2017-05

K-1 WORLD MAXが面白くなくなってしまった(UFCは相変わらず面白いのに)

K-1 WORLD MAXが面白くなくなってしまった(UFCは相変わらず面白いのに)


 昨日、K-1 WORLD MAX 2008を途中から(魔裟斗VS佐藤の2ラウンド開始から決勝戦終了まで)TV観戦したが、パンチ主体の試合ばかりで面白くなかった。
 以前、ブアカーオが決勝戦で魔裟斗を延長戦の末破った試合は面白かったのに…。

 魔裟斗が勝ったから面白くないなどと言うつもりは毛頭ない。
 K-1 WORLD MAXがパンチ偏重になってしまったから面白くないのだ。一時期と比べると、新興打撃格闘競技として悪い方向へ変わってしまったと思う。

 WOWOWで『エキサイトマッチ』を毎週観ている私の目には、K-1 WORLD MAXでのパンチの攻防は雑に見える。基本が3回戦という縛りの為だと思うが、真正面から正直に打ち合っての「当たったモン勝ち」という印象だ。世界戦レベルのボクシングにおける距離や角度(ポジショニング)の奪い合い、タイミングの取り合い外し合い、ブロックのみならずボディワークを使ったパンチの効果の殺し合いといった緻密な技術的攻防を見慣れた者には、いささか物足りない。

 『エキサイトマッチ』で浜田氏が、サミュエル・ピーターのボクシングを、むしろ良い意味で「30年前のヘビー級ボクシング」と言っていたのだが、昨日観たK-1 WORLD MAXは、悪い意味で「30年前のジュニアミドル級ボクシング」なのではないかと思ってしまった。
(私は30年前のジュニアミドル級の試合を観たことはない。飽く迄も浜田氏の発言を受けての“言葉の連想”である。実際には30年前であっても、ジュニアミドル級のボクシングにはヘビー級にはない技術戦の要素があったと思う)

 いつだったか、ブアカーオが決勝戦で魔裟斗を破った試合。
 あれは、キッカーがパンチャーを破った試合だった。
 キックとパンチの技術的・戦術的な攻防が見られた好試合であった。

 パンチ主体の魔裟斗は、(ファイタータイプのボクサーほどではないものの)前脚に重心を置いたクラウチングスタイル。当然ながら強いパンチを打ち易いが、ローキックのカットはやり難い。

 対するブアカーオの戦術(攻防の選択肢)は、こうだった。
 ・魔裟斗がパンチを打とうと前脚に重心をかけたとき、その前脚にカウンター気味のローキックを当てる。
 ・そのローキックを警戒して魔裟斗が一旦間合いを取った場合、その間合いから前蹴りをボディと顔面に蹴り分けてヒットさせ、体勢を立て直す余裕を与えない。
 ・魔裟斗が強引に距離を詰めて来たら、首相撲からの膝蹴りで対抗する。

 確か、このときは両腕を使った首相撲からの膝蹴りが、1発のみ許されていたように思う。
 例え単発でも、両腕で首相撲を仕掛けることが出来れば、アッパーやボディブローの初動体勢を崩してその攻撃を無効化することが出来る。つまり、両腕を使った首相撲からの膝蹴りは、アッパーやボディブローといったショートレンジのパンチに対して攻防一体の効果を発揮するのだ。

 これがあると、パンチャーは接近してアッパーやボディブローを打つことのリスクが高まり、なかなかそれを仕掛けることが出来なくなる。
 そうなれば、キッカーは中間距離でロー、ミドル、ハイキックを狙う機会が増えるので、攻撃のバリエーションが広がる。

 これは、裏を返せば、

 両腕を使った首相撲からの膝蹴りが禁止されている場合、パンチャーは接近してアッパーやボディブローを打つ際でも、基本的には相手のパンチを警戒するだけで良い。(首相撲に先導されない膝蹴りは、格段に脅威が小さくなる)
 そうなれば、キッカーはショートレンジでのパンチの打ち合いに持ち込まれる時間が増えるので、中間距離でロー、ミドル、ハイキックを狙う機会が減る。攻撃のバリエーションが狭まる。

と言うことだ。
 つまり、K-1で両腕を使った首相撲からの膝蹴りが禁止されると(肘打ちは最初から禁止)、接近戦ではほとんどボクシングになってしまう。ボクシングを観るなら、生粋のボクシングの方が遥かに面白いのは当然である。

 1試合目の場合、3回戦ではローキックの効果が出にくいという要素も大きい。この点に関しては、むしろトーナメント方式による弊害と言うべきか。

 採点基準も「ダメージ重視」というものの、「顔面へのパンチ重視」となっているように思う。
 これはボクシングでも言えることだが、パンチが頭部にクリーンヒットしようが、ボディにクリーンヒットしようが、それによるダメージが直ちに表われなかった場合、それは同じ価値を持つ有効打として平等に「1打」とカウントされるべきだ。2つのパンチによるダメージに優劣を付けられない以上、その評価は同等とするしかあるまい。

 K-1にありがちな例を挙げよう。

 ・ローキックが太腿にクリーンヒットしたが、それで直ちにグラつくということはなかった。
 ・アッパーが顎にクリーンヒットして顔が上を向いたが、それで直ちにグラつくということはなかった。

 K-1の採点基準が「第一にダメージの大きさ」ならば、上記の二つは等価に採点されなければならない。
 何故なら、ダメージとは「1回のダウン=減点2」を基準にしているからだ。顎へのアッパーでダウンしても「減点2」であるし、太腿へのローキックでダウンしても同じく「減点2」であることを忘れてはならない。

 要するに「ダメージの大きさ」とは、「ダウンの有無」または「ダウンしそうな状態の有無」で判断される。
 「アッパーが顎に命中して顔が上を向いたが、グラつくことなく普通に立っていた」という状態と、「ローキックが太腿に命中したが、グラつくことなく普通に立っていた」という状態は、その意味において差がないのだから、等価に評価すべきなのだ。
 重心の乗った脚にローキックが命中しても、「脚が跳ね上げられる」ことなどまず有り得ないのだから、単純に「アッパーで顎が上がった」というだけで「ダメージが大きい」と判定するのは根本的に間違っている。それは、表面的な「見栄え」を評価しているに過ぎない。
 「クリーンヒットであったか」、「ダウンの有無」または「ダウンしそうな状態の有無」に関して差がなければ、見栄えのするアッパーだろうが地味なローキックだろうが、評価は同じでなければおかしい。

 ムエタイ選手にとって不利になるようにルールや採点基準を設定した結果、K-1対策を積んでいない典型的なムエタイ選手がアッサリ優勝してしまうという心配は、ほとんど無くなったと言って良いだろう。しかしその反面、競技の多様性や技術的な部分を大きく削ぎ落としてしまったこともまた事実である。
 多様性を保ったまま競技としての整備が進んだUFCと比較すると、実に対照的ではないか。
 ちょっと残念な気がする。
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K-1 World MAX は、競技(興行)として煮詰まってきたのかな?

K-1 World MAX は、競技(興行)として煮詰まってきたのかな?


 K-1 World MAXが、あんまり面白くなくなってきた。
 トーナメントの勝ちパターン(あるいは負けパターンと言ったほうが適切か)が見えてしまったからだ。

 実力が拮抗した選手同士の勝負の場合、決勝進出時にダメージの蓄積や体力の消耗が少ない方が勝つ可能性が高いというのは昔から分かりきっていたことである。それに加え、今回はそれに“構造的な勝負の矛盾”が加わったことにより、興醒めする部分が増えた。

 K-1 World MAXの歴史は、「いかにムエタイ選手に勝たせないようにするか」である。
 K-1は日本人が作った競技なので、このこと自体は何ら問題ではない。
 「立ち技の打撃系格闘技における何でも有り(ただし頭突きは禁止)」にしたら、それは「ムエタイそのもの」になってしまう。そういう競技なら(例え採点基準を変えたとしても)ムエタイの選手が有利に決まっている。K-1 World MAXという新名称を付けたところで、既成の競技であるキックボクシングの二の舞になることは明らかだ。

 この場合、どうしてもムエタイの選手に勝たせたくなかったら、強いムエタイの選手をエントリーさせないという手段を取らざるを得ない。
 それを良しとしない場合は、今のK-1ルールを導入せざるを得ない。そういう意味では、今のK-1ルールは、ワンマッチを想定した場合には、なかなかバランスの取れたものになっている。

 また、K-1 World MAXの歴史は、「いかに日本人選手を優勝させるか」でもある。
 ミドル級と言いつつも、実際には1階級下のスーパーウェルター級のリミットとほぼ同じ70.0kgを契約体重としているのも、
「ウェルター級以下だと、ムエタイの強い選手が増える」
「ミドル級以上だと、日本人に人材がいない」
という条件の狭間で、どうにか得ることの出来た狭き解だろう。
 つまり、
「今より軽い階級では、日本人はタイ人に技術面で勝てない」
「今より重い階級では、日本人は西洋人に体格・パワーの面で勝てない」
ということだ。

 そんなK-1スタッフの期待を一身に背負った魔裟斗が出した答えは、ボクシング主体のスタイルで戦う、即ちパンチの距離で戦うということだった。
 アッパーからフックというコンビネーションは、ムエタイルールであれば、たった一度失敗するだけでも首相撲に捕えられて、大きなダメージを被る(ポイントを失う)リスクが非常に大きい。しかし、K-1ではそのリスクがないから、成功するまで(あるいは相手に別の方法で合わされるまで)何度でもトライすることが出来る。

 ボクシング主体のスタイルで戦う場合、天敵となるのはローキックと前蹴りだ。しかし、元々キックボクサーである選手を、3ラウンド以内にローキックでKOすることは難しい。
 今回、魔裟斗はパンチでブアカーオをダウンさせ、ローキックで大きなダメージを被りながらもダウンすることなく3ラウンドを戦い抜き、判定での勝利を収めた。K-1ルールで日本人がタイ人と戦う場合に最も勝つ可能性が高い戦法で戦い、実際に勝ったのだ。

 しかし、このトーナメント初戦で脚に大きなダメージを被った魔裟斗に、決勝戦の3ラウンドを戦い抜く力は残されていなかった。ボクシング主体のスタイルで戦う場合、1回戦でムエタイの選手に勝つことは出来ても、決勝戦で勝つことは極めて困難であることが実証された。
 つまり、ワンマッチにおける強さと、トーナメントにおける強さは、運不運の次元ではなく構造的に完全に別物となってしまうのだ。

 パンチ主体の戦法で1、2回戦を勝ち上がった選手が、決勝戦で脚のダメージが限界に達して敗れる。
 初戦で、ムエタイの選手がパンチ主体の選手にローキックを的確に蹴り込みながらも倒しきれず、判定で敗退して早々に姿を消す。
 こういう図式は、あんまり面白くない。

 しかし、だからと言ってラウンド数を3ラウンドを5ラウンドに延ばせば、どうなるか?
 カバーリングアップで上半身をがっちりガードしたまま、ひたすらローキックのみを蹴り続け、最終ラウンドに動きの鈍った相手を一気に攻め落とすという戦法が最も有効になってしまう。

 その戦法を破ることが出来るのは、ガードした状態ごと首相撲に捕らえての攻撃である。
 首相撲からボディに膝蹴りをぶち込めば、どうしても側頭部のガードが空く。そこへ肘打ちを叩き込むというコンビネーションは、ムエタイでは基本である(と言うよりも、この攻撃パターンがあるため、ボディへの膝蹴りを腕でガードすること自体がタブーとなっている)。
 しかしこうなると、K-1はムエタイになってしまう。

 首相撲同様、ローキックをルールで制限するという手もあるかもしれないが、例えば「ローキックは1ラウンドに4発まで」というルールは、どうにも納まりが悪い。
 そうなると残るのは、「トーナメント3試合を1日で終わらせる」という現行の興行スタイルを変えることしかなさそうだ。

(1)3試合とも別の興行にして、トーナメントは全てワンマッチにする。

ことが理想だが、それが無理だとしても

(2)1回戦(準々決勝)、2回戦(準決勝)の2試合を一つの興行で行い、決勝戦は別の興行でワンマッチで行う。
(3)1回戦(準々決勝)を一つの興行でワンマッチとして行い、準決勝、決勝の2試合は別の興行で行う。

にするべきだと思う。
 あるいは、K-1も毎年トーナメントを行うのはやめて、ボクシングのような王座&ランキング制を導入する時期に来ているのかもしれない。タイトルマッチは、年2回(指名試合1回、それ以外1回)行えば良いだろう。

 キックボクシングやムエタイの華であるハイキックが、パンチ&ローキック主体のK-1 World MAXから姿を消しつつあることも気掛かりだ。
 ボクシングとは違って実質2階級しか存在しないK-1は、選手層の薄さという問題を常に抱えていることも分かるのだが、関係者には一層の工夫と努力を期待したい。

タイソンがPRIDEと試合契約を締結

タイソンがPRIDEと試合契約を締結
  アメリカにおけるタイソンは、日本における吉田と同じ位置付けか?


 タイソンがPRIDEと試合契約を結んだという報道があった。
 K-1の時も似たような報道がなされたことがあったが、契約は飽くまでも「ボクシングの試合」の契約だったようで、結局K-1の興行でタイソンの試合が行われることは無かった。
 今回のPRIDEとの契約の詳細に関しては、10月にラスベガスで行われるPRIDE32の前に発表されるとのことなので、おそらくまだ決まっていない部分が多いのだろう。

 さて、日本のPRIDEファンのうち、いったい何%が、タイソンがプロボクシングを引退していることを知っているだろうか? いったい何%が、タイソンがどんな試合を最後にボクシングを引退したのかを知っているだろうか?
 本人は引退声明後も一時期「ターバーとなら試合をしてもいい」と言っていたようだが、主要4団体の7月付けランキングには、タイソンの名前は無い。
 タイソンのプロボクシングキャリアの最後となった試合の内容と試合後のインタビューは、タイソンがプロボクサーとして完全に終わったということを、ボクシングファンに強く印象付けるものだった。「こういう闘いはもう私には出来ない。私はもう野獣ではなくなった」とうなだれる敗者タイソンを、ファンは心から「今までありがとう、お疲れ様でした」とねぎらったのである。

 タイソンは、日本における吉田と同じような位置付けなのかもしれない。
 日本のPRIDEファンでも、PRIDE参戦当時の吉田が「その時点での柔道王者」だと思っていた人はさすがに少数派だろう。ただし、吉田が2002年の全日本柔道選手権大会における1回戦敗退の後、新日鉄から事実上の戦力外通告を受けて同社を退社、柔道の現役から引退した形でPRIDEに参戦したことを知るファンもまた、少数派であろう。(ちなみに、2002年の全日本柔道選手権大会の優勝者は井上)

 柔道の母国・日本でも、吉田が「柔道の第一線においては、完全に終わった」後にPRIDEへ参戦したことは、多分それ程知られていない。
 ボクシングの本場アメリカ、それもラスベガスとなれば、日本とは比較にならないほどボクシングはメジャーなので、タイソンが引退したことはそれなりに広く知れ渡っているだろう。それでも、現在のタイソンの動きに関する受け止め方は、日本におけるPRIDE参戦当時の吉田に似た感じなのかもしれない。

 PRIDE32でリングに上がったタイソンにブーイングが飛ぶということは無いだろうが、タイソンの最後の試合を見た観客なら、(PRIDEとの試合契約の詳細にもよるが)とても無条件で拍手を送るというわけにはいかないはずだ。
 ヒョードルvs小川を最後に、PRIDEのPPVは視聴していないが、10月に予定されているPRIDE32は、ちょっと見てみたい気がする。

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震電

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 写真撮影時40歳。
 いい歳して云々といった決まり文句は私には通用しない。たった一度の人生、他人に迷惑をかけない範囲で楽しみます。