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2020-08

ジャッジを探せ!

ジャッジを探せ!

東側のジャッジ席

 日本武道館規模の会場だと、リングサイドにはプレス(マスコミ)も多くて、ジャッジ(副審、採点を担当)がどこにいるか分かりづらいもの。
 そこで、2008年6月12日(木)、日本武道館で行われたWBC世界バンタム級タイトルマッチ、長谷川穂積 vs クリスチャン・ファッシオの試合が始まる前、ジャッジの姿を、失礼ながら後から撮らせてもらいました。
 当然ながら、エプロンサイドぎりぎりの位置で、椅子に座っておられるのがジャッジの方(3人のうち1人)です。KO決着必至と思われる試合でも、ジャッジは必ずいなければなりません。しかも、この日は3名とも米国から…。
 長谷川穂積は、近いうち米国で試合をすることになると思いますので、そのときはまたよろしくお願いします、米国のジャッジの皆さん!

ワールドプレミアム世界ダブルタイトルマッチ(6.12)

ワールドプレミアム世界ダブルタイトルマッチ
                        2008年の会場で観た試合:3回目
                        観戦日:2008年6月12日(木)


 東側の1列目という良席(ただし、前にはA~D列、更にその前に机付きのプレス席が2列あるので、実際には9列目辺りか)で観戦したのだが、タイトルマッチは2試合ともミスマッチとも言うべき結果に終わった。チャンピオンと挑戦者の実力差が、余りにも大き過ぎたのだ。
 本場アメリカ進出のテストマッチ的な意味合いが大きかった長谷川 vs ファッシオの試合はともかくとして、ベテランの技巧派が意地を見せるか注目していたバレロ vs 嶋田の試合は、本当に期待外れの内容だった。


WBA世界Sフェザー級級タイトルマッチ
                 エドウィン・バレロ vs 嶋田雄大

 『WOWOW』放送された、WBC世界ライトヘビー級タイトルマッチ、チャド・ドーソン vsグレンコフ・ジョンソンの白熱した試合は、まだ記憶に新しい。強打のサウスポーである若きチャンピオンが、39歳のベテランにあわやというところまで追い詰められた試合は手に汗握るスリリングな内容だった。結果的には敗れはしたものの、ベテランの意地を見せたジョンソンに対し、誰もが賛辞を送らずにはいられなかったろう。

 ボクサーとしてのスタイルは違うものの、若手のサウスポーにベテランのオーソドックスが挑むという構図は、バレロ vs 嶋田も同じである。つい期待してしまったのだが、両者のパンチ力に差があり過ぎると、こんなにも違った内容になってしまうものなのか。

 パンチの差は仕方がないとしても、嶋田には工夫が無さ過ぎた。
 嶋田は左をほとんど出さず、右手一本で戦っていた。サウスポーには右を合わせるというのは確かにセオリーではあるが、余りにもワンパターンでバリエーションもコンビネーションもない。攻撃はその右一発だけで、文字通りの単発なのだ。
 4ラウンドからはバレロに読まれており、その威力の低さから相打ちを狙われる始末。3ラウンドにバレロがよろめいたのも、爪先を踏まれたからであり、嶋田のパンチのダメージによるものではない。

 嶋田がバレロの右ジャブに合わせて右フック(スウィング)を打ち込むことに終始し、なぜ左フックでバレロのレバーを打たなかったのか、不思議でならない。
 例えば、ロレンソ・パーラは、スイッチしているブライム・アスロウムに対して、レバーへ左フックを叩き込んで後退させた。
 サウスポーとオーソドックスの違いはあるものの、ジェリー・ペニャロサは結果的にそれと同じポジショニングからジョニー・ゴンザレスにレバーブローを決め、一発でKOしている。

 自分の体がバレロに対してインサイドにあるときは、頭を左に出しながらの右フック(スウィング)がローリスクとなるが、自分がアウトサイドにいる(バレロの右足の外側に自分の左足を踏み込んでいる)場合は、相手の右半身への左フックが最も有効なのではないか。打ち終わったとき、自分は体ごと相手の死角に入るので安全だし、その後返しのパンチを入れるチャンスもある。
 仮に試合前から左拳を負傷していたとしても、軽い左フックで回り込んでおいて右の強打に繋げるというパターンは使うべきである。

 嶋田がバレロのボディを全く打たなかったといえばそうではなく、正面から右ストレートでストマックを叩くという、よりリスクの高い攻撃を敢行していたことが、不自然さを増幅させる。本当に右一辺倒で勝つつもりだったのか。だとしたら、それは勇気などではなく単なる無策である。

 嶋田のファンらしき客が、バレロに対してブーイングを行っていたのも、無知丸出しで情けなかった。
 とどめの一撃となったバレロのパンチに対して反則打である旨のブーイングを行っていたが、あの場面で反則を犯していたのは、ロープを掴んでいた嶋田の方である。レフリーがダウンを宣言していなかったのも明らかであり、バレロに非はないことはボクシングファンなら理解できた筈だ。
 ルールを理解していない奴は会場に来るなとは言わないが、ルールを理解していない奴はブーイングなどせず、大人しく観戦するべきだ。疑問に感じたことは、隣の席の客にでも聞けば良い。


WBC世界バンタム級タイトルマッチ
               長谷川穂積 vs クリスチャン・ファッシオ

 入場してきたファッシオの背中を見たとき、その頑丈そうな骨格と力強い筋肉から、難敵だったヘナロ・ガルシアを思い出した。ガルシアと長谷川の試合も、ここ武道館のアリーナ席で観戦していたことを思い出す。そんな私の脳裏に、あのとき同様、ダウンは奪えても判定までもつれ込むのではないかという予感が過った。

 しかし、ファッシオはガルシアのようにラフでもなければタフでもなかった。

 1ラウンドを様子見に使った長谷川が、2ラウンドに入ってギアをサード、トップとチェンジすると、ファッシオはそれに全く付いて行けない。長谷川本人が「狙っていた」と言うコンパクトな左カウンターで顎を打ち抜かれたファッシオは、自分のコーナーを一瞥するなど意識はしっかりしている様子だったが、いかんせん体の反応は鈍くなっていた。そんなファッシオに、詰めにかかった長谷川から逃れる術は無かった。

 結局、ファッシオはWBCのラテンアメリカタイトルを取ったためにランキングが上がったというだけで、まだまだ長谷川に挑戦するレベルにはなかったという印象が強く残った。あるいは、本人が言うように「体が温まる前にいいパンチを貰ってしまった」のだろうか。

 長谷川の今後だが、今更シドレンコとの統一戦でもあるまい。
 日本人として、バンタム級の防衛回数の新記録も樹立した。大場という後進も育っていることだし、Sバンタムに上げて二階級制覇へと動き出すべきだ。
 当面のターゲットはズバリ、ラファエル・マルケス。マルケス弟に勝てば、イスラエル・バスケスへの挑戦権を得ることが出来るだろう。
 長谷川は、「日本のエース」から「世界のハセガワ」へステップアップする時期に来ているのだ。

ウラジミール・クリチコ vs スルタン・イブラギモフ

WOWOW 『Excite Mach(エキサイトマッチ)』
    2008年2月26日 20:00~ 放送分
ウラジミール・クリチコ vs スルタン・イブラギモフ
~ IBF世界ヘビー級王座・WBO世界ヘビー級王座 統一戦 ~


 クリチコの左ジャブには威力はあったが、勇気はなかった。
 この試合は、それに尽きると思う。

 クリチコの肉体は王座を統一した。
 しかし、クリチコの精神は王座統一を成し得ないまま試合を終えてしまったのだ。
 試合後、無言でリングに立つ彼の表情(肉体と精神が交わる場所)が、そのことを雄弁に物語っていた。

 プロである以上、大きな報酬に大きな義務が課せられるのは当然だ。
 しかし私はそういうカネの話以前の問題として、純粋に「大きな力には大きな責任が伴う」という意味での、「頂点に立つ者が果たすべき使命」という観点から、この試合を批判したい。

 4大統括団体(世界主要4団体、メジャータイトル管理認定団体)のうち2つの団体のヘビー級王座を統一するべく行なわれたこの試合は、まさに世紀の凡戦であった。
 『エキサイトマッチ』のタイムリーオンエアで、ここまで期待ハズレとしか言い様のない試合内容だったことが過去にあったかどうか、今の私にはちょっと思い出せない。

 WBO王者のイブラギモフは、確かにヘビー級では珍しいサウスポーである。
 だがIBF王者のクリチコは、サウスポーのヘビー級王者クリス・バードに2度勝ち、彼から王座を奪取している。しかも、現王座を奪い取った試合では、圧倒的な内容でTKO勝ちしている。
 バードとイブラギモフはサウスポーであること以外にも、技巧派であり、パワーではなくスピードで勝負するタイプということでも共通している。更に、両者とも上体の反応速度やハンドスピードに関しては長けてはいるが、フットワークは余り使わず、相手のサイドに回り込むなどの速い動きは見せない点でも共通している。

 つまり両者とも、クリチコの視界から突然消え去り、彼の死角から急所へ一撃を打ち込むという芸当は出来ないのだ。速いことは速いが、常に見える位置からしかパンチを打ってこない。
 そんな彼らに対し、クリチコはリーチの長さと身体のサイズ、そして圧倒的なパワー差という強力なアドバンテージを持っている。また、クリチコはスピードにおいても決して劣っておらず、ヘビー級の中ではむしろ速い方だと言えるだろう。

 イブラギモフがカウンターという武器を持ったサウスポーだとは言え、同じくサウスポーであるディフェンスマスター・バードを打ち崩して完全攻略したクリチコが、12ラウンドかかって打ち倒せない相手だとはどうしても思えない。
 クリチコが体重を絞り、スピードに対応できるコンディションを作り上げることに成功していたとなれば尚更である。

 8ラウンド以降は、クリチコにもKOする気持ちがあったと信じたい。
 しかし、その時点で彼は、慎重に闘うことに時間を使い過ぎていた。
 彼の肉体は既に、慎重に闘う守備的なリズムに支配されており、攻撃的なリズムへシフトすることが出来なくなっていたのだろう。

 解説のジョーさんは、クリチコに対し、
「右は70%の力で打てば良い」
と言われていたが、私に言わせれば
「右は50%の力で打てば良い」

 右ストレートではなく、右ジャブで良いのだ。
 左ジャブ→右ストレートではなく、左ジャブ→右ジャブとコンパクトに打てば良い。
 もちろん、クリチコの右にイブラギモフが左を合わせてくることを考えた上での動きである。
 4ラウンドも様子を見れば、イブラギモフが狙うカウンター(左ストレート)は、タイミングや軌道がある程度読める筈だ。それでも左ジャブ→右ストレートを打つことにリスクを感じているなら、左ジャブ→右ジャブと、よりリスクの小さい形で打つのだ。

 そして、左ジャブ→右ジャブから左フックを返す。
 あるいは、左ジャブ→右ジャブから左のボディストレート。これは右ジャブから一旦小さくステップバックして間合いを広げてから打っても良い(イブラギモフがカウンターを狙って踏み込んでくる場合)。クリーンヒットとまではいかなくても、拳が届いて当たれば良いのだ。結果的にダッキングをしてボディへストレートを伸ばす格好となり、イブラギモフから見た場合、やりにくさが増す。

 イブラギモフが左ジャブ→右ジャブの右ジャブをダッキングでかわすようになったら、左ジャブ→右ショートアッパーに切り替える。この右アッパーも50%のパワーで打つ。そこから少し身体の位置を変えて左をフォローする。
 右を使わず、左ジャブ→左フックという連打でも、クリチコは身体の位置を変えられる。イブラギモフのダッキングに合わせ、サイドにステップを踏んで上から打ち降ろすように引っ掛ければ、カウンターは喰わない。

 何も、正面からバチバチに打ち合うようなリスキーな闘いをしろと言っているのではない。
 ダウンの経験を重ね、良い意味で「ダウン慣れ」してきた(ダウンしてもパニックを起こさず、自分を冷静に立て直せる)とは言え、やはりクリチコはヘビー級としては打たれ弱い。これは「唐突に起きるスタミナ切れ」と同様、クリチコの弱点である。そんな彼には、むしろローリスクな戦法でKO勝ちを収めるノウハウを確立して欲しいと思っている。
 だから、パワー50%で良いから、小さく小さく(コンパクト&コンパクト)で良いから、もっとコンビネーションを交えた攻撃を展開して欲しかった。攻めることによるリスクやスタミナの消費を最小限に抑えた、工夫した攻め方を見せて欲しかった。

 そうやって工夫を重ねて攻めれば、そこに勇気を見出すことが出来る。
 恐怖を工夫で乗り越えるのも、一つの勇気の形である。
 純然たる技術の中に、私はそういった精神面を求めている。
 そして、本物の技術には、常に勇気が宿っていると思う。

 その意味で、クリチコが左ジャブだけでイブラギモフをKOするつもりで戦い抜いたのなら、それでも良かった。結果的にKOできなかったとしても、その決意と覚悟には拍手を送る。
 しかし、この試合のクリチコは、そうではなかった。最初に書いた通り、クリチコの左ジャブには威力はあったが、勇気はなかった。

 イブラギモフがカウンター戦法を諦めて攻勢に転じたときも、クリチコの対応は悪かった。
 背の低いイブラギモフが、クリチコのワンツーをダッキングでかわして懐に入ろうとすることなど、試合前から容易に想像できるではないか。何故それをショートアッパーで迎え撃つ(その後は即上から覆い被さっても良い)とか、フックを引っ掛けてサイドに出るとか、積極的にやろうとしなかったのか。

 左一本槍から、倒すためのワンツーへという切り替えは、過去の試合では成功していた。今回、その切り替えに身体がついていかなかった理由は、既に述べたように「ジャブのみ、右は打たない」という戦闘スタイルに時間を長くかけ過ぎたせいだと思う。
それならば何故今回は、その時間が長くなってしまったのか?

 やはり、イブラギモフにコーリー・サンダースの幻影を見ていたのだろうか。
 強力な左ストレート(イブラギモフの場合カウンターとなることが条件)を武器とするという点においては、両者は共通している。
 ウラジミール・クリチコはバードには連勝したが、サンダースにはリベンジしていない。「サンダースを倒したクリチコ」は、兄のビタリなのだ。

 レイモン・ブリュースターにウラジミールが負けたときも、サンダース戦と同様に「まさかの敗戦」と称された。だが、ウラジミールはその後TKOでブリュースターに借りをキッチリ返している。またそれ以前に、同タイプのファイターであるサミュエル・ピーターにダウンを奪われながらも逆転で判定勝ちしており、ブリュースター型ファイターに対する恐怖心は克服していた。

 ウラジミール・クリチコは、「左ストレートの恐怖」を払拭できないまま、イブラギモフの統一戦に臨んだのだろうか。もしそうだったとしたら、今回の勝利でその恐怖を自己の支配下に置いて欲しい。「左ストレートの恐怖」は、コンディショニングと技術でコントロールできる試合要因の一つにしか過ぎないことを、イブラギモフ戦で証明できたのだから。

 今回の統一戦に勝利したことで、ウラジミール・クリチコは、2団体のヘビー級のベルトマイスターとなった。
 彼はこれで、世界のヘビー級王座の半分を手に入れたことになる。
 最強の男は、世界の全てを手に入れる義務がある。
 ウラジミールが世界の残り半分も手に入れるのか、あるいは「もう1人のクリチコ」である兄ビタリが、弟と世界を半分ずつ分け合うのだろうか。
 そしてクリチコ兄弟と、“大巨人”ニコライ・ワルーエフとの試合は実現するのか?
 今、ボクシングのヘビー級は、どこか神話の世界を思わせる様相を呈している。

 “パウンド・フォー・パウンド”という概念は、所詮空想でしか存在し得ない。現実的に最強であるのは、やはりヘビー級のチャンピオンである。
 ボクシングの頂点とも言うべきヘビー級。
 その頂点に君臨するボクサーは、世界にただ1人であるべきだ。
 4つのチャンピオンベルトを束ね、真の世界最強のボクサーが決まる瞬間が、今年2008年のうちに訪れるような予感…それが、世界中のボクシングファンの心をくすぐっている。

ミゲール・コット vs シェーン・モズリー の予想

ミゲール・コット vs シェーン・モズリー の予想


 プロデビュー以来30戦30勝の全勝街道を突き進み、しかも約80%のKO率を誇る、現WBA世界ウェルター王者、ミゲール・コット。
 体重苦が伝えられたスーパーライト級時代にWBO世界ジュニアウェルター(スーパーライト)級王座を6度防衛した後、満を持してウェルター級に上がり、二階級制覇を果たした。現在保持しているWBA世界ウェルター級王座は、2度防衛している。

 私は、2001年の後半からWOWOWの『エキサイトマッチ』を見始めた“遅れて来たボクシングファン”である。そんな私も、コットに関しては彼が世界チャンピオンになる前から試合を見続け、ずっと応援してきた。
 だから、日本で一度も試合をしたことの無い外国人選手であるにもかかわらず、コットに感情移入することが出来る。また、彼が所謂天才タイプではないということも、親近感を抱ける理由の一つになっているのかも知れない。

 私は、ミゲール・コットのファンである。
 それでも、今回ばかりはコットの負けを予想している。
 できれば、モズリー戦は1年後に延期して欲しい。
 今のコットでは、モズリーと相性が悪すぎると思えて仕方ない。

 以前から「コットが負けるとしたら、マルケス兄(ファン・マヌエル・マルケス)のような攻防兼備の高速連打型のボクサーパンチャー(ボクサーファイター)」だと思っていた。そして、モズリーもそういった選手である。
 モズリーに関しては、個人的にはバルガスとの2連戦の印象が残っているので「スーパーウェルターの選手」という印象が強く、コットとの対戦は想定していなかった。だが実際には、モズリーはWBCウェルター級暫定王者になっていたのだった。

 コットは、王座を狙える位置(ランキング)についてからは強敵とばかり戦っていたものの、スピードスター(特にスピードに長けたボクサー)との対戦は意外に少ない。過去、

 ビクトリアノ・ソーサ
 デマーカス・コーリー
 ザブ・ジュダー

の3人のスピードスターと対戦しているが、馬力の差で押し切って危なげなく勝てたのはソーサだけで、デマーカス・コーリーとジュダーの両選手には苦戦している。
 コットが最も危ない場面に立たされた試合は、倒し倒されの展開になったリカルド・トーレス戦だとは思うが、あの試合は強打者相手にムキになって打ち合ったからああいう結果を招いただけだと思う。普通に堅実に戦う場合、コットにとってリカルド・トーレスのようなタイプのボクサーは強敵ではあっても決して相性の悪い相手ではあるまい。コットが本質的な意味において苦戦したと言えるのは、やはりスピードスターを相手にしたときである。

 特に、ジュダー戦に関しては、コットファンの私の眼にも「ローブロー無しでは負けていた」と映った試合展開だった。
 もちろん、コットは以前からベルトライン(イリーガルブロー・ライン)ギリギリを狙ってボディを厳しく攻めるボクサーであり、このジュダー戦に限って低目を打っていた訳ではない。また、自分自身が逆にローブロー気味のパンチを受けた場合でも、全くと言って良いほど抗議をしないことから、コットが己のボディブローに誇りと自信を持っていることが窺える。
 「ローブロー無しでは負けていた」というのは飽く迄も印象であり、コットファンとして苦言(不安)を呈するものであることを強調しておきたい。

 さて、コットはジュダーを結果的にはTKOで下したわけだが、勝てた理由を総合的に振り返ってみよう。ジュダーはスピードスターという面ではコットの苦手なタイプであったが、それ以外の部分ではコットにとって相性の良い部分もあったのだ。

 (1)ジュダーのスピードやそれに基づく攻撃力は、中間距離から遠距離において存分に発揮される反面、接近戦では不発となる。
あのメイウェザーもロングレンジでのスピード勝負を避け、接近戦でジュダーを消耗させた。接近戦を苦手とするジュダーにとって、レバーブローというショートレンジでのKOパンチを得意とするコットとの相性は決して良くなかったと言える。

 (2)ジュダーはスピードスターではあっても単発傾向が強く、ヘッドハンター型でもあった。ジュダーがアッパーでコットをダウン寸前に追い込みながらも倒すことができなかったのは、ジュダーに連打や上下の打ち分けが少なかったからでもある。

 (3)ジュダーのスピードは、正面からの直線攻撃においてメイウェザーにすら打ち勝ったほどだが、曲線的な攻撃バリエーションには乏しい。コットがサウスポーにスイッチした途端、ジュダーがアッパーを当てられなくなったのは、ジュダーの攻撃に角度を大きく使った揺さぶりがなかったからである。

 (4)ジュダーは、試合の後半は集中力を失って失速するタイプ。コットはKO率は高くとも基本的には最後まで粘り強く戦うタイプなので、ジュダーのように後半失速する相手は「失速するまで待って捕らえる」というパターンに嵌めやすかった。

 (5)ジュダーはラフファイトに弱い。ローブローやバッティングは確かにルール違反であるが、それを極端に嫌がるボクサーは、その点を弱点と見なされても仕方がない。ジュダーにとって、反則スレスレのボディブローを巧みに打ち込むコットは「嫌な相手」だったに違いない。

 (6)ジュダーはスピードに長けた反面パワーに劣る部分があり、パワーにおいてはコットの方が有利だった。


 …こんなところだろうか。
 しかし、モズリーにはこういった「コットにとって有利な要素」が見当たらない。
 モズリーはスピードでコットを明らかに上回る。そして、そのハンドスピードを活かした攻撃は、単発ではなく連打型。
 1階級上で戦っていたこともあり、パワーでもおそらくコットと互角。
 “シュガー”を冠された天才タイプだがラフファイトに弱いという訳でもなく、後半失速するタイプでもない。

 コットのディフェンスは“鉄壁の防御”と形容されてきたが、その防御も最近の試合では破られつつある。ジュダー戦でも証明されたように、コットの“ハの字形ガード”はアッパーに対して脆い一面を有する。
 モズリーのアッパーにはこれといった印象がないが、もし一発良いのが入れば、ハンドスピードを活かした連打が一気に襲いかかるだろう。そうなれば、KOまたはTKOも十分に有り得る。デラホーヤもそうだが、ハンドスピードに長けたボクサーは、ロープに詰めてパンチをまとめ、レフェリーによるストップを呼び込むのが上手い。
 
 1発のパンチ力、特にボディーブローの一撃に関してはコットの方が上だろう。
 しかし、そのボディーブローを打ち込むためには、中間距離を突破してモズリーに接近しなければならない。モズリーの高速コンビネーションは、質・量共にジュダーやデマーカス・コーリーのそれを上回っているから厄介だ。
 ブロッキング主体の防御を行なうコットが、手数でモズリーを上回ることは難しいだろう。
 果たして、コットはモズリーの連打の壁を突破し、ポイントを奪い取るほどの有効打を叩き込むことが出来るのだろうか。
 私の脳裏には、先日放送された、マルケス兄 vs フアレスの試合が浮かぶ。
 的確な手数に圧倒され、単発で強打を入れながらも大差の判定負けとなったフアレスの姿が、コットの姿と重なってしまう。

 モズリーが、バーノン・フォレストとロナルド・ライトに連敗している事実から、彼がリーチの長いジャバーを苦手としていることは明らかである。しかし、コットはそういったタイプではなく、モズリーと戦うに当たってそういったタイプにチェンジするとも思えない。
 ただ、チェンジと言えば、実はコットはコンバーテッド・オーソドックス(左利きのオーソドックススタイル)らしい。確かにジュダー戦で見せたサウスポースタイルへのスイッチはスムーズであり、決して苦しみ紛れには見えなかった。言われてみれば、それ以前の試合でも、コットがサウスポースタイルなっていた場面があったような気もする。
 コットが本当に左利きだとすれば、彼のレバーブローは利き腕で相手の肝臓を打っていることになる。道理で強力な筈だ。

 モズリー戦では、コットがこのスイッチを使うか否かも焦点となるだろう。
 コットには、ジュニア・ウィッターばりの変則ファイトをしてでも良いから、とにかく勝って欲しい。しかし、今の私には、コットがモズリーに勝つイメージがどうしても湧かない。
 浮かんでくるイメージは、
「アッパーでコットの顎を撥ね上げたモズリーが、そのままサイドにクルッと回り込みながらフックを引っ掛けるように打ち込んでダウンを奪う」
といったものばかり。
 ホント、モズリー戦は1年後に延期した方がいいと思う…

ダイナミックグローブ第403回 ホルヘ・リナレス VS ラミロ・ララ

ダイナミックグローブ第403回
       ホルヘ・リナレス VS ラミロ・ララ

  2007年の会場で観た試合:1回目
  観戦日:2007年2月3日(土)

 飢えた肉食獣のいる檻の中に閉じ込められたら、人間はどんな表情になるのだろうか。
 私は笑うと思う。
 死の淵にまで追い詰められた人間は、笑う。
 その状況を受け入れたくないから、笑いへ逃げる。一種の現実逃避だ。
 あるいは、笑うことによって自分で自分に麻酔をかけているのかも知れない。
 飢えた肉食獣に喰い殺される痛みが、少しでも和らぐように。

 この日の試合開始前、ホルヘ・リナレスがリングアナウンサーからコールを受けた後、リング上で行ったり来たりを始めると、後楽園ホールの席を埋め尽くしていた観客の何割かは、それを見て笑った。
 リング上のリナレスの振る舞いは、まるで檻の中の猛獣が見せる動きのようだったからだ。
 今、自分の目の前にあるリングという檻の中に、猛獣が蠢いている。
 そんな異様な現場を目の当たりにして、観客達は今自分が“檻の外”という安全地帯にいることに安堵している。私がリングサイドで呼吸している空気には、明らかにそういった雰囲気が混じっていた。

 研ぎ澄まされたリナレスの肉体からは、肉食獣としてのオーラが強烈に立ち昇っているように見えた。
 リング上で行ったり来たりを繰り返しているリナレスは、人間と猛獣の境界線の上を行ったり来たりしているようでもあった。

 そんなリナレスを見て、私は逆に不安を感じていた。
 ロイ・ジョーンズ・Jrがアントニオ・ターバーにKOされたとき。
 徳山昌守が川嶋勝重にKOされたとき。
 ボクサータイプの選手が、倒す気満々でクラウチング気味に前に出たとき、悲劇は起こっている。
 リナレスにも、同じことが起こるのではないか。

 青コーナーに立つパナマのフェザー級チャンピオンの骨太な体付きからは、一発の怖さが伝わってくる。肉体にシャープさはないが、決して緩んだ身体でもない。ミゲール・コットをダウンさせたリカルド・トーレスも、こんな感じの身体をしてはしなかったか。とにかく、リナレスの世界前哨戦と銘打たれたこの試合の相手が、単なる噛ませ犬だとは到底思えなかった。

 試合が始まると、いつも通りのアウトボクサースタイルで戦うリナレスがいた。前回観戦したときよりも上体を細かく振る動きがやや少ないようにも見受けられるが、クラウチしてこなかったことで、まずは一安心する。

 ジャブをダブルで突くリナレス。
 リナレスのジャブは、現場で見ると巷で言われるほど速くはない。もちろん速いことは速いのだが、速さだけだったら、この日の前座試合に登場した日本人選手もリナレスに匹敵するジャブを放っていた。
 リナレスのジャブの長所は、細かい上体の動きの中から放たれるので、その打ち始めが見切りにくい点にある。また、フットワークを使いながら打つ、あるいは打った後に微妙に身体の位置を変えるので、ジャブに右を被せたり、ジャブの打ち終わりを狙うことが難しい。さらに、ジャブがダブルだったりジャブから切れ目なく左フックに繋げたりとバリエーションがあるため、尚更やっかいである。

 裏を返せば、そういったジャブでなければ、相手に右を被せられたり、打ち終わりを狙われることになる。ジャブに対する対策が確立している現代のボクシングにおいては、単調なジャブはカウンターの餌食となってしまうのだ。各階級の世界チャンピオンを見渡しても、ジャブを有効に使う“ジャバー”は半分以下ではないだろうか。ちなみに日本のホープ・粟生隆寛もジャバーとは対極のタイプであるが、世界的のトップ選手には結構こういうタイプも多い。

 リナレスのジャブを受けて、ラミロ・ララもそういった定石を打ってきた。
 リナレスがジャブを放つと、ララも右を打つ。もう明らかに狙っている。
 そのララの右をリナレスはことごとく外すが、ガードは間に合わないのでヘッドスリップで外している。ちょっとでも反応が遅れたら大変なことになる。その右は、カウンターでリナレスの顔面を直撃する軌道を走っているのだ。

 それでも、リナレスはジャブを突くことを止めない。
 自分のジャブに相手が右を合わせに来ていることは十分承知の上で、2ラウンドに入ってもリナレスはジャブで試合をコントロールし続ける。
 狙われて使えなくなるようなジャブではない。そう言いたげに、ジャブで相手を痛め続けるリナレス。

 3ラウンド開始直後、パナマのフェザー級チャンピオンは猛然とリナレスに襲い掛かった。その数秒後には、この試合初めてのクリーンヒットを、浅くではあるがリナレスの顔面に決めた。
 そしてその1分20秒後、パナマのフェザー級チャンピオンはロープを背にしてリナレスにメッタ打ちにされ、レフェリーに救出されていた。
 リナレスのTKO勝ちである。

 TKOに至る過程で、リナレスがララを連打してロープ伝いにコーナーへ追い詰めていく姿をリングサイド真正面で見たとき、

  仕留める
   この獲物を

という、猛獣の本能を人間の言葉に翻訳したような単語が、私の脳裏を奔り抜けた。
 リナレスの両拳は、まるで牙を剥き出しにした獣の顎門だった。
 本当に、肉食獣が獲物を追い詰めて仕留める現場を目撃したような気分だった。

 試合が終わってリング上で勝利者インタビューを受けるリナレスからは、獣の佇まいは綺麗サッパリ消え失せていた。
 美青年と言っても差し支えのない端正な顔立ちをしたリナレスが、ちょっと変な日本語で、勝利の喜びを語っている。
 それを聞いていると、ほんの少し前までリング上で繰り広げられていた濃密なボクシングの時間帯が、まるで幻だったかのように感じられた。

「今年中に、WBAでもWBCでもいいから、世界タイトルに挑戦したい」
 リナレスは、そういう意味のことを熱っぽく語った。もう世界戦がやりたくてやりたくて仕方がない、ウズウズしているんだということが伝わってきた。
 3月5日発表のWBAランキングでは、リナレスは遂にフェザー級1位にランキングされた。これでもう、クリス・ジョンはリナレスの挑戦を拒めなくなった。あとはもう指名試合の期限が来るまでの“時間の問題”ということになる。
 WBCのフェザー級王者は池仁珍であるが、以前放送されたWOWOWでは、オスカー・ラリオスとの指名挑戦試合を行うか、Sフェザーに上げてマニー・パッキャオと対戦するかまだ決まっていないと伝えられていた。池がパッキャオ戦を選ぶとしても、指名期限内にラリオスと戦うことができなくなれば、王座は剥奪されて決定戦が行われることになる。当然、ランキング1位のラリオスと2位以下の誰かとの対戦ということになるが、それがリナレスになる可能性も有る。

 いずれにせよ、年内にリナレスがWBAタイトルに挑戦する権利を得ることはほぼ確実だろう。
 クリス・ジョンは、マルケス兄(ファン・マヌエル・マルケス)と互角の試合をした実力者であり、インドネシア拳法仕込みと噂される独特なリズムと間合いを持っている。日本で言えば、徳山に似たタイプだと思う。
 いかにリナレスと言えども苦戦は免れないだろう。マルケス兄のように、敵地に乗り込んでの試合となれば尚更である。

 フェザー級のリミットまで落としたとき、今回のようなパフォーマンスが発揮できるかという不安も残る。それでも、ファンとしては信じて期待するしかない。
「ラーメンもホントに好きだけど、やっぱり、日本のご飯、何でも食べたい、試合終わったら。大好き、ホントに」
 ちょっと照れたように笑いながら語る、そんなリナレスが世界チャンピオンになった姿を見たい。
 ホントに、見たい。

ダブル世界タイトルマッチ in 日本武道館 に関するエトセトラ

ダブル世界タイトルマッチ in 日本武道館 に関するエトセトラ

               前座を全部見るとメインまでに疲れちゃう?

 前日から悩んでいたのは、何時ごろに会場入りするのかということ。
 何しろダブル世界タイトルマッチである。前座試合を多く見すぎて、メイン二試合の時点で眼が疲れていたり集中力が低下しているという事態は避けたい。イーグルの試合の前に、2試合も見られれば充分である。
 ところが、この興行で何試合が行われるのか情報を得ることが出来ずに、当日を迎えてしまった。これでは、時間を計算することが出来ない。
 しかも、私は筋金入りの方向音痴である。日本武道館に行くのは初めてなので、自分の立てた計画通りに会場入りできるのかという不安もあった。
 
 結局、「前座開始時刻である17時45分に会場入りする」つもりで動いた。
 途中、私は方向音痴振りを発揮してバタバタしてしまったが、最終的には辻褄が合う形になり、会場の自分の席に付いたのは第1試合の1ラウンド目の途中だった。


                  会場で見かけた有名人

 アリーナの入り口を入ってすぐ、背広姿の丸々と太った男性を発見。
 佐山聡さんでした。体型に、初代タイガーマスクだった頃の面影は全くありませんでした。
 同じく背広姿のどなたかと談笑されていましたが、一観客としてチケットを購入して来られたのか、そうでないのかは不明。

 アリーナ4列目辺りで、千里馬会長が客に何かを渡して説明されているところを目撃。そのときは「紙テープかな?」と思ったが、今になって思えば、あれは長谷川の試合の第二ラウンド終了時に飛ばされた風船だったのか?
 事の真偽は不明であり、風船を飛ばすことを仕組んだのが誰なのかも分からないが、こういう意味のない一発芸のような演出は止めるべきだ。第二ラウンド前後、会場のあちこちから、風船から空気が漏れる音が聞こえてきたのは不愉快だった。
 千里馬会長自身は、マッチョでとてもカッコ良かった。ジムの会長というよりは、むしろ1人の格闘家のようでした。


            意外に小さな武道館の、ささやかな雛壇

 日本武道館は外から見ると大きいが、客席から中を見回すと驚くほど小さい。
 後楽園ホールを一回り大きくした程度といった感じである。先入観として、両国国技館のようなイメージを抱いていたので、本当に意外だった。名古屋レインボーホールと同じくらいか?
 アリーナ席ではない席は、かなり勾配があって、観やすそうに見えた。
 私がチケットを取ったアリーナ席は、列ごとに8cm程度の雛壇になっていた。本当に申し訳程度の雛壇だが、それでもないよりは遥にマシである。
 私の前の席に座っていた人は私と同程度の身長だったが、視界は基本的には確保できた。これも、僅か8cmとはいえ雛壇になっているおかげである。


                  私の近くにいた迷惑な人々

 私の右隣の席の観客(女性)が、イーグルの試合中(インターバルではなく、まさにリング上で打ち合いが行われているとき)に、何と自分から携帯電話をかけて話し始めた。
 それもヒソヒソではなく、堂々とである。試合は確か第3ラウンドで、会場内も比較的静か。そんな中、すぐ隣で堂々と電話されたら、自分に話しかけられているのと同じくらいによく聞こえる。
 私はというと、(イーグルの様子がおかしい! どうしたんだイーグル?!)と手に汗握り始めていたところである。隣で電話をしている女性客に対し、思わず
「うるさい! 試合中に電話するな!(あなたが試合をしているという意味ではありませんよ)
と怒鳴ろうとした瞬間、
「長谷川さんの応援をしたいので、2階席の方に移りたいんでけど」
と、その女性客が喋る声がハッキリと聞こえた。
(えっ、ここからどいてくれるの? 隣の席が空くのなら、私にとってもメリットあるわ)
咄嗟に私はそう思い、怒鳴るのを止めた。
 この女性は一旦電話を切った後、ご丁寧にも、もう一度同じ用件で自分から電話をかけた(この時も、リング上でイーグルとトレホが打ち合っている最中)。私は
「電話を止めて、とっとと2階席でもどこへでも行ってくれ!」
と怒鳴ろうと思ったが、ここへきて席移動の交渉が決裂すれば、私は丸っきり「観戦中に耳元で電話され損」である。41才のボクシングファンは、グッと堪えましたよ。
 結局この女性は、長谷川の試合が始まる前には、私の隣から姿を消した。ヤレヤレ、である。
 11月13日、日本武道館のアリーナ西9列2X番の席に座っていた女性に、この場を借りて言いたい。
「電話をするなら、インターバル中に席を立ち、観客から充分離れたところまで移動してからにしなさい!」

 もう1人、困った観客がいた。
 私の斜め後の席の観客(男性)が、試合中、ずっと解説者気取りでダラダラ喋っているのである。
 この人も、隣の客にだけ聞こえるようなヒソヒソ声ではなく、周囲にハッキリ聞こえるような声量で堂々と喋っている。
 これが、的を射た解説ならまだいいが、肝心なところでことごとく間違えるという、素人丸出しのダメ解説なのだ。もう、耳障り以外の何物でもない。
 長谷川 vs ガルシアの試合では、最初のダウンを「今のはスリップダウンだ」と何度も繰り返す始末。このときはさすがに、更に後の席にいると思われる観客から「ナイスアッパーだったよなぁ」と、ボヤキ気味のツッコミが入った。
 私も試合中には要所で絶叫調の声援を飛ばしているので、試合に関することを喋っている他の客を咎める資格はない。ただ、解説者気取りで周囲にも聞こえる声量で喋り続けるのであれば、せめて要所要所で外したことを言うのは止めてもらいたい。
 誤ったことを言っている人に対して、その誤りを指摘したくなるのは人間の本能である。しかし、後方から間違ったことを言われても、前にいる人間は試合中に後を振り返ってそれを指摘することは出来ない。後ろを振り返っていたら、リング上の決定的瞬間を見逃す恐れがあるからだ。
 11月13日、日本武道館のアリーナ西10列2X番の席に座っていた男性に、この場を借りて言いたい。
「周囲の客にストレスを溜めるようなダメ解説を垂れ流し続けるのは、ご遠慮ください」


                 オープン・スコアリング・システム

 採用された2試合とも、観客席からは、これといったリアクション無し。
 現場で観客席側からオープン・スコアリング・システムを“体験”してみると、少なくとも今回はそのメリットあったように感じられた。1ポイントであっても、スプリットであっても、負けていることが分かった方のボクサーが、ポイントを取り返そうとしてよりアグレッシブに戦う傾向が見られからだ。
 ただし、それが「勝っていると思ったら、実際には負けてた」ボクサーにとっては、純粋なアグレッシブではなく「焦りを伴ったアグレッシブ」になっていたようにも見えた。逆のパターンに関しても、同様のことが言える。これにより、試合の展開に独特の影響を及ぼしていようにも感じられた。
 これを直ちにオープン・スコアリング・システムの欠点と言うことは出来ない。同じ状況に立たされても、違う反応をするボクサーもいる筈だからだ。
 おそらく、JBCは次のWBC世界戦でも、オープン・スコアリング・システムを採用するだろう。とりあえず、あと1、2試合は試して見る価値はあると思う。その推移を見守りたい。
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震電

震電

 写真撮影時40歳。
 いい歳して云々といった決まり文句は私には通用しない。たった一度の人生、他人に迷惑をかけない範囲で楽しみます。