 そんなことは、ぜったいに おこってほしくありません。
 だから おかあさんと おとうさんは、こどもが わるいこになろうとすると しかるのです。
 こどもが たいせつだから、しかるのです。

                          〈おわり〉


(1999年4月1日頃 執筆 by震電)

健康戦隊ドラッグレンジャー

健康戦隊ドラッグレンジャー

 よお! もう起きる時間だぜ!!
 俺は、健康戦隊ドラッグレンジャーのドラッグレッドだ。今日も一日、熱血していこうぜ! 
 え?! なに、まだ眠いだって?!
 バカヤローッ、寝覚めがすっきりしないなんて、朝っぱらからそんな不健康なことでどうするんだ! 
 この軟弱者、俺が気合いを入れてやるッ。手首にはシリング・インジェクターを、ちゃんとはめているだろうな?
 よし、合い言葉いくぞ!
「レッツ・ドーピング・レッド!」
 そーら、シリング・インジェクター内部で合成されたポリペプチド、すなわち、ピログルタミン酸-ヒスチジン-プロリンアミドが、静脈の中に流れ込んでいくぞ。
 こいつは、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン分子そのもので、要するにヤル気の元なんだぜ。どうだ、もう気分はイケイケだろう。
 おおッ、いいねぇ、布団を蹴飛ばして洗面所へダッシュ! さらにダッシュで着替えてダッシュでメイク! 
 あっ、オイオイ朝飯はどうするんだ? え?! もう遅刻しそうで食べている時間がないだって? それなら、この特製のニンニク入り熱血みそ汁だけでも飲んでいけ。
 
           ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 Hey,カノジョ、どうしたんだい? まるで倦怠感に押しつぶされたカエルみたいにションボリして。
 フッ、失敬失敬。僕は、ドラッグブルー。そう、健康戦隊ドラッグレンジャーのドラッグブルーさ。
 フーン、なるほど。超ヤル気になってメチャ元気に活動しまくったら、ベリーバッドな失敗をしちゃって、気分はもうサイテーってなワケだね。
 それで? オマケに、落ち込む寸前、最後の元気を使って壁を思い切り蹴飛ばした? 
 うんうん、わかるよ。足もイタくてチョベリバだよね。
 そんなふうにクラッシュしちゃった時には、もうアレしかないんじゃないかな?
 体内麻薬のエンドルフィンを、手首のシリング・インジェクターで合成して、静脈内へ直接注入するのさ。
 さあキミも一緒に叫ぼう!
「レッツ・ドーピング・ブルー!」 
 ホラ、もう痛みは感じないだろ?
 痛覚神経の途中のシナプスには、麻薬レセプターというものがあって、コレに体内麻薬が結合すると、痛みが遮断されるというワケ。ちなみに、ベータ・エンドルフィンの鎮痛作用は、モルヒネの約6・5倍も強いんだ。
 フフッ、なんだかリラックスしてきて、フワフワと良い気持ちになってきたって? エンドルフィンには、鎮痛作用と同時に、快感の神経・A10神経を活動させる作用があるからさ。
 カッカと熱くなってちゃ、体が保たない。
 天国気分で、のんびりとハッピーに浸っていようよ。 

          ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 いつまでボケ~と寝ているつもりでゴワスか? もう昼飯の時間でゴワス。
 おいどんでゴワスか? おいどんは、健康戦隊ドラッグレンジャーの、ドラッグイエローでゴワス。
 腹が減っては戦ができんでゴワス。さあさあ、昼飯を食べるでゴワス。
 なんと、食欲がなくて、吐き気までするでゴワスか?
 そげん困ったこつ言われたら、おいどんも奥の手を出すしかないでゴワス。
「レッツ・ドーピング・イエロー!」
 手首にはめたシリング・インジェクターから、テトラヒドロカンナビノールが静脈内へ注入されたでゴワス。
 気分が良くなって、体が軽くなってきたでゴワスか?
 ほう、今度は周囲のものが輝いて見えたり、どこからか楽しげな音楽が聞こえてきたでゴワスか?
 そして、そうそうそれそれ、激しい空腹感がやってくるんですバイ。テトラヒドロカンナビノールには、食欲増進作用があるとです。
もう腹が減って仕方がないうえに、食べたものが美味しくて美味しくて、感激のあまり涙が出るバイ。
 消化不良を起こすといかんけん、消化管ホルモンのガストリンとコレチストキニン|パンクレオチミンもドーピングしておいたから、安心して食べるバイ。胃と膵臓から、消化酵素がどんどん分泌されちょるでゴワス。

          ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 ハァ~イ、アタシはドラッグピンク、健康戦隊ドラッグレンジャーの紅一点よぉ。
 さぁ、愛しい彼とデートの時間よ。今日はホテルでラブラブだから、気合いを入れていかないとねッ。
 それじゃ、はりきっていくわよ♪
「レッツ・ドーピング・ピンク!」
 メタアンフェタミンが、静脈を通って体のすみずみまで流れていくわ。全身がスーッと冷たくなって、頭のてっぺんから爪先まで、キューンと甘美な刺激が駆け巡ってくるでしょ? 
 そうよ、このコンディションで体験する性的快感は…、もぉ想像しただけでもシビレてきちゃうわねッ。
 おまけに、交感神経の興奮作用で、消化管は逆に活動を抑制されるから、胃腸は収縮するわ。そうなったところへ、腹筋に筋肉緊張剤をドーピングしてやれば、キュッと締まってウェストが3㎝細くなるのよ。少し呼吸が苦しくなるけど、そこは我慢しなくちゃ。
 瞳孔が開いて瞳も魅力的よッ。さぁ、ホテルへGoGo!

 あらら、彼と一緒にホテルに着いたのはいいけれど、二股かけてたもう一人の彼と鉢合わせ。どうやら、嫉妬深いもう一人の彼が、あなたを見つけて駆け込んできたみたいよ。なんだか、すっごくケンアクな雰囲気だわ。
 ねぇ、どうするの。ここは、ドラッグマシンを呼ぶしかないんじゃない? 
 じゃあ、手首にはめたシリング・インジェクターで呼び出しなさい。
「ドラッグマシン1号、2号、発進!」
 ほら、すぐに近くでドラッグ自動販売機にカモフラージュして待機していたドラッグマシンが、文字通り飛んできてくれたわ。
 彼たちが呆気にとられている今がチャンス!
「合体! ドラッグロボ・薬用アリナミンケルVVC!!」
 すごいでしょ、ドラッグ自動販売機二台が変形合体。
 これがドラックレンジャーが誇るハイテクロボット、その名も薬用アリナミンケルVVCよ。
さぁ、こうなったら迷っている場合じゃないわ。確かに少々もったいない気もするけど、さっさと切り札をキメて決着をつけなくちゃ。
「必中! スペシャル座薬ミサイル発射!!」
 やったわ、自動追尾式の座薬ミサイルが二人の彼のしかるべきところに見事に命中!
 見て、強力な同性愛ホルモン『やおE』によって、彼と彼の間には、もう愛が芽生え始めているみたい。直腸から血液に吸収されたクスリは、血管の構造上、最初に肝臓へは行かないから、分解されずに全身に行き渡るのね。
 さぁ、後の成り行きは彼たちに任せて帰りましょう。うまい具合に、ここはラブホテルだし。
 ツライ気持ちは分かるわ。形の上では失恋だもの。
 でも、大丈夫! どうせ男はバカだから、ちょっとフェロモンを振りまいてやれば、サカリのついた犬みたいに寄ってくるわ!!
 
          ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼ ▼

 失礼ですが、あのちょっと、化粧も落とさずにふて寝している場合じゃありませんよ。
あ、申し遅れましたが、私、健康戦隊ドラッグレンジャーの、ドラッググリーンです。あの、今日一日のドラッグ使用状況を確認しますから、手首にはめたシリング・インジェクターを見せて下さい。
 インターフェースモニターを接続して、パスワードと国民登録ナンバーをインプットすれば…。
 うわっ、なんですかこの滅茶苦茶なドーピング・データリストは。本当に今日一日でこれ全部入れたんですか? 急性中毒を起こして倒れていても不思議じゃないですよ、これは。
 あッ、このデータからすると、シリング・インジェクターからの投与が終わった後も、ドラッグを摂取していますね。まったくもう、あれほど酒も煙草も立派なドラッグだと警告しているのに、理解して頂けてないとは…。
 あーあ、無随神経系のバランスも乱れてしまっていますよ。困ったものですね。
 オホン、仕方ありません。
 では、神経系のバランスを回復させるためには、このドラッグを。次の、このドラッグによる中毒を緩和させるためには、この別のドラッグ。
 さらに、こちらのドラッグによる副作用を抑えるためには、もう一つ違ったドラッグが必要になります。それから、副作用を抑えるドラッグによる副作用を抑えるためには、また別にこの二つのドラッグが必要ですので…。
 もしもし、私の話を、ちゃんと聞いていますか? 
 そうそう、いつも使ってるドンブリを持ってきて下さい。こんなに大量のドラッグを、シリング・インジェクターの内部にセッティングすることは無理ですから。
ええ、もちろん私はあなたの健康を第一に考えていますとも。あなただって思うでしょう、不健康になるくらいなら、死んだ方がマシだって。
 そうですとも、おっしゃるとおりですよ!

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
  あなたの健康を損なうおそれがありますので、
  ドラッグの摂りすぎには注意しましょう。       
  ドーピングマナーを守りましょう。          
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

 明日のドラッグレンジャーはキミだ!!

                     ─ 了 ─


(1997年5月21日頃 執筆 by震電)

『 避難命令  ゴジラ警戒区域 』

『 避難命令  ゴジラ警戒区域 』

 この書き込みは、1991年11月1日に東海SFの会から発行された『ペーパームーン』の原稿を、現代(注※この原稿を書いたのは2000年04月24日です)に合わせて加筆修正したものです。

 私が「ゴジラ対人間」を描くとき、それは大まかに3つのスタイルに分けられます。
 「強者対弱者」、「強者対強者」、「強者対徹底的弱者」の3つです。
 以前書き込んだ『ゴジラ2002 ~対怪獣民間部隊、出動!~』は、「強者対弱者」のスタイルです。今回書き込む『 避難命令 ゴジラ警戒区域 』は、私が初めて書いたゴジラ映画のオリジナルアイディアであり、「強者対徹底的弱者」というスタイルをとっています。
 この映画のゴジラは、「台風のように移動する雲仙普賢岳」です。放射能火焔は、ズバリ火砕流そのものです。空ではなく、地表へ向かって放たれ、火砕流同様、地表を数キロメートルに渡って進みます。光線ではなく、青白く発光するほど高温になったガス(ゴジラの呼気)です。
 また、ゴジラは「台風+火山」という天変地異の化身というコンセプトであるため、その全身を見せることは原則としてありません。台風の全身は、普通の人の視点では見えない、そういう感覚です。
 この映画のゴジラは、生物的には初代ゴジラに類似した設定になっていますが、過去のゴジラ映画そのものとは全く関連を持っていません。1954年、1977年の過去2回、九州にのみ上陸したことがあるという設定で、これは劇中早々に語られます。
 また、ゴジラは白昼堂々とスクリーンには登場しません(劇中では出現していても、絵として出さない)。終始、夕方以降、陽が傾むいた「遭う魔が刻」以降の時間帯に現れます。ただし、TVニュース画面の映像としては、昼でもゴジラの姿(の一部)が、登場します。
 この映画のコンセプトは、ズバリ「ゴジラによる災害とそれにまつわる人間ドラマを描いた、一種の報道記録番ドキュメンタリー」です。
 読んでいただければ分かりますが、基本的ラインは「84のリメイク」です。「84」を、もっとハイクオリティに、もっと洗練された作風に作り直したい、という欲求が根元になっています。
 では、説明を交えつつストーリーを紹介します。
 
 いきなり、25年ぶりに、ゴジラが九州に上陸しようとしているシーン。
 ゴジラ迎撃戦を展開する、海、空の自衛隊。その現場で撮影されたような、記録映画風の映像。
 軍艦の中の人の動き、司令所の管制装置とオペレーター、戦闘機の発進風景、パイロットと通信員の交信状況の点描。
「レーダーおよび赤外線ではゴジラをロックオンできない」
「距離○○まで接近して目視照準により攻撃せよ」
 といったような内容の会話(専門用語を使っていて聞き取りにくい)が飛び交う。
 ゴジラと艦隊の距離は数キロメートル離れているので、時折見えるゴジラの姿も、水平線上の小さなシルエット程度であったり、戦闘機のコクピット内から垣間見るゴジラの姿、といった程度。
 夕闇の中で、ほんの一瞬、爆発の光によってゴジラの姿が見えたりもする(望遠映像)。
 数キロメートル先の水平線から、突然青白く光るガスが艦隊に向かって海上を疾走してきて、それに飲み込まれた艦隊が次々と爆発(高熱に包まれて内部から誘爆する感じ)していく。
 混乱する司令所。次々と飛び込んでくる被害状況。
(このシーンは、ほんの5分くらいで唐突に終わります。5分間なら、本物の映像を使うなどして、リアリティを保つことが出来ると思うので)

 映画タイトル『 避難命令 ゴジラ警戒区域 』

 とある家庭のお茶の間。
 この物語の主人公である家族(夫、妻、2歳の子供)が、ゴジラ九州上陸を伝えるニュース番組を見ている。番組はニュースステーション。久米弘を始めとするアナウンサー達が、ゴジラ九州上陸のニュースを伝える。
「自衛隊の被害は甚大で、また、ゴジラを撃退するどころか、ゴジラの放射火焔攻撃を誘発して被害が増大することから、自衛隊は以後原則として積極的な戦闘行動は行わず、救助活動に専念するということです」
「要するに、ゴジラが再び上陸しても、放っておくということです。これは、25年前の対応と全く同じで、四半世紀が経過してもなお、自衛隊の武力はゴジラに対して何ら有効な手段成り得なかったということを証明したかたちになりました」
「ゴジラは上陸の2時間後、海中へ姿を消しました。現在も捜索が続けられていますが、今のところ、ゴジラを捕捉するには至っていないようです」
 ニュースを見ている夫婦は「九州の人達は大変ねー」と、完全に他人事。
(ニュースの中で、過去2回のゴジラ上陸は九州に限られており、3度目の今回も、ゴジラの進行コースが過去と似ていることが説明されるため、本州内陸部にいる自分たちは絶対安全だと思い込んでいる)
 
 場面変わって、巨大な工業地区。その一角にあるビルの中の職場。
 先ほどのシーンでニュースステーションを見ていた主人公夫婦(夫・中田孝一、妻・圭子)も、このビルの中の職場で働いている。
 この工業地区は、幾つかの大企業と大学が共同で造り上げた、いわば産学複合工業都市である。工場や研究所だけではなく、住宅などの居住地区や、生活を支える商店街も併設した、一つの街なのだ。
 孝一、圭子の勤務する研究所では、鯨やイルカを電子装置によってコントロールする研究が進められている。最終目的は、バイオ技術によって品種改良した鯨の養殖を始めとする、「海底牧場」計画の実現である。
 「海底牧場計画」は、主に生物コントロール技術によって、ハードウェアを極力少なくして実現させる案と、生物コントロールには頼らず、海中ロボットや特殊な隔壁などのハードウェア主体で実現させる二つの案が別々の研究グループによって同時に開発が進められていた。両グループは、その主体になっている企業・大学が異なっていることもあり、強力なライバル関係にあった。
 孝一と圭子は、生物コントロール案のチームに属しているが、二人とも下っ端の人間に過ぎない。(孝一は研究そのものではなく、コントロール装置の開発に携わる技術屋のうち一人であり、圭子はそのチームの経理などを担当しているごく普通の事務屋)
 以降、ドラマは28分間、生物コントロール案チームの主要研究スタッフ4人(男女各二人)と、チームの責任者が、ライバルチームを強烈に意識しながら、開発を進めていく様子を4日間に渡って描写する(ラブストーリーというか、恋愛描写も有り)。
 この間、ゴジラがドラマに直接絡んでくることは一切ない。ただ、ほぼ6分毎に1回、約1分間、登場人物がゴジラのニュースを見るシーンが入る。

 1日目のニュース…
 九州に上陸していた後、消息を絶っていたゴジラが、大方の予想に反して四国(高知県の足摺岬)に一時上陸、小規模な被害を出した後、海へと去って行き消息不明となった。

 2日目のニュース…
 ゴジラが、再び大方の予想に反して広島県の呉市に一時上陸、大きな被害を出した後、海へと去って行き消息不明となった。
(市民によって偶然撮影されたゴジラのビデオ映像が流される。ゴジラは水平線に小さく映っているだけで、「あれ何、あれ何?」「ああ、動いてる、動いてるよ」などの撮影者の音声が入っている)

 3日目のニュース…
 ゴジラが、周防灘(山口県と九州の間の海)を、背鰭の一部を海面から覗かせて泳いでいる姿が発見され、山口、福岡、大分の三県の海岸付近が「ゴジラ警戒区域」に指定された。
(TV局のヘリによって上空から撮影された、点々と海面に背鰭を出してV字状の波を立てて泳ぐ、ネッシーぽいゴジラ映像が流される。「カメラ回ってる?」「これ、オンタイムで流しちゃっていいの?」などの撮影スタッフの音声が入っている)

 4日目のニュース…
 ゴジラが、周防灘(山口県と九州の間の海)内に設置されたソナーによって一時捕捉され、敷設された機雷に触雷したことが確認されたものの、再び消息不明となった。一部の自治体では住民に避難命令が出され、住民の避難が行われたが、専門家?の間でもゴジラがどこに上陸するかに関しては意見が分かれている。

 孝一と圭子は、生物コントロール案チームの研究スタッフのドラマにはほとんど関わらず、出番も少なくて完全な脇役扱い。台詞も、孝一の「プロ野球の日程、どうなるんだろ? この状況で福岡ドームで試合やるわけには、いかないもんなぁ」の一つだけ。
(観客に、孝一と圭子に関して、「この夫婦は、登場した順番が先だっただけで、主人公ではないらしい」という認識を植え付け、この時間帯のドラマの主役である研究スタッフ4人に対して、メインキャラクターとして感情移入させるのが目的)

 ゴジラが周防灘で消息不明になった翌日、研究開発ドラマの主役を演じた研究スタッフ4人が、大阪に出張する。学会で、研究の途中成果を発表するためである。
 学会での発表を無事終えた研究スタッフ4人は、男女二組のカップルに別れて夕暮れの大阪湾岸地域へと繰り出す。
 しかし同時刻、夕陽を浴びている瀬戸大橋が、突然中央部から崩壊するという大事故が発生していた。事故の直後、一瞬だけ海面でゴジラの尻尾が勢い良く跳ねたのだが、不幸にも、それをハッキリと目撃した人は誰一人としていなかった。
 瀬戸大橋崩壊から3時間後、夜の大阪湾にゴジラが上陸する。捜索能力の全てが周防灘付近に集結させられていたため、人々は完全に不意をつかれた格好になった。

 研究スタッフのカップルのうち一組は、電車に乗っていた。
 ゴジラの接近による地震で、電車は自動停止しようとするものの、間に合わず脱線。カップルのうち女性は電車から脱出することに成功するが、男性は逃げ遅れて、電車の中に閉じこめられたままゴジラに踏みつぶされてしまう。脱出して助かったと思われた女性も、ゴジラの尻尾の気ままな一振りで転がってきた電車の車両の下敷きになり、命を落とす。
 もう一方のカップルは、ビルの谷間、街道でタクシーに乗っているとき、ゴジラと遭遇。タクシーを捨てて自分の足で避難している最中、カップルは群衆に飲み込まれて別れ別れになってしまう。
 避難途中で脚を負傷した女性はビルに逃げ込むが、そのビルに火災が発生。煙に追われて女性はビルの中を上へ上へと逃げ、防火隔壁にそれを遮られると窓からの脱出を試みる。しかし、接近してくるゴジラの姿を確認して、金縛り状態に。「来ないで、来ないで」と必死に祈るが、ゴジラがビルの横を通過する際、ゴジラの体の一部がビルと接触、女性は飛び散る瓦礫と共に落ちていく。
 男性は、ゴジラに追いつかれそうな状況になりながらも交差点にまで辿り着く。パニックに陥ってひたすら直線的に逃げる群衆の中を泳ぐようにして、街道から直角方向へと逃れる。体力尽きて街灯にしがみつく男性の後方で、ゴジラは街道を直進して交差点を通過して行く。ゴジラの足音と振動は、徐々に、しかし確実に遠ざかっていく。
 男性がほっと一息ついたとき、街道とその上空を占める空間を、青白く発光する突風が吹き抜けた。一瞬遅れて、街道に直交する道にも灼熱の空気の固まりが押し寄せ、男性の頭髪や衣服を含む周囲の可燃物は一斉に燃え上がる。
 夜のビルの谷間は、炎の流れる河となって、いつまでも燃え続けるようだった。

 場面変わって、自宅でTVのニュースを見ている孝一と圭子。
「今、大阪はまさに火の海と化しています。ここ○○からも、その様子を窺うことが出来ます…」
呆然としてニュース画面に見入る二人。子供が目を覚まして泣き出しても、すぐには気付かない。
「△△さん達(4人の研究スタッフのこと)、大丈夫だよな…あっ、携帯、携帯」
孝一は、携帯電話を操作するが…
(観客が、「ストーリーの展開上、絶対に死ぬことはないだろう」と思い込んでいた登場人物が、悲惨な死を遂げる。これにより、観客にショックを与えることを狙う。同時に、対岸の火事の様な感覚で描かれていたゴジラの恐怖を、ワンランク身近な恐怖として感じさせる。「誰かが殺される」という感覚から、「彼らが殺される」という感覚への移行。また、ゴジラの放射火焔で焼き尽くされた街道で遺体の回収作業をする自衛隊の姿を報道するニュース番組などで、被害の悲惨さを描写する)

 その後、ゴジラは海に戻ることなく本州内陸部を東に向かって移動を続ける。陸上のゴジラの動きは完全に把握できるため、ゴジラの進行に伴ってゴジラ警戒区域が指定され、住民の避難が行われる。
 それによって人命は守られるものの、ゴジラによる破壊は深刻な被害をもたらし、25年前に制定された、通称「ゴジラ特例法」が適応されることが決定。保険会社も国も、被害者・地域からの受け付ける請求金額に関して総額の上限が設定され、それを越えた分に対しては、一切の責任を免除されるのだ。
 マスコミは、保険会社も国も既にその額に達しているのだと報道する。つまり、これから発生した被害に対しては、保険会社からも国からも、金銭の支給は一切されないのだと。
 政府は「国家緊急の事態に際し、国民一人一人の自助努力に期待する」という談話を発表し、事実上それを認める。

 孝一と圭子の住む産学複合工業都市は、ゴジラの予想進路上に位置していた。ゴジラ警戒区域がじわりじわりと接近してくるに従い、孝一と圭子はもちろん、職場、街全体が真剣に悩み始める。
 ただ、一つ希望があった。産学複合工業都市の比較的近い場所に、在日米軍基地がある。「原則として積極的な戦闘行動は行わない」という姿勢を取り続けている自衛隊も、もしこの地域をゴジラが通過するようなことがあれば、在日米軍基地を守るため、ゴジラを追い返すべく総攻撃を仕掛けるのではないか?
そうすれば、結果的に自分たちの街も守られることになる。
 しかし、この期待は最悪の形で裏切られた。政府は、地域社会に対して何の説明も行わず、在日米軍基地を防衛するために自衛隊を展開させた。そして、その布陣は「ゴジラが米軍基地に進入する恐れが出た場合、ゴジラの進行コースを産学複合工業都市のある方向へ逸らす」ことを目的にしてることが、TV局の調査で明らかになったのだ。
 ある意味、これは理にかなった作戦であると言えた。産学複合工業都市は、山を切り開いた新興開発地域に造られた都市であり、ゴジラが通過しても発生する被害は比較的少なくて済むからである。
 しかし、産学複合工業都市に住んでいる人々にとっては、そんなことは関係ない。ローンを組んだ自宅(分譲住宅地)がある、かけがえのない自分たちの「生活圏」なのだ。
「政府は、米軍基地を守るために、産学複合工業都市を見殺しにするつもりだ!」
マスコミは、産学複合工業都市を「生け贄の街」と呼んでニュースの目玉にし、騒ぎ立てる。
 ゴジラの襲来予想日までまだ約1週間あるため、TV局を始めとするマスコミの大群が、産学複合工業都市に押しかける。
 ゴジラの記事がトップを飾る新聞や写真週刊誌がコンビニに並び、子供を抱いて歩いている圭子が、突然TV局のインタビューを受けたりする。(この時の映像は、TVカメラの一人称映像で、『マックスヘッドルーム』風)

 そして、産学複合工業都市の上層部から、生物コントロール案チームの研究スタッフ(孝一と圭子を含む)に、極秘の指令が伝えられる。「生物コントロール技術を応用して、ゴジラの進路を変える試み」を行えというのだ。ゴジラも基本的には大型の海棲生物である以上、鯨やイルカをコントロールする技術が通用する可能性がある。さらに、生物コントロール案チームは、牛や象などの陸棲の大型哺乳類に対するコントロール技術も、参考のために研究を続けてきていた。ゴジラをコントロールするのは不可能でも、その脳に影響を与え、進路を少し変えることぐらいなら、あるいは…。
 生物コントロール案チームの責任者(甲斐)は、上層部のこの指令を引き受ける。主要研究スタッフ4人をゴジラに殺された憎しみ、自分の研究に対する執念、そしてプライドが彼を駆り立てていた。孝一と圭子らチームのメンバーも、自分の家を、生活圏を守るため、エゴと狂気を孕んでいることを承知でこの計画に加わるのだった。(ゴジラの進路を変えれば確かに自分達の街は助かるが、そのために本来は助かるはずだった別の街が犠牲になる)
 ゴジラが日一日と確実に産学複合工業都市に接近してくることがニュースで伝えられる中、秘密裏にコントロール装置の改造が行われる。
(ニュース映像は、ニュースステーションが中心。「では、今日もゴジラ関係のニュースからです」)

 遂に産学複合工業都市が警戒区域に指定され、住民の避難が始まった。圭子は子供を連れて避難先へと向かう。しかし、生物コントロール案チームの男性メンバーは、避難に応じた振りをして全員研究所に戻り、計画を実行へと移す。黒く塗装され、ランプ類を全て目隠しされた自動車に、ゴジラ用に改造されたコントロール装置が積み込まれる。操縦するのは、暗視装置を付けた甲斐。チームの責任者が自らこの危険な役目をかって出たのだ。
 コントロール装置を作動させた自動車がゴジラに接近すると、ゴジラは、まるでそちらへ引き寄せられるように進路を変えた。「成功だ!」携帯電話で甲斐にゴジラの動きを伝える孝一たち。甲斐は、完全にゴジラの進路が産学複合工業都市から逸れるまで、装置を作動させ続ける。しかし、ゴジラと甲斐の車との距離はどんどん詰まっていく。
「課長(甲斐のこと)、もうOKです。お客さん(ゴジラのこと)が来ますから、テレビ(コントロール装置のこと)を切って下さい」
「…駄目だ、何度やってもテレビが切れない」
コントロール装置を停止させることができなくなるというトラブルが発生したのだ。甲斐はゴジラから必死で逃れようとするが、工事によって行き止まりになっている道に入ってしまい、追いつかれてしまう。甲斐は、携帯電話で自分の状況を実況生中継しながら死ぬという、壮絶な最期を遂げる。
 TVニュースは、ゴジラの進行が当初の予想進路から外れたこと、産学複合工業都市が警戒区域から一時的に除外されると同時に、他の某区域が緊急警戒区域に指定されたことを報道し始めた。孝一たちは、甲斐の死に対する悲しみ、某区域住民への罪悪感、自分達の街が助かったことへの安堵が入り混じった複雑な感情を抱きつつ、疲れた体を休憩室の長椅子に横たえるのだった。

 翌日の朝、孝一たちは研究所前に押しかけたマスコミによって目を覚まされることに。今回の、生物コントロール案チームによるゴジラ誘導作戦の内容が、深夜のニュース番組で報道されていたのだ。
「どこから情報が漏れたんだ?」 「そんなことより、証拠を隠して、早くここから逃げないと!」 
 慌てて逃げ支度をする孝一たち。しかし、予備の、もう1台の(ゴジラ用に改造された)コントロール装置が、保管場所から消えているではないか!
 「盗まれたのか?!」手分けして必死に探すが、見つからない。
 そこへ、ゴジラの進入を受けた某区域からの避難民の一部が、暴徒と化して押し寄せてきた。怒りに燃える彼らは、窓ガラスを破って、研究所内部になだれ込んで行く。その後をマスコミが追う。孝一の仲間のうち一人が暴徒の集団と鉢合わせてしまい、凶器が用いられた袋叩きに…。警察が駆けつけたときには、既に複数の死者が出ていた。
 孝一は騒ぎの中、単独で研究所から脱出することに成功するが、その際、携帯電話を壊されてしまう。連絡が付かないまま、妻子の元へ向かう孝一。
 同時刻、ゴジラの進路が再び変わった。在日米軍基地をかすめ、再び産学複合工業都市を直撃するコースとなったのだ。まるで何者かが、ゴジラを本来の、産学複合工業都市を直撃するコースに戻したかの様だった。しかも今度のコースは、ゴジラを在日米軍基地から遠ざけようとした場合、産学複合工業都市から避難した住民が集結している地域へゴジラを向かわせることになる。
 妻子の元へ向かう車の中で、孝一はこのニュースを知る。予備のコントロール装置が、産学複合工業都市のどこかで何者かによって作動させられたと考えると辻褄が合う。しかし、今となっては避難先にいる妻子を、更に別の場所へと避難させることが先決だ。
 ゴジラが在日米軍基地に接近し、遂に自衛隊は総力を挙げてゴジラに攻撃を仕掛ける。
 同時に自衛隊の救助部隊が圭子たちの避難先に向かっていたのだが、避難民は「在日米軍基地に逃げ込めば安全」というデマに駆り立てられ、救助部隊が来るとも知らず在日米軍基地へと向かっていた。その結果、避難民達は、ゴジラと自衛隊の戦闘のまっただ中を横切ることになってしまう。その際、今度は「自衛隊が救助に来てくれた」と勘違いし、警戒区域に指定され、ゴーストタウンとなった街の中で避難民達は足を止めてしまうのだった。
 その街にゴジラが進入、自衛隊による戦闘はますます激化する。そして遂にゴジラが放射火焔を吐き、それによる広範囲の破壊現象によって、避難民のかなりの部分が犠牲となる。生き残った人々も、熱波に灼かれ、火傷その他の怪我を負いながら、戦闘が続く街の中を逃げまどう。

(平成シリーズ以降、お決まりの「逃げる大勢の市民」は描かれたことはあっても、ゴジラの活動によって負傷した怪我人の集団が、絶望的に逃げまどうという光景は描かれたことはなかった。この映画では、それをキッチリ描写したい)

 窓ガラスが全部割れた建物の中で、子供を抱いた圭子を含め、十人前後が息を潜めている。そこへ、ゴジラの足音と地震のような揺れが、一歩一歩確実に近付いてくる。圭子の子供が火がついたように泣き出し、宥めても泣きやまない。張りつめた静寂の中に響き渡る、子供の泣き声。突然、近くにいた男が、血走った目で駆け寄り「静かにしないと、ゴジラに気付かれちまうだろうが!」と、泣き叫ぶ子供に掴みかかる。「やめて!」必死に子供を守る圭子。
 何も知らない自衛隊戦闘機チームのパイロットたちが、ビルの近くに迫ったゴジラに標準を合わせ、爆弾を一斉に投下する。その半数はゴジラに命中するが、残りの半数はビルに命中。ビルの天井は崩壊し、子供を守ろうとする圭子も含め、ビル内にいた全員が瓦礫の下敷きとなってしまう。そこへ、再び戦闘機による爆撃の流れ弾が降り注ぎ、その爆発が、ビル全体を完全に飲み込んでいく…。
 孝一は、妻子の死を知らぬまま、戦闘区域に突入していく。しかし、爆風の煽りを受けて車は横転。車の中で負傷、失神した彼は、遅ればせながら到着した救助部隊によって助け出されるのだった。
 自衛隊との戦闘によってゴジラの進路は僅かに逸れ、ゴジラは在日米軍基地に一切被害を与えることなく、去っていった。産学複合工業都市も、結果的には完全に迂回された形になり、暴徒による被害が出ただけで終わった。ただし、ゴジラの基本的な進路には変化はなく、ゴジラは更に東へと向かって進んでいく。
 孝一が運び込まれた病院には、産学複合工業都市から避難した人々の悲惨な状況を反映し、次々と遺体が運び込まれていく。その病院の前では、TVの取材班が集まり、報道合戦を繰り広げていた。しかし、その数は、以前、産学複合工業都市に集結した時と比べると、決して多くない。マスコミの興味は、既にゴジラが次の直撃すると予想される大型都市に移っているのだ。

 頭と手足に包帯を巻いた孝一が、病院のベッドに寝たまま、TVニュースを見ている。今度の災害での死者の名簿が映し出されている。それを、不安な視線で見つめ続ける孝一。
 場面変わって、夜。何処かの街の街頭TVと、そこに映し出されるニュース番組(ニュースステーション)に、足を止めて見入っている人々。
「さて、ゴジラの進路に影響を与えたと考えられていた装置に関する続報です。政府が、産学複合工業都市から、その装置の予備機であったと思われる同型の装置を徴用して調査したところまでは、前回お伝えしました」
「政府は、どうやらその装置を、本日午前中、実際にゴジラに対してテストした模様です。その結果、ゴジラの動きに対しては、何の影響も与えることが出来ないということが判明したとのことです。この実験に参加した自衛隊の一部情報筋から伝えられたところによると…」
 ニュースの映像はそのままで、音声に映画のエンディングテーマが被さっていく。ニュースの映像が黒へとフェードアウトしていき、エンドマークが出ないまま、スタッフロールが始まる…

 というわけで、ある意味で全く救いのない、人間を徹底して弱者として描くゴジラ映画。映画を見終わった直後、すぐには椅子から体を起こす気になれないような、重たいゴジラ映画。そんなゴジラ映画も、一生に1本ぐらいは、どーですかお客さん!

仮面の考察2

 仮面の考察2
 (このコラムは、リアルタイムで『ハリケンジャー』第1話を観た当時に書いたものです)

 『ハリケンジャー』の第1話で、不思議な嬉しさを感じた。
 主人公3人が、全身の変身を解除しない状態で、仮面の部分のみを解除し、素顔を見せたからだ。
「変身したまま、仮面を外して素顔を見せた!」
そんな、ちょっとドキッとするような嬉しさが、そのシーンにはあった。
 G3系ライダーやウィンスペクター系のヒーローでも似たようなシーンはあったが、彼らはヘルメット部分を丸ごと脱ぎ去ってしまう。そうすると、
「首から下はそのままでも、変身そのものは解除された=素に戻っており、この時点で変身ヒーローではない」という印象になり、
「変身ヒーローであることを維持したまま、素顔(正体=本来は秘密であるもの)を明かしている」
といったテンションの高い感覚ではなくなってしまうのだ。

 撮影する分には、ヘルメット部分を丸ごと脱ぎ去って小脇に抱えたほうが、手っ取り早くて簡単だろう。それを、わざわざ顔の部分のみが開かれたヘルメット部を造って、それを被らせるという演出に、戦隊ものの細かい配慮が感じられて嬉しかった。

 『タイムレンジャー』や『ガオレンジャー』で、戦闘中にマスクが損傷し、変身した状態のまま素顔が覗くというシーンからも、同様の感覚を得た。
「変身中に素顔が見えてしまう=あってはならないこと」
といった意識が、単なるダメージ表現以上のものを感じさせ、テンションを上げるのだ。

 装いが派手でも、あくまで“秘密”の戦隊であった『ゴレンジャー』。視聴者としてはヒーローの正体も素顔も先刻承知なのだけれども、物語の世界の中では一般的市民には秘密の存在。
 変身シーンがある以上、避けることの出来ない二重構造である。
 (間違っているかもしれないが)昔の『月光仮面』は、視聴者にもその正体が謎だったと聞いたことがある。

 10人くらいの登場人物の中に、3人くらいの変身ヒーロー(変身する敵側キャラでも可)がいて、誰がどのヒーローに変身しているのか視聴者にも全く分からないといった作品を、完全新作もので観てみたいなどと考える今日この頃である。

仮面の考察

 仮面の考察

 変身ヒーローは、日本だけではなく、西洋にも存在する。両者には共通点もあるが、異なる点もある。
 日本の変身ヒーローは、フルフェイスの仮面で顔または頭部全体を覆い隠しているケースが多い。現在も放映中の戦隊ものと仮面ライダーはこのケースに相当する。(ウルトラマンも広義の意味では、仮面ヒーローといえるかもしれない)
 一方、西洋の変身ヒーローは、顔を完全には隠さない、あるいは全く隠さないケースが多い。

 変身ヒーローの範疇からは外れるが、『ロボット刑事K』と『ロボコップ』を比較すると、仮面に対する思想の違いが浮き彫りになっているように思える。

 Kは、100%の機械=ロボットである。ロボットであるKは、普段は服を着、ハンチング帽を被って「人間に変身(仮装)」している。人間とほぼ同じ体型をし、動きにも全くギクシャクしたところがないKが靴を履き、手袋まですると、「仮面」である顔以外は人間と区別がつかなくなる。
 「人間に変身(仮装)したK」は、皮肉なことに、「全身のうち、顔(最も重要な部分)だけが、剥き出しのロボット」という状態になるのだ。
 Kの仮面は、全く可動する部分がない。眉一つ動かすことの出来ない、固定された純粋な仮面である。この表情のない(あるいは表情が固定された)仮面と、人間と見分けのつかない状態の体とのアンバランスさが、ロボットであるKを、逆に人間らしく見せているのである。
 Kの仮面にピクピク動く作り物の眉があり、台詞に合わせてパクパク動く作り物の唇があったら、Kは逆に人間らしさを失うだろう。

 ロボコップは、人間の脳を持ったサイボーグである。顔の下半分は露になっており、作り物かどうかは別にして、その部分は明らかに人間そのものである。
 その代わり、全身は仮面(頭部)と同じデザインの甲冑に覆われ、シルエットでも「人間ではない」ことが一目で分かってしまう。普段のロボコップは、「顔の下半分以外は、全身がロボット」である。顔だけでなく、全身が仮面に覆われているようなものだ。
 しかし、その状態ですら、ロボコップは口元を引き締め、歯を食いしばり、しようと思えば微笑みさえ浮かべて感情を表現することが出来るのだ。
 
 日本式の仮面は、仮面によって正体を隠すと同時に、その下にある表情をも完全に遮断する。そうすることによって、感情を媒介物なしに、心から心へ直接伝える。
 西洋式の仮面は、仮面によって正体を隠すが、その感情は隠さない。

 両者の共通点は、仮面は表面的な正体を隠すことによって、その本心・本質といった内面的な正体を露にするという点だ。仮面によって心は解放される。日常という仮面によって隠されていた本当の自分が、そのとき現れるのだ。

 ロボコップは物語半ばで仮面を脱ぎ去り、「かつてマーフィーであった」人間としての自分を取り戻す。
 Kは人間に憧れながらも、決して「人間という仮面」を被らず、最後までロボットであり続ける。

 仮面ライダーが『バットマン』並みの規模でハリウッドで映画化されたら、どういった仮面ヒーローとして描かれるのか? そんなことを考えてしまう今日この頃である。

『仮面ライダー響鬼』 十六之巻

『仮面ライダー響鬼』 十六之巻

【 観る前に思ったこと 】

「君のお師匠さんの場合、バリバリの現役だし…そんなに早くガタは来ないだろうしな」
とヒビキが言ってる最中、あきらが何故か笑い出す。TVの画面ではイブキが真面目に拳法の練習をしているカットが入るのだが…実際の撮影現場ではこの時、渋江さんが秋山さんを笑わせようとしているのでは?
 秋山さんの笑い方からすると、渋江さんはゴリラの真似とかダチョウが歩く真似とか、相当強烈なことをやっていた可能性が高い。このシーン、秋山さんはずっと笑いを堪えているようにも見えるので、渋江さんが拳法の動きの中に「アイーン!」などの動きを織り交ぜていたとも考えられる。

 「ヒビキがバイクに乗るようになったら香須実の出番が減るのでは」という意見を散見するが、バイク1台であの野営活動装備一式をいっぺんに運べるわけがない。イブキの場合も画面に出ないだけで、テーブルや食料等を運搬してくれる人が誰かいるはず(猛士という組織がある以上、竜巻でピストン輸送しているとは考え難い)。ヒビキがバイクに乗るようになっても、出動時は香須実も車で同行すると考えるのが自然。ヒビキが「たちばな」で暮らしている間は尚更である。
 また、明日夢がいよいよヒビキに弟子入りとなれば、いつ転倒するとも知れないヒビキのバイクの後部座席よりも、不知火の助手席が明日夢の指定席に相応しい。会話の芝居を考えると、ヒビキがバイクに乗るようになって出番が減るのは、当面はヒビキ自身であろう。

 さて、明日夢がヒビキの弟子になるとしても、学校はどうする? お母さんは許可するのか? モッチーの立場は? 明日夢とあきらが仲良く?修業して、モッチーが二人のスクールライフを影で支えるなんて、可哀想だ可哀想だ可哀想だ。ここは、「たちばな」に挨拶に来たザンキと出くわしたモッチーが
「ザタローにいちゃん!」(ザンキの本名を“座太郎”と仮定)
と叫ぶくらいの勢いでプッシュしてもらいたい。

 戸田山の鬼ベルトのバックルには、どうやら別物(ダミー?)がマウントされているようだ。ザンキからバックルを引き継ぎ、いざ音撃!? そして晴れてデビュー戦をクリアしたら、挨拶ポーズもザンキのものを引き継ぐのか?
 戸田山の鬼名を轟鬼と命名するのは、「たちばな」のおやっさん?
 そのおやっさん、以前バケガニ戦をヒビキに命じたのに、ヤマアラシ戦は「弦の使い手でないと」と言ってヒビキを出そうとしない。もしかしたら、おやっさんは“ヤマアラシと対戦して負傷した経験がある鬼@太鼓の使い手”だったのでは? (バケガニは自分で倒した経験があるので、ヒビキにもやらせた)
 ヒビキが2話続けて変身しなかったら、これはある意味快挙だが…

【十六之巻の感想 】

 “中に人間が入っていることが伝わってくる感”のあるヤマアラシは仕方ないとして…。
 何故、戸田山と斬鬼は、お尻を見せて悠然と去って行くヤマアラシを追撃しようとしないのか? 裁鬼救出の必要性、斬鬼のダメージ、実戦での音撃に戸惑う戸田山、当面は人的被害が出ないことなどがその理由だということは理解できる。しかし、絵的な説明がないと、直感的な不自然さが拭えない。ここは、もう少し丁寧に演出して欲しかった。
 また、太鼓やラッパと違って、ギターは最初からバックルをセットしておいても良さそうに見えてしまうのも、問題だ。セットしっ放しにしておくとギター先端の鬼石が劣化してしまうとか、止めの音撃時以外はセットしない理由を、会話の端にでも出しておくべき。
 それに、弦の使い手がヤマアラシを担当する理由も不明確である。普通に見たら、ヤマアラシの武器である針の射程外から攻撃できる、ラッパの使い手の方が適役だ。

 明日夢の弟子入りには、やはり最低でも2クール一杯はかかりそう。あるいは、2クール一杯かかって正式に猛士入りし、最終話で弟子入りか。
 今回のテーマは師弟愛、そしてそれを包む仲間の想い。
 デビュー戦に望む戸田山が、ヒビキと電話で会話。最初は強がっていたものの「緊張していると結構ヤバイぞ」と釘を刺され、過呼吸になりそうになる。スポーツの試合や仕事などで、似たような“デビュー戦”を経験したことのある人なら、その時の自分を思い出すだろう。
 そして、いよいよ戸田山のソロデビュー戦。変身しないどころか、DAで援護することすらしないで弟子の戦いを見守るザンキの様子から、戸田山が既に実力的には師匠越えを果たしていることが伝わってくる。このため、快勝といっていい戸田山の勝ち方にも、わりと納得できた。ただし、「雷電激震」は時間が長過ぎで、ギターを大きく動かすイメージカットを挟んだのも余計だった。
 あと、全身の変身を解いても鬼ベルト一式(吊るしたDAを含む)は残っているはずなので、戸田山はTバック姿を披露しても良かったのではないか。

【小学一年生の心で学び直したこと】

 師弟愛って素晴らしい。古来、日本は親子関係が師弟関係でもあった。身近な師弟関係を大切にしよう。

【 次回予告を観て思ったこと 】

 未確認生命体っぽくなってきた童子と姫。黒の人はソロバンのグロンギっぽくなるのか。
 ヒビキとみどりは、新型のバチをテスト?
 あきらの制服姿と、姫のフトモモに期待大。

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 『響鬼』に関して以下のコラムを書きましたので、こちらも読んでいただけたら幸いです。

5/15 up 『仮面ライダー響鬼』その他ライダーの変身ポーズを裸で比較検証する
5/2 up 安達明日夢(ア・ア)は鬼になる!
4/18 up 『仮面ライダー響鬼』3人目の鬼を、ネタばれ無しで考える その2
4/13 up 新しいディスクアニマルを、ネタばれ無しで考える
4/10 up 『仮面ライダー響鬼』3人目の鬼を、ネタばれ無しで考える
4/3 up 『仮面ライダー響鬼』ハリウッド映画化計画! を考える

『仮面ライダー響鬼』その他ライダーの変身ポーズを裸で比較検証する

トドロキの変身ポーズは裸に不向き? 同じ人でも変身ポーズで“裸の見栄え”が変わる!

 ザンキと戸田山のダブル変身の場面を観て、
「あれ? ヒビキやイブキと比べると、やけに細身に見えるぞ?」と感じました。
「もしかしたら、同じ人の裸身でも、変身ポーズによって逞しさの印象が左右されるのでは?」と気になりました。
 何とかこの疑問を検証できないものか…
 40歳の貧相な身体でお恥ずかしい限り(しかも仕事を終えて疲れているときに撮影したから顔がテカって表情が空ろ)ですが、これを見たマッチョな人が同様の企画をやってくれることを期待しつつ、我が身をサンプルにして比較検証を行いました。
 なお、変身ポーズやボディビルのポージングは正確なものではありません。飽くまでも「大体こんな感じ」という程度ですので、その旨ご了承ください。

 まず、身体の見栄えについて一つポイントとなることを紹介しておきます。
 痩せていると、このポーズも貧相なだけですが…
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  タンクトップを一枚着ると、アラ不思議
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 裸のときより幾らかマシに見えます。これは“寄せて上げる”効果が生じているわけではなく、単なる目の錯覚です。女性の方、男性のタンクトップ姿に騙されないように。
 ちなみに、同じ裸でも、背面は正面よりはマシに見えます。
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 さて、ここからが本題。ライダーの変身ポーズを、同一サンプルで比較してみます。
 まず、ヒビキ。自分でやってみると、トドロキ(ザンキ)のポーズと大差ないことに気付きました。しかし、腕を伸ばしていない分、見栄えの点では有利です。
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 次にイブキ。
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 このポーズは、ヒビキのポーズよりも腕が細くなります。ただし、広背筋が発達している場合は、腕が細く見えることをカバーしてくれそうです。また、腕の位置によっては胸を隠すことが出来、同時に肉量が一定以上ある場合は“寄せて上げる”効果が出ます。女性向けの変身ポーズといえるでしょう。あきらがラッパの使い手なのは、このため? さぁ、貴女もチャレンジ!?
 そして問題?のトドロキ(ザンキ)。
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 腕を挙げると、ただでさえ少ない胸の筋肉が、本当にペッタンコになってしまいます。
 腕を挙げないバージョン(『龍騎』のガイ?)と比較すると、その差がわかります。 
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 また、腕を上に挙げることで、胸だけではなく肩周りも見栄えが悪くなります。
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 ちょっと分かりづらいですが、腕を上に挙げると、肩というか腕の付け根が細くなってしまうのです。
 ちなみに、肩から二の腕にかけて実際より太く見えるのは、このポーズ。
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 逞しく見えるといえば、“元祖変身ポーズ”こと2号ライダー。
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 このポーズも、胸が隠れて“寄せて上げる”効果が出ます。意外に、女性向けの変身ポーズかも知れません。
 次は、かめはめ波…ではなくて、スーパー1。
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 “拳法の構え(?)”つながりで、アナザーアギト。
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 アナザーアギトの変身ポーズは、空手の型が元になっているだけあって、いい感じで筋肉が緊張します。誰がやっても、そこそこ見栄えが期待できるのでは。
 おまけで、ボディビルのポージングのサイドチェスト(もどき)。“裸で変身”の場合に、何気なく取り入れて欲しいポーズです。 
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 ああ、それにしても改めて見ると我ながら貧相だな~。ちょっとずつでもいいから鍛えて、少しでもマシな身体になりたいです。

『ハイド アンド シーク』

『ハイド アンド シーク』
  2005年の映画館で観た映画:9本目
  映画を観た日:2005年5月7日(土)


 この映画はダコタ・ファニングに尽きる。
 ダコタ・ファニングに関しては、以前WOWOWで放映した『TAKEN』の宣伝でチラッと見かけたときから気になっていた。『TAKEN』そのものはトンデモ系のお話だったので観るには至らなかったが、「あの可愛い子の出番のところだけは観たいな」と思わせるほど、彼女は輝いて見えた。
 あれから幾歳。漸くスクリーンで彼女の出演作を観ることになった。

 子供ならともかく、大人だったらこの映画の核心である「チャリーとは誰なのか」について、ストーリーのかなり早い段階で気付くだろう。過半数は、最初の“チャーリーの仕業”の時点でほぼ見当がついてしまうのではないか。ちなみに私は、田舎に引っ越す(新しい環境として、開かれた都市ではなく、閉じた田舎を選択した)という時点で父親を疑っていた。
 製作者側も、『刑事コロンボ』のように解答を早い段階で観客に与え、結末ではなく過程を楽しませることを重要視していたのだと思う。その“過程”とは、ダコタ・ファニング演じるエミリーの変化に他ならない。結果が分っていれば、結果を隠そうとしているエミリーの言動に注目するしかないのだ。
 私は最後のオチとして「デビットは単なる二重人格ではなく、エミリーが意図的に父親の精神を操ってチャーリーを作り出していた」というオチが用意されると思っていた。ラストで、エミリーが日記に「チャーリーは失敗作だった。今度はもっと上手に作る」と書き込むとか、そんな感じ。いわば“エミリー黒幕説”だが、この読みは外れてしまったようだ。

 それにしても、ダコタ・ファニングは魅力的だった。
 エミリーが母親の死を目の当たりにして“ビックリ眼”で固まってしまったシーンから、別カットに移って時間と場所が変わっているのに、まだその“ビックリ眼”のまま固まっているという描写。これは本来なら「可哀想だ」とだけ感じるべきところである。しかし、「可哀想だ」と同時に、青いビー玉の眼をしたフランス人形のような少女を「可愛い」と感じてしまうのである。これは、死体を美しいと感じることと同じくらい危うい受け止め方かも知れない。そんな具合に「可哀想だ」と「可愛らしい」を両立させてしまうのは、ダコタ・ファニングがルックスと演技力を兼ね備えているからに他ならない。
 階段で佇んでいるだけでも不思議と絵になってしまう、ダコタ・ファニング。少女にして、この存在感。まさにスターである。成長したら、ジョディ・フォスターに似たタイプの美人になりそうな気がする。
 彼女は、7月公開の『宇宙戦争』にも出演しているとのこと。これは見逃せない。

『コンスタンティン』

『コンスタンティン』
  2005年の映画館で観た映画:8本目
  映画を観た日:2005年5月7日(土)


 ヘビースモーカーの悪魔払い師が、死に至る肺癌を患うも、他ならぬ悪魔の大ボスに癌組織を摘出してもらって一命を取り留め、禁煙に成功する話。
 そんな印象が残ってしまう(それはそれで本当なのだが)映画だった。
 キリスト教のキの字も信じちゃいない私にとっては、映画を観ている間は主人公が“救世主”だとは意識できなかった。映画を観終えてパンフレットを読んだとき、ああ、『マトリックス』と同じく“世界を救う男”の物語だったんだと思えた。
 キリスト教的世界観を保有していない私には、サタンの息子がこの世に誕生したところで、世界が滅ぶとは到底思えないのである。よって、それを阻止した主人公が救世主であるとも思えない。「運命の槍」と言われても、何のことやら?で、全然ピンと来ないのだ。

 だからといって、この映画が面白くなかったかというと、そうではない。普通のホラー・アクション映画として、充分に楽しめた。
 フルCGと思われる地獄の映像も、場面転換処理を挟んで使用されることにより、より自然に(あるいは“負”自然に)観ることが出来たし、独特のリアリティが感じられた。CGの“絶対値”的なクオリティもさることながら、こういった“相対値”的なクオリティも重要であると強く認識させられた。邦画も、こういうところは大いに学ぶ(真似る)べきだ。

 一番お気に入りの映像は、空を飛ぶデーモンが登場したシーン。街の明かりが一つずつ消えていって、マリア像だか何だかの照明だけが残り、そこにいる主人公たちを狙ってコウモリみたいな?デーモンが集まってくる。
 街の明かりが一気に消えれば、日常の延長である停電をイメージしてしまうが、一つまた一つ日常を切り離すように消えていく照明は、日常が非日常へとジワジワ段階的に侵食されていく様子をイメージさせた。そこへ飛来したデーモンも、闇に紛れてハッキリとは見えない。この「暗闇に、何だか良くわからないけど怖いモノが蠢いている」という演出は人間の普遍的な恐怖感に訴えるものであり、効果的なのだ。
 こういったシーンの後で「地獄と天国がせめぎ合う狭間に、この世が存在している」といった台詞が出ると、宗教観を超えた説得力を感じてしまう。

 そういえば、ちょっと気になった点が一つ。ボウリング場の「BOWL BOWL BOWL」というネオンが「BOWL BOW BOWL」と点灯していたように記憶しているが、何か意味があったのだろうか?

『仮面ライダー響鬼』 十五之巻

『仮面ライダー響鬼』 十五之巻

【 観る前に思ったこと 】

 予告冒頭に出てきた赤い鬼は、以前鬼ファイルに出ていた裁鬼のようだ。鬼ファイルから、裁鬼はラッパの使い手だと読み取っていたのだが、ボディを見ると弦の使い手?
 変だなと思ってビデオで再確認したら、裁鬼(と思われる鬼)のボディは、弦を連想させるディティールではあるものの、ボディやマスクの基本デザインは威吹鬼と同じ。バックルの形状と合わせて推測すると、ハーモニカか、節の多い笛か。ハーモニカや笛で飛び道具というと、吹き矢? 弓矢(裁鬼が玩具化されないとすると、弓矢もOK)? あるいは威吹鬼とは異なるタイプの銃(威吹鬼の銃はサブマシンガンっぽいので、裁鬼はライフルとか)? いずれにせよ、吹奏楽器系と見た。
 戸田山は、既に鬼に変身することが出来るようなっていた。弟子卒業まであと一歩というところか。トダヤマ=トドロキになるのか? 
 すると、もしかして明日夢が弟子入りするのはヒビキではなくザンキ? でも、明日夢は太鼓の使い手?だからなぁ。ただ、いつの間にかバチ(スティック)は持ち歩かなくなっているし、ブラバンにもまだ入ってないし、「乱れる運命」とかいうサブタイトルもあったし…。
 エレキギターは予想通り! さらに変身シーンが“音撃地雷”っぽくてウハウハ!(素直に見たら、ストロンガーの電撃攻撃を思い起こさせる描写) 以前書いた  『仮面ライダー響鬼』3人目の鬼を、ネタばれ無しで考える で、3人目の鬼は雷か氷の属性だと予想したけど、果たしてサブタイトル通り「雷」属性なのか。
 サブタイトルの「鈍る雷(にぶるいかづち)」の「鈍る」というのは、「鈍色」を意味しているのだと思う(斬鬼か戸田山のどちらかが鈍色の鬼なので)。戸田山と師匠のザンキとは色が違う以外は瓜二つ。頭部のデザインは、仮面ライダーや鬼というより“悪いウルトラマン”…いや、平成ライダーシリーズ共通の元ネタである『強殖装甲ガイバー』か。
 前回、乱れ童子は人を襲わないことが判明したにも関わらず、勢いで退治してしまったヒビキたち。全国の良い子たちは「乱れ童子は人を襲わず、鬼よりも効率良く童子や魔化魍を倒す。乱れ童子を退治しないで、監視しつつ放し飼い状態にしておいた方が良かったんじゃないの?」ということに気付いてしまっているだろう。「猛士が新たな戦力として、乱れ童子を人工的に生み出す」といった類の展開にしない限り、乱れ童子は再登場させない方が無難である。人間にも危害を加える乱れ童子なら、OKだが。

【十五之巻の感想 】

 裁鬼は弦の使い手だった! 吹奏楽器系と予想していたのに、大ハズレである。前回の予告で、ヤマアラシに尻尾で捕まえられていたのも裁鬼だった。
 「ザンキに、オープニング後のスポンサー紹介アナウンスをやって欲しい」と思っていたら、いきなり引退宣言。こうなったら、「たちばな」のアルバイトに応募してもらうしかない。モッチーとアルバイトでコンビを組めば、無敵だぞ!
「…いらっしゃいませ↓(ザンキ)」&「いらっしゃいませー!↑(モッチー)」
 でも、ザンキは鬼を引退したら本名に戻るんだよね。座間さん? 座野さん?

 弦の使い手に関する予想は、変身の過程や斬撃系だという点に関しては当たったが、中間距離系だということは外れた。斬鬼の戦法は、響鬼と基本的に同様の接近戦であり、音撃も直接相手に取り付いて行う。違いがあるのは音撃に要する回数(時間)で、体調の悪い斬鬼ですら、2回の音撃(プラス、刃で突き刺したダメージ)でバケガニを爆散させた。バケガニを引っくり返したことから、パワー的な面でも響鬼に遜色ない。
 これだったら、なぜ太鼓の使い手と差別化しているのかが分らない。というか、太鼓の使い手の存在価値がない。太鼓で倒せる相手は、より短時間の音撃で弦によって倒すことが可能だからだ。クモやアリと、カニの間に質的な違いがあるとは思えない。ヤマビコとヤマアラシに関しても同様である。

 今回は、久し振りに身も蓋もない合成「ヒビキ合成だぁ~」に加え、身も蓋もないワイヤーアクションが出た。ワイヤーもそうだが、あのCG岩のゴロンゴロンは本当に何とかして欲しい。
 DAのカエルは、打たれ強くて良い。戸田山や斬鬼が、腰に下げているDAを、見失った敵の捜索に使わなかったところは不自然。
 鬼名が、力士の四股名に似ているとは思っていたが、位の呼び方も大相撲と似ているらしい。
 安売りのチェックを怠らないヒビキに共感する私。独身男性は、こうでなくてはいけません。米の半値売りは価格巾が大きいし、チラシには載らない「賞味期限の迫った生鮮食品の値引き」も見逃せない。クーポン券の収集と使いどころにも気を抜くな!

【小学一年生の心で学び直したこと】

 電話の際は、相手をよく確認して話すこと。
 人間、引き際が肝心。と同時に、後継者への引継ぎ作業も大切。

【 次回予告を観て思ったこと 】

 明日夢、いよいよヒビキに弟子入りか? でも、明日夢にその気があるの? 学校はどうする? お母さんは許可するのか? モッチーの立場は? 明日夢とあきらが仲良く?修業して、モッチーが二人のスクールライフを影で支えるなんて、可哀想だ可哀想だ可哀想だ。
 戸田山の鬼名を轟鬼と命名するのは、「たちばな」のおやっさんか?
ヒビキが2話続けて変身しなかったら、これはある意味快挙だが…。

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 『響鬼』に関して以下のコラムを書きましたので、こちらも読んでいただけたら幸いです。

5/2 up 安達明日夢(ア・ア)は鬼になる!
4/18 up 『仮面ライダー響鬼』3人目の鬼を、ネタばれ無しで考える その2
4/13 up 新しいディスクアニマルを、ネタばれ無しで考える
4/10 up 『仮面ライダー響鬼』3人目の鬼を、ネタばれ無しで考える
4/3 up 『仮面ライダー響鬼』ハリウッド映画化計画! を考える

『キューティーハニー』

『キューティーハニー』
  2005年(4月17日~)のWOWOWで観た映画:2本目
  映画を観た日:2005年5月4日(水)


 このところ邦画を観ることが多いが、別に邦画が好きというわけではない。今回は、録画装置(HDR)の空き記録容量を増やすために、1回観てすぐ消せそうな作品を優先して観ただけである。
 私はリアルタイムでTVアニメ版『キューティーハニー』を観た世代である。「どうせVシネマ程度の出来だろう」と予想をしても、実写化されたとなれば、チェックせずにはおれないのが性(さが)というもの。正直ほとんど“ハニーフラッシュ”目当てのみで録画したのだが、意外にも全体的に楽しめた。『阿修羅城の瞳』とは逆で、小さくまとめてそこそこ成功しているのだ。

 目当ての“ハニーフラッシュ”はアニメ版とは程遠い出来栄えで、セクシー度が低すぎる。第一、キューティーハニーのコスチュームが、脇の下すら露出していないという言語道断のデザインなのだ。同じヒロインものの実写版『セーラームーン』を少しは見習えと言いたくなる。
 ハニー役の佐藤江梨子の日本人離れしたプロポーションが、アクションシーンの吹き替えを困難にしたためなのかも知れないけれども、一工夫して欲しかった。変身前にブラとパンティだけになるシーンがあるのに、キューティーハニーに変身してあの衣装では、ガッカリである。

 そういった不満を補っていたのが、佐藤江梨子のスタイルの素晴らしさである。9頭身かと思われる骨格に、長い手脚。クビレこそそれほどではないものの、バストとヒップも見事で、まさに絵になる躰である。
 佐藤江梨子は体が柔らかいことを以前から知っていたので、アクションに少し期待していたのだが、残念ながら見るべきものはなかった。あの動きなら本来は“見苦しい”レベルの絵になるところだが、優れたプロポーションが作用して何とか観られるレベルになっていた。
 プロポーション以外にも、ハニーのアクションを華麗ではなく絶叫系の荒々しいものにしたことで、却ってアクションの稚拙さを目立たせないようにしていたのは正解だった。もし、佐藤江梨子にユマ・サーマンのような華麗な剣捌きを演らせようとしていたら、眼を覆わんばかりの結果になっていたに違いない。
 また、佐藤江梨子はプロポーションは美しいが、顔に関しては美人顔とは言えず、むしろ3枚目に近い。この美人ではないことが、絶叫系の荒々しいアクションをある意味で自然なものにしていた。結果的にではあるが、体と顔の美しさが一致しない佐藤江梨子の特徴が生かされていた。
 もしも飯田圭織が、華麗なアクションをやれないからといって絶叫系の荒々しいアクションをやったとしたら、どうだろう。かなり不自然というか、痛々しい絵になるはずだ。

 物語としてこの映画を評価すべき点は、主人公のハニーと副主人公の夏子の、出会いから友情が深まるまでをキチンと描いたところである。
 アンドロイドであるために過去の想い出を持っておらず、友達のいないハニーと、人間でありながら他人との結びつきを避け、想い出を作ろうとしない夏子。ハニーが派手な色ばかりをまとって逆に周囲から浮いてしまい、モノトーンの服ばかり揃えている夏子が自室に引き篭もっている描写も映画的な説得力があって良い。
 そんな正反対で反りの合わない二人だったが、組織内に居場所を失いつつあるという共通の事情から行動を共にするようになり、互いに親しくなっていく。単純だが、感情移入の出来る状況を色々な側面から描き、納得の出来る一つの結果へとまとめていく。
 映画というものは結局、「過程に感情移入し、結果に納得できる」かどうかなのだ。

 佐藤江梨子の陰に隠れて映画の終盤まで気付かなかったが、夏子役の市川実日子も背が高くてスタイルが良い。
 この映画で最もセクシーだったのは、薄地のチャイナ服が風にあおられたことによって夏子の脚線美が透けて見えるシーンだった。この際、画面奥にいるハニーがミニスカート姿で脚線美を露にしていることとの対比も効いていたことを付け加える必要があるだろう。
 カエル顔とも言える佐藤江梨子と比べれば、市川実日子は美人であり、この二人の女性はバランスの取れたコンビになっている。低予算映画でも、キャスティングその他をしっかり計算すれば、そこそこ楽しめる映画になるということに気付かされた一本であった。

『阿修羅城の瞳』

『阿修羅城の瞳』
  2005年の映画館で観た映画:7本目
  映画を観た日:2005年4月27日(水)


 この映画は、やむを得ず観た。帰省のついでに1本観ようと決めたのだが、上映時間的にこの作品を選ばざるを得なかったのである。
 ただし、この映画に何も期待していなかったわけではない。第一に、宮沢りえの躰がどこまで戻っているのかという関心。第二に、鬼が登場するということで、TV特撮ドラマ『仮面ライダー響鬼』との比較である。
 結果から先に言うと、そのどちらの期待も裏切られた。宮沢りえの躰は最低限のレベルにしか戻っていなかったし、鬼の描写も特に見るべきものがなかった。

 良い絵が何カットかあったが、所詮それも“いいとこ探し”であり、全体の完成度の低さの裏返しと言える。ストーリーは一応破綻なく成立しているけれども、世界観というものが全く感じられない。
 映画に関わらず、全ての虚構に必要な世界観。それは、「私が今まで知らなかった、大きな大きな世界が実際に存在している。この作品は、その世界のごく一部を見せたものだ」といった観念感覚のことである。
 その世界観をこの映画から得ることが出来ないのは、本来こじんまりとした話であるのにもかかわらず、スケールの大きな話のように描こうとしているからだ。こじんまりとした話を小さなスケールで描けば、それなりの密度のある“虚構の実在感”が得られる。狭い物語は、狭く濃密なスケールで描くことで、逆に大きく見せることが出来るのだ。しかし、この映画は物語に不相応なスケールを持ち込んだので、世界観が非常に希薄で薄っぺらな出来になってしまった。

 鬼というキャラクターに関しても、存在感がない。何のために、どんな規模で人間社会に紛れ込んでいるのか、それを退治する必要があるのかすら伝わってこない。肝心のラブストーリーも動機が弱いというか説得力がない。
 唯一、この映画を観て良かったと感じたことは、宮沢りえにスター性を感じられたことである。「腐っても鯛」と言っては失礼だが、躰が戻っていなくてもスター性はあった。日本人俳優に対してスター性を感じたのは、これがニ度目(一度目は『ガメラ(1作目)』の藤谷文子)である。
 30過ぎても身体は作れる(戻せる)ので、宮沢りえの今後に期待したい。

安達明日夢(ア・ア)は鬼になる!

明日夢の鬼名は“蒼鬼(アオキ ※注「オ」にアクセント)”か“嵐鬼(アラキ)”か? でも、天美あきらも(ア・ア)だから被ってるぞ!

 てろっぷさんのブログから、鬼名に関する新しい考察が得られた。
 多くの『響鬼』ファンが、「響鬼(ヒビキ)=日高(ヒダカ)」という、鬼名と本名の頭文字の関係には気付いていると思が、姓だけではなく、名の方にも関連があるということを、てろっぷさんは指摘されている。
 てろっぷさんはアルファベットに着目されているが、私は以前から五十音に着目しているので、その線で再チェックしてみた。

  裁鬼 = サバキ = 佐伯 栄 = サ・サ
  弾鬼 = ダンキ = 段田 大輔 = ダ・ダ
  響鬼 = ヒビキ = 日高 仁志 = ヒ・ヒ
  威吹鬼 = イブキ = 和泉 伊織 = イ・イ

 この法則で、まだ鬼になっていない二人をチェックすると…

  安達 明日夢 = ア・ア
  天美 あきら = ア・ア

 オープニング映像から、明日夢は猛士どまりかとも思われたが、この法則に従えば「明日夢も鬼になる」ということになる。
 明日夢が“蒼鬼(アオキ ※注「オ」にアクセント。エンディングテーマ(1番の歌詞)のイメージより)”か“嵐鬼(アラキ)”か“荒鬼(アラキ)”か“新鬼(アラキ)”か“淡鬼(アワキ)”、あきらが“藍鬼(アイキ)”か“亜弥鬼(アヤキ)”か “綾鬼(アヤキ)”か“蘭鬼(アララキ)”あたりか?
 悪鬼(アッキ)とか暗鬼・闇鬼(アンキ)というのはないだろう。甘党の明日夢は餡鬼(アンキ)になったりして。

『仮面ライダー響鬼』 十四之巻

『仮面ライダー響鬼』 十四之巻

【 観る前に思ったこと 】

 明日夢の点滴棒?を支えてくれた男性は何者?
 明日夢の母が病院で会った緑の人は、モッチーのお兄さん?
 明日夢が運び込まれた病院に、バケガニ戦で負傷した斬鬼が入院(リハビリ中)しているという気がする。期待している展開は、明日夢は斬鬼本人には会わないものの、斬鬼を見舞い来ていた猛士と会うという展開。あるいは、斬鬼を見舞い来ていた鬼(斬鬼と同じ弦の使い手)と出会うとか。
 “ドーピング”童子、3度目の正直(十五之巻以降)で完全版が登場か? ヌリカベの時は時間制限のある出来損ない、ウブメの時は時間制限はないものの共食いエラー発生。3度目が、時間制限も共食いもしない完全版になった場合、その童子を鬼が音撃で倒すという展開になる。そうなるとヒーロー番組的には、1話で2回も同じパターンで敵を倒すというわけにはいかないから、魔化魍が不要となる。
 十二之巻までの『響鬼』は、「先ず等身大の敵を倒し、次に巨大な敵を倒す」という戦隊シリーズと似たパターンを用いていた。私は『ライダー』にこのパターンを持ち込んだことに馴染めていない(魔化魍の映像クオリティが低くて見苦しいという要因も含む)。
 出来れば、2クール目は原則として魔化魍ナシの展開でやって欲しい。つまり「強くなった童子たちを激闘の末に音撃で倒し、まだ育っていない段階の魔化魍をサクッと仕留める」というフォーマット。このためには、童子や魔化魍を早い段階で見つける必要があるので、「ディスクアニマルの質・量の向上が図られた」という流れに持っていく。
 ダブルライダー、早くも再登場。できれば、響鬼と弾鬼の“ダブルドンドコ”の方が嬉しいのだが、弾鬼のカラーリングとデザインからすると、彼が本当の意味での3人目の鬼として活躍することはなさそうだ。弾鬼の玩具を売り出しても、お母さんに「この前、同じやつ(響鬼 or 威吹鬼)を買ったでしょ!」と却下されてしまいますから。

【十四之巻の感想 】

 5月1日まで帰省していたので、十四之巻は実家で観た。いつもは1人で観ているのだが、今回は母も一緒。
 私は現在40歳で、その私を母は27歳のときに産んでいる。彼女は映画全盛期(というか娯楽が映画くらいしかない時代)をリアルタイムで体験している世代だ。今でも年に3、4回は映画館に足を運んでおり、映画やTVドラマに関しては一家言を持っている。また、私がリアルタイムで1号ライダーを観た世代であるため、特撮作品に関しても多少心得?がある。
 オープニング前の明日夢ナレーション映像のとき、頭部変身解除している響鬼がチラッと出ると、
「なになに今、顔だけ出しとったよ! あんなこと今までやらんかったやないの?」
と母が騒ぐ。いや、原作(漫画)では、最初からやってたんだけど…と思いつつ、適当に相槌を打っておく。そういえば、原作(漫画)では、本郷の屋敷は大規模な研究施設に改造されていたし、忍者屋敷風のギミックもあった。「たちばな」は、そのオマージュなのか?
 オープニングのとき、「ザンキ」という文字を認識してしまう私。いつもは出演者を意図的にチェックしないようにしているのだが、環境が違うためか、つい読んでしまった。カタカナで「ザンキ」だから、変身前である。うーん、ザンキ本人は出ないと思っていたのだが。
 威吹鬼に飽きたか、あきらを狙う乱れ童子。しかし、あきらの頬のプニプニした感触を確認しただけで去って行く。一瞬「あきらの体内には魔化魍の幼体が寄生しているのか?(『エイリアン3』パターン)」と思ったが、乱れ童子は人間を餌として認識しないということだろう。
「あ、これこれ、買ってきた玩具がこの鷹」
アカネタカが仮面に登場したとき、私が説明する。今回の帰省時、置き物好きの母に、アカネタカの玩具を土産として渡してあるのだ。
「仮面ライダーも作りが丁寧になっとるやないの。昔と比べて色やデザインもカッコええわ」
母は、響鬼のスーツに感心している。「昔」って、いつごろの事を言っているんだろうか?
「赤いライティングは、超能力を出しとるっていう意味なの?」
響鬼の火の玉攻撃を耐えた乱れ童子を見て、母が言う。この辺はさすがに鋭い。
 明日夢が手術室に運び込まれるシーンで、母が
「改造手術するの?」
“安達明日夢は改造人間である…”というナレーションが…
「違う違う、ただの盲腸」
自分の脳内ナレーションも含めて否定する私。
「盲腸なら、私もやったことがあるわ」と母。おお、確かに以前その話を聞かされた記憶が。
 2クール目に入って、漸く明日夢の弟子入りの話が明確に出る。このペースでは、正式な弟子入りに2クール一杯かかりそうな予感。
 明日夢が乱れ童子と同時に?目覚めるシーンで、母が
「違う!」
と一喝。「盲腸の手術の翌日に、あんな風に体を起こせるはずないわ」
経験者は語るというやつですな。「体を捻った瞬間に激痛がはしる」そうだ。
「この子(明日夢)は、どーらー(「とても」という意味の名古屋弁)強い子という設定やの?」
「いや~、むしろ弱い方やよ」
「ほんなら、手術した影響で超能力が身に付いたという設定やないの?」
それも違うと思うが…、親子だけあって、私と発想が似ているような気がする(私は「明日夢の発病の原因が、音角をいじった影響だったら良いのに」と思っていた)。
 予告で、明日夢の点滴棒?を支えてくれた男性はザンキでした。伏線というか、以前から名前が出ていたキャラクターが登場すると、素直に嬉しい。鬼というよりグロンギの人間体っぽいイメージもあるが、ヒビキが「ザンキさん」とさん付けで呼ぶだけあって30代風で、ちょっと凄みのあるキャラ。バケガニにやられて重傷を負ったのも、何か訳がありそうだ。身を呈して一般人を助けたために…とか。
 戸田山が元警察だとか、ザンキを治療した医療関係者とか、猛士関連の広がりが見えてきた。ザンキに助けられた一般人が物語に関わってくるとか、話が繋がってくると面白い。
 乱れ童子が未確認生命体っぽくなったのに合わせるかのように、響鬼の音撃がクウガっぽくなった。でも、今までで一番カッコ良かったからOK! でも、例え相手がドーピング童子であっても、等身大の相手に対しては、タイマンで戦って勝って欲しいのが正直なところ。

【小学一年生の心で学び直したこと】

 母親には心配をかけないようにしよう。怪我人・病人には特別な配慮をしてあげよう。

【 次回予告を観て思ったこと 】

 最初に出てきた赤い鬼は、以前鬼ファイルに出ていた裁鬼? 鬼ファイルからは、裁鬼はラッパの使い手だと読み取れたのだが、体を見ると弦の使い手? ビデオで再確認したら、弦を連想させるディティールではあるものの、基本デザインは威吹鬼と同じなので、やはりラッパ系だと思う。バックルの形状と合わせて推測すると、ハーモニカか節の多い縦笛? ハーモニカや縦笛で飛び道具というと、吹き矢? 弓矢?(裁鬼が玩具化されないとすると、弓矢もOK) いずれにせよ、吹奏楽器系と見た。(この段落のみ5月3日加筆修正)
 戸田山は、既に鬼になることが出来るようなっていた。弟子卒業まであと一歩というところか。トダヤマ=トドロキになるのか?
 すると、もしかして明日夢が弟子入りするのはヒビキではなくザンキ? でも、明日夢は太鼓の使い手?だからなぁ。
 エレキギターは予想通り! ついでに音撃地雷っぽい描写もあってウハウハ!

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 『響鬼』に関して以下のコラムを書きましたので、こちらも読んでいただけたら幸いです。

5/2 up 安達明日夢(ア・ア)は鬼になる!
4/18 up 『仮面ライダー響鬼』3人目の鬼を、ネタばれ無しで考える その2
4/13 up 新しいディスクアニマルを、ネタばれ無しで考える
4/10 up 『仮面ライダー響鬼』3人目の鬼を、ネタばれ無しで考える
4/3 up 『仮面ライダー響鬼』ハリウッド映画化計画! を考える

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震電

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 写真撮影時40歳。
 いい歳して云々といった決まり文句は私には通用しない。たった一度の人生、他人に迷惑をかけない範囲で楽しみます。